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【ヨミ】サイヨウ 採用

企業経営における経営資源は、一般的に「人、モノ、カネ、情報」の四つだと言われます。そのなかでも特に重要なのは「人」であり、人を企業に招き入れるために行うのが「採用」です。どのような人を採用するかは、その後の企業経営を大きく左右しますが、採用を進めていくに当たって、どんなことに留意すべきなのでしょうか。採用にはどういった種類や実務があり、それらを効果的に進めていくにはどうすればいいのでしょうか。

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1.採用とは

採用の目的(意味・狙い)

採用とは、自社の事業運営に必要な人材を獲得することです。経営的な観点から見ると、採用は企業にとって大きな投資。仮に一人の社員を新卒から定年まで雇用し続けると、数億円ものコストがかかると言われます。そのため、利益を出すことに貢献できる人材の採用を、念頭に置かなければなりません。採用するべき人材を間違うと、会社にメリットどころか、デメリットをもたらすことになってしまいます。そうしたリスクを軽減するためにも、採用方法として、いろいろなルートを用いることを考えておくべきでしょう。

社員が業務をうまくこなしていくには、仕事を覚えるだけでなく、社内の人間関係など、インナーコミュニケーションも重要です。そのため、タイプや価値観が自社とマッチした人材を採用することが求められます。自社の経営理念や組織風土に合った人材を採用しなければ、入社後にその能力やスキルを活かすことが難しくなるからです。ミスマッチが原因で早期に辞めてしまうことになれば、本人と会社の双方に禍根を残すことになりかねません。採用活動においては経営戦略の下、自社の5年後、10年後を想定し、それを担うべき人材を多面的に判断して獲得するという、中長期的な視点が求められます。

「採用力」の時代へ

他社と差別化を図り、自社が求める人材を獲得し得る力のことを「採用力」と言います。その際にポイントとなるのが、自社の持つ「企業力(企業イメージ)」と「労働条件」、そして「採用コミュニケーション」です。このうち、「企業力(企業イメージ)」「労働条件」を早急に向上させるのは困難ですが、「採用コミュニケーション」はやり方次第で、すぐにでも変えることができます。

では、どのように「採用コミュニケーション」を向上させていけばいいのでしょうか。まずは、自社の「採用ブランド(自社らしさ・強み)」をしっかりと確立させ、それを採用マーケットの中で的確に訴求していきます。次に、求職者とコミュニケーションをとりながら相互理解を深め、自社に対して「応募したい」「入社したい」という意志を喚起させます。具体的には、自社をシンボライズするものは何か、自社で働くことの「意味づけ」「リアリティ」を持つ要素は何なのかを徹底的に考え抜いて言語化し、独自性のあるメッセージへと転換させていくこと。その上で、適切なコミュニケーションツールに乗せて、求職者の理解と共感を促していくことです。「売り手市場」が続く今日、このようなアプローチが他社との差別化を図るための「採用力」として欠かせないものとなっています。

採用計画の考え方

採用計画とは、自社の事業運営に必要な人材を獲得していくためのプランニングのことです。ただ積極的に採用すればいい、というものではありません。採用は投資なので、当然、費用対効果が求められます。まずは経営戦略を達成していくために必要となる人材戦略を明確にし、そこから必要な人数や採用基準(求める人材像)を明らかにしていきます。同時に、社内からの異動や配置転換なども勘案し、その上で採用にかけられるコストを計算。年間を通しての採用方針と具体的な採用手法、採用コミュニケーション、採用ツールを定めていきます。このようにベースとなるプロセスを踏んで採用計画を策定していかなければ、採用難の時代に必要な人材を獲得することは困難です。

2.採用の現状

採用の歴史

日本企業独自の採用手法として、「新卒一括採用」が挙げられます。新卒一括採用の特徴は、既に労働市場に参入している就業者や失業者とは別枠で、新卒者を採用すること。ここが即戦力を求める中途採用とは大きく異なります。日本企業の多くは従業員を長期に訓練し、自前で人材を育ててきました。新卒一括採用は、その対象となる新たな労働力を採用することを目的としています。

新卒採用の歴史をひも解くと、約100年前にまでさかのぼります。第一次世界大戦をピークとする好景気の到来で、企業はポテンシャルの高い新卒者を採用し、社内で育成するシステムを導入しました。優秀な人材を採用するため、企業では入社試験・選考を実施。一方、大学では就職部が誕生し、学生に就職指導を行うようになりました。その後は何度かの景気の変動によって「売り手市場」と「買い手市場」が交錯しましたが、1950年に朝鮮戦争が勃興すると、特需によって好景気が到来。新卒採用戦線があまりにも激化したため、文部省は就職あっせん開始日を定めた「就職協定」を通達しました。しかし、高度成長期になると「就職協定」は有名無実化し、企業による「青田買い」はますます進んでいきました。

