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HRペディア 最終更新日:2021/09/01

【ヨミ】キャリアカイハツ キャリア開発

変化のスピードが激しく将来予測が難しい経営環境下にあって、継続的に高い成果を生み出すために、従業員の適材適所を行い、能力・スキルを向上させていく施策・制度のことを「キャリア開発」といいます。近年、企業においてキャリア開発に関する取り組みが活発化しています。

1. キャリア開発とは

キャリア開発とは

キャリア開発の意味

キャリア開発の意味を「キャリア」と「開発」に分けて考えてみましょう。キャリアは「社会人が働く中で知見、知識を吸収し、経験として積み上げていくもの」を指します。岩波国語辞典第八版によれば、キャリアは「経歴」「運ぶもの」という意味を持ち、キャリア開発の文脈では経歴という意味が当てはまります。また、経歴の中でも特に「積み重ねた実地での経験」という意味になります。英語ではcareerと表現します。

続いて、開発です。岩波国語辞典第八版によれば、開発も三つの意味に分けられます。

  1. 天然資源などを見出して、人間生活に役立たせること。「電源―」
  2. (まだ存在しない)技術や製品を新しく作り出すこと。「新製品の―」「研究―」
  3. 人の潜在能力を引き出すこと。「想像力を―する」
引用:岩波国語辞典第八版

キャリア開発の文脈で考えるのなら「3」の用法が当てはまるでしょう。潜在的な能力を引き出すことはキャリアと深い関わりがあります。

以上から、キャリア開発とは「従業員の潜在能力を引き出し、経験を積み上げられるような人材配置・教育・研修などを行っていくこと」と定義できます。

引用:岩波書店(2019)「岩波国語辞典第八版」

高まるキャリア開発の必要性

近年、日本では一人ひとりの自律的な「キャリア開発」が注目を集めていますが、以前はそうではありませんでした。かつて大企業を中心とする日本企業の多くは、高度成長期に根付いた終身雇用・年功序列を前提とし、従業員のキャリアを年齢や入社年次によって一律にマネジメントしていたからです。人事異動により企業(グループ)内を異動させ、さまざまな仕事・職場を経験させることが、従業員のキャリア開発でした。従業員にとって、キャリアとは社内の中でより上位のポストに就くことであり、意識して開発していく必要はなかったのです。

しかし、バブル経済崩壊後の1990年代半ば以降、経営環境や雇用関係が大きく変化したことで、企業におけるキャリアの意味も大きく変化します。業績の悪化に伴い、多くの企業でリストラが行われ、組織がスリム化(フラット化)。終身雇用の維持が難しくなると同時に、年功序列に代わって成果主義的な人事制度が導入されました。そのため、従業員一人ひとりに、高い専門性とアウトプットが求められるようになり、企業におけるキャリア開発のあり方も、多様な能力・スキルや経験を持つ人材の育成(キャリア自律支援)へと変化していきました。

まさにパラダイムシフトともいえる変化は、従業員の就労観にも大きな影響を与えました。雇用形態や働くことへの意識が多様化し、「能力を発揮できる機会があれば昇進には執着しない」「管理職よりもスタッフとして専門知識を生かすポストに就きたい」といったように、企業内での昇進を求めない従業員が増えていったのです。自分のキャリアを企業に任せきりにするのではなく、社会人生活の早い段階から自分自身で開発していこうとする人が増えたことで、キャリア開発が大きく注目されるようになりました。

「自律型人材」育成の必要性

このような状況を受け、従業員には企業が用意するキャリア形成施策をただ受け入れるのではなく、自らの価値観やエンプロイアビリティを高めようとする強い意志を持って、自分らしいキャリアを描いていくことが求められるようになりました。

また企業側には、従業員一人ひとりが「潜在的な能力を発揮できるようにする」「自らの価値観・キャリア観で仕事を選択できるようにする」「社内価値だけでなく、社外価値も高まるような職業人生を歩ませる」といった、自律型人材の育成を推し進めていくことが求められるようになりました。従業員が仕事を通じて実現したいことを見出し、将来の姿を描くことができれば、日々の仕事にも自律的に取り組むようになり、成長していきます。そしてそれは、組織の活性化や生産性向上にもつながるのです。

