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【ヨミ】ジンジカンリ 人事管理

「人事管理」には極めて広い意味が含まれますが、企業にとって中心となるのは、経営資源である人材を効果的に活用するために行われる、人材の処遇などの一連の管理体制のことです。人事管理業務を遂行する際には、労働関連法規への適切な対応が求められるため、留意しなければならない点が数多く存在します。ここでは、基本となる領域を中心に、人事管理の実務について解説します。

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1.人事管理とは

人事管理の目的

人事管理の大きな目的は、企業における働き方のルールや処遇を決めて適切に運用し、人材を効果的に活用していくことです。また、近年は労働関連法規の改正が頻繁に行われているため、それらに適切に対応することも求められます。いずれにしても重要なのは、人事管理を適切に運用することにより、従業員のモチベーションが高まってより良いパフォーマンスを発揮すること、また、組織全体としての生産性を向上させることです。

ちなみに、「労務管理」は労使の雇用関係について特化した「労働条件」の管理のことを指すため、人材の処遇全体をカバーする「人事管理」とは、持つ意味合いが大きく違います。

近年の人事管理の動向

近年の人事管理の動向を見ると、働き方改革の推進やワーク・ライフ・バランスが求められる中、働き方のルールや処遇に関しては、個別対応も含めて、柔軟な対応を取るケースが増えていることがわかります。この根底には、従業員の持つ能力・スキルを十分に発揮してもらおうとする、企業側の考えがあります。

人事管理においてはこれまでも、システムやソフト、エクセルなどのツールが活用されてきましたが、HRテクノロジーの進展によって、より効率的な運用が可能になりました。従業員一人ひとりの人事管理上の「履歴」をデータベース化(見える化)することで、本人の希望なども考慮しながら、より効果的な配置・異動が行われるケースが増えています。

人は、単なる労働力ではありません。投資対象であると同時に、一人ひとりが豊かな感情や個性を持つ人間です。また、多様化が進んだことで、さまざまな雇用形態の従業員たちがいます。そのため、現在は個別性を重視した人事管理が行われているのです。

2.人事管理の実務

ここからは、人事管理の中でベースとなる制度や仕組みについて解説します。

異動・配置転換・ジョブローテーション

多くの日本企業では、将来の管理職や経営幹部(ゼネラリスト)育成を目的として、採用した人材に社内のさまざまな職場・仕事内容を経験させます。そのため、定期的な異動・配置転換ジョブローテーションが行われます。

異動とは、組織の中で従業員の配置・地位や勤務状態などを変更(配置転換)することです。一方、ジョブローテーションは、一人ひとりの人材育成計画に基づいて、定期的に職場の異動や職務・仕事内容の変更を行うものです。

異動には大きく分けて、同一事業所内での異動、事業所間での異動、海外事業所への異動、出向、転籍という五つの形態があります。また、転居を伴うケースがあるため、年度末を中心に実施されることが多くなっています。異動すると、これまでとは異なる仕事や職場を担当することになるので、従業員の能力開発・人材育成の効果が期待できると同時に、本人にとってもマンネリ化が防止され、新たな仕事・職場で働く意欲が向上する、というメリットがあります。また、新しい人材が職場に入ってくることは、組織活性化にもつながります。

企業が従業員の異動を行う際、個別に同意を得る必要はありません。例えば就業規則の中に「業務上で必要なときは、異動を命令することがある」という規程があれば、内示を出した後に辞令をもって自由に異動させることができます。通知の仕方など、一連の手続きをきちんと踏んでいれば、原則的に従業員が異動を拒否することはできません。しかし、あまりにも業務上の必要性に欠けるなど、本来の目的とは異なる異動は権利の濫用として、無効とされる可能性があるので注意が必要です。なお、異動を命令する際は、人選の合理性にも留意する必要があります。これらの配慮を怠ると、従業員のモチベーションが下がり、他社に転職してしまうことになりかねません。

異動が本人にとって不本意で全く意味の感じられないものである場合や、異動先で上司からパワハラを受けた場合などには、過度なストレスが溜まり、結果的に従業員がうつ病になった、という事例も聞かれます。このような状況を回避するためにも、企業と従業員の双方が、異動について合理的な理由や目的があると認識していることが重要でしょう。

