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キーパーソンが語る“人と組織”

真の「女性活躍推進」を実現するため、企業が克服すべき課題とは(前編)
できる女性ほど辞めていく!? 先進企業が陥りやすい女性活用の落とし穴

女性活用ジャーナリスト/研究者

中野 円佳さん

中野円佳さん 女性活用ジャーナリスト/研究者 Photo

昨今、「女性活用」「女性活躍推進」といった言葉を聞かない日はありません。8月末には女性活躍推進法が成立。女性登用をめぐる各企業の取り組みが加速するのは必至でしょう。しかし一方では、以前と比べて制度面の支援が整ってきたにもかかわらず、総合職に就いた女性の多くが、出産後に会社を辞めていくという皮肉な現実があります。女性活用ジャーナリストの中野円佳さんは、著書『「育休世代」のジレンマ――女性活用はなぜ失敗するのか?』の中で、育休などの制度がある程度整った2000年以降に就職した女性たちを「育休世代」と定義。なかでも男性と競争して勝ち上がってきた“バリキャリ”と言われる女性たちが直面する予想外の窮状に、鋭いメスを向けています。彼女たちの抱えるジレンマは決して一部の優等生のぜいたくな悩みではありません。むしろそれを解決できなければ「2020年までに女性リーダー比率を30%に」という数値目標も、絵に描いた餅になってしまうのではないでしょうか。前編では、中野さんご自身の経験を交えながら、改めて「育休世代」のジレンマとは何かを語っていただきました。

Profile

なかの・まどか●1984年生まれ。2007年東京大学教育学部卒、日本経済新聞社入社。金融機関を中心とする大企業の財務や経営、厚生労働政策などを担当。14年、育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科に提出した修士論文を『「育休世代」のジレンマ』(光文社)として出版。育休復帰後に働き方、女性活躍推進、ダイバーシティなどの取材を経て、15年4月より企業変革パートナーの株式会社チェンジウェーブに参画。東京大学大学院教育学研究科博士課程在籍。

会社を変えたい――ワーママ記者が下した決断とは

 中野さんが『「育休世代」のジレンマ』を出版されて、1年が経ちました。その間、先日の新法成立を始め、女性活躍推進をめぐる社会や企業の動きには新たな展開が相次ぎましたが、中野さんご自身にも、大きな変化がありましたね。

はい。今年の3月末で8年間務めた新聞社を辞め、転職しました。現在はチェンジウェーブという会社で働きながら、ジャーナリスト・研究者としても活動しています。『「育休世代」のジレンマ』は、育児休職中の2012~13年に書いた修士論文を書籍化したもので、昨年9月に発表して以来、さまざまな反響がありました。取材や講演のご依頼もいただく中で、私個人としては、本の内容に職場復帰してからの実感や取材成果も加えたものを新たに発信したいと思うようになっていたのですが、新聞記者の立場でそうした依頼を受けることが、社内的に難しかったのはたしかです。

もちろん転職にいたった理由は、それだけではありません。本を書いた後も、働き方の問題や女性活躍推進を含めたダイバーシティ関係の取材を続けていて、先進企業の取り組みや各社のロールモデルと目される女性社員の活躍ストーリーを聞く機会が多くありました。しかし、そんなキラキラした話とは裏腹に、会社の実態は簡単に変わることがなく、私には、一部の企業がすでに一種の“ダイバーシティ疲れ”を起こしているように思えてなりませんでした。そしてそれは、取材する側の私自身にも起こっていたのです。有り体に言えば、広報担当が同席する中で語られる、「うちはこんなに頑張っています!」といった“いい話”に飽きていたんですね。もともと各企業の人事担当者とのパイプはあったので、彼らの本音が聞きたい、実際に変えるところまで関わりたいと思ったのですが、記者としての立場では限界がありました。そんな時に、現在の勤務先であるチェンジウェーブから参加の誘いを受けたのです。

 チェンジウェーブは、数多くの企業の経営変革プロジェクトやリーダー育成のサポートを行っているそうですね。

ここ1、2年は、女性リーダーをどう育成するか、そもそも女性活用の目標をどうやって立てるか、といったダイバーシティ関連の引き合いが急増していました。私も多くの当事者から著書について「共感した」と言ってもらってはいたけれど、それを読めば実際に企業の現場が変わるかというと、決してそうではない。具体策にも踏み込めていませんし、物事をリアルに変えていくためには、問題提起や理想論だけではダメなんだという思いが強まっていました。だからこそ、チェンジウェーブで企業変革の実践に携わりながら、執筆活動などの発信も個人として納得いくまで追究しようと決めたのです。

中野円佳さん Photo

 キャリアチェンジの決断は、周囲にどう受け止められましたか。

ある連載コラムで、新聞社を辞めたと書いたら、それまで共感を寄せてくれていたワーキングマザーたちに結構叩かれたんですよ。「辞めたの!? がっかり」などと(笑)。本では、女性たちに向けて「(辞めずに)入ってしまった会社を変えていくことも重要」と書いたので、結果的に言行不一致に見えてしまい、逃げたとか降りたとか、一部では批判されています。しかし、私としては逃げたつもりも、降りたつもりも全くありません。他にもいろいろな要因が絡んではいますが、とにかく「実際に企業を変えたい」という思いが一番。そのための転職だということで、自分の中では説明がついていたからです。とはいえ、全く新しい業界で、いまは一からビジネススキルを鍛え直す毎日。ワークライフバランスは、新聞記者時代よりむしろ悪化しているかもしれませんね。


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