2. 企業におけるキャリア開発の制度

企業におけるキャリア開発の制度

キャリア開発支援の制度作りや効果的な運用においては、「入社-育成・配置・評価・異動の年次サイクル-退社」といった一連の「人材開発サイクル」に沿って個人のキャリア形成が促進されるよう、キャリア開発の種類・制度・手法を考えていく必要があります。

キャリア開発(キャリアデザイン)研修

キャリア開発(キャリアデザイン)研修の例
階層別(目的別)のキャリア開発研修
社内の各層に対して、若手離職防止、女性活躍推進、中高年の活力向上、役職定年・出向者支援、再雇用者支援、業績不振者支援などを目的に実施
年代別(20~50代)節目のキャリア開発研修
自律意識、貢献目標と専門性開発、将来ビジョンなどを設定し、キャリア開発を実施

階層別や年代ごとに受講者の特性や各自のキャリアプランに応じたプログラムを組み、キャリア開発研修(支援施策)を行う企業が増えています。そのため、カギを握る管理者のキャリア開発支援力の向上を目的に、部下育成開発支援研修、キャリア面談研修などもあわせて行うケースが見られます。

激動の時代を生き抜くために必要な「キャリア自律」
従業員の自律的行動を促すキャリア開発研修の種類と導入のポイントを整理しました。おすすめの研修も、あわせてご紹介します。

『日本の人事部』おすすめのキャリア開発研修

異動・配置関連制度

次が、異動や配置に関連した制度・施策です。従業員のキャリア開発を長期育成の視点から、計画的な職務経験と教育訓練を組み合わせながら開発するCDP(Career Development Program)の考え方の下、実施されます。具体的には、以下のような制度・施策があります。

異動・配置関連制度の例
社内公募制度
会社が求めるポストや職種の要件を従業員に公開し、応募者の中から必要な人材を登用
社内FA制度
従業員が自らの能力・スキル、経験を売り込み、希望する職種・職務、ポジションを登録

これまで人事権を持っていたのは会社側ですが、社内公募制度や社内FA制度を導入することによって、従業員側が職場や仕事内容を選択できる環境が生まれ、キャリア開発を支援する上で、非常に有効な制度となっています。

自己申告制度

従業員に対して、職務や職場の希望を申告させる制度。本人の適性の見極めや異動を決めるための基礎データが収集できると同時に、従業員側のモチベーションアップ、キャリア開発に向けて意欲向上を図ることができます。

ジョブローテーション

人材育成計画に基づいて定期的に職務・職場の変更を行う異動のこと。多様な環境下で業務経験を積むことによって、従業員の適性や能力が見極められ、適材適所を図ると同時に、従業員のキャリアパス形成に寄与します。なお、従業員を適材適所に配置・登用し、育成していくために、客観的な人材評価を行うことをアセスメントといいます。さまざまなアセスメントツールが開発されている近年、アセスメントの結果を活用してジョブローテーションを行うケースが増えています。

能力開発関連制度

能力開発に関連するものとしては、以下のような制度・施策があります。

能力開発関連制度の例
キャリアパス
キャリアパスとは、どのような職種に、どのような立場で就くのか、また、そこに到達するためには、どのような経験を積み、どのような能力・スキルを身に付ける必要があるのかといった道筋・体系を提示するもの。キャリアパスが提示されていれば、従業員は将来の目標に向けて、意欲的に取り組むことができます。
キャリアプラン
キャリアプランとは、自分自身のキャリアにおいて将来、どのようになりたいのかという目標を持ち、そのための計画を立てること。上司とのキャリア面談を通して、従業員のキャリアプランを一人ひとり個別に作成することが、キャリア開発に向けての大きな手助けとなります。
期待役割基準
次のステップに向かうために、仕事やポストに期待される役割基準を明確にしておくことも、キャリア開発においては有効な施策です。
副業・兼業
会社以外での活動・経験、異業種人材交流などを通して、自己成長やスキルアップ、キャリア開発につながることを期待して、従業員の副業・兼業を推進する企業が増えています。社員の持つ多様な可能性を生かすという意味でも、その効果を期待する企業は多いようです。

ビジネスパーソンの副業というと、かつては副収入を得るためのアルバイトというイメージでしたが、最近はそうしたケースは少なく、アフィリエイトやネットショップ、FX(外国為替証拠金取引)など、成果報酬型の副業の割合が多くなっています。

