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【ヨミ】エンゲージメント エンゲージメント

「エンゲージメント」とは、従業員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」をあらわすものと解釈されますが、より踏み込んだ考え方としては、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」のことをいいます。近年、若年層の職業観の変化や終身雇用制度の崩壊、少子化に伴う人手不足が進み、企業は長期的観点から人事制度や人材育成を考える必要性に迫られています。ここでは「エンゲージメントされている組織とは何か」を明確にした上で、従業員と組織のエンゲージメントを高めるために必要なポイントを整理します。(2007/11/19掲載)
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1. エンゲージメントとは

「エンゲージメント(engagement)」は、「婚約、誓約、約束、契約」を意味する言葉です。ここから派生して、人事領域におけるエンゲージメントでは「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係」という意味合いで使われています。

その根底には「個人の成長や働きがいを高めることは、組織価値を高める」「組織の成長が個人の成長や働きがいを高める」という考え方があります。このように、企業と従業員の結びつきが強い状態を指して「エンゲージメントが高い」と表現されます。

エンゲージメントが高い組織には、従業員一人ひとりが企業や組織を信頼し、自身と事業の成長に向けて意欲的に取り組むという特長があります。つまり、組織力が強まり、ひいては業績の向上が期待できるわけです。

エンゲージメントとロイヤルティ、従業員満足度の違い

エンゲージメントと似た言葉に、「ロイヤルティ(Loyalty)」と「従業員満足度」があります。

  • ロイヤルティ(Loyalty):忠誠心という意味。従業員の企業に対する忠実度を指す
  • 従業員満足度:従業員が待遇や環境、報酬に対してどれだけ満足しているかを示す

エンゲージメントとの違いは、結びつきの方向性です。ロイヤルティは、従業員が企業や組織に対して忠誠心を持って行動するという上下の関係性にあります。従業員満足度は、処遇や環境に対する評価であり、企業側の取り組みに応じて満足度が変わります。

これらに対して、エンゲージメントは、企業と従業員が双方向の関与によって結びつきを強めていく点が大きく異なっています。

エンゲージメントが注目される背景

近年、エンゲージメントが人事領域で注目される背景には、日本の人事制度の変化があります。

人材の流動化

終身雇用や年功序列といった従来の人事制度から成果主義型の報酬制度へと移行する企業が増えるにしたがって、労働者側によりよい待遇や環境を求める動きが活発化し、人材の流動化が進みました。

さらには副業解禁や情報技術の発展によるリモートワークの進化など、働き方が多様化。特にキャリアアップ志向が強い優秀人材や、理想の働き方や生き方を求める人材は、自身にとって最適な職場を求めて転職するようになりました。

その結果、多くの企業が将来を担う経営層候補の人材流出に直面しています。若年層の早期離職率が上昇するなど人材不足も深刻化しており、人材の確保と育成を経営の最重要課題として挙げる企業が増えています。

こうした背景から、組織が個人の成長を後押しし、長期的な業績向上を目指す人事施策の重要性が認識されるようになりました。そのキーワードとなるのがエンゲージメントです。

「エンゲージメント」が高い組織は、生産性が高いことが判明

「エンゲージメント」が広く知られるようになったのは、エンゲージメントに関する調査が進んだことも背景にあります。人材コンサルティングを行う株式会社リンクアンドモチベーションと慶應義塾大学の共同研究によると、エンゲージメントが高い組織は営業利益率および労働生産性にプラスの影響をもたらすことがわかりました。

また、『日本の人事部 人事白書2019』においても、エンゲージメントが重要だと考える企業は合わせて9割にのぼり、業績が良い企業ほどエンゲージメントを重要視する傾向が見られます。

つまり、エンゲージメントの高い組織を実現できれば、人材は組織に定着し、企業の業績や生産性の向上が期待できます。個人と企業、双方の成長に貢献するエンゲージメントは、人手不足・人材流出が課題となる現状において、重要な経営戦略の一つになっています。

2. エンゲージメントがもたらすメリット

では、エンゲージメントを高めることで、具体的にどのような効果を得られるのでしょうか。

『日本の人事部 人事白書2019』によると、「エンゲージメントが高まったことで得られた効果」でもっとも多いのは「組織の活性化」で、エンゲージメントが「高い」「どちらかというと高い」と回答した企業の55%以上が回答しています。次に、「従業員モチベーションの向上(43.8%)」「業績の向上(39.8%)」「離職率の低下(定着率の向上・37.5%)」と続きます。

日本の人事部「人事白書2019」p.277より引用

組織の活性化

エンゲージメントの高い組織では、従業員の仕事に対する自発的な関与や熱意が見られます。職場の問題を自ら解決したり、積極的に意見を出したり、事業と自身の成長に向かって活発に動きがある組織風土を生み出します。

