経営
経営とは?
「経営」とは、事業目的を達成するための継続的な活動で、経営者が「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源を確保し、会社を存続・発展させる一連の取り組みのことをいいます。経営者には、市場変化に対応し、利益を上げ、顧客に価値を提供することが求められます。会社の目指すべき姿を表す「経営理念」や、経営理念を実現させるための指針となる「経営方針」、そして経営方針を達成するための「経営計画」は、企業が成長するために必要な要素です。
経営とは
「経営」に明確な定義はありません。一般的に経営といえば、「事業目的を達成するための継続的な活動」「組織の成果を出すための行動」「顧客との関係構築」などを指します。会社を営む観点から、経営者がヒト・モノ・カネといった経営資源を確保し、会社を存続・発展させる一連の取り組みが経営と考えられます。
そのため、経営には、事業を営む組織内部の仕組み構築や業務フローの確立・改善、顧客や株主との関係構築など、事業が利益を出し存続・発展するために必要なさまざまな物事が含まれます。
「マネジメント」との違い
経営と似た用語に「マネジメント」があります。マネジメントとは、企業が組織の経営目標や事業目的を達成するために、業務や物事がスムーズに進むように働きかける一連の取り組みをいいます。「人材マネジメント」「プロジェクトマネジメント」のように、マネジメントの対象となるものはさまざまです。
チームや組織として大きな成果を出すためには、一人ひとりが優秀なスキルを持っているだけではなく、優れたマネジメントが不可欠です。マネジメントは、会社が経営を遂行するために必要な手段の一つといえます。
経営者の役割
経営者の役割は、会社を存続させることです。市場変化に対応し、利益を上げ、顧客に価値を提供することが求められます。すなわち、経営者は内部・外部の変化に対して、適切・迅速に対応する力がなくてはなりません。以下に、著名な経営学者が考える経営者の役割を紹介します。
ピーター・ドラッカーの考える経営者
ピーター・ドラッカーは、オーストリア出身の経営学者です。マネジメントについて体系化し、さまざまな手法を確立したことで有名になりました。経営に関する多くの書籍を発表しています。ピーター・ドラッカーによれば、経営者は何を「専管」とするかを考えなければならないとしています。事業の決定、組織としての価値観の決定、資金配分や人材配置の決定は、組織全体に責任を持つ経営者だからこそできる役割です。経営者は、内部・外部の環境をもとに、企業として何に注力をするべきかを判断・決定する役割を担います。
組織には、さまざまな経営活動を妨害する要素があるため、経営者は、内部・外部の環境を見ながら何に注力するのかを判断し意思決定を行います。
バーナードの考える経営者
チェスター・バーナードは、アメリカの経営学者です。組織が成立するために不可欠な三つの要素を「バーナードの組織の三要素」として提唱しました。それによれば、「コミュニケーション」「貢献意欲」「共通目的」の三つが、組織が成立するために必要であるとされています。
コミュニケーション
コミュニケーションがなければ組織の物事は進みません。円滑かつスピーディーなコミュニケーションは、組織の素早い意思決定を促し、生産性向上やイノベーション創出につながります。
貢献意欲
貢献意欲とは、組織の一員が組織に対して何かしらの貢献をしたいと思うモチベーションのことをいいます。一つの組織が組織として確実に機能し、高い成果を出していくためには、従業員一人ひとりの貢献意欲が重要です。
共通目的
共通目的とは、組織全体が同じ目的を持って何かに取り組むことをいいます。企業理念や経営方針、ビジョンなどがあてはまります。
これら組織の三要素は、現代においても組織を構築しマネジメントを遂行するうえで、無視できない大原則とされています。
ミンツバーグの考える経営者
ヘンリー・ミンツバーグは、カナダのマギル大学デソーテル経営大学院のクレゴーン記念教授です。著書『マネジャーの仕事』において、経営上の10の役割を提唱しました。経営者は、組織を経営する上でさまざまな役割を期待されます。ミンツバーグは、5人の経営者の仕事を観察し、共通して必要とされる役割を三つのカテゴリーに分類しました。
対人関係のカテゴリー
- フィギュアヘッド(組織の代表):自組織を代表する象徴としての役割を担う
- リーダー(会社全体・部門・チームのリーダー):従業員・メンバーのパフォーマンスをマネジメントし、責任を負う
- リエゾン(社内外の関係者とのコミュニケーションの担い手):人と人とを結びつける
情報伝達のカテゴリー
- モニター(社内外の情報収集):会社、業界などの内部・外部環境の変化の監視役。生産性と福利厚生が両立するように組織をマネジメントする
- 情報提供:従業員や同僚に有益な情報を提供する
- スポークスマン:社外に向けて、組織の情報を発信する
意思決定のカテゴリー
