企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】ダイバーシティ アンド インクルージョン ダイバーシティ&インクルージョン

人には人種や性別、年齢などの外見的な違いはもちろん、宗教や価値観、性格、嗜好など、内面にもさまざまな違いがあります。「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)」とは、個々の「違い」を受け入れ、認め合い、生かしていくこと。では、企業には「ダイバーシティ&インクルージョン」において、どのような対応が求められているのでしょうか。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1.ダイバーシティ&インクルージョンとは

ダイバーシティ&インクルージョンの考え方

ダイバーシティは、日本語で「多様性」という意味です。企業におけるダイバーシティとは、性別や年齢、国籍、文化、価値観など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を活用することで新たな価値を創造・提供する、成長戦略といえます。近年はグローバル化や顧客ニーズの多様化といった市場変化に対応するため、ダイバーシティ経営に取り組む企業が増えています。

一方、インクルージョンは「受容」という意味。企業におけるインクルージョンとは、従業員がお互いを認め合いながら一体化を目指していく、組織のあり方を示します。従業員一人ひとりの多様性を受け入れることに加え、組織の一体感を醸成することで成長や変化を推進する取り組みが「ダイバーシティ&インクルージョン」です。

ダイバーシティ&インクルージョンが求められる背景・取り組むメリット

日本の企業がダイバーシティという言葉を用いるようになったのは、2000年以降のこと。当時の日本では、労働人口の減少および構成の変化により、労働力の確保が企業の課題として浮上していました。これを解決するため、それまで労働力の中心ととらえていなかった女性やシニア層、障がい者、外国人などの雇用に着目する企業が増えていったのです。

ここで問題となったのが、多様な人材を雇用するためのポストおよび働き方の整備です。ダイバーシティは、この問題を解決する考え方として注目を集めました。加えて、多様な価値観やライフスタイルを持つ人材の雇用は、組織内の発想やアイデアの活性化につながるというメリットがあります。プロダクトやプロセスにおけるイノベーション創出を目的に、成長戦略の一つと位置づけて、ダイバーシティに取り組む企業も増えました。

しかし、従来の日本型雇用システムでは、均質的な組織を作り、それをマネジメントすることが合理的ととらえてきた背景があります。均質性に慣れている従業員にとって、多様性を認めて受け入れることは容易ではありません。暗黙的な排斥が起きれば、環境を整備したところで定着させることは困難です。そのため、ダイバーシティを補完し、発展させるという意味において、インクルージョンの必要性が考えられるようになりました。

つまり、ダイバーシティによって多様な人材を受け入れ、インクルージョンによって一人ひとりが事業に積極的に参加する機会を創出し、個々の能力を最大限に発揮できる体制が整うわけです。

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むメリットは、以下のとおりです。

  • イノベーションの創出が期待できる
  • 当事者意識が強くなり、労働意欲が高まる
  • 個々のスキルアップにつながる
  • 多様性を尊重する風土・文化により信頼関係を構築できる
  • 従業員の定着率に貢献

このようにダイバーシティ&インクルージョンは、経営上の成果につながる大きな役割を果たすものといえます。

2.ダイバーシティ&インクルージョンの分類

ダイバーシティ&インクルージョンにおける組織マネジメントでは、まず人材の多様性について理解を深めておく必要があります。ここで注意したいのは、均質的でないものはすべて多様性があるといえること。つまり、「個の違い」はすべてダイバーシティであり、厳密には、その種類は無数と考えられます。

ここでは、「属性」「発想・価値観」「働き方」の三つに分けて、それぞれの多様性を見ていきます。多様性を考えるときに必要な視点を把握しましょう。

属性

【女性の活躍を推進】

かつての日本企業は、出産や育児に追われる女性にとって、働きやすい労働環境が整っているとはいえませんでした。そうした現状を踏まえて、女性労働者を取り巻く問題の解消を目指すため、2015年9月に「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)」が公布されました。女性活躍推進法では、企業に対して仕事と家庭を両立できる環境を整えること、採用や昇進、配属における配慮が必要などの基本方針を掲げています。

