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【ヨミ】ジンジセイド

人事制度

人事制度とは、広義には労務管理を含めた従業員の「処遇」に関するしくみ全般(人事上のさまざまな施策の集合体)を指します。近年では、従業員の処遇を決定する基本的な枠組みである「等級制度」「評価制度」「報酬制度」に絞り込んで、「人事制度」ということが多くなっています。

更新日:2023/08/28

1. 人事制度とは

人事制度とは

「人事制度」が担う領域は、広義には以下のようなものがあります。

「人事制度」が担う領域一覧
募集・採用 雇用契約
労働時間・休日・休暇管理 社内活性化施策
人事異動・人事考課・昇進・昇格
(①等級制度、②評価制度)
賃金・賞与・退職金
(③報酬制度)
教育・能力開発 退職・解雇
出張・転勤・海外駐在 福利厚生

など

今回主に取り上げるのは、数ある人事制度の中でも「処遇」を決めるための根拠となる「①等級制度」「②評価制度」「③報酬制度」です。

① 等級制度

従業員を「能力」「職務」「役割」などによって序列化する、人事制度の骨格ともいえる制度です。人材の序列や責任、権限などもこの制度によって定められた等級が根拠となって決まります。何を基準に等級を定めるかには、企業の人材観が反映され、組織デザインや企業風土にも大きな影響力を持ちます。

代表的な等級制度である「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の概要は、下記のとおりです。

職能資格制度

「職能資格制度」は、年功評価による「職位」に代わり、「仕事をするために必要な能力(職務遂行能力)」を人事管理のベースに置く制度です。職務遂行能力をランク付けして、それに合致した従業員の昇進・昇格、賃金、能力開発などを決定します。ランク付けは、参与、参事、主事、主査などと呼ばれることが多く、ランクに応じて賃金(職能給)が決まります。

職務等級制度

「職務等級制度」は、職務分析の結果を基に「職務記述書」を作成し、記述書に書かれた基準に対する結果を点数化して評価を決定する制度です。職能資格制度は評価基準が全社一律で、昇格基準があいまいですが、職務等級制度は職務ごとに明確で具体的に定義しているため、明快な評価を行うことができます。このような職務評価に従って賃金を決めるのが「職務給」です。「仕事の内容に応じた基準なので、評価しやすい」「職務と給与が合理的に対応する」「年功的賃金の増加を抑制できる」「スペシャリスト育成に効果的である」といったメリットがあります。

役割等級制度

「職能資格制度」や「職務等級制度」が構造的に抱える問題点を背景に、近年導入が進んでいるのが「役割等級制度」です。役割等級制度は、経営戦略などと連動した「仕事の基本的役割」を調査し、「役割価値」を明確にします。それを基に、従業員は自ら目標とする「役割」を決め、さらに個人の「チャレンジ目標」(成果責任)を加えたものを評価基準とします。その評価によって賃金を決めるのが「役割給」です。

等級制度とは
等級制度の主要な制度である「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」について、イメージしやすい図と具体例を用いて解説しています。

等級制度とは|日本の人事部

② 評価制度

一定期間の従業員の行動や成果を評価する仕組みを定めた制度です。何を評価するか(評価項目)、どう評価するか(評価基準)を明示することで、従業員の行動を方向付けます。評価の結果は等級や報酬に反映され、等級が変わることで評価の項目や基準も変化します。

代表的な評価制度である「能力評価」「職務評価」「役割評価」「成果評価」について、概要を紹介します。

能力評価

「能力評価」とは、職能資格制度に基づく人事考課の「能力評価(能力考課)」のこと。職能資格制度による評価は、「能力評価」「情意評価」「成績評価」の三つがありますが、重点が置かれるのは能力評価です。評価対象となる能力(職務遂行能力)は、「職能要件書」「職能資格基準書」として定められています。

職務評価

「職務評価」とは、職務分析によって得られた「職務記述書」をベースに、従業員に課せられている職務(職種・職位)について、内容や責任、作業条件などに応じて相対的な価値を評価するものです。そのため、能力があっても一定の職務に就いていなければ等級や報酬は低くなります。