また「オープンイノベーション」や、本業以外で地域貢献活動などを行う「パラレルキャリア」も推進されており、先進的な企業ではキャリア開発の観点から副業・兼業に対する認識が大きく変化しています。

キャリア面談・キャリア相談・キャリアドック

キャリア開発支援における面談・相談については、上司が行うキャリア面談、キャリアコンサルタントによるキャリア相談やキャリアドックがあります。これらもキャリア開発を進めていく上で、重要な施策です。

キャリア面談・相談の例
キャリア面談
上司と部下の間でキャリアに関する話し合いの機会を持つことは、部下が自身の仕事を振り返り、将来について改めて考えるようになるため、自覚を促す意味でも大変重要です。部下の目標達成やキャリア開発をサポートする最も身近な協力者は、職場の上司にほかなりません。部下の動機付けや仕事に対する意味付けを強化していくことは、上司の重要な役割です。その際、上司が心掛けなくてはならないのは、部下の話を共感的な態度で傾聴するコーチングの姿勢です。
キャリア相談
キャリア相談は、キャリアの専門家(キャリアコンサルタント)が個別相談という形式で、従業員の継続的なキャリア形成をサポートする仕組みです。近年大企業での導入も進んでいますが、その背景にはキャリアの多様化があります。現在、多様なキャリアパスが生まれ、さらに個人の価値観も多様となっています。個別のキャリア支援が求められている中、今後、キャリア相談は欠かせない施策となるでしょう。
キャリアドック
キャリアドックとは、従業員に対してキャリアコンサルティングを定期的に受ける機会を提供する仕組みのことです。国の再興戦略を後押しする制度として「セルフ・キャリアドック」と称し、2016年度から助成金などの仕組みを通して推進されています。このように、定期的に従業員のキャリアの面談・相談を実施することは、従業員のキャリアの実態把握につながります。個人が特定されない形で傾向を分析し、アンケートでは浮き彫りにできない理由や背景をくみ取ることができます。

3. 個人におけるキャリア開発の取り組み
〜プロティアン・キャリア〜

キャリア開発では、企業が個人のキャリア開発に関する取り組みを支援する形をとります。ここでは、個人がキャリア開発をしていくために役立つフレームワークを紹介します。

今回紹介するのは、「プロティアン・キャリア」という考え方です。これまでの伝統的なキャリア観とは異なり、キャリアの所有者を個人に置いているのが特徴となります。アメリカの心理学者であるダグラス・ホールによって提唱され、日本では、法政大学教授の田中研之輔氏が考え方を紹介しています。

タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ
『日本の人事部』では、田中研之輔氏による「タナケン教授の『プロティアン・キャリア』ゼミ」を特集しています。より詳細な内容を知りたい場合には、特集を参考にしてください。

タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ

従来のキャリア観=キャリアは会社に委ねるもの

プロティアン・キャリアを見ていく前に、従来のキャリア観について確認していきましょう。従来のキャリア観は高度経済成長期ごろの働き方にフィットしたもので、一度会社に入ると、定年まで転職をせずに働き続けることを前提としています。この場合、キャリアの所有者は会社です。社内異動でキャリアが変わることになるため、会社が従業員のキャリアをどのように設計していくのかが大切でした。

また従来のキャリア観では、昇進が価値あるものと見なされてきました。役職が上がるにつれキャリアの成長を実感します。同時にキャリアが成長すると、地位や給料の上昇につながります。

伝統的なキャリア観における従業員のアイデンティティーは、組織が起点のものになります。組織内で評価され、他の従業員から尊敬されながら、自分のアイデンティティーを確立していきました。また、組織の中での自分の立場を考え、何をすべきかを考えていくことも重要とされてきました。

プロティアン・キャリアにおけるキャリアの主導権は
「個人」にある

一方のプロティアン・キャリアは、キャリアの主導権が「個人」にあるのが特徴です。年功序列が過去のものとなり、いつまで同じ会社で働くのか不透明な時代には、キャリアを自分自身で切り開いていく必要があるのです。