- 起業家:組織の変革と創造の担い手。アイデアを実現するためプロジェクトを実行する
- トラブルシューター:組織に想定外の出来事が起こったときの責任者。論争や衝突の調停も行う必要がある
- 資源配分者:組織の最適なリソース配分を決定する。このリソースには、人的、財務的なものなどが含まれる
- 交渉:組織内で発生する重要な問題について責任を負い、交渉し、指示を出す
経営に必要な要素
経営には「経営理念」や「経営計画」など、さまざまな要素が求められます。組織をまとめ、成長を促すための個々の要素と違いについて解説します。
経営理念
「経営理念」とは、「企業の活動方針に関する基本的な考え方」のことをいいます。組織のなかにいるさまざまなヒトが、自分の行動を決めるときの指針となるものです。経営理念は、経営者や創業者によって示されるものを明文化するのが一般的です。企業が理想像を明らかにすることで、経営者や役員だけでなく従業員、外部関係者などに、企業の目指すものを伝えることができます。
ミッション・ビジョン・バリューとの違い
「ミッション、ビジョン、バリュー」も企業の活動方針を示すものです。経営理念をミッション、ビジョン、バリューの上位概念とする企業もあれば、経営理念を定めずに、ミッション、ビジョン、バリューを定める企業もあります。企業によって扱い方が異なります。一般的には、ミッション、ビジョン、バリューは以下のように考えられます。
- ミッション:使命。企業が果たすべき役割のこと。
- ビジョン:理念。企業が実現するべき理想像のこと。
- バリュー:行動指針。企業理念や経営理念を実現させるために必要な行動を明文化したもの。
ミッションは恒久的に変わらない企業の存在意義を言語化したものです。ビジョンや中長期的に達成したい目標を掲げ、バリューはその達成の手段が当てはまります。ビジョンやバリューは、経営方針によって変わることもあります。
- 【参考】
- 経営理念とは――MVVとの違い、例、必要性を解説|『日本の人事部』
- パーパス(Purpose)とは――意味と事例、企業のパーパス経営が注目を集める背景|『日本の人事部』
- ミッションとは――意味や語源、例を紹介|『日本の人事部』
経営方針
「経営方針」とは、事業を展開するための目標であり、経営理念を実現するために取るべき行動や方向性を示すものです。経営理念との違いは、経営理念が会社の目指す姿を表すのに対して、経営方針は経営理念を実現させるための行動目標です。経営方針があることで、どういう方向性やどのような姿勢で経営理念を実現するべきかを、社内外に示せます。
経営計画
「経営計画」とは、自社が目指す経営理念や目標を実現させるため、戦略・計画を具体的に示したものをいいます。前述の経営方針を実現するための具体的な計画です。経営計画を作ることで企業としての進むべき道や、達成するべき目標が明確になります。経営計画は、スパンにあわせて「長期経営計画」「中期経営計画」「短期経営計画」の三つに分けられます。
経営計画は、全社を念頭に設定する点が特徴です。経営計画をさらに部門別に細分化させたものが「事業計画」です。
経営戦略
「経営戦略」とは、企業が置かれている経営環境の下、企業の目的(目標)を達成するためのシナリオのことをいいます。経営戦略を策定することで、経営資源の選択と集中が可能になります。
経営戦略は、全社戦略、事業戦略、機能別戦略、その他戦略に分類されます。全社戦略では、どの事業領域にリソースを配分するのかの方針を、また事業戦略では、個別の事業分野において他社に勝ち抜くための方針を打ち立てます。機能別戦略は、営業戦略、人事戦略のように事業戦略を実現させるための施策を、機能別の視点からどのように実施するかを考えるものです。
経営資源
「経営資源」とは、企業が事業を行う上で必要となる資源の「ヒト・モノ・カネ・情報」を示す言葉です。ヒトとは、従業員や管理職といった自社の人材を指します。モノは企業が持つ物的資産が当てはまります。不動産や製品、機械類が該当します。カネは、企業の資金や収益、投資といった財務的な要素が当てはまります。情報は、顧客情報や市場の情報などを示します。
これら四つの経営資源は、一つ欠けてもうまくいきません。ヒトがいなければ生産が成り立たなくなります。モノがなければ作るべきものも作れなくなるでしょう。事業を拡大したり、人材を育てたりするにはカネが必要です。技術革新により、企業にとって必要な情報の重要性はますます増しています。経営資源をいかに扱うかが、経営者に求められる手腕ともいえます。
近年は、経営資源の一つとして考えられてきた「ヒト」を資本として捉える「人的資本経営」が主流です。人的資本経営は、従業員を投資の対象として積極的に育成し、企業価値を高めていく経営手法です。人的資本経営に優れた企業は、変化の激しい環境でも持続的な成長を図れるものとして、投資家や株主から評価される傾向にあります。
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