女性の活躍を推進するメリットには、多様化する市場ニーズへの対応力が挙げられます。家計における購買決定権は女性が握っているケースが多いため、女性ならではの視点を事業に生かすことが可能です。また、女性が活躍できる職場作りは、ワーク・ライフ・バランスへの取り組みにつながります。労働意欲や生産性の向上という点においてもメリットがあるといえるでしょう。

【外国人の活用】

グローバル化が進んだことで、日本企業では、国際的な競争力強化を目指して外国人を採用するケースが多く見られるようになりました。海外事業の推進はもちろん、外国人の雇用はダイバーシティ&インクルージョンにも大きな影響をもたらします。日本人とは異なる文化を持つ外国人は、日本人にはない視点や発想を多く持っています。外国人と日本人の知識や視点を融合することで、新たな文化の創造やイノベーションの創出を期待できます。

【障がい者を雇用】

従業員数が一定数以上の企業には、障害者雇用促進法により障がい者の法定雇用率が定められています。ダイバーシティ&インクルージョンの観点でみると、障がい者の雇用にはさまざまなメリットがあります。例えばユニバーサルデザインの商品開発においては、障がい者の視点や意見が大変重要です。また、障がいを持つ人が得意とする業務を切り出して、業務分担を進めることで人材の効率的な配置や業務の効率化が可能になります。

【シニア層の活用】

少子高齢化が進む現在、シニア層の労働力に注目する企業も多くなっています。厚生労働省でもシニア層の活用に向けた「高齢者雇用安定法」を定め、積極的な雇用を推進しています。シニア層の中には高いスキルを有する人材も多く、若手社員の育成を任せることが可能です。また、社会経験が豊富なため、組織作りへの貢献も期待できます。

【LGBTの受容】

ダイバーシティ&インクルージョンでは、誰もが自分らしさを発揮できる環境が必要です。LGBT(性的マイノリティー)にとって、社内の理解を得られないことは苦痛をともなうことです。場合によっては、労働を継続することができずに退職してしまい、優秀な人材を失ってしまうこともあります。LGBTと職能はまったく関係がないことを理解し、一人ひとりの個性が尊重される風土を育てていくことが重要です。

発想・価値観の多様性

【意見の多様性】

意見の多様性とは、一人ひとりの意見や物事に対する見方を尊重し、組織の意思決定に生かしていこうとする考え方です。

これまで日本の企業は、共通の価値観を持つ均質的な組織作りを行ってきました。マネジメントの効率を高められると同時に、企業のアイデンティティを個々の従業員が共有することで、企業独自の強みを打ち出す経営戦略が取られていたためです。

しかし均質な組織では、人と違う意見をためらったり、場の空気を読んで発言しなかったりといったことがしばしば起こります。さらに、日本では協調性を重んじる意識が根強いため、人の意見に同調しなければ、少数意見者として暗黙的に排斥する同調圧力が働きやすくなっています。

こうした環境下では、よい意見やアイデアがあっても発言されず、個人の能力が十分に発揮されません。ひいては、多様化・複雑化する現在の市場において、企業の競争力を維持できなくなっていくと考えられます。

その意味で、意見の多様性はダイバーシティの中でも、とりわけ重要なテーマとなっています。一人ひとりのユニークな意見や見解があってこそ、役割やポジションを超えるシナジーが生まれ、組織全体の力が底上げされます。人と違う意見を発言しやすい雰囲気、環境を作ることは、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する上で必要不可欠な要素です。