従業員のモチベーション向上

エンゲージメントは、従業員自身が何を期待されているかを認識し、かつ成長機会に接するなかで、組織に貢献できている実感がある状態で生まれます。エンゲージメントが高まると、従業員は自分の仕事と業績、顧客満足度のつながりを感じ、モチベーションが向上します。

生産性の向上

エンゲージメントが高い状態とは、企業の方向性やビジョンに共感していることを示します。職務においてやるべきことを自発的に模索し、行動に移す意欲が十分にある状態といえます。組織への愛着も強まるため、事業課題に対して積極的に取り組む姿勢が生まれます。こうした一つひとつの行動が、生産性の向上をもたらします。

従業員の定着率の向上

エンゲージメントは、ビジョンへの共感や職場環境へのコミットメント、やりがいのある仕事など、さまざまな要素から醸成されます。エンゲージメントが高い従業員は、労働条件だけのつながりではなく、そこで働くことの価値を見出しています。従って、人材流出を防ぎ、定着率の向上が期待できます。

3. 職場のエンゲージメントを高めるためのポイント

エンゲージメントを高めるには、給与アップや労働環境の改善だけではなく、従業員が企業のビジョンを理解したり、企業が従業員の成長を支援したりすることによって、双方が理想とする成長の方向をすり合わせる必要があります。「エンゲージメントが高い職場とは、どのような状態か」を整理した上で、エンゲージメントを高めるポイントを四つ紹介します。

エンゲージメントが高い職場とは

「エンゲージメントが高い」状態を、企業はどのようにとらえているのでしょうか。『日本の人事部 人事白書2019』のアンケートによると、以下のようになっています。

【エンゲージメントが高い状態とは】
  • 「仕事そのものへの情熱・熱意」62.9%
  • 「会社全般への満足感」61%
  • 「会社への愛着」60.5%
  • 「職務への満足感」58.4%
  • 「仕事の成果が会社に大きく貢献している状態」42.1%

この結果から見えるのは、エンゲージメントが高い職場では、環境や労働条件に満足しているだけでなく、従業員が仕事に意欲を持ってやりがいを感じていることです。例えば、「従業員が企業の成長に向けて意欲的に働いている」「サービスや商品を向上させよう、良いものを提供しようという心構えがある」「働きやすい職場を作ろうという能動的なかかわりがある」といった職場が、エンゲージメントが高いと考えられます。

エンゲージメントの三つの観点

法政大学大学院 政策創造研究科の教授・研究科長の石山恒貴氏は、エンゲージメントには次の三つの観点があると解説しています。

  • ワーク・エンゲージメント:仕事に対する熱意がありモチベーションが高い状態
  • 組織コミットメント:企業への満足度が高く愛着を持っている状態
  • 職務への満足感:仕事内容そのものに満足している状態

ただし、どういった状態を「エンゲージメントが高い」と評価するかは、企業によって異なります。エンゲージメントの高い組織づくりに取り組む際は「どの状態を目標とするか」を具体的にし、最適な施策を検討することが重要です。

エンゲージメントを高めるためのポイント

エンゲージメントを高めるには、個人の仕事の志向性に沿った環境や機会の提供を行う必要があります。多様性や価値観を共有・評価し、自分たちが何をしたいのか、どうなりたいのかを対話することが、エンゲージメントの高い組織を実現する上で非常に重要です。具体的には、以下の観点が必要になります。

  1. ビジョンへの共感
  2. やりがいの創出
  3. 働きやすい職場づくり
  4. 成長支援
ビジョンへの共感

ビジョンへの共感は、エンゲージメントを高める上で欠かせない要素です。ビジョンとは、企業が進むべき方向性を示すものです。ビジョンへの共感を得られていなければ、従業員が勝手な方向に進んだり、何のために仕事をするのか不明瞭になったり、目的意識が薄くなってしまいます。

ビジョンへの共感をうながすには、定期的に従業員に対して情報を発信し続ける取り組みが必要です。例えば、株式会社サイバーエージェントでは「ヒストリエ」と呼ばれる社史の作成を通じて従業員とビジョンの共有を進め、企業文化を醸成しています。ヒストリエには、子会社の情報や各種プロジェクトの成功例・失敗例などが掲載されており、従業員はサイバーエージェントグループがどのような方向を目指しているのか、リアルタイムで感じ取ることができます。

やりがいの創出

エンゲージメントを高めるには、仕事のやりがいを創出する仕組み作りも重要なポイントになります。社内イベントや表彰式を実施したり、報酬アップを図ったりすることは、直接的で短期的なやりがいを従業員に感じさせます。