役割評価

「役割評価」は、従業員一人ひとりに対する「役割」を基に評価を行うものです。何を役割とするかについては、職位(役職)ごとに求められる「成果責任」(会社業績に対する貢献度)とするケースが多いようです。役割評価が台頭してきた背景には、職務評価の問題点に対応していく実務の中で、合理的な仕組みであると判断されるようになってきたことがあります。

成果評価

「成果評価」とは、成果主義に基づく評価の仕組みのこと。従業員一人ひとりに「成果」を上げる責任があり、その成果責任を問う評価を行うものです。成果主義では、どんな評価の仕組みを採用しても、成果責任を問う成果評価は欠かせないという考え方に基づいていますが、この場合の成果は、会社に対する業績貢献度や経営課題への解決貢献度を指します。成果評価のツールには、「目標管理制度」に基づく「目標管理シート」が使われ、昇給額や賞与支給額など報酬の仕組みに反映されます。

相対評価と絶対評価

どのような評価制度を用いるのかと同時に、「評価分布」をどうするかも重要な課題です。評価分布には「相対評価」(事前に評価結果の分布を一定割合に割り振る方法)と「絶対評価」(厳密な評価基準に基づいて評価結果を導く方法)の二つがあります。相対評価では、評価分布は標準分布を示すため、中間の評価が多くなる傾向があります。一方、絶対評価は、仮に被評価者全員がA評価に該当すれば、理論上、全員がA評価になることもあります。「賃金の原資」には限りがあるため、相対評価を採用する企業が少なくありませんが、被評価者に対する納得性や説得性が高いのは絶対評価です。

目標管理・評価を見える化してマネジメントに生かす
従来のアナログな運用では相当な労力がかかるうえ、公正な評価が難しいなどさまざまな課題が生じがちです。そのため、人事評価システムを導入して、業務効率化や適正な評価体制の構築を目指す企業が増えています。

人事評価システムで業務効率化・評価の質を向上。選び方のヒントとおすすめサービス|日本の人事部

③ 報酬制度

給与や賞与といった報酬の仕組みです。一般的に給与は、等級ごとに一定のレンジ(上限と下限)が定められており、評価によってレンジ内での昇給や賞与などが決まるシステムになっています。また、退職金制度や福利厚生などもこの報酬制度の一部に含めて考えられます。

代表的な構成要素である「基本給」「手当」「賞与」「退職金」を見ていきます。

基本給

「基本給」は、毎月固定的に支払われる給与のこと。「年齢」「勤続年数」「学歴」など属人的な要素で決まる「属人給(年齢給)」の部分と、能力や仕事内容、業績・成果などの要素で決まる「仕事給(職能給、職務給、役割給など)」の部分で構成されます。また、基本給の決定には、給与表方式・昇給方式・洗い替え方式という三つの方法があります。

基本給の決定方式

  1. 給与表方式:年齢や等級・経験年数ごとに支給額を定めた給与表により、基本給を決定する方法
  2. 昇給方式:前年度の基本給に対して今年度の昇給額を加算、もしくは昇給率を乗じて決定する方法
  3. 洗い替え方式:前年度の基本給に関係なく、能力や職務のレベルに応じて、毎年基本給を決定する方法
手当

「手当」は、月例給与の中で基本給とは別に、職務の特殊性や扶養家族、勤務地などの状況に応じて支払われる給与のこと。支給基準を満たす従業員に対して、基本給に上乗せする形で支給されます。しかし近年では、職務や能力の違いは手当ではなく、基本給の金額差で反映されるべきとの考え方が強くなっており、縮小・廃止される傾向にあります。特に、夫の妻に対する家族手当(扶養手当・配偶者手当)は、女性の社会進出を阻む一因であるとして、多くの企業で見直しが行われています。代表的なものには、以下のような手当があります。