【経験・職能の多様性】

蓄積されてきた経験や知識、スキルは一人ひとり異なるものです。多様な経験・職能を持つ人材が集まることで、均質的な組織にはなかった「知」の力が生まれます。

例えば、異業種からきた人材の提案によって業務プロセスが改善され、生産性向上につながるケースがあります。誰もが当たり前と考えて見落としていたことに、それまでとは違う視点が持ち込まれ、気づきが生まれるわけです。また、ユニークな人生経験を持つ人材が、業界の常識にとらわれない発想から、新たなソリューションを提案するというケースもあります。

重要なのは、先入観で人材の価値を既定しないこと。誰もが異なる「知」を持っていると認識することが大切です。

【宗教の受容】

宗教や信仰は、個々のアイデンティティに強く影響するものです。多様性を受容する上で、宗教を持つ人材への理解は欠かせません。

例えばイスラム教では1日に数回、決まった時間に礼拝します。そのため、小さな礼拝室を用意している企業もあります。礼拝は数分程度なので、他の従業員が仕事の合間に少しの休憩をとることと、さほど変わりません。食事の制約がある宗教の場合は、従業員同士での会食に配慮します。また、肌の露出が禁じられている場合は、会社のドレスコードより、宗教上の制約を優先させる必要があるでしょう。

日本では、会社のルールを最優先すべきという意識が強い傾向があります。しかし、宗教は人の精神に深く根づき、生き方の方向性を決めているものです。一人ひとりの個性を尊重するダイバーシティの取り組みでは、宗教への理解と対応は非常に重要です。

【ライフスタイル・価値観の多様性】

現在はライフスタイルの多様化が進んでいます。ライフスタイルの変化に大きく影響しているのが、価値観の多様化です。さまざまな働き方を選択する人が増えているだけでなく、モノを選ぶ基準や幸福を感じる基準においても変化が見られます。

例えば「所有」ではなく「シェア」することを選ぶ人が増え、さまざまなシェアサービスが生まれています。これは、モノの所有に豊かさを感じていた時代から、利便性や効率性重視へと価値観が変わりつつあると見ることができます。このほか、環境問題を考えてモノを選ぶエコライフに価値を感じる人など、さまざまです。

また、世帯の構成が変化していることも、ライフスタイルや価値観に影響を及ぼしています。未婚・非婚による男性・女性の単独世帯、高齢者世帯は今後さらに増えると見込まれています。ここには、自身で選択したケースとやむを得ない事情で選択したケースの双方があるでしょう。

いずれにおいても、世帯構成はさまざまな場面の選択において、大きな影響を与えます。ダイバーシティの推進では、偏った見方で一方的に判断しないよう注意する必要があります。

働き方の多様性

ダイバーシティ&インクルージョンを推進する上で、ポイントとなるもう一つの視点が働き方の多様性です。多様な働き方の推進は働き方改革とも連動するため、企業にとって今後さらに重要度が増す取り組みになると考えられます。これまでは時短勤務、在宅勤務などといった働き方が注目されてきました。

これらに加えて、昨今では、従業員の副業・兼業を認める動きが活発化しています。副業・兼業とは、会社に所属しながら自ら事業を行ったり、他社に雇用されたりすることをいいます。副業・兼業を解禁する企業側のメリットには、以下のものが挙げられます。

  • 多種多様な知識やスキルが身につき、イノベーション創出につながる
  • 従業員の自律性が高まる
  • 自己実現によりいきいきと働く従業員が増える
  • 優秀な人材の流出を防ぐことになる

働き方の多様性を認めることは、従業員の経験の幅を広げることにつながり、結果として企業へのリターンが大きくなることが期待できます。

3.ダイバーシティ&インクルージョンの進め方

ダイバーシティ&インクルージョンを推進する際の考え方

ダイバーシティ&インクルージョンによって得られる企業のメリットには、労働力の確保、優秀な人材の獲得、イノベーションの創出、従業員満足度の向上などがあります。しかし、これらのメリットは短期間で成果を上げられるものではありません。