現在の就職活動の主流である自由応募が一般化したのは、1968年。大学紛争によって学校推薦の機能がマヒし、学生が自力で企業訪問を始めるようになったのがきっかけです。また、1963年には就職情報誌が創刊され、学生と企業をつなぐ大きな役割を果たしていくことになります。

その後、空前の「売り手市場」となったバブル経済期、その反動による「就職氷河期」など、1990年代以降もさまざまな動きがある中、1997年に「就職協定」は廃止され、代わって「倫理憲章(採用選考に関する指針)」が制定されました。またこの頃から、インターネットが急速に普及し、新卒採用の主戦場はWebへと移行します。近年は、少子化の進展に伴う若年労働力不足の影響から、さらに採用手法は変化し、SNSを活用した採用活動なども活発化しています。採用を取り巻く動向は変化が激しいため、今後も目が離せません。

近年の動向(求人難の実態)

労働市場で人材不足が顕在化している昨今、新卒市場は「超売り手市場」となっています。就職希望者数に占める就職者数を示す就職率は7年連続で上昇し、2018年3月の卒業者では98.0%という空前の高い水準を記録しました(文部科学省「平成29年度大学等卒業者の就職状況調査」)。また、求人倍率を見ても、2019年3月卒業予定の大卒求人倍率は1.88倍と、前年の1.78倍から0.1ポイント上昇。過去10年間で最も高い求人倍率を示しています。また、大卒者の市場規模を見ると、全国の民間企業の求人総数は前年の75.5万人から81.4万人へと5.8万人増加していますが、学生の民間企業への就職希望者数は前年の42.3万人とほぼ同水準の43.2万人。求人に対して38.1万人が不足するという「超求人難」の状況を示しています(リクルートワークス研究所「2019年3月卒業予定の大学求人倍率調査」)

「倫理憲章(採用選考に関する指針)」とは、経団連が中心となって定めた、新卒者の採用スケジュールに関するガイドライン。これまでさまざまな事情により、選考開始日などがたびたび変更されてきました。2018年の時点では、広報活動の解禁が「卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降」、選考活動の解禁が「学生の卒業・修了年度の6月1日以降」、そして正式な内定日が「同10月1日以降」と定められています。しかし、2018年9月に経団連の中西宏明会長が、2021年春以降入社の学生の採用に関しては、「就職活動ルール」を廃止する意向を表明。将来的に採用スケジュールがどうなっていくのか、今後の動向が注目されています。

3.採用の種類

新卒採用

新卒採用とは、高校生や大学生を毎年4月、定期的に採用する採用手法のこと。企業が持続的に成長・発展していくには新卒者を定期的・安定的に採用し、育成することが必要であるとの認識から生まれたもので、海外ではあまり見られない日本独自の雇用慣行といえます。入社時期が一定であるため、計画的な採用活動を行うことが可能で、多くの入社希望者を集めて母集団形成をするために、ナビサイトを利用するのが一般的です。

近年は、学生が企業で一定期間働いて就業体験をする、インターンシップ(略称としてインターンとも呼ばれる)が注目を集めています。いち早く企業と接点を持ちたいと考え、インターンシップに参加する学生が増加。インターンシップを実施する企業も増えていますが、それによって実質的に就職活動の始まりが大学3年生の夏まで前倒しとなり、企業の採用活動の早期化を招く一因にもなっています。

中途採用

中途採用とは、即戦力としての人材を労働市場から調達する採用手法のことです。これまでは新卒採用において知名度の劣る中小企業が、ハローワークなどを通して行うケースが多くみられました。しかし近年は、新卒重視の考え方を取ることが多かった大企業でも、中途採用を積極的に行っています。その理由の一つは、新規事業分野に進出する企業が増加し、専門性が高くキャリアのある人材を採用する必要性が出てきたこと。また、組織の活性化を図るため、他社で経験を積んできた人材を採用し、自社にはない異文化やスキルを導入して社内に刺激を与えようとする意図などもあるようです。転職者側でも、転職によってステップアップしたいと考える人が増えていることも、企業における中途採用の活発化に影響しているようです。