前述の田中氏は、キャリアを自分のものにしていくにあたり、キャリアの自律をする必要があると説いています。田中氏はキャリアの自律を次のように定義しました。

「キャリア自律」とは、ビジネスパーソンである個々人が、自分自身の働き方やこれからの生き方について向き合い、自ら主体的に行動していくこと

引用:タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ
【第2回】そもそも「キャリア自律」は必要なのか? - 『日本の人事部』

会社に属しながらも自分自身の働き方は自分で決めていくことになります。場合によっては、副業・兼業を行う、もしくは会社を離れるという選択肢もあるかもしれません。個人の自由や成長を重視し、会社の役職・権力や昇進に執着せず、組織内の評価よりも市場価値を大切にすることが特徴です。

プロティアン・キャリアの6タイプ〜キャリアの経路で分類〜

田中氏は個人が歩むキャリアを六つのタイプに分けて説明しています。

プロティアン・キャリアモデル キャリアの経路
(1)トランスファー型
 プロティアン・キャリア
企業で働きながらビジネス資本を形成し、あるタイミングで転職し、これまで形成してきたビジネス資本をさらに蓄積しながら、新たな職場で社会関係資本を増やすキャリア
(2)ハイブリッド型
 プロティアン・キャリア
企業で働きながら複数のビジネス資本を蓄積し、異なるビジネス資本との掛け算で、その人にしかなし得ないユニークな市場価値をつくっていくキャリア
(3)プロフェッショナル型
 プロティアン・キャリア
一つの専門性を深めてビジネス資本を形成。その専門性に関する新たな知見や動向をキャッチアップしながら、さらに専門性を深化させるキャリア
(4)イントラプレナー型
 プロティアン・キャリア
社内資源を利用しながらビジネス資本を更新し、社内の機会を開き、外部との交流を重ねながら社会関係資本を増やすキャリア
(5)セルフエンプロイ型
 プロティアン・キャリア
ある組織で形成したビジネス資本、社会関係資本、経済資本を元手に独立し、自分が得意な領域を形成するキャリア
(6)コネクター型
 プロティアン・キャリア
社会関係資本の形成を大切にしながら、人と人をつないでビジネスを生み出したり、人が集まるコミュニティをつくったりするキャリア

(出典:田中研之輔 『プロティアン』 p.162)

キャリアの主軸を自分自身に据えることは、今の会社をおろそかにすることではありません。イントラプレナー型であれば、社内資源を利用し、ハイブリッド型の場合は複数の会社で働くことも想定されます。キャリアの主導権を自分自身が握りながらも、会社の資源は有効に利用していく姿勢が大切になるといえます。

社内研修も個人のキャリアを開発できるようなものに
アップデートする必要がある

人事担当者が従業員のプロティアン・キャリアを支援するためにできることは、研修を充実させることです。現状では、若手や中堅向けには研修が充実していますが、ベテラン向けの研修は少ないようです。「人事白書2020」によれば、従業員1000人未満の企業において「30歳・40歳など節目となる年齢を迎えた従業員の研修を行っている」のは2割未満と、特に中小企業において制度が敷かれていない傾向にあります。このような状況が続くと、ベテラン・シニア世代が自身で主体的にキャリアを選択することが難しくなってしまいます。

また、社内研修とあわせて、個人でキャリア開発のできる環境を提供していく必要もあります。田中氏は、個人がキャリア開発をするときにとるべきアクションを「ビジトレ5原則」にまとめています。この原則を知っていると、従業員自身がキャリアを主体的に考えるきっかけにもなるでしょう。

ビジトレ5原則

【1】現状を把握する<現状把握の原則>
【2】目的を設定する<目標設定の原則>
【3】適度の負荷を与える<適正負荷の原則>
【4】徐々に強度を高める<漸進負荷の原則>
【5】日常的に継続する<継続行動の原則>

引用:タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ【第5回】
経験を積んだミドル・シニアは、どのようにして新しいことへチャレンジすればいいの?|日本の人事部

ビジトレ(ビジネス×トレーニング)では、ライフの中にワークがあると捉え、ワークとライフを切り離すことはしません。また、一人ひとりが現状抱えている問題は異なり、その解決策や目標も異なります。継続的にキャリアについて考え、目標に向かって進むことで、新しい時代に対応できるビジネスパーソンを目指すのです。