推進する上で重要なのは、まず「何のために行うのか」という明確なビジョンを持つことです。そのうえで、長期的に継続できる仕組みと運用方法を構築することが必要になります。人事担当者はこれらを踏まえて、多様なニーズに対応できる選択肢を用意し、個々の能力を活かす「ワークデザイン」を行っていくことが求められます。

企業行動のプロセス

ダイバーシティに関する深い知見を持つ早稲田大学大学院の谷口真美教授によると、ダイバーシティにおいて企業が取る行動には段階があるといいます。谷口氏は、以下の四つのステップに分類しています。

  • ステップ1:抵抗(Resistance)~違いを拒否
  • ステップ2:同化(雇用機会均等/Equal Opportunities)~違いを無視
  • ステップ3:分離(Value Difference/違いに価値を置く)~違いを認める
  • ステップ4:統合(Diversity Management)~違いを活かす

※出所:谷口(2005)、中村(2017)

ステップ1では、違いに対して拒絶的なまでの反応を示します。違いに対応することは「リスク」「コスト」としかみなされません。

ステップ2では、個人の違いを無視したまま、法令違反をしないために施策を行っています。

ステップ3では、個人の違いを認め、多様性を効率化のために必要なものとして認めはじめています。

ステップ4では、すでに個人の違いは企業経営になくてはならないものとみなされ、大きな利益をもたらすものとして積極的に施策に取り組んでいます。

日本の多くの企業の多くはいまだに、違いを拒否するステップ1の段階、または違いを無視するなど防衛的な反応を示す2の段階にあります。ダイバーシティ&インクルージョンを推進するには、組織の状態を見極め、一歩ずつ前進することが必要だといえそうです。

続いて、実際の進め方について解説していきます。

(1)行動計画を策定
ダイバーシティ&インクルージョンは、企業の競争力を高める戦略のひとつとして位置づけられます。行動計画を策定するにあたっては、経営理念と行動指針の関係性を明確にし、ダイバーシティ&インクルージョンが目指す方向を定めることが必要です。自社が置かれているビジネス環境においてどのような組織をつくっていくべきなのか、実現するために必要なものは何なのかを具体的な計画として落とし込んでいきます。

(2)人事制度の整備
多様な人材を生かすための重要な鍵となるのが人事制度です。個々の人材が活躍できる人事制度を整備するには、以下の点に留意する必要があります。

  • 職務を明確にする
  • 公正で透明性の高い評価制度を構築する
  • 多様性を生かして適材適所をはかる

ダイバーシティ&インクルージョンを進める上では、誰もが納得できる改革が必要です。しかし、従来の人事制度は、画一的な働き方をベースに仕組み化されてきました。そのため、多様な働き方に対応する柔軟なものへと改革する必要がありますが、その際に社内から抵抗を受けることも考えられます。こうした事態を避けるためにも、個々の従業員に期待する役割を明確にし、適切な評価を行う人事制度を確立することが重要です。

(3)勤務形態・職場環境の整備
勤務時間や通勤に制約がある人材が活躍できる働き方を整備します。例えば、育児や介護のために時間が制約される場合や、障がいにより通勤が難しいケースなどが考えられます。こうした人材に対しては、フレックスタイムや在宅勤務を検討するなど、勤務時間・勤務場所の自由度を高める工夫が必要になります。

また、従業員同士のコミュニケーションを円滑にするための取り組みも検討します。例えば、外国人の雇用で問題となるのが言葉や慣習の壁です。マニュアルや研修を用意するなど、スムーズなコミュニケーションを促す施策を考えるとよいでしょう。環境の整備においては、実際に従業員が働きやすい制度になっているか、施策は十分かを見直しながら、改善していきます。

(4)社員の意識改革
多様性を受け入れ、一体感のある組織風土を作るには、社員の意識を改革していかなければなりません。これは、受け入れる側だけでなく、これまで主流ではなかった多様な人材の意識レベルを引き上げることも含まれます。たとえば、女性管理職のポストを増やして能力を発揮できるようフォローアップする、といった取り組みも方法のひとつです。