アルバイト・パート採用

アルバイト・パート採用とは、流通、小売り、外食、サービスなどの業界で重要な戦力となっている人材を、無期雇用を前提とした正社員とは別枠で、期間限定で採用する手法のことです。人手不足が深刻化している現在、アルバイト・パート人材の採用競争は一段と激化し、時給相場は高騰しています。

アルバイト・パートは法律の上で特に区別されていません。パートタイム労働法で「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義されているだけです。学生が学業の合間に行うのがアルバイト、パートは「パートタイム」の略称で、主婦の短時間労働で用いられるのが一般的です。フリーターと呼ばれる層もありますが、これはフリーアルバイターの略で、学生と主婦を除いて、アルバイトで生計を立てている人たちを指します。

外国人採用

外国人採用は、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の在留資格の範囲において、日本での活動が認められているものです。現在、在留資格は27種類ありますが、在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格は、以下の18種類です。

【就労が認められる在留資格】
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習、特定活動

この中で一般の事業所で採用するケースが多いのは、技能(コンピュータ技師、自動車設計技師など)、人文知識・国際業務(通訳・語学の指導、為替ディーラー、デザイナーなど)、企業内転勤(海外の本店・支店から期間を定めて受け入れる社員)、技能(調理人など)です。また、海外での事業展開が進む中、英語でビジネスができる外国人の採用に積極的な企業が増えています。さらに人材サービス各社が国内で外国人の派遣を増やすなど、人材不足が深刻化する中、外国人の活用は国内外で今後増えていくと予想されます。

留学生採用

留学生採用とは、日本の大学を卒業する外国人留学生、または海外の大学を卒業する外国籍留学生を採用することです。近年、このような留学生を採用するケースが、グローバルに展開する企業を中心に増えています。留学生にはグローバル化に必須な「語学力(英語)」に長けていて、海外勤務を厭うことが少なく、日本人学生よりもアサーション(自己主張)やプレゼンテーションに優れている人材が多く存在します。また、「日本へ留学し、そのまま日本で働くこと」を希望する留学生の場合、組織に対する帰属意識やモチベーションが高いと言われています。新卒採用が厳しい状況にある中、今後、留学生の採用を考える企業はさらに増えていくと予測されます。

障がい者採用

従業員が一定以上の企業は、従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の割合を、「法定雇用率」以上にする義務があります。民間企業の場合、法定雇用率は2.2%。従業員を45.5人以上雇用している企業は、障がい者を一人以上雇用しなければなりません。また、障がい者を採用する場合の配慮として、本人の適性・能力をよく見極めること、そしてそれが最大に発揮できるよう、職場環境を整備することが重要です。

4.採用の実務

要員計画

要員計画とは、事業を運営するに当たって、「どんな仕事があり、そのためにはどういう人材が、どれだけ必要なのか」という人的基盤を定量的に把握することです。そして、これらを明らかにするのが要員調査です。要員調査は、要員計画を立案するための基本情報となるもので、「職場ごとの要員ニーズ(欠員補充、定型的業務対応、高付加(コア)業務対応、高度専門職対応)」と、「会社としての要員ニーズ(事業計画・事業展開、従業員の労務構成是正)」の二つに分かれます。それぞれの観点で情報収集、ヒアリングを行い、取りまとめていくことによって要員計画がスタートします。要員調査の結果を受けて、各職場の人材ニーズの必要性を吟味し、必要と認める場合でも緊急度や優先度を設け、会社としてどう対応していくかを検討。このようなプロセスを経て、要員計画の実行スケジュールへ移行していきます。

近年、要員計画の立て方として、外部のコンサルティング会社を活用する動きが目立ちます。要員計画は経営計画とリンクすることから、コンサルタントと人事部、各事業責任者などから構成されるプロジェクトを立ち上げ、フォーマットやテンプレートを用いて要員計画を策定するケースが多いようです。

採用課題の明確化

採用活動を進めていく際は、前年度の採用結果を振り返って分析し、今年度の採用活動ではどの点にポイントを絞り、効果的に進めていくかを考える必要があります。具体的には以下のような点について社内レビューを行い、取り組むべき採用課題を明確化していくことが重要です。

