企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】ジェージガタカーブ J字型カーブ

組織行動学では、個人が企業など所属する組織に対して抱く愛着や同一視などの心理を、「組織コミットメント」と呼びます。「J字型カーブ」とは、入社から10年目くらいのキャリアプロセスの初期から中期の間に見られる、組織コミットメントの変化のパターンをモデル化したものです。2000年代初頭までの研究によると、ビジネスパーソンの組織コミットメントは多くの場合、入社当初の比較的高い水準から数年後には急激に低下し、停滞期を経て、キャリア中期から徐々に回復・上昇していくことが確認されており、この変化の軌道がアルファベットの「J」を斜めに傾けた形状に近いことから、組織コミットメントの「J字型カーブ」として広く知られるようになりました。しかし現在では、雇用慣行や人事制度の変化により、J字型カーブは必ずしも成立しないと言う声も聞かれます。
(2016/9/9掲載)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

J字型カーブのケーススタディ

急落し回復する組織コミットメントの変化モデル
雇用環境の変化で現在は成り立たないとの指摘も

組織コミットメントは、ビジネスパーソンの自社への愛着や同一視など、個人の組織に対する心理的な関わりを表す組織行動学のキーコンセプトの一つで、これまでに国内でも多くの研究がなされてきました。その組織コミットメントの度合いが、キャリアの発達にともなって、どのように変化するかをモデル化したものが「J字型カーブ」の仮説です。神戸大学大学院経営学研究科の鈴木竜太教授は、1990年代後半に実施した組織コミットメントに関する調査結果を分析し、「J字型カーブ」が現れる期間を以下の四つの段階に分けて説明しています。

新卒採用であれ、中途採用であれ、人は会社に入ると多くの場合、入社前に抱いていた組織や仕事への“期待”と実際に社内で直面するさまざまな“現実”とのギャップから、「リアリティー・ショック」と呼ばれる幻滅の心理を味わいます。その幻滅感の影響で、入社直後から勤続2、3年目までの間に、組織コミットメントがいったん大きく落ち込むのが「J字型カーブ」の第1段階。いわゆる「組織社会化」の過程と重なる時期です。この組織社会化の過程を潜り抜けると第2段階で、仕事や職場への慣れなどもあり、幻滅はもうしないものの緊張感は薄れ、組織コミットメントの度合いは低いまま停滞します。第3段階は、キャリアの初期から中期にさしかかる頃。勤続7、8年目あたりに訪れ、ここで組織コミットメントは回復へと転じます。鈴木教授は、転機の要因として、この時期に行われることが多い昇格とそれに伴う責任ややりがいの自覚を挙げています。そして7、8年目以降の第4段階に入ると、職位が上がるたびに組織人としての使命感や自分自身の存在意義が高まるので、組織コミットメントは右肩上がりのラインで推移し、J字型を描くというのが、2000年代初頭の鈴木教授の分析でした。

「J字型カーブ」は、組織行動学の研究者の間ではよく知られた重要な理論であり、その根拠となった諸研究の調査から20年近く経過した現在においても、説得力をもつ部分が少なくありません。しかし、調査対象が入社から定年まで一つの会社で勤め上げるような人に限られていたり、終身雇用や年功制を核とする伝統的な日本型雇用システムが分析の前提となっていたりしているため、その後、現在に至るまでの雇用慣行や人々の就労観、人事制度などの変化を考えると、「J字型カーブ」は必ずしも現状にはそぐわないのではないか、との指摘もなされています。実際、最近の研究によると、勤続10年目あたり、年齢でいうと30代前半に、仕事や将来への不安、組織との葛藤、私生活の環境変化などから自身の現状に疑問や迷いが生じる「キャリアクライシス」を経験し、組織コミットメントをふたたび大きく低下させてしまう人が多いのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