しかしながら、イベントや報酬の改善だけでは、一時的な効果で終わる可能性もあります。長期的な視点で従業員にやりがいを感じてもらうには、それぞれの得意領域や意向を見極め、それぞれの「持ち味」を職場で活用する取り組みが重要です。

例えば、能力や経験値に応じた「適材適所」の推進や、挑戦する機会を与える社内フリーエージェント制などが挙げられます。このほか、企業への貢献を適切に評価する人事制度の導入、権限委譲による若手のやりがいの創出といった施策も有効な方法です。

働きやすい環境づくり

組織へのコミットメントに大きく影響するのが、働きやすい環境です。仕事への意欲を継続するには、心身ともに健やかな状態を保つ必要があります。心の面では、社内のコミュニケーションが活発化するほど、組織への愛着心が生まれやすくなります。体の側面に取り組むための「健康経営」「ワーク・ライフ・バランスの向上」は、エンゲージメントにおいても重要です。

成長支援

職務への満足度を高め、「ワーク・エンゲージメント(仕事に対する熱意)」を生み出すには、それぞれの従業員が成長を実感できる仕組み作りに取り組む必要があります。スキルアップやキャリア形成に役立つ研修を実施するなど、それぞれの成長を支援します。

また、エンゲージメントの高い組織作りでは、上司のコミュニケーション力も重要です。マネジメント力やリーダーシップの強化は、組織のコミュニケーションを円滑にし、エンゲージメントの高い組織作りに役立ちます。

4. エンゲージメントサーベイとは~その活用方法

従業員のエンゲージメントを高めるには、現状を可視化し、注力すべき課題を具体的にすることが重要です。その手段の一つである社内調査「エンゲージメントサーベイ」について、概要と活用方法について見ていきます。

エンゲージメントサーベイとは

エンゲージメントサーベイとは、従業員と企業間のエンゲージメントの状態を数値化し、現状を把握する社内調査です。アンケート形式で、質問に答えてもらいます。従業員の不満解消を目的とする従業員満足度調査とは、質問内容が異なる点に注意が必要です。

【エンゲージメントサーベイの質問項目例】
  • 仕事上で、自分に何が期待されているかを理解している
  • 自分の仕事を正確に遂行するために必要な設備や資源を持っている
  • 仕事をする上で、もっとも得意とすることを行う機会を毎日持っている
  • 最近1週間で、良い仕事をしていると認められたり、褒められたりした
  • 上司または職場の誰かが自分を一人の人間として気遣ってくれる
  • 仕事上で、個人の成長を応援してくれる人がいる
  • 仕事上で、自分の意見が頼りにされていると感じる

エンゲージメントを阻害する要因は、企業によって異なります。ビジョンの共有がネックになっているケースもあれば、上司のマネジメントのやり方が原因で部下が成長を実感できていないケースもあります。このように、目に見えにくい課題を明らかにするのがエンゲージメントサーベイです。

サーベイを実施する頻度は、一般的には年に1回のペースが多くなっています。ただし、『日本の人事部 人事白書2019』を見ると、「業績が市況より良い」とする企業の28.6%が「半年に一回」のペースで実施しています。「市況と同等」「市況よりも悪い」と回答する企業と比較して、1.5倍以上高いという結果です。

より良い組織を作るには、現状把握と改善のスピードを上げる対応力が求められていると見ることもできます。組織の状態は常に変化していることを前提に、職場内のギャップやズレに迅速に気づき、対策をとることが重要といえます。

エンゲージメントサーベイの活用例

エンゲージメントサーベイで得た調査結果は、以下のように活用できます。

●フィードバックに生かす
個人、部門、管理職ごとにフィードバックし、意識づけや改善策の実施に役立てることができます。

●人事施策に活用する
人事施策や評価制度の見直しや改善、組織開発に役立ちます。

●従業員フォローに活用する
数値が低下している従業員のフォローに生かすことができます。

このように、制度改定の参考にしたり、各階層に必要なアクションに落とし込んだりすることができます。

5. 「対等な関係性」がエンゲージメントを高めていく

従来、日本の企業は、終身雇用制度により従業員との結びつきを維持してきました。しかし、働き方が多様化し、人材の流動化が進む現在では、良い労働条件を提示するだけでは従業員のエンゲージメントを高めることは難しくなっています。

実際、エンゲージメントを高める上での課題として多く聞かれるのは、「経営層がエンゲージメントの重要性について理解していない」「マネジメント層の力不足により従業員のコミットメントが薄い」といった声です。まずは、経営層がエンゲージメントについての理解を深め、メッセージをしっかり届けていくことが出発点です。

エンゲージメントの本質は、双方向の関与による互いの成長にあります。企業側からの一方向的な接し方ではなく、従業員それぞれの「個を理解する」ことが成功の鍵を握っています。

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