【前年度の採用結果の振り返り・分析する項目】
  • 採用目標に対する採用結果(充足できた、できなかった要因)
  • 内定率(どのような対策が効果的だったか、効果的でなかったか)
  • 求人サイト・採用ホームページの効果測定(アクセス状況、学生の反応)
  • 採用体制(採用チームの活動状況、採用担当者・リクルーターの選定・育成)
  • 採用選考(採用すべき人材を採用できたか、採用基準に則って選考できたか)
  • 採用コスト(求人サイト・媒体への出稿、会社説明会・セミナーなどイベント開催費用、内定者管理・フォローのための費用)
  • 内定者からの情報収集・アンケート(どのプロセスに問題があったか、良かったか)
  • 採用担当関係者からの情報収集(改善すべきプロセス)

採用活動計画

採用活動計画では、以下のような事項について漏れのない内容・実行時期(スケジュール)となっているか、十分に確認した上で策定することが重要です。

【採用活動計画で確認する内容】
  • 採用方針(昨年度の振り返り、採用環境の調査・分析、採用基準・求める人材像、採用数、採用数確保のための取り組み内容)
  • 費用・予算(求人サイト・媒体、会社説明会・セミナー、採用選考、内定者管理・フォロー、交通費)
  • 採用体制(採用チーム・プロジェクト、社内協力体制、採用担当者、リクルーター、採用代行)
  • 採用ツール(求人サイト・媒体、募集要項、キャッチコピー・訴求ポイント、採用マニュアル)
  • 資料請求・エントリーシートへの対応
  • 大学訪問、研究室訪問、就職部との対応
  • 学生への対応
  • 会社説明会・セミナーの開催
  • 採用試験(合否基準)
  • 面接・面談(評価基準)
  • 内定者フォロー、内定者向けイベント
  • 新入社員受け入れ教育
  • インターンシップ、学生アルバイトの実施・受け入れ体制

採用基準(求める人材像)

採用難の状況にありながら、入社した社員が早期に離職してしまうなど、採用ミスマッチを起こすケースは少なくありません。こうしたミスマッチを防止するには、採用活動のスタート時点で自社が求める人材像はどういうものなのか、採用基準を明確にしておくことが重要です。そのためには、「自社が求める人材」とはどのような人材要件を意味しているのか、「スペック(能力・スキル)」と「タイプ(価値観・志向)」の両面から具体的に言語化しておかなければなりません。

求める人材像の要件を定義できたら、それを経営トップ以下、採用活動に関わる担当者全員が同じ評価軸を持って理解し、実際に運用できるようにする必要があります。その際に留意したいのは、優秀な人材が全ての企業にとって優秀だとは限らないこと。これは採用基準においても同様です。例えば中途採用の場合、キャリアが不足していたり、未経験な部分があったりしても、求める人材像に合致していたら、採用する。足りない部分は、入社後の研修や教育、OJTで十分に補うことができます。

採用体制作り

採用業務は年間を通しての活動であり、また、採用マーケットは毎年固有の動き方を示すため、その状況を捉えて臨機応変に対応するには、継続的な業務担当者が必要です。また大学訪問などでは、担当者の属人性や蓄積されたノウハウに負う部分が多いため、専任の採用スタッフを置くことが不可欠です。これらを念頭に、採用体制を構築していかなければなりません。

また、採用業務のさまざまな局面では、採用担当者だけではなく、社内各部門の協力を依頼する必要があります。そのため、事前に各部門へ根回しをしておくことが重要です。稟議書などが必要な場合は、早めに作成しておく必要があります。

【他部門に協力を依頼する場面】
  • 採用計画の策定メンバーとして(経営陣・部門長・現場責任者)
  • 会社説明会・セミナー講師として
  • 会社訪問、インターンなど受け入れ時のメンバー・先輩社員として
  • 面接などの選考メンバーとして
  • 内定フォローの要員として
  • 新入社員教育のトレーナーとして

上記のように他部門からの協力を取り付けるには、以下のような取り組みが必要です。

【他部門に協力を依頼するための取り組み】
  • 経営トップの理解を得て、各部門長へ協力の指示を出してもらう
  • 各部門長へ採用計画と採用スケジュールを示し、あらかじめ協力を仰ぐ局面、日程を提示する
  • 各部門長に協力業務の要領と協力してくれる人材の要件、拠出人数を伝え、交渉に当たる
  • 事前に協力者を集めて趣旨、細目についての説明会を開く

採用プロジェクトチームを結成したら、採用目標と各担当の目標を作成します。定期的な会合を持ち、目標の進捗状況や達成度を確認し合うと、チームとしての一体感が生まれると同時に、高い成果も期待できます。