出向・転籍

出向とは、社員としての身分を残したまま、子会社や関連会社、取引先の中小企業などへ一定期間派遣され、出向先での指揮命令の下で働くことをいいます。出向した社員は、出向先においても雇用関係が発生します。つまり、出向元の社員であると同時に、出向先の社員にもなるわけです。出向先は子会社や関連会社であることが大半ですが、地方自治体や経済団体に受け入れてもらうケースもあります。この場合、出向先で培った人脈やネットワークを、帰任した後に有効活用することが期待されていす。

出向には、本人の同意を必要とする「個別的同意」と、就業規則に明記していれば足りるとする「包括的同意」という二つのパターンがあります。一般的には、包括的同意として扱うことが多く、出向を実施する可能性がある場合は、就業規則に「業務の必要に基づいて、出向を命令することがある」旨を明記しておくといいでしょう。ただし、出向を命令する際には、「業務上の必要性があること」「人選に合理性があること」に留意する必要があります。たとえ就業規則に異動について明記していても、正当な理由がないと判断された場合は、人事権の濫用として問題になることもあるからです。

一方、転籍とは、定年前の社員を会社の命令で退職させ、子会社や関連会社などへ転出させる制度のこと。その目的は、経営の多角化の進展、子会社などの経営管理、転籍先との結び付きの強化、ポスト不足対策、定年以降の雇用確保など、さまざまです。転籍後は転籍先の社員となり、転籍先の指示命令に従って働くことになります。転籍に伴って、転籍元との雇用関係は消滅し、新たに転籍先との間に雇用関係が発生します。そのため、給与が下がってしまうケースもありますが、雇用関係が転籍先にある以上、転籍元が差額を補償する必要はありません。逆に、差額補償すると贈与と見なされ、課税対象となるので注意が必要です。

転籍は従業員に労働を命令する権利を第三者に譲渡するものであるため、従業員本人の同意が必要です。民法では同意の取り方を特に規定していませんが、「転籍先の会社名」「労働条件」「転籍年月日」などを明記した転籍同意書を必要書類として用意し、本人の同意の下、署名・捺印させるのが適切です。

社内公募制度・社内FA制度

社内公募制度社内FA(フリー・エージェント)制度は、会社側が主導権を握る通常の異動・配置転換・ジョブローテーションとは異なり、従業員が希望する職場や職種に就くことを自由に申請できるようにし、能力を存分に発揮できる場を提供することによって、従業員本人のモチベーションを喚起させる制度です。一人ひとりのキャリアアップと、適材適所の人事管理を両立させていく取り組みといえるでしょう。

社内公募制度の特徴は、募集をかける部署・部門と同様に、応募する従業員にも自主性があること。そして、誰が採用されるかは競争原理によって決定することです。従業員は自らの判断と責任によって応募するため、通常の異動と比べて納得感は大きく違います。仮に不採用となり異動できなくても、競争原理によるものとして理解できれば、会社の都合だとして根に持つようなこともありません。このように社内公募制では、社内における自主性と競争心を刺激することにより、組織の活性化を実現する異動・配置の仕組みということができます。

一方、FA制度は、一定の資格を持った従業員がFA権を宣言し、社内に向けて自分のやりたい仕事をアピールする、というもの。自ら希望する部署・部門に働きかけることもあれば、自分を必要とする部署・部門からスカウトが来ることもあります。手続きの点から見ると、社内公募制が求人型の異動・配置システムであるのに対して、FA制度は求職型の異動・配置システムということができます。

適材適所の人事管理を実現していくには、通常の異動だけではなく、社内公募制度やFA制度を積極的に活用していくことが不可欠です。そのためにも、制度を企画・運営する人事部としては、「成功例」を多く作っていくための支援策を講じる必要があります。

昇進・昇格(昇進基準・昇格基準)、ガラスの天井

昇進とは、課や部という組織の中で、より上位の組織の長(役職者)になることです。一方、昇格は、「職能資格制度」など社内の等級制度の中で、定められた自分の「要件」を示す「等級」が上がることをいいます。

昇進・昇格ともに基準が定められていますが、具体的な内容は各企業で異なります。一般的には、能力評価や業績評価をはじめ、在籍年数や保有資格、一定の研修受講履歴・異動履歴、試験・面接の結果などを用いるケースが多いようです。