また、実践にあたって重要となるのがマネジメント層の意識改革です。制度や環境を整えても、管理職の意識が低ければ従業員の能力を生かすことができず、意欲の低下につながります。さまざまな事情を持つ人材に対応するマネジメントスキルは、ダイバーシティ&インクルージョンを成功に導く上で重要なポイントになります。

(5)継続的なコミュニケーションを促進
社内における「少数派」は、意見を言いにくい状況にあります。これを認識した上で、日ごろからコミュニケーションを取りやすい仕組みを作ることが必要です。

さらに、情報共有の方法も検討が必要です。せっかく多様な意見を引き出し成果につなげていても、一部の社員にしか共有されていなければ、全体の意識向上や一体感につながりません。ロールモデルとなる人材の活躍を社内に周知するなどして、他の従業員のモチベーションアップにつなげていきます。これらの行動を継続することで、ダイバーシティ&インクルージョンの考えが浸透し、企業内の好循環を生み出します。

マネジメントのポイント

たんに制度をつくり人材を集めただけでは、ダイバーシティ&インクルージョンを成功させることはできません。初期の段階では現場の拒絶や防衛反応が起こることを視野に入れ、多様性を活かすためのマネジメントが重要です。

次に、マネジメントのポイントを紹介します。

経営トップのメッセージ

ダイバーシティ&インクルージョンを実践する際は、経営戦略との整合性を取りながら中長期的な目標を設定します。そのため、計画・体制作りに際しては、経営トップの意思を反映する必要があります。また、経営トップ自らが従業員に対して、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことメッセージとして伝えることが極めて重要です。社内外に対して企業のビジョンや目指す姿を打ち出し、進んでいく方向を示します。

価値観の統合

例えば、ある上司が仕事よりも育児を優先している従業員を非難していた場合、その職場は「暗黙的に仕事を優先することが求められている」と思われてしまいます。このような言動は、ダイバーシティ&インクルージョンを妨げる要因になります。これを防ぐには、決められた行動パターンを要求するのではなく、行動指針のベースとなる価値観を統合し、従業員一人ひとりが行動を選択できるよう、マネジメントしていく必要があります。

意思決定の仕組み

少数派の意見が排除されてしまうと、従業員が発言を躊躇するようになったり、モチベーションが下がったりするなどの悪影響が生じます。こうした事態を避けるため、全ての従業員が等しく発言できる場を設けるなど、意思決定のプロセスを透明化する仕組みを作る必要があります。

混乱・衝突への対応

違いを受け入れられない従業員が現れ、組織内に混乱や衝突が起きるという事態は珍しくありません。マネジメント層は、的確かつ迅速に対応できるよう、事前に対策を講じておく必要があります。また、無意識に暗黙的な排斥が起きていることもあります。一人ひとりの違いを尊重しながら、共通のゴールに向かってベクトルを合わせていくアプローチが必要です。

評価項目の設定

評価制度と従業員のモチベーションは連動します。例えば、ダイバーシティ&インクルージョンに関する事項を評価項目に設定するという方法は有効です。「コンピテンシー(※)」として項目を設定し、評価制度に反映する方法を採用している企業もあります。

※コンピテンシー……仕事などで実際に成果を収めている人物に見られる行動や考え方の特性。ここでは、多様性を受け入れるような考え方・行動を、評価項目として定めているということ。

キャリアパスの明確化

全ての社員が活躍できる環境作りを前提に、キャリアパスを示していくことも重要です。そのためには、多様な人材のスキルアップを支援する仕組みが必要です。例えば資格取得の支援、場所にとらわれずに学習できるeラーニングの導入、学びを促進するための休暇制度など。それぞれの従業員が自発的に学べる仕組みを作ります。キャリアプランの選択肢を広げていくことも、マネジメント層に求められる要件といえるでしょう。