代表的な手当
等級手当 従業員が在級する等級資格に応じて、一定額を支給する手当
役職手当・職位手当 役職・職位に応じて、一定額を支給する手当
特殊勤務手当 特殊な作業環境で勤務する従業員に対して、一定額を支給する手当
家族手当 家族を持つ従業員に対して、扶養家族の人数などに応じて、一定額を支給する手当
住宅手当 世帯主として住居を保有する従業員、貸家に入居する従業員に対する家賃の補助として、一定額を支給する手当
単身手当・別居手当 単身赴任や転勤などにより、家族と別居生活を強いられる従業員に対して、一定額を支給する手当
地域手当 勤務する地域による生活費の差額を補てんするため、一定額を支給する手当
寒冷地手当 寒冷地へ勤務する従業員に対して、光熱費を補てんするために、一定額を支給する手当
通勤手当 通勤に要する交通定期代、ガソリン代などの実費を支給する手当。一定の範囲内までは、非課税となります
精皆勤手当 欠勤のない従業員、または欠勤・遅刻・早退が一定回数未満の従業員に対して、一定額を支給する手当
調整手当 転職前の給与額と比較して調整が必要な場合など、特別な理由により個別に支給される手当
賞与

「賞与(ボーナス・一時金)」について、労働基準法では特に規定していません。賞与を支払うかどうか、支払う場合は年何回、いつ支払うかといったことは企業の自由です。日本では多くの企業が月例給与とは別に年2~3回程度、「夏季賞与」「冬季賞与(年末賞与)」「決算賞与」という形で、会社の業績に応じて支給しているのが実態です。

賞与は成果配分・業績還元という性格を持つため、支給原資の全部または一部を当該期間における経営上の成果・業績とリンクさせて決めるのが合理的です。具体的には、「売上リンク方式(支給原資の全部または一部を売り上げにリンクさせる)」「利益リンク方式(粗利益、営業利益、経常利益、純利益など、利益となる指標とリンクさせて支給原資の全部または一部を決める)」「付加価値リンク方式(付加価値とリンクさせて支給原資を決める)」といった方法があります。

退職金

「退職金」とは、従業員の退職に際して支給する報酬のこと。終身雇用慣行の強い日本企業では、広く行き渡っている制度です。法律で定められたものではなく、退職金制度がなくても違法にはなりません。人材の流動化が進んだ近年では、退職金制度を導入しない、あるいは廃止する企業も増えています。

賃金の後払いの性格を持つ退職金の算定には、以下のような方式があります。

退職金の算定方法例
基礎給 × 支給率
退職時の本人の基礎給に、勤続年数別の支給率を掛けることによって退職金を算出する方式。最も一般的な方式ですが、定期昇給やベースアップによって賃金がアップすると退職金に跳ね返り、会社の退職金負担が重くなるという問題があります。
別テーブル × 支給率
退職金算定用のために特別の賃金表を作成し、それに勤続年数別支給率を掛ける方式。定期昇給やベースアップがあっても、退職金に影響が及ぶことはありません。
ポイント方式
「ポイント×単価」という算定式で、退職金を算出する方式。退職金制度に能力・実績主義が反映できる、定期昇給・ベースアップの影響を排除できるなどのメリットがあります。
定額方式
勤続年数などを基準として、退職金を事前に決めておく方式。シンプルですが、本人の能力や業績が反映されにくいなどの問題点があります。

2. 人事制度のトレンドの移り変わり

人事制度のトレンドの移り変わり

人事制度は、ビジネスにおける時流の激しさから、当初策定された制度の見直しが迫られることも少なくありません。

年功序列から成果主義、役割等級制度の導入へ
〜複数の制度を取り入れる会社も〜

これまで国内で一般的とされていたのが、勤続年数などで判断される年功序列制です。1970年代にはほとんどの国内企業に浸透しており、日本社会には長らく「年功序列」「終身雇用」の概念が根付いていました。これらの概念の表れとして、1950年代から普及した「定期昇給制度」が挙げられます。

1980年代には年功序列制に加え、資格の有無などが査定に反映される職能資格制度が導入されるようになります。1990年代に入ると、バブル崩壊などもあって成果主義での評価制度導入が進み、その後2000年代には役割主義が登場しました。