昇進に関しては、「ガラスの天井」という表現をよく聞きます。英語の「glass ceiling」の略で、昇進基準を満たしながら、性別や人種などを理由に低い地位に甘んじることを強いられている状態を、キャリアアップを阻む「見えない天井」になぞらえた表現です。日本では特に、女性の管理職への登用が進まないことを表す際に用いられます。男女雇用機会均等法が1986年に施行され、その後、何度かの改正を経て、今や企業では昇進・昇格に関する制度やルールに男女の制限はほぼありません。しかし、未だにそれを阻む周囲の無理解や偏見、女性への配慮が欠ける労働慣行が残されているのも事実であり、大きな課題となっています。

降職・降格(降職基準・降格基準)

昇進・昇格がある一方で、降職(社内の地位が下がること)、降格(資格等級の格付けが下がること)を、制度として設けている企業もあります。一般的に、降職基準・降格基準は、「懲戒処分」に値する行為があったとき、役職・等級の「要件」を満たさなくなったときなどに設定されていて、就業規則などに明記しておく必要があります。特に懲戒処分は、あらかじめ就業規則に「処分理由」が書かれていなかればなりません。また、降格によって賃金がカットされる場合には、本人の同意または就業規則の根拠が必要となるので、注意が必要です。

格付け(等級)制度・飛び級制度

格付け(等級)とは社内における序列(ランク)のことで、これによって処遇が異なります。また、格付けの仕組みは、評価の対象を何にするかによって決まります。例えば、年齢や経験といった「年功」を評価対象にすれば年功の序列、職務の遂行に期待される「能力」を評価対象にすれば能力の序列、業績や実績を重視した「成果」を評価対象にすれば成果の序列となります。

通常、序列は「1等級」「2等級」「3等級」といった形で示されます。等級基準書や等級要件書などに定められた格付けごとの基準・要件を満たしているとの評価を受けることで、従業員は「1等級」から「2等級」、「2等級」から「3等級」などと、序列の階段をのぼっていきます。この仕組みが「格付け(等級)制度」です。日本における格付け制度では、「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の三つが代表的です。

【代表的な格付け(等級)制度】
・職能資格制度
仕事をするために必要な能力(職務遂行能力)をベースにした制度。職務遂行能力を格付けし、それに合致した従業員に対して昇進・昇格、賃金、能力開発などを決定し、運用されます。また、その格付けに応じて決まる賃金が「職能給」。多くの日本企業で用いられている格付け制度です。
・職務等級制度
職務分析の結果を元に「職務記述書」を作成し、そこに書かれた内容に限定して審査を行い、評価を決定する制度。職務ごとに明確な(具体的な)職務の記述・定義付けがあることから、年齢に関係なく明快な評価を行うことができます。このような職務評価に従って賃金を決めるのが「職務給」。欧米では、多くの企業が導入しています。
役割等級制度
経営ビジョンや経営戦略と連動した「仕事の基本的役割」を調査し、「役割価値」を明確化して処遇を行う制度。従業員は自ら目標とする「役割」を決め、さらに「チャレンジ目標」(成果責任)を付加し、評価基準が決まります。その評価によって賃金を決めるのが「役割給」です。

ところで近年、「飛び級制度」を導入する企業が増えています。飛び級制度とは、格付け制度で定めた等級を飛び越えて、より上位の等級へと引き上げる制度です。飛び級制度を導入することは年功序列から脱し、早期の段階で優秀な人材を抜てきすることが可能なため、人と組織に活力を与えるといわれます。

日本企業の場合、職能資格制度を導入しているケースが多いわけですが、「職務遂行能力の基準で評価するので、長期的な能力開発ができる」「ゼネラリストの育成に適している」などのメリットがあります。一方で、「実際の運用では年功に陥りがち」「実際の業績が評価されにくい」「若くて優秀な人材のモチベーションが上がらない」などのデメリットも指摘されています。

早期退職優遇制度・自己都合退職、退職準備プログラム

早期退職優遇制度は、定年を迎える前に退職を促す制度のこと。退職に際しては退職金の割増があるなど、何らかのインセンティブが発生します。その目的は、大きく分けて二つあります。一つは、組織内の人材の新陳代謝を目的に、中高年層のローテーションを活発化すること。もう一つは、業績の悪化など会社側の都合により、リストラを行うこと。ここでは、前者のケースについて解説します。

早期退職優遇制度の適用対象者の対象となる年齢を下げることは、あまり適切ではありません。中高年層の生活設計の支援という趣旨もあるからです。実際、年齢の下限を「45歳程度」とする企業が多くなっています。また、勤続年数については10年以上、15年以上という条件を設けるのが一般的です。制度の運用でポイントとなるのは、退職金の優遇方法。退職金の優遇に魅力がないと、そもそも利用者が現れません。一方、あまり条件を良くすると利用者が増えてしまい、退職金の負担が重くなります。そのため、優遇条件は慎重に決めなければいけません。代表的な退職金の優遇方法は、以下の通りです。