4. キャリア開発の理論

キャリア開発の理論

企業がキャリア開発を進めていく中で、重要なカギを握る理論・考え方として、「キャリアドリフト」「プランド・ハップンスタンス(計画された偶発性)理論」「キャリアデザイン」などを挙げることができます。以下、そのポイントを解説します。

キャリアドリフト

キャリアドリフトは、神戸大学大学院名誉教授の金井壽宏氏が提唱するキャリア理論の一つで、ドリフト(drift)とは漂流するという意味です。金井氏は、働く人は自分のキャリアについて「大きな方向付け」ができていれば、人生の節目ごとに次のステップをしっかりとデザインするだけで構わない、としています。

むしろ、節目と節目の間は、偶然の出会いや予期せぬ出来事をチャンスとして受け止めるために、あえて状況に流されるまま(ドリフト)でいることが必要だとも述べています。このような考え方は、アメリカの心理学者クランボルツの「プランド・ハプンスタンス(計画された偶発性)理論」とも相通じるところがあります。

プランド・ハップンスタンス(計画された偶発性)理論

スタンフォード大学のクランボルツによって提唱された新しいキャリア理論です。日本語に訳すと、「計画された偶発性理論」となります。計画と偶然という、相反する言葉によって表現されるこの理論は、「職業生活とは、実は偶然の出来事や出会いなどによって決まっていくことが多い」「しかしその偶然は、本人が意識せずに行ったことによって生じている」という考え方に立ちます。

一般的なキャリアデザインの考え方とは、全く異なる方向性を持つキャリア理論といえます。プランド・ハップンスタンス理論では、好奇心、粘り強さ、柔軟性、楽観性、リスクテイクの五つのスキルを発揮することによって、自分では意識しない偶然のタネをまくことができ、それが後のその人のキャリアに良い影響を与えてくれるとしています。

キャリアデザイン

キャリアデザインはキャリア計画とも呼ばれ、設定したゴールを達成するために、現状とのギャップをいかに埋めるか、その道筋(自己分析→価値観・能力・スキルの棚卸→ビジョン設定→アクションプランの立案)を描くことです。そのためには、まず個人の価値観や能力・スキルの棚卸が必要となります。

具体的には、「ゴールに到達するにはいかなる能力項目が必要で、それぞれどのレベルにならなければいけないのか」→「現在の自分のそれらの能力はどの程度で、ギャップを埋めるには、どのような学習や経験が必要なのか」→「それらを伸ばすのに最も適した職務(職業)はどういったもので、それらを得るのに最も可能性の高い部門(会社)がどこにあるのか」→「それらの職務をどのような順序で経験を積むことが最も望ましいのか、そして各職種で何年程度、経験を積むべきか」といったステップを踏み、検討を進めていきます。

5. キャリア開発の課題

キャリア開発の課題

キャリアカウンセリングやキャリア面談などを通じて、従業員の経験したい職務が明らかとなり、自己申告制度を通じて異動希望を会社に提出したとしても、会社には要員計画の下に人材配置の都合があるため、実際に希望する職務には就けないことがあります。このような場合、従業員が会社の用意したキャリア開発施策を受け入れることができず、退職に至るケースもあるかもしれません。そのため、キャリア開発施策の実施にあたっては、その結果をできる限り、実際の人事異動に反映させる努力が求められます。それと同時に、従業員に対しては、希望に添えない場合もあることを、しっかりと認識させていくことが必要です。このように、キャリア開発を進めていくにあたっては、従業員と会社の双方にさまざまな課題が存在します。

課題1. 効果測定の困難さ

学校教育を例に出すまでもなく、教育を行うことによって何らかの効果があることは、周知の事実です。しかし、ビジネスにおける教育となると、やや様相が異なります。企業における教育は、その目標が経営の置かれた環境で大きく変わることがあるからです。成果が認められるまでには、時間軸の問題もあります。そのため、人材開発と同様、キャリア開発においても「費用対効果」を測るのは難しいと、最初から諦めている人材教育担当者は少なくありません。