募集・情報管理

企業が募集・情報管理を行う際には、以下のような手法やツールを活用します。

【求人サイト】
求人サイトは、就職情報会社が運営する求人専用のサイトで、さまざまな業種による数多くの採用情報が掲載されています。学生は氏名や大学名を登録するだけで、求人サイトをいつでも閲覧することができ、就職を予定している学生のほとんどが求人サイトを利用しています。企業が採用情報を告知し、募集する手段として、重要なツールといえます。
【採用ホームページ】
採用ホームページは、就職情報会社が指定する情報しか掲載できない求人サイトとは異なり、自社の考えや方針に沿ってコンテンツを自由に決めることができます。また社員が制作すれば、費用はあまりかかりません。近年では、採用ホームページに求職者が履歴書などを直接送信し、採用に至るケースが増えています。
【SNS】
フェイスブックやツイッターなど、SNSに採用情報を掲載し、応募を呼びかける企業も増えています。SNSは会社にとって、「募集コストが安く済む」「多くの求職者に採用情報を提供できる」「会社の雰囲気や風土を伝えることができる」などのメリットが期待できます。求職者にとっても、「人事担当者とコミュニケーションがとれる」などのメリットがあります。

また近年は新たな採用手法として、下記に取り組む企業が増えています。

【リファラルリクルーティング】
リファラル(referral)は「委託、紹介、推薦」といった意味。リファラルリクルーティングでは、社内外の信頼できる人脈を介した、紹介・推薦によって採用活動を行います。人材紹介会社や求人サイトなどの採用チャネルに頼らず、人と人との個人的なつながりを活用することで、採用候補者の質や信頼性を確保し、採用のマッチング精度を高めるのが狙いです。
【ダイレクトリクルーティング】
求人広告媒体や人材紹介会社など第三者にアウトソーシングして、求職者の応募をただ「待つ」のではなく、企業側が人材データベースやSNSなどさまざまなツールを活用して、求める人材を自ら探し、直接アプローチする「攻め」の採用手法がダイレクトリクルーティングです。中途採用の領域ではすでに普及していましたが、近年は新卒採用でも注目されるようになっています。

セミナー・会社説明会

セミナー・会社説明会には、合同で行うものと自社単独で行うものがあります。

【合同セミナー・会社説明会】
就職情報会社や新聞社が主催する合同セミナー・会社説明会に参加して、採用情報を提供し、応募を働きかけます。合同セミナー・会社説明会は主催者が各種メディアを使って参加者を集めてくれるので、企業側では参加者を集めたり会場を確保したりする労力から解放されます。また、このようなイベントでは、一度に多くの学生にPRできるメリットもあります。どの団体・機関がいつ、どこで開催するのか、参加費はいくらなのかなどの情報を事前に収集しておき、必要に応じて参加するといいでしょう。
【会社説明会・セミナー】
自社が単独で行う会社説明会・セミナーは、合同で行う場合よりも採用情報を詳しく説明することができます。一定の関心を持っている者が参加するので、より興味・関心を持ってもらうために、配布するパンフレットの内容を充実させたり、仕事内容を理解できる映像を投影したりするといいでしょう。また、若手社員を登場させて生の仕事情報や職場の雰囲気を伝える、質疑応答の時間を設けるなど、プログラムに工夫を払うことも効果的です。

リクルーター

リクルーターとは、人事部など採用関連部門に属さない、勤続年数の短い若手社員を中心とした採用担当者のことです。先輩という立場で学生に気軽にアプローチできる、学生に会社への親近感を与えられるなど、リクルーター制度にはさまざまなメリットがあります。

リクルーターの主な任務は、出身大学の学生と接触して会社の採用選考に応募することを働きかけることです。さらに会社訪問する学生と面談し、先行に進ませるかどうかなど、推薦することを任務とするケースもあります。いずれにしても、卒業後の年数が経過するにつれて、現役学生との接点が小さくなるため、卒業後3~5年以内の若手が選ばれることが多いようです。

リクルーターとしての活動をいつ行うのかは、本人に委ねられます。ただし、勤務時間内に大学を訪問したり、社外で学生と会ったりするなど、通常の業務から離脱する場合は、あらかじめ上司に届け出ることが必要です。また、制度として実施する以上、リクルーターがその任務にどう取り組んでいるかをチェックする必要があります。なお、リクルーターとしての活動は通常の業務とは別に行うため、手当を支給することが望ましいでしょう。