【退職金の優遇方法(例)】
  • 自己都合退職ではなく、会社都合退職の場合の支給率を使用して、退職金を算出する
  • 退職金の一定パーセントに相当する額を上積みして支給する
  • 退職時の年齢区分に応じて、退職金の一定パーセントに相当する額を上積みして支給する
  • 一定額を特別加算する
  • 退職時の年齢区分に応じて、一定額を特別加算する

退職には会社都合退職のほかに、自己都合退職があります。自己都合退職は、従業員側が転職、結婚、妊娠・出産、転居など個人の事情や都合を理由に、自分の意思で退職を申し出るもので、退職の中では最も多いケースです。企業側としては従業員に急に辞められると仕事に支障が出るため、「自己都合退職の場合、会社の承認があるまでは従前の業務に従事しなければはならない」など、規定を設ける必要があります。しかし、民法627条の定めにより、従業員が退職を申し出て2週間経過すると会社の承認・不承認にかかわらず雇用関係が終了することになるので、あまり厳しく規制するのは問題です。それよりも、円満な退職を進めていくために、残った有給消化を済ませた日を退職日とするなど、きめ細かな対応を心掛けていくことが大切です。なお、同じ退職でも会社都合と自己都合では、雇用保険(失業手当)の取り扱い(給付制限)が異なるので、注意が必要です。

平均寿命が大きく伸びて「人生100年時代」を迎え、企業が従業員の退職後のセカンドキャリアを考える必要性が高まっています。そのため、専門部署を設置して、定年退職前の従業員を対象に、退職後の生活や健康、年金や職業指導などに関する相談に応じたり、再就職のための教育訓練などを行ったりする「退職準備プログラム」の導入企業が増えています。

定年制・定年延長・役職定年制

定年制とは、「満65歳に達した日の翌日に退職する」などとあらかじめ定めておき、その年齢に達したら自動的に労働契約が終了する(退職する)制度です。このように、一定の年齢に達した従業員が退職することによって、社内における年齢構成が高くなることを防ぐことが可能となります。しかし、労働力人口が減少する中、近年は定年年齢を延長し、高年齢者を活用する動きが活発化しています。実際、厚生労働省の調査を見ると、定年を65歳以上に延長する企業の割合は2017年には17.8%に上り、10年前の6.2%と比べると約3倍にまで増えています。

一方で、「役職定年制」を導入する企業が増えています。役職定年制とは、役職者が一定年齢に達したら管理職ポストを外れ、専門職などに異動する制度のこと。定年年齢が延長される一方で、それに伴う従業員の高年齢化によるポスト不足などが懸念されるため、その対処策として役職定年制の導入が進んでいるのです。

制度の運用で注意しなければならないのは、役職を離れた中高年者員に対するフォローアップです。役職を離れ、賃金も減少したことで、働くことへのモチベーションがダウンしている中高年は少なくありません。新しい仕事がスタートするに当たって、本人に求める役割を明確にすることが重要です。その際には、これまで培ってきたキャリアや専門性が生かせるよう、できるだけ配慮をすること。そうすれば組織に貢献している実感や帰属意識が深まり、新しい仕事に前向きに取り組むことができます。

高年齢者雇用確保措置・再雇用制度

高年齢者の活用が求められる中、「高年齢者雇用安定法」の定めにより、高年齢者雇用確保措置が設けられました。高年齢者が年金の支給が開始される年齢まで働き続けることができるよう、65歳未満の定めをしている会社では、「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の定めの廃止」にいずれかの措置を講じなくてはならなくなりました(義務化)。では、実際に企業はどのように対応しているのでしょうか。厚生労働省が公表している「平成29年『高年齢者の雇用状況』集計結果」を見ると、最も多いのは「継続雇用制度の導入」で、全体の80.3%を占めています。一方、正社員の立場を継続する「定年の引き上げ」は17.1%、「定年の定めの廃止」は2.6%となっています。

ちなみに、国家公務員の定年も65歳まで段階的に引き上げられることになりました。2017年6月に閣議決定した「骨太の方針」で、高年齢者の就業促進と公務員の定年延長の検討が盛り込まれたからです。