4.ダイバーシティ&インクルージョンに関する法律・制度

多様な人材が活躍するダイバーシティ&インクルージョンの実現は、労働人口が減少している日本経済の成長を促す上でも必要不可欠な取り組みといえます。そのため、政府はダイバーシティ&インクルージョンを推進する施策となる、さまざまな法令や制度を整えてきました。

くるみん

くるみん」は、子育て支援に取り組んでいる企業の証として、厚生労働大臣が認定する制度です。出産・育児を理由に退職する女性が多いことを受け、企業において女性労働者が仕事と子育てを両立しやすい環境を整える重要性が高まったことから導入されました。

くるみんは、次世代育成支援対策推進法に基づき、一定の要件を満たすことができれば、規模や業種にかかわらず申請することが可能です。くるみんの認定を受けている企業は年々増加しており、2018年3月時点では2878社にのぼりました。さらに、くるみんの認定企業の中でより高い水準の取り組みを行っている企業は「プラチナくるみん」の認定を受けることができます。

くるみん認定企業は、自社のパンフレットや広告物にくるみんマークを掲出することが可能。企業のイメージアップや、人材の獲得につながるというメリットもあります。

女性活躍推進法

妊娠・出産を機に一旦離職した女性が、その後、働きたい意思はあるのに再就職できない、または正規雇用をしてもらえない、というケースが多くなっています。「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、働きたいと願う女性が自由に活躍できる社会を実現するために制定された法律です。基本原則として、以下の内容が提示されています。

  • 女性の採用、昇進などの機会を積極的に提供および活用し、さらに職場の慣行への配慮をすること
  • 仕事と家庭の継続的な両立に必要な環境を整備すること
  • 仕事と家庭の両立に際し、本人の意思が尊重されること

女性活躍推進法の施行にともない、300人を超える企業は女性の働き方に関する現状を把握し、行動計画を策定することが義務づけられています。また、300人以下の企業においても、努力義務となっています。

障害者雇用促進法

「障害者雇用促進法」は正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」といい、障がい者の安定雇用を促すための法律です。障がいがない人と同様に、能力や適性に応じた雇用機会を創出することで、誰もが自立して生活できる社会を目指すことを目的としています。

事業主は一定以上の割合で障がい者を雇用する義務があります。2018年4月に法定雇用率が改正され、民間企業では2.0%から2.2%に引き上げられました。また、障がい者を雇用する企業は、設備投資などの負担を軽減する「障害者雇用納付金制度」を利用することができます。

高齢者雇用安定法

これまで多くの企業は、年金受給開始年齢となる60歳を目途に定年を決めていました。しかし、年金受給開始年齢が引き上げられたことを受け、高齢者雇用安定法の一部が改正され、企業は高齢者の雇用を確保する措置が求められるようになりました。

高齢者雇用安定法の改正の目的は、65歳まで安定的な雇用を確保することです。そのため定年を60歳に定めている企業は以下のいずれかの措置が必要になります。

  • 定年年齢の引き上げ
  • 継続雇用制度の導入
  • 定年制度の廃止

これらの高齢者継続雇用を行う企業は、「65歳超雇用推進助成金」を受けることができます。また、65歳以上の高齢者を雇い入れた場合には「特定求職者雇用開発助成金」を受けることも可能です。

外国人の雇用

外国人を雇用する際は、在留資格を確認し、ハローワークに雇用状況を届け出ることが義務づけられています。届け出を出さなかった場合や虚偽の届け出をした場合は、30万円以下の罰金が科されることもあるため、注意が必要です。

外国人を雇用したときに受けられる助成金には、中小企業を対象とした「中小企業緊急雇用安定助成金」と、大企業が対象となる「雇用調整助成金」があります。いずれも、教育訓練経費の補助を受けられるため、外国人労働者のスキルアップをはかりながら雇用を促進することができます。