あわせて読みたい

組織社会化
組織研究において、新しく組織に加わったメンバーが、組織の目標を達成するために求められる役割や知識、規範、価値観などを獲得して、組織に適応していくプロセスのことを「組織社会化」といいます。個人が組織に参入するときは、必ずこの組織社会化の過程を通過しなければならないと考えられています。 (2012/5...
組織再社会化
組織研究において、組織に新しく参入した個人がその成員となるために、組織の価値観や規範を受け入れ、職務遂行に必要な技能を獲得し、組織の人間関係に適応していく過程を組織社会化といいます。これに対し「組織再社会化」とは、すでにある組織の一員として組織社会化され仕事を行ってきた人が、転職などの組織間移動に...
キャリアクライシス
「キャリアクライシス」とは、ビジネスパーソンがそれまでに培ってきたキャリアを失いかねない危機、あるいはそうした危機に直面することを意味します。長いキャリアライフでは、年齢によって誰もがキャリアクライシスに陥りやすい時期があるといわれ、特に20歳代後半から30代前半にかけては、仕事や将来への不安、組織...

関連する記事

中村和彦さん: 組織に関する問題を「人」「関係性」に働きかけることで解決 いま日本企業に必要な“組織開発”の理論と手法とは(後編)
組織開発をどのように進めていけばいいのか、また、その際に人事部はどう関わっていけばいいのかなどについて、組織開発の実践に取り組んでいる研究者の南山大学教授の中村和彦さんに具体的な話をうかがっていきます。
2015/09/11掲載キーパーソンが語る“人と組織”
人事マネジメント「解体新書」第38回 学習する組織“ラーニング・オーガニゼーション”を実現する方法(前編) ~自ら学ぶ風土を作り、持続的成長を実現していくために
企業を取り巻く経営環境の急激な変化は、ビジネスサイクルを短縮化し、知識・技術の更新スピードを速めるなど、組織に対して絶え間ない「変革」を求めている。この変革を実現するには、組織として継続的に学習を続け、改善を繰り返していくことが必要だ。これが近年、「学習する組...
2010/06/28掲載人事マネジメント解体新書
中村和彦さん: 組織に関する問題を「人」「関係性」に働きかけることで解決 いま日本企業に必要な“組織開発”の理論と手法とは(前編)
なぜ組織開発が近年注目されているのか?日本企業がどのように組織開発を進めていけばよいのか?組織開発の実践に取り組んでいる研究者の南山大学教授の中村和彦さんに、詳しいお話を伺いました。
2015/09/04掲載キーパーソンが語る“人と組織”

関連するQ&A

これからの組織のあり方
マネジメント 組織論の質問です。 自律型組織、ティール型組織などへの志向が一つのメインストリームとしてあると思いますが、一方で従来型の軍隊式組織、官僚型組織もその有効性は完全には否定出来ないと思います。 自律型、軍隊型それぞれの組織が有効に機能するのは、それぞれ一定の条件下によると思いますが、この点...
今どきの人事部の組織図とは
最近、旧来の人事部で使われていた組織名称が少なくなり、カタカナ、英語表示のものが多くなってきているように思います。 日本の社員数1000名以上の会社で、イケてる人事部の組織図、組織名称のトレンドをできれば旧来の名称と比較する感じで教えて頂ければ幸いです。
組織マネジメントの評価項目
お世話になっております。 人事考課の評価項目の一つに、管理職者に対して、組織マネジメントの評価を考えております。 一般的な組織マネジメント能力に関する評価項目をご教授いただけますでしょうか。 宜しくお願い致します。
新たに相談する
相談する(無料)

「人事のQ&A」で相談するには、『日本の人事部』会員への登録が必要です。

新規登録する(無料) 『日本の人事部』会員の方はこちら
業務に関するちょっとした疑問から重要な人事戦略まで、
お気軽にご相談ください。
人事・労務のプロフェッショナルが親切・丁寧にお答えします。

関連するキーワード

分類:[ 雇用 ]
分類:[ 人事制度 ]
「エンゲージメント」を高めるためのポイントやソリューション

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

期間限定キャンペーン シェアNo.1採用管理システムi-web

50音・英数字で用語を探す

注目コンテンツ


「エンゲージメント 」を高めるソリューション特集

「従業員エンゲージメント」を高めるために押さえておきたいポイントや具体的な施策、ソリューションをご紹介します。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


人手不足と多様化の時代<br />
「給与前払い」は人材採用のフックとなるか?

人手不足と多様化の時代
「給与前払い」は人材採用のフックとなるか?

人材獲得施策にはさまざまなものがありますが、最近注目されているツールが...