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となりの人事部
日本の人事部「HRアワード2016」受賞者インタビュー
第76回 株式会社リクルートホールディングス

働く場所を従業員自らが選ぶ「リモートワーク」
働き方の選択肢を増やすことが、
個人の能力発揮と会社の成長につながる(前編)

株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 室長 林 宏昌さん
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株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 室長 林 宏昌さん
安倍首相が「今後3年間の最大のチャレンジ」と位置付ける「働き方変革」。多くの企業がこれまでの働き方を見直し、多様な働き方を実現しようとしています。リクルートグループでも、場所に捉われない働き方を実現し、時間当たりの生産性を向上させることを目的に、「つくる みなおす かんがえる 働き方変革プロジェクト」を導入。個人が自律的に柔軟な働き方ができるよう、さまざまな働き方を実践、検証しています。特にリクルートホールディングスが導入している、雇用形態にかかわらず全ての従業員を対象とした上限日数のない「リモートワーク」の取り組みは、内外に非常に大きな反響を呼び、日本の人事部「HRアワード2016」で企業人事部門最優秀賞を受賞しました。一般的にハードワークの印象が強いリクルートグループですが、どのように「働き方変革」に取り組み、どういった成果をあげているのでしょうか。プロジェクトの責任者である働き方変革推進室 室長の林宏昌さんに、詳しいお話をうかがいました。
プロフィール
株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 室長 林 宏昌さん プロフィール写真
林 宏昌さん
株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 室長
はやし・ひろまさ●2005年、リクルート入社。住宅領域の新築マンション首都圏営業部に配属。優秀営業を表彰する全社TOP GUN AWARDを、入社4年目と5年目に連続受賞、6年目でマネジャーに昇進する。入社8年目に社長秘書を務め、2014年に経営企画室室長、2015年4月より広報ブランド推進室室長兼「働き方変革プロジェクト」プロジェクトリーダー、2016年4月からワークスタイルイノベーション 働き方変革推進室室長に就任し、現在に至る。

ハードワークを重んじたリクルートが、なぜ「働き方変革」に取り組んだのか

―― まずは、「HRアワード2016」企業人事部門最優秀賞 受賞、おめでとうございます。

ありがとうございます。今回、大変多くのエントリー企業の中から選ばれたということで、たくさんの方から祝福の言葉をいただきました。この受賞をきっかけに、私自身も「働き方変革プロジェクト」を、より一段と進めていこうという気持ちが高まりました。

―― 「働き方変革プロジェクト」に取り組まれたのは2015年からだそうですが、プロジェクトを始めた経緯やその目的についてお聞かせいただけますか。

安倍首相が「2020年に女性管理職比率を30%にする」という目標を掲げた当時、当社の女性管理職比率は20%弱でした。私が経営企画室長時、リクルートグループにおけるダイバーシティ推進の中長期計画として、「2018年までに女性課長職比率30%」を達成するという目標を設定。この目標を達成するには、働き方を大きく変革することが必要だと考えました。

昔からリクルートは、「結果平等」を標榜する会社だと言われています。性別や年齢に関係なく、結果を出せば評価されるという構造です。現在も「結果平等」であることは変わりませんが、育児や家事、介護における女性の役割が大きいままでは、「プロセス不平等」です。男性は朝早く出社して、夜は残業をして仕事をすることができるのに、女性は子どもを保育園に送ってから出社し、お迎えの時間に合わせて仕事を切り上げて子どもを迎えに行かなくてはならないとしたら、当然、女性が仕事にかけられる時間は短くなり、“不釣り合い”が生じます。「結果平等」を標榜しているのに「プロセス不平等」であれば、「結果不平等」になってしまうのは明らかです。

実際、私が住宅部門の営業担当者だった2000年代後半の頃、バリバリ働いていた女性社員が、育児を機に辞めていくケースが多くありました。その理由は、リクルートでは育児と仕事の両立が難しいと感じたから。ある先輩に、家で仕事をできるようにすればいいのではないかと言ってみたところ、「夫に理解がなく、『家にいるなら、もっと育児や家事をやってほしい』と言われてしまう」とのことでした。結局、在宅勤務を取り入れても、パートナーである夫の意識が変わらなければ、妻の負荷はより高くなってしまう。このような男女の役割不均衡の構造がある状況下では、とにかく皆の意識を変えていかないことには問題は解決しないと思いました。

このような問題意識から、これからは性別に関係なく、育児や家事、介護を分担できる会社にしていかなくてはならないと考えました。そのためには、社員全員の働き方を変えていかなければならない。男性も含めての対応ですから、「女性の働き方変革」「女性活躍推進」だけではなく、全従業員の働き方をどう変えていくかという「働き方変革」が、テーマとなったわけです。

―― 林さんが「働き方変革」を打ち出した時、社内の反応はどうだったのでしょうか。

もちろん、施策ごとに反対意見はありました。しかし、近年は経営を取り巻く環境の変化や事業構造の転換が進み、以前のような長時間労働ではなく、短時間で効率よく仕事を進める方向に舵を切っていました。現在はさらに、効率よく働き、時間を創出していくにはどうすればいいのか議論をしている最中です。

成長することを第一に置いていたこれまでのリクルートでは、仕事の効率を上げて時間を効率よく使い、空いた時間をさらにまた別の仕事にあてるというやり方が基本でした。そのため、生み出した時間を仕事以外へと多様化させていくことに関しては、賛否両論が起きています。リクルートのワークスタイルは、「仕事の報酬は、仕事である。生み出した時間で面白い仕事をするから、成長していく」というモデル。このことを否定するつもりはありません。しかし、これが全てではないと思います。例えば、成長するために大学で学び直すケースや、あえて副業に取り組むようなケースもあるでしょう。育児・介護などの生活者の視点を身に付けることによって、新たな成長や新たなニーズ・アイデアの発見も期待できます。

逆に言うと、そのようなアプローチを取る人が社内に全くいなければ、組織として大きな問題です。例えば、ワーキングマザーのニーズに合わせた商品・サービスを作ろうというとき、当事者の視点を持つ人が社内にいなければ、カスタマーに寄り添った商品・サービス開発はできない。高度経済成長期のように一律的なやり方で通用するような時代ならそれでもいいのですが、現代は人々の価値観や志向が多種多様となっています。多様な価値観や志向を持った人が社内にたくさんいなければ、多様なマーケットのニーズをつかみ切れません。だからこそ、働き方の多様化が重要なのです。


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