国内では長らく年功序列制が浸透していたものの、能力の高い若手社員などにとって不満の端緒となりやすく、モチベーション低下につながるとの懸念があります。また、従業員が自らの成果のみに注力し、それまで日本企業が得意とした集団活動にゆがみが生じるリスクもあります。

こうした問題もあって、年功序列・終身雇用からの脱却を図る企業は増加傾向にありますが完全なる成果主義への移行に至っていない企業もあるのが実情です。近年では、成果主義に加えて他制度を取り入れたり、役割主義を導入したりするなど、複数をうまくかみ合わせて人事制度を改定している企業も見受けられます。

役割主義による評価
〜社内で求められる「役割」に応じて序列化〜

近年では、役割主義による評価を導入する企業も増えつつあります。これまでの成果主義では、短期的な個人の成果の追求、チームワークの弱体化、離職率の増加、心理的安定性の低下など問題点もありました。

役割主義は、企業が従業員に求める役割に基づいて、従業員を評価します。職務遂行能力(人)を基準とした職能資格制度と、職務(仕事)を基準とした職務等級制度の折衷案ともいえます。

管理職の場合、各部門の役割に基づいて社内全体のポストを序列化し、担うポストに応じて評価します。一般社員においては、企業の目標達成に貢献できる能力を序列化し、能力の発揮の程度によって評価します。

これまで職務等級を通じて維持してきた能力育成機能を保持しつつ、経営戦略・経営管理の要素も取り入れることができるのは、役割等級の大きなメリットの一つです。

等級や評価タイミングの変化
~評価の納得感を高める試み~

等級制度とは、能力や職務、役割などによってそれぞれ定められた等級に基づき、ランク付けするものです。それぞれの等級によって、求められる役割・行動・能力などが明確になり、将来的なキャリアビジョンの明確化にもつながります。

一方、能力などは判断項目があいまいでわかりにくく、心理的安全性が低くなり組織全体の生産性を低下させるリスクがあるなど、等級分けが必ずしも企業に有益ではないケースもあります。また等級制度では、年度末に評価されるケースも多く評価期間が長い、中間層が厚く個々の人材を適正に評価しにくいという問題点もありました。

こうした背景から近年では、ランク付けを行わない「ノーレイティング」、1週間や数日などの短期間で評価する「リアルタイム評価」といった制度が注目を集めたこともあります。いずれも評価者と被評価者とのコミュニケーションを密に行い、評価基準の明確化や評価結果への納得感を高めるための取り組みといえます。今後もさまざまな方法による適切な評価法・評価プロセスの模索が続くでしょう。

評価情報のオープン化
〜経営戦略・組織構造・中期事業計画などにも着目〜

これまでは、人事評価の内容は経営側のみが閲覧でき、社内で非公開とする企業が多く存在しました。しかし判断される側である従業員は、自分自身がどういう基準で企業から評価されているのかが明確でないと、企業に不信感を覚えるかもしれません。実際、評価情報を明らかにすることで従業員がその内容に納得し、個人のさらなる成長やモチベーションアップにつながるともいわれます。

特に近年では働き方の多様化に伴い、公平で明確な評価基準が求められています。企業にとっても、社内の透明性を図るために重要な施策の一つといえます。人事評価システムなどで情報を一元化し、必要な情報を公開、もしくは評点をグラフ化するなど、運用方法も多様化しています。

トレンドをもっと知りたいならこちら
人事制度のトレンドは、社会情勢と連動して変化してきました。「○○主義」の言葉だけではない、具体的な賃金の定め方を基に論じた資料を参照したい場合は、こちらをご覧ください。

人材マネジメントの変遷にみる「人事の役割」の変化|株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

西村純(2016)「人事・賃金制度の変遷に関する一考察と今後の研究課題」|独立行政法人労働政策研究・研修機構

3. 人事制度の設計

人事制度の設計

人事制度の設計の手順について、既存の企業が人事制度を新たに構築する場面を想定して、一般的なフローを見ていきます。

設計のフロー

STEP1/経営理念の再確認

人事制度は、企業の経営理念に基づかなくてはなりません。そのため、人事制度を作る際には、まず自社の経営理念・基本理念を再確認した上で、「会社は従業員のことをどう考えているのか」という「人事ポリシー(人事理念)」を明文化することが不可欠です。人事ポリシーは人事制度を構築する上での大方針となり、各仕組みとの整合性、社員へのメッセージを伝える場合にも重要な役割を担います。