経営とは投資ですが、それは人についても同様。そのため、キャリア開発で何を目指すのか、その目標は何なのかを明確にしなければなりません。例えば、社内公募制度や自己申告希望者の割合の増加など、キャリア開発支援施策を実施することによって、何を目標とするのか(達成したいのか)を決めること。また、知識やスキルの向上が目標なら、それらを数値化(見える化)する仕組みを考えることが重要です。キャリア開発で目指すことがわかれば、後はそれを測る指標や基準を持ち、定点観測していけばいいのです。キャリア開発に関わる関係者はこの点を、決して忘れてはいけません。

課題2. キャリア・プラトーによる個人への悪影響

キャリア・プラトーとは、組織内で昇進や昇格の可能性に行き詰まり、モチベーションの低下や能力開発機会の喪失に陥っている状態をいいます。「プラトー(Plateau)」は高原・台地の意味で、キャリア発達が高原状態に達してしまい、伸びしろのない停滞期にあることを表現しています。これでは、キャリア開発を進めていくのが難しいでしょう。問題は、このような事態が今、多くの企業で見られることです。

青山学院大学経営学部・山本寛教授は、このようなキャリアの停滞には、大きく二つの側面があるといいます。一つは、階層プラトー現象で、昇進(タテのキャリア)の停滞。組織における将来的な「昇進可能性」が低下することです。もう一つは、内容プラトー現象で、仕事(ヨコのキャリア)の停滞です。長期間、同一職務を担当することにより、仕事で新たな挑戦や学ぶべきことが欠けた状態となり、職務に対する挑戦性が停滞すること。いわゆる「マンネリ化」です。

ここで問題となるのは、停滞がその人に悪影響を与えることです。昇進と仕事の停滞が重なると、モチベーションや業績などに、大きなマイナスの影響が出ます。現実的な対応として、昇進の停滞への対処には困難な点が伴いますが、仕事の停滞に関しては会社として比較的対処しやすいと思われます。その点からも、「社内公募制」「組織横断的な場での能力活用」など、まずは仕事の停滞の防止・脱却に取り組む対策が大切です。

課題3. キャリアクライシスの乗り越え

キャリアクライシスとは、ビジネスパーソンがこれまで培ってきたキャリアを失いかねない危機、またはそうした危機に直面することをいいます。長い人生では、年齢によって誰もがキャリアクライシスに陥りやすくなる時期があります。特にAIの発達が目覚ましくなる今後、キャリアクライシスに直面する機会はさらに増えていくと予測されます。

現実問題として、AIによって取って替わられる仕事は確実に増えていきますが、一方で人にしかできないことがあるのもまた事実。例えば、判断すること、責任を取ること、当事者意識を持つこと、誠意を示すこと、粘り強く最後まで絶対に諦めないこと、人的ネットワークを広げることなど、人にしかない「意思」を持って行う行為です。これらはAIに不向き(苦手)なものです。

だからこそ、キャリアクライシスを乗り越えていくには、「自分ならではの価値を知り」「自分ならではの価値を上げること」に注力するべきでしょう。それが結果として、真のビジネスパーソンとして成長し、自己のキャリアを確立することにつながっていくと考えられるからです。そのためにも、企業には各人の価値発見・創造に向けた取り組みや機会を意識して用意することが求められます。

課題4. キャリア権への注目

キャリア権とは、人は誰でも自ら望む職業キャリアを主体的に開発・形成する権利を持ち、社会や企業は個人のキャリア形成を保障・支援すべきである、という法概念のこと。企業が有する人事権に対して、このような労働者の権利をキャリア権と呼びます。

キャリア権の議論は、職業経験による能力の蓄積やキャリアを、個人の財産として法的に位置付けようとする試みで、2002年に当時、法政大学教授だった諏訪康雄氏が座長を務めた「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」が、報告書の中で提示したものです。そこでは企業1社による雇用保障を超えて、キャリア権を法的に保障することの重要性が述べられました。今後、こうした流れを受けて、企業側の個人のキャリア形成に対する配慮義務は高まっていくと予測されています。場合によっては、合理的な理由があるとの判断の下、人事権よりも優遇されるケースが増えてくるかもしれません。

課題5. 働く期間の長さ

「人生100年時代」という言葉がブームとなっています。その発祥は、イギリスのロンドンビジネススクール教授リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット両氏の共著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』に端を発しています。日本でも、安倍(前)政権がグラットン氏をメンバーに入れた「人生100年時代構想会議」を立ち上げ、政権の新たなキーワードである「人づくり革命」について、検証を進めています。