選考方法

選考にあたっては、まず、応募者から履歴書またはエントリーシートを提出してもらいます。提出された履歴書・エントリーシートを読んで、これまでの履歴に問題はないか、働く目的や職業意識、就労意識は明確になっているか、会社の志望動機ははっきりしているか、文章に説得力があるかなどを評価します。

履歴書・エントリーシートでスクリーニングを行ったうえで、次のステップとなるのが筆記試験です。筆記試験には、主として学力試験、時事問題・常識試験、小論文・作文の3種類があります。学力試験では、国語、数学、社会、英語などの学力を測ります。時事問題・常識試験は、社会人としての一般常識を備えているかどうかを見ます。小論文・作文は、文章・漢字を正しく書けるか、自分の言いたいことを要領よく文章にできるか、問題意識を正しく持っているかなどをチェックします。

また、選考方法として行われる適性検査には、職務遂行上の基礎能力を診断する「知能検査」、各人が持っている能力がどの分野で活かせるかを診断する「職業適性検査」、そして「性格検査」などがあります。

面接

面接は、応募者からの自己紹介や、質疑応答の中での対応を通して、経歴や書類などではうかがい知ることのできないその人物の特性を把握することを目的とします。また、入社後のミスマッチを起こさないための確認や、すり合わせを行う大切な場でもあります。

【面接の目的】
  • 質問によって志望動機や応募者の特性を把握し、採用するにふさわしい人物かどうかを判定する
  • 仕事内容や労働条件、社風、経営理念、経営方針、仕事内容などを伝え、理解・共感を得る
  • 入社の決心を固める説得の場とし、入社後のミスマッチを防ぐ

採用面接は、面接の専門家だけが担当するとは限りません。全社的な対応が必要になり、さまざまな部門の人材が駆り出されることも多いため、面接者の選出は大変重要です。

【面接官選定のポイント】
  • 社内でも有能とされる人物を起用する。応募者にとっては、面接で会った人の魅力イコール企業の魅力にもなる
  • 応募者の年代に合わせた人材を加える。年齢の開きによる微妙な常識や職業観の差が、不当な評価につながることがある
  • 専門職の採用には、その部門の責任者を加える。求める知識・技術を持っているかどうかは、その部門の人間が一番よく分かる。職場環境になじめるかどうかも、現場責任者の判断が最適といえる

内定・内定フォロー

新卒採用活動の中で、内定フォローの占める位置づけが高くなっています。近年の状況を見ても、最終面接を経て内定を得た後、入社を見送り、内定を辞退するケースが多発しています。その大きな理由の一つが、学生の会社に対する理解不足。採用スケジュールが後ろ倒しとなり、求人サイトがオープンしてから内定を得るまでの時期が短縮され、自己分析や企業理解・選択のための時間が短くなっているのです。その結果、内定から入社するまでの期間、学生の気持ちは不安定な状況に置かれています。また、いくつもの会社から内定を得ている学生の場合、1社に絞り込んでいくため大いに悩むことになります。そのため、内定から入社までの期間にどれだけ丁寧に内定者をフォローし、気持ちを自社の方向へ向けさせ、入社への意思を固めさせることが、大変重要です。

効率的な内定者フォローを行うには、まず内定者に対してメールなどでコンタクトを取り、どのような不安を感じているのかをしっかりと聴くこと。また、本人の立場や気持ちに寄り添い、思いやりを感じさせる返信を丁寧に送ることが大切です。さらに、近年行われている具体的な施策を見ると、従来から行われている懇親会・交流会や研修・グループワークといったイベント的なものから、SNSを活用した情報発信・近況報告、メンターやチューターによる個別的なフォロー、入社前教育の実施、親や保護者向けの対策など、多種・多様なアプローチが行われています。

採用に伴う手続き

採用選考、面接を経て採否が決定したら、採用に伴う手続きに移ります。まずは、「内定通知書」の送付。内定の場合、電話などでその旨を伝え、同時に文書を発送するのが通例です。その際、「入社誓約書」を同封し、記名・押印の上、返送してもらいます。これによって、他社に入社するのを抑制する効果があります。その後は速やかに採用手続きに入りますが、一般的に、内定者から提出してもらう書類には以下のものがあります。

【採用手続きに伴う提出書類(例)】
雇用契約書、誓約書、身元保証書、源泉徴収票(採用した年に前職のある者)、年金手帳(基礎年金番号)、雇用保険被保険者証(雇用保険の被保険者であった者)、住民票、扶養控除等申告書、本人および扶養家族の個人番号(マイナンバー)が確認できる書類、給与振込先の届け出(給与振込口座番号)、通勤経路申告書