STEP2/現状分析と制度設計のグランドデザイン

現在の人事制度の課題を分析した上で、大まかな人事制度のグランドデザインに入ります。現状分析では必要に応じて、従業員満足度(ES)調査や各部門へのヒアリング、他社との給与水準の比較などを実施します。経営理念や人材ポリシーに沿う形で、等級制度や評価制度、給与制度の改定の方向性を決定します。

STEP3/等級制度の設計

まずは人事制度の骨格になる等級制度を構築します。STEP2で決めた方向性(例:属人ベース「職能資格制度」、職務ベース「職務等級制度」、役割ベース「役割等級制度」)に基づき、等級の段階数や、等級一つひとつの「資格要件」を定義します(例:職能資格制度は「資格要件書」「職能要件書」、職務等級制度は「職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)」、役割等級制度は「役割定義書」など)。

STEP4/評価制度(人事考課)の設計

等級制度で定義した資格要件に対応する形で評価の基準を定めます。評価制度の核心は、何を評価するのか(評価項目)、どう評価するのか(評価基準)。評価制度によって従業員のモチベーションは変わります。経営理念や人材ポリシーをベースに、企業が望む方向へと従業員を意識付け、モチベーション向上につながるような評価制度を設計することが求められます。

STEP5/報酬制度の設計

STEP4の評価基準を給与・報酬に適正に反映するため報酬制度を作成します。等級ごとの給与額の上限と下限、ならびに給与額間の差(ピッチ)を定めますが、従業員が「その給与で無理なく生活していけるのか」を十分シミュレーションすることも重要です。さらに、改定した報酬制度を基に、人件費の総額を試算し、検討を重ねていきます。

STEP6/新制度への移行シミュレーション

新しくできた制度はただちに実施するのではなく、移行した場合のシミュレーションを行わなければなりません。総額人件費の変化、移行後の労働生産性の変化などを確認し、改善していきます。また、従業員(労働組合)に対して十分な説明を行い、理解と協力を求めます。処遇が大きく変動する従業員に対しては、数年程度の猶予期間を設けるなどの措置も必要です。

STEP7/制度の定着化

人事制度を狙いどおりに機能させるには、制度自体の浸透(従業員への周知、管理職や考課者の研修)と実際の運用(新制度に基づく人員配置・組織運営、人材開発など)が重要です。新人事制度の運用を通じて、さまざまな課題を発見し、改善していかなければなりません。

設計の注意点

人事制度の根本的な目的とは

一般に経営資源といえば「ヒト・モノ・カネ」が挙げられますが、中でも、企業が事業目的を達成するための重要なカギを握っているのはヒト、すなわち「人材」です。モノやカネは、優秀な人材さえいれば、その働きによって調達することが十分可能です。しかし、いくらモノやカネがあっても、それを適切に運用する人材がいなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。さまざまな経営課題を突き詰めていくと、最終的には「企業は人なり」という結論に到達します。

しかし、優秀な人材がそろっていればよいというものでもありません。まず、人材が能力を十分に発揮できる環境や組織が必要です。また、仕事に対するモチベーションを高める仕組みも欠かせません。能力のある人材が適材適所で配置され、事業目的を十分理解した上で役割や責任を果たし、高い意欲で仕事に取り組むことで初めて、人材は企業にとって価値あるものとなります。

「人事制度」とは、こうした「企業の競争力や価値を向上させる組織」や「従業員の意欲・能力を向上させる仕組み」を制度として体系化したものです。事業目的から導き出された経営戦略を、人材マネジメントの側面から具体化したものと言い換えられます。

企業理念との連携

人事制度を再構築したいと考えている企業は、「人」に関して何らかの問題を意識していることが多いでしょう。しかし、顕在化している問題の解決だけを目的に人事制度を再構築しているようでは、失敗につながりかねません。