人生100年時代では、80歳まで働くことがイメージされています。定年後にどんなセカンドキャリアを送るのか、誰もが考えなければならない時代になっていくのです。加えて、昨今の技術革新のスピードを考えた場合、今後、ビジネスパーソンが学ぶべき対象も大きく変化すると予測しています。このような時代には、年齢に関係なく学び続けることが重要であり、機会を見つけて本格的に学び直すことが不可欠となってきます。人生100年時代を想定し、「リカレント教育」(生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを勧める教育システム)のあり方が重要な政策課題となっていますが、このようなアプローチは企業のキャリア開発のあり方に対しても有効なものといえるでしょう。

6. キャリア開発の事例

キャリア開発の事例

ここでは、キャリア開発の事例として、NTTコミュニケーションズ株式会社とソニー株式会社の事例を簡単に紹介します。

NTTコミュニケーションズ

NTTコミュニケーションズでは、3年間でベテラン社員のべ1,000名との面談に取り組んだ事例があります。担当課長(当時)である浅井公一さんは、一般的にいわれる「ベテラン社員はモチベーションが低下しがちだ」というイメージが自社にも当てはまるのか、直接50代の社員に聞く必要性を感じていました。当時の副社長の後押しもあり、面談の実施に至りました。

面談を進めていくと、ほとんどのベテラン社員が、モチベーションを高く持って業務に取り組んでいることがわかりました。ただし、モチベーションの高さが業務での成果につながっていない社員や、モチベーションは高いものの、頑張り方がわからない社員もいました。

そこで、面談で目標設定する場面では、従業員それぞれの置かれた状況や能力を見極めてアドバイスを行いました。事前に全ての上長と面談して手に入れた情報と、本人の面談での様子を見ながら、一番楽しめる目標や幸せなことを、ベテラン社員と一緒に探します。その際には、一律で指導的な口調とならないように気をつけていたそうです。ベテラン社員は若手と比べて残された時間が多くありません。そのため、必ずしも会社の目標達成に向けて取り組んでもらおうとする必要はなく、社員の専門性を高めるように促すことに留意していたとのことでした。

浅井さんの面談は、結果的にベテラン社員の行動変容をもたらしました。上長への調査によれば、面談を受けたベテラン社員を持つ上長の8割が、そのベテラン社員の行動変容ぶりを認めたそうです。

ソニー

ソニーでは、創業以来の理念である「自分のキャリアは自分で築く」を具現化するため、ベテラン・シニア社員向けの取り組みを数多く実施しました。新しい分野への挑戦を促し、キャリア形成の支援を行う目的で「キャリア・カンバス・プログラム」と呼ばれるプログラムを作り上げたのです。

まず、新しい分野への挑戦を促す取り組みとして「キャリアプラス」と「Re-Creationファンド」という制度を始めました。キャリアプラスは、業務時間の20〜30%ほどの時間を利用して、別の業務を兼務できるような仕組みです。新しい部署に異動せずとも、挑戦したいことにチャレンジできる環境を整えました。Re-Creationファンドは、お金が原因で学び直しができない社員を後押しする制度で、50歳以上の社員を対象に、自己投資費用を10万円まで会社が補助しました。

キャリア形成を後押しする策としては、50〜53歳、57歳の社員を対象に「ワークショップ型研修」「キャリアメンター制度」「ボトムアップ活動」などを実施しました。研修後にメンターがフォローアップをし、研修が一過性にならないように配慮しています。今後も社員が自分で考える風土や創業以来の理念を大切にしながら、新たな仕組み作りに取り組むそうです。

7. キャリア開発を学ぶための本

キャリア開発を学ぶための本
「企業内キャリアコンサルティング入門」

今後ニーズが増えると予想される、企業内コンサルティングについて解説している本です。理論的な内容と、筆者の20年にわたる経験から得た実践的な解説の両方を備えます。

企業内キャリアコンサルティング入門(著:浅川正健)

「プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術」

職場や社会の変化に応じて変幻自在にキャリアを形成していくための方法が紹介されています。人事担当者はもちろんキャリアに悩む社員にもおすすめできる本です。

プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術(著:田中研之輔)

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東京都 HRビジネス 2021/07/09

 

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