ところで、「継続雇用制度」とは、現在雇用している高年齢者が希望すれば、定年後も引き続き雇用する制度のことです。「定年退職者(到達者)の優れた能力、経験、人脈を有効に活用できる」「定年前の中高年従業員の勤労意欲を向上させることができる」「人手不足に対応できる」などのメリットがあります。継続雇用制度を導入する場合、一定の経過措置の下、原則として希望者全員を対象とする必要があります。この場合の希望者とは、定年後も引き続き働きたいと希望する従業員のこと。ただし、就業規則に定める解雇・退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合は、継続雇用しないことができます。

また、継続雇用制度には、定年でいったん退職とし、新たに雇用契約を結ぶ「再雇用制度」と、定年で退職とせず引き続き雇用する「勤務延長制度」があります。どちらかを採用するかは各社の置かれた状況で判断すべきでしょう。今後、高年齢者活用をどのように進めていくかについては、各企業が置かれた状況によって異なりますが、ポイントは多様な個人のニーズや制約条件(給与水準、労働時間、休日・休暇、異動、転居可能範囲、職種転換の可否等)に合わせて、柔軟に雇用区分や賃金水準を設定できる仕組みを設けることです。そのためにも、経営トップが「高年齢者活用方針(ポリシー)」を宣言した上で、個々の従業員と会社の双方のニーズを踏まえた雇用区分横断的な人事制度の仕組みを構築し、さらに雇用区分間の移動があったときに、賃金を合理的に決定する仕組みの整備が求められます。

マイナンバー制度

2015年10月から開始されたマイナンバー制度。国民一人ひとりのIDともなる個人番号で、社会保障や税、災害対策に関する事務に利用されます。企業は事務処理をする行政機関や地方公共団体に、従業員などのマイナンバーを提供する役割を担っています。情報管理の点からも、マイナンバーを安全に扱うには、社内規定の見直しやシステムの対応、従業員研修など、的確な事前準備が求められます。

事前準備はまず、「取り扱い担当者」を決定することから始めます。次に、マイナンバー制度の対象業務を担当する部署や人物を決め、事前の研修や勉強会などを実施します。その上で、社内体制の整備を進めるのです。特に、マイナンバーの漏えいや不正使用を防ぐため、社内の管理体制や情報システムを整備することは大変重要です。

続いて、従業員に周知します。マイナンバー通知カードの保管、個人番号カード取得の奨励、扶養家族のマイナンバーの確認・取り扱いの方法など、従業員への周知は徹底して行うべきです。これらの作業が終了した時点で、「マイナンバー取り扱いのルール」(取得→保管・管理→利用→廃棄など)を作成します。その後、マイナンバー取得の対象者を特定・確認し、マイナンバーを取得する、という流れです。

人事部門は、年末調整や社会保険に関する事務などで従業員のマイナンバーを取り扱うことになりますが、その際、特に以下の点について注意が必要です。

  • マイナンバーを含む個人情報(特定個人情報)が漏えいしないよう、適切な安全措置を講じること
  • マイナンバーが関わる業務について、その手順や方法を整理すること

これらの安全管理措置や業務手順・方法は、各企業の情報管理に関する規定やマニュアルに記載されているはずですから、特定個人情報を扱う人事担当者は、事前にそれらに目を通しておく必要があります。

今後、マイナンバー制度は労働・社会保険や税関係の事務に幅広く使われていきます。人事担当者は、マイナンバー制度の動きを注視し、自社の事務手続きや情報システムの見直し、従業員への制度説明など、きめ細かく対応していくことが求められます。

パルスサーベイ

パルスサーベイとは、簡易的な調査を毎月、毎週、毎日など、短期間に繰り返し実施する調査手法です。パルス(pulse)は脈拍のことで、パルスサーベイは脈拍をチェックするように組織と個人の関係性の健全度合いを測ることを目的に、従業員満足度調査などで用いられています。その場でちょっとしたアンケートを行い、リアルタイムに観測して小さな改善を重ねていくというアプローチで行うため、人事管理の効果・効用を測定するためのバックデータの取得に有効です。

これまでは年に1回程度、じっくりと時間をかけて行うセンサス(census)が社内調査の中心でした。ITの進化に伴い、これからは簡便に、いつでも、どこでも調査・分析・検証が可能なパルスサーベイが、人事制度の運用において欠かせないツールとなることでしょう。

3.人事管理に関する法律

人事管理関連法律(目的・内容・ポイント)