もともと人事制度は、「事業目的、経営戦略に最適の組織をつくる」ためのものです。目先の問題解決だけでなく、「自社にとって最適の組織とはどのようなものか」を考え、そのための組織デザインを進め、併せて現在抱えている課題も解決していくことが望ましいでしょう。

「企業理念」=「人事制度」=「人材」が、一本の軸でつながっていることが重要です。例えば、「和を尊ぶ経営観」で「親和性・協調性の高い人材」が働く企業に、「成果主義人事制度」を導入しても決してうまくいかないでしょう(下図)。

人事制度が不適合となるケース
人事制度が不適合となるケース

成果主義人事制度が本来の効果を発揮するのは、企業理念が「自立と自己責任を尊ぶ経営観」で、そこに働く人材も「競争性・自立欲求の高い人材」であった場合です。「和を尊ぶ経営観」で「親和性・協調性の高い人材」が働く企業であれば、人事制度もまた「チーム成果も含めた育成的人事制度」を基調にすべきでしょう。

人事制度が適合するケース
人事制度が適合するケース

※図の出典:株式会社クイック

つまり、人事制度はそれだけが独立して存在したり、成果を出したりできるものではありません。企業の経営理念、経営戦略、またそこで働く人材との関係を考慮して構築していくべきものです。

【企業一覧付き】外部の考え方を取り入れてみよう
人事制度の設計に外部の協力をあおぐのも一つの考え方です。制度設計を綿密に行い、経営理念・経営戦略を正しく体現しましょう。

ビジョンや経営戦略とリンクした「人事制度」をいかに構築するのか?
人事制度設計コンサルティングの傾向と選び方

4. 人事制度の事例

人事制度の事例

株式会社湖池屋

株式会社湖池屋は、1967年に日本初のポテトチップス量産化に成功した老舗企業です。2016年には佐藤章社長が就任し、2017年には人事制度を改定しました。評価軸はそれまでの年功序列からコンピテンシーへ、職能給を職務給・役割給へと変更しています。

しかし、2016年から注力しているリブランディングによって経営スピードが速くなり、評価が追い付かない問題も出てきました。そこで再改定し、2021年3月には新しい評価基準で人事評価を行うとしています。

==新評価制度はチャレンジ重視で成果主義を軸とする予定ですが、若手にはメンバーシップ型の評価軸を基本とし、中堅には成果に比重を増やすなど「チャレンジ」と「スキル・経験」を両軸==としています。

この他、役職名を付けない「さん付け運動」や、勤務中の服装を原則自由とする「カジュアルエブリデイ」、成果を上げた社員を全社発表する「MVP表彰制度」など、主体性・自律性を高めてチャレンジできる風土づくりに取り組んでいます。

サトーホールディングス株式会社

サトーホールディングス株式会社は、ラベルやラベルプリンタの製造・販売、自動認識ソリューションなどを手掛けるグローバル企業です。社是は「あくなき創造」であり、2016年に策定された「人財戦略ロードマップ」では、タレントマネジメントの確立が掲げられています。

「自ら考え行動し変化を起こす人財」の育成には社内の人財を把握する必要がありますが、当時は人事関連のデータベースが個別の状態でした。そこでタレントマネジメントの第一歩として「人事データの一元化」を目的にシステムを導入し、2018年4月にタレントマネジメントシステムの運用をスタートしました。

一元化により、該当者の職歴、評価や、その評価のプロセスなども把握できます。経験や勘などではなくデータによる判断が可能となり、ワンランク上のマネジメントレベルを実現しています。

企業事例を探すなら「となりの人事部」

「となりの人事部」では、人事・人材開発において先進的な取り組みを行っている企業へのインタビューを基に、各種事例をご紹介しています。他社の事例は、自社にとっても大きなヒントとなり得ます。有効に活用してください。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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*****さんが参考になったでオススメしました

新潟県 情報処理・ソフトウェア 2023/08/02

 

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兵庫県 商社(専門) 2022/01/16

 

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