受け入れ準備

新入社員を受け入れるに当たり、人事部門には以下のような事前対応・準備が求められます。

【賃金関連】
労働者名簿、賃金台帳、各種申告書
【社会保険関係】
健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険
【服務関連】
入社辞令、身分証明書、タイムカード、就業規則類、社員名簿
【福利厚生関連】
財形貯蓄申し込み、従業員特殊持株会申し込み、団体生命保険加入手続き、共済会加入手続き、社宅・独身寮申し込み、健康診断実施関係
【入社式関連】
受付対応、オリエンテーション、入社手続き
【配属関連】
配属先決定・通知、予定業務の決定、受け入れ準備(名刺・事務用品・貸与品・マニュアル)
【教育関連】
教育研修プログラム、場所・備品・テキスト類、指導員の選定、OJT計画・フォローアップ計画

配属フォロー・教育

配属後、半年の試用期間を経て仕事に慣れていくに従って、新入社員の間で歴然とした差が発生することがあります。この場合、配属された上司との関係性や、新入社員教育とフォローのあり方に問題があったと考えられます。この時期に、ビジネスの意味と目的を正しく捉え、主体的な行動を取れるようになれるかどうかが、その後の新入社員の成長に大きな影響を与えます。そのため、働くことに対する動機づけを図ると同時に、以下に示したような配属後のフォロー・教育が欠かせません。

【求められる配属フォロー・教育】
  • 学生から社会人への意識の転換・切り替え
  • 会社の理念・ビジョンの浸透
  • 社会人の常識・ルールの理解
  • 同期意識の高揚・一体化
  • 自律意識の醸成
  • 職場全体のサポート
  • 相談相手の存在
  • ロールプレイングの実施

定着管理・離職防止

新入社員の3割が3年で離職すると言われていますが、多大な労力とコストを費やして採用した新入社員が一人前の戦力となる前に辞めてしまっては、会社にとって大きな損失となります。このような事態を回避するために、新入社員の定着管理・離職防止(リテンション)に向けて、さまざまな施策・対応が必要です。

まずは、職場内のコミュニケーションの促進。職場の先輩や上司、あるいはメンターとなる社員と定期的に面談の機会を設け、コミュニケーションをとります。コーチング的な観点から新入社員の話を聴くことによって、彼ら・彼女たちの悩みや不安の解消を図るのです。さらに、配属先の上司のマネジメントやフィードバックのあり方を正していき、定着に結び付けていきます。一方で、最近の若者に特徴的な成長志向に応える施策を講じるのもいいでしょう。どんな経験を積んでいけば望むようなキャリアを実現できるのか、具体的なキャリアパスを示していきます。いずれにしても、新入社員一人ひとりに向き合って、個別対応していくことが、これからの定着管理・離職防止に有効なのは間違いありません。

5.採用に関する法律

採用関連法律(目的・内容・ポイント)

企業が採用活動を行う上で、留意しなければならない法律には以下のものがあります。なお、全ての法律は憲法が保証した国民の権利を現実化するために制定されています。このことは労働関係の法律も同様で、「法の下の平等(憲法第14条)」、「思想・信条・表現の自由(同19・20・21条)」、「職業選択の自由(同22条)」、「文化的生活の享受(同25条)」、「勤労の権利及び義務(同27条)」、「団結権・団体交渉権・団体行動権(同28条)」などに基づいています。

【採用に関連する法律】
  • 憲法:全ての法律の最上位に位置する
  • 民法:雇用、請負、委任についての規定が定められている
  • 職業安定法:労働力の確保と職業の安定を図る
  • 労働基準法:労働条件の最低基準を規定
  • 最低賃金法:賃金の最低額を保障することで、労働条件の改善を図る
  • 労働者派遣法:派遣労働者の雇用の安定と福祉の増進を図る
  • 男女雇用機会均等法:女性の雇用環境の改善
  • 育児・介護休業法:労働者の仕事と育児・介護を両立できるよう支援
  • パートタイム労働法:短時間労働者の雇用管理の改善を図る
  • 障害者雇用促進法:障害者の職業の安定を図る
  • 労働安全衛生法:労働者の職場における安全や健康を確保
  • 労働者災害補償保険法:業務上の負傷・病気に対する給付を規定
  • 雇用保険法:失業や教育訓練に対する給付を規定
  • 健康保険法:業務以外の負傷・病気に対する保険給付の実施
  • 厚生年金保険法:労働者の老齢、傷害、死亡についての保険給付の実施
  • 高年齢者雇用安定法:高年齢者の安定した雇用の確保
  • 家内労働法:不安定な家内労働者の労働条件の向上を図る
  • 中小企業労働者確保法:中小企業の雇用管理の改善のための女性措置について規定
  • 入国管理法:外国人労働者の就労に関する規制
  • 雇用対策法:募集時の年齢差別禁止とその例外を規定
  • 労働契約法:労働者と会社が結ぶ雇用関係の基本ルールを規定
  • 女性活躍推進法:女性の職業生活における活躍推進に関する規定