人事管理を適正に行うためには、労働基準法、労働契約法などに関する法令の知識が必要です。以下に、特に重要な法律と、そのポイントを挙げます。

【人事管理に関連する主な法律】
・労働基準法
労働時間、休日、賃金など、労働条件の最低基準を定めています。雇用形態に関わりなく、社内で働く全ての従業員に適用されます。
・労働組合法
労働者が使用者との交渉で、対等の立場に立つことを促進することによって、労働者の地位を向上させることを目的としています。
・労働契約法
近年、個別労働関係紛争が増加している中、労働契約についての基本的なルールを明らかにすることで、個別労働紛争を未然に防止し、労働者の保護を図り、個別の労働関係の安定を目指しています。
・労働安全衛生法
職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的としています。
・育児・介護休業法
育児や介護をしなければならない労働者が、円滑に仕事と両立できるよう配慮し、働き続けられるよう支援するものです。
・男女雇用機会均等法
職場における男女の差別を禁止し、募集、採用、昇給、昇進、教育訓練、定年、退職、解雇などの人事管理面で、男女とも平等に扱うことを定めています。
・高年齢者の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)
高年齢者の安定した雇用の確保等を図るため、事業主が定年の引き上げなどの措置を講じると共に、高年齢者の再就職の促進や定年退職者等の就業機会を確保する措置の充実を要請しています。
・短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)
短時間労働者に対する労働条件差別撤廃や均衡の取れた処遇を実現するために、事業主の義務や国の援助を定めています。
・労働者災害補償保険法
業務上の事故、通勤途上の事故で、負傷したり病気になったりした労働者に対して必要な給付を行うことを定めています(労災保険)
・雇用保険法
失業した場合などに、労働者の生活の安定を図るため、また再就職を支援するために給付を行うことを定めています。
・健康保険法
業務とは関係のないケガや病気などに対して、療養の給付や休業期間中の現金給付を行うことを定めています(失業保険)
・厚生年金保険法
高齢、傷害、死亡などで働けなくなったとき、本人または遺族に必要な給付を行うことを定めています。
・介護保険法
一定の年齢以上になって介護が必要になったとき、医療や福祉サービスを提供することを定めています。

4.人事管理の見通し・課題

現状の人事管理の問題点

これまでの人事管理は、会社が定めた働き方やキャリアパスに従業員を適合させていく画一的で硬直的なケースが多く見られました。あるいは、他社の人事制度や施策を模倣したり、世間水準に合わせて自社の昇給を決定したりするなど、横並びを重視した人事管理が少なくありませんでした。しかし、現在はそのような人事管理を行っていては、従業員のモチベーションは上がらず、期待するパフォーマンスを実現できません。

特に最近は、若い世代を中心に、従業員は自分に合った働き方やワーク・ライフ・バランスを実現したい、自分なりの個性や能力を発揮したい、という意識が強くなっています。また、経営のグルーバル化が進展し、ダイバーシティが求められるようになってくると、さまざまな価値観やプロフィールを持った人たちが会社組織の中でチームを組み、働くようになります。現在、こうした点でいかに効果的な人事管理を行えるかが、多くの企業で問題となっています。

適正な人事管理に向けて

では、このような環境変化を受けて、企業はどのように対応していけばいいのでしょうか。まず、これからの人事管理は、従業員一人ひとりが働き方やキャリアパスを選択できるような多様性と柔軟性を持ったものへと変革しなければなりません。そうなると、それぞれの会社が自社の経営ビジョン・経営戦略の実現に資するために、より独自性を重視した人事管理を目指していくことになるでしょう。

このように独自性が重視されることによって、各社の人事管理の考え方や進め方に、大きな違いが生じるようになります。また、人事管理に関する考え方や進め方の違いが、従業員の能力開発やモチベーションの差となって現れ、それが会社の将来を大きく左右していく源泉となります。そういう意味でも、独自性を持った人事管理をいかに実現するのかが、これからの人事部門には強く求められるでしょう。

それと同時に、企業も社会を構成する一員であることを忘れてはなりません。法令を遵守する、雇用の維持・拡大に努めるなど、企業は社会に対して一定の責任を担っているわけで、このような社会的責任(CSR)を果たすことも、これからの人事管理を行う上で欠かせない要素と言えます。そのためにも、コンプライアンスを重視した人事管理のあり方を各社が創り出し、適正に運用していくことが重要です。

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