5.ダイバーシティ&インクルージョンの見通し・課題

ダイバーシティ&インクルージョンを妨げる要因

多様性を受け入れる意識が希薄

ダイバーシティ&インクルージョンを妨げる要因として、多様性を受け入れる意識が希薄な企業文化が挙げられます。

従来の日本の雇用システムは、個別性を前提とする考えや仕組みを持ってきませんでした。労働力の主となるのは男性の正規雇用社員であり、女性は男性と分業することが当たり前の社会が形成されてきたことも影響しています。そのため、ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が認識されるようになった現在でも、仕組みを整えるための基盤作りに苦慮する企業が多くなっています。

また、ダイバーシティ&インクルージョンを「女性の活躍」と同義に認識している企業も存在し、成長戦略としての優先順位が下がっていることも、推進を妨げる要因の一つです。

アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の影響

アンコンシャスバイアスとは、「無意識の偏見」と訳され、無自覚に固定観念や先入観が入り込んでいる状態をいいます。本人の意識を超えた奥深くに潜んでいる物事に対する見方であり、これまでの経験や情報から形成されます。

ダイバーシティの先進である米国で、多様化を阻害する要因として取り上げられたことがきっかけとなり注目されました。米国で行われた調査によると、ダイバーシティの取り組みが十分に推進されている、あるいは従業員の意識レベルが高い企業でも、採用やポストにおいて偏りがあることがわかりました。分析した結果、アンコンシャスバイアスが組織に悪影響を及ぼしていることが示されました。

例を挙げると、「女性は管理職に向いていない」「シニアは柔軟性がない」「短時間勤務者は家庭を優先する」といった思い込みです。「男女は平等」「家庭の事情と仕事意欲は関係ない」とわかっているつもりでも、無意識に選別している状態です。

アンコンシャスバイアスは誰もが持っているものです。しかし、これが悪い方向に働くと、さまざまな意思決定にバイアスがかかり、不公平感を生みます。また、無自覚に差別的な表現をしてしまうと、人間関係が悪化する要因になります。ダイバーシティ&インクルージョンを推進するには、排除すべき思い込みや先入観に気づかせ、改善していくことが重要になります。

ダイバーシティ&インクルージョンをいかに推進していくのか

ダイバーシティ&インクルージョンは米国で生まれた考え方で、現在では先進国で広く採用されています。しかし、日本を見てみると、言葉自体の認知はされているものの、本格的に取り組んでいる企業はまだ少ないのが実情です。

日本の人事部 人事白書2017』によると、「ダイバーシティを推進する上での問題や困難」に対する回答でもっとも多かったのは、「管理職の意識や能力の不足」(45.0%)でした。次いで「従来の一律的な価値観が重視される風土」(30.0%)、「個人の意識や能力の不足」(27.4%)、「柔軟な働き方が困難な状況」(26.5%)、「経営層の意識や能力の不足」(24.4%)と続きます。この結果から、マネジメント層の意識や従来の価値観など、これまで組織に根づいてきた風土の改革を困難に感じている人が多いことがわかります。

少子高齢化や採用難、グローバル化における競争力強化など、日本の企業は多くの課題に直面しています。これらの課題を解決するためにも、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む真の意味と享受できるメリットについて正しく理解したうえで、成長戦略の中核に据えていくことが求められそうです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

50音・英数字で用語を探す

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


これまでのやり方では、VUCAの時代を乗り切れない!<br />
いま日本企業に必要な人事マネジメントとは

これまでのやり方では、VUCAの時代を乗り切れない!
いま日本企業に必要な人事マネジメントとは

VUCAの時代となり、あらゆる意味でこれまでの企業経営が見直されていま...


企業が社員の「睡眠改善」に取り組む時代<br />
働くひとのための「眠り方改革」とは
new

企業が社員の「睡眠改善」に取り組む時代
働くひとのための「眠り方改革」とは

睡眠改善への取り組みが今、注目を集めています。健康への影響にとどまらず...