採用選考に関する指針(倫理憲章)

経団連では、大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者などの採用選考に当たり、以下の点に十分配慮し、自己責任原則に基づいて行動することを求めています。

【採用選考に関する指針】
  • 公平・公正な採用の徹底
  • 正常な学校教育と学習環境の確保
  • 採用選考活動開始時期

    学生が本分であるが企業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動については、以下で示す開示時期より早期に行うことは厳に慎む。

    • 広報活動:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
    • 選考活動:卒業・修了年度の6月1日以降
  • 採用内定日の遵守
    正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降とする。
  • 多様な採用選考機会の提供
    留学経験者に対して配慮するように務める。また、卒業時期の異なる学生や未就職卒業者等への対応を測るため、多様な採用選考機会の提供(秋季採用、通年採用等の実施)に努める。

公正な採用選考について

厚生労働省では、「公正な採用選考」を行うための「指針」を定めています。採用活動を行う際に、「指針」に違反するような行為を行っていないか、注意を払うことが求められます。

【公正な採用選考について】
ア:採用選考の基本的な考え方
応募者の基本的人権を尊重すること
応募者の適性・能力のみを基準として行うこと
イ:公正な採用選考を行う基本
応募者に広く門戸を開くこと
本人の持つ適性・能力以外のことを採用の条件にしないこと

6.採用の見通し・課題

多様化する採用手法

近年、採用市場ではユニークな採用手法を導入することによって、応募者の興味・関心を集める企業が増えています。特に、ベンチャーなどの新興企業では、そういったアプローチが人気企業ランキングにも影響を与えることから、一段とその傾向が強くなっています。それは初任給の動向にも影響を与えていて、一律の初任給制度を廃止する企業も見られます。ある大手IT企業では、AI(人工知能)など高度な技術を持つ学生に対して、最低720万円の年棒を提示しています。

また、採用選考の場面では、HRテクノロジーの活用が目立ちます。AIがエントリーシートの合否を判断したり、VR(バーチャル・リアリティ)をフリーディスカッションの場面で用いたりする企業も出てきました。このほかにも、今後は採用手法がますます多様化していくと考えられます。

少子高齢化・労働力不足の進展

少子高齢化が進み、労働力不足が一段と進展しています。国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」によると、15~64歳の生産年齢人口は2065年には4529万人となり、2015年の7728万人から4割減少すると予測されています。このまま人口が減少し続ければ、多くの人手を要する産業は立ち行かなくなるでしょう。抜本的な生産性の向上や技術革新は、まさに急務といえます。

また、働き手の状況を考えた場合、女性や高齢者の活用が、これまで以上に求められます。高齢者の就労を増やす定年引き上げや、配偶者控除の見直しによる働く主婦層の増加は、避けて通れない課題といえるでしょう。また、時間や場所に捉われずに働いて成果を出せる人を増やすことも考えていかなければなりません。人口減少が進む中、これからは働き手一人ひとりの生産性をよりいっそう高め、企業の成長力強化につなげる対策が求められます。

採用が抱える新たな課題と対応

いずれにしても、生産年齢人口が減少する動きは、止まりそうもありません。この状況を回避するためには、これまでの採用のあり方を抜本的に見直す必要があります。そのためにはまず、採用給源の多様化が重要です。たとえば、女性、高齢者、外国人はもちろん、ニート・フリーター、障がい者、ワーキング・プア、引きこもりなど、これまでさまざまな理由から企業に雇用されにくかった人たちを、積極的に活用していく。そのためには、通年採用を慣例とし、入社時期をフレキシブルに対応していくことが求められます。また、定年年齢を75歳にまで延長(もしくは定年撤廃)し、長く働き続けることのできる職場環境を実現する必要もあるでしょう。生涯現役社会を実現していくことは、今後日本企業が成長し続けていくうえで不可欠といえそうです。

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