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「多様性」が組織を強くする!

  • 長 敦子氏(日本マクドナルド株式会社 執行役員 人事本部長)
  • 中根 弓佳氏(サイボウズ株式会社 執行役員 事業支援本部長)
  • 山口 恭子氏(株式会社ローソン 人事本部 部長)
  • 石山 恒貴氏(法政大学大学院 政策創造研究科 教授)
東京パネルセッション [J]2018.07.09 掲載
株式会社アイ・キュー講演写真

働き方改革、「人生100年時代」の到来、AIやビッグデータ活用の進展……急激な変化の波に多くの企業がさらされる中、あらためて組織の「多様性」に注目が集まっている。大きな変化に対応するには、多種多様なキャリアや背景を持った人々が意見を交わし合い、これまでの常識にとらわれない新しいアイデアを生み出すことが求められるからだ。日本マクドナルドの長氏、サイボウズの中根氏、ローソンの山口氏が、多様性に着手した背景や具体的な取り組みとその成果を紹介。法政大学大学院教授・石山氏の司会によるディスカッションを通じて、多様性が組織に何をもたらすのかをひも解いていった。

プロフィール
長 敦子氏( 日本マクドナルド株式会社 執行役員 人事本部長)
長 敦子 プロフィール写真

(ちょう あつこ)1995年に南カリフォルニア大学院を修了し、KPMG Los Angeles、KPMGグローバルソリューションに入社。2000年タワーズ・ペリン(現:ウイリス・タワーズワトソン)入社。日本で外資系企業・日系企業の人事コンサルティングに着手。2003年ボーダフォン(現:ソフトバンク)に入社して人事企画を行う。2007年から西友で人財部 シニアダイレクター、人事本部 上席部長を務めた後、2013年4月にマクドナルド入社。2015年7月より現職。


中根 弓佳氏( サイボウズ株式会社 執行役員 事業支援本部長)
中根 弓佳 プロフィール写真

(なかね ゆみか)1999年、慶応義塾大学(法学部法律学科)卒業後、関西の大手エネルギー会社に入社。2001年、サイボウズ株式会社に入社。知財法務部門にて著作権訴訟対応、契約、経営、M&A法務を行った後、人事においても制度策定や採用を中心とした業務に従事。法務部長、事業支援本部副本部長を歴任し、財務経理などを含め、これら全般を担当する事業支援本部長に就任。2014年 8月より執行役員 事業支援本部長に就任(現任)。


山口 恭子氏( 株式会社ローソン 人事本部 部長)
山口 恭子 プロフィール写真

(やまぐち やすこ)1993年4月新卒で入社。店舗勤務後本社に異動。約1年の産休・育児休職取得後2001年復職し人事業務に従事。2012年から女性・外国籍社員・障がい者を中心としたダイバーシティ推進などを担当し、事業所内保育施設・障がい者雇用の特例子会社などを設立。2015年より人事本部 人事企画部長。特例子会社(株)ローソンウィルの取締役も兼任。なでしこ銘柄5年連続選定。


石山 恒貴氏( 法政大学大学院 政策創造研究科 教授)
石山 恒貴 プロフィール写真

(いしやま のぶたか)一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科経営情報学専攻修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科政策創造専攻博士後期課程修了、博士(政策学)。一橋大学卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。越境学習、キャリア、人的資源管理等が研究領域。人材育成学会理事、NPOキャリア権推進ネットワーク授業開発委員長。主な論文:Role of knowledge brokers in communities of practice in Japan, Journal of Knowledge Management, Vol.20 Iss 6,2016. 主な著書:『パラレルキャリアを始めよう!』(ダイヤモンド社、2015年)、 『越境的学習のメカニズム』(福村出版、2018年)他。


各社はどのように多様性を推進してきたのか (1)日本マクドナルド

最初に、石山氏が「多様性」に関する現状と課題について語った。

「多様性は経営において不可欠だ」という認識が広まってきている。しかし、1955年は5割以下だった日本の就業者に占める雇用者の割合が、今では9割近くまで伸びている。これはある意味、同質化の進んだ状態だと石山氏は言う。

「同質化の根底には、『日本人男性』という限られた層が正社員の中心となって働き続けてきた実態があります。典型的な正社員像とは長年、長時間労働や転勤を受け入れて企業に対して忠誠を尽くし、以心伝心の関係性を形作るものです。そのまま企業の中の同質化が進んでいくと、組織の中にプロフェッショナルが生まれず、イノベーションも起こりにくくなります。同質化が進むと拘束性の強い働き方になるため、個人にとっても、やりがいや幸福感が低く、一度離職したら再チャレンジの難しい職場環境になってしまう。そんな弊害を生みます。こういった課題の他に、多様性推進にあたっては新たなテーマも浮上してきています。兼業や副業の受け入れ体制、フリーランスとの協業システム、働き方改革など、広い視野を持った対応が求められているのです」

講演写真

各企業ではどのように多様性を推進してきたのか。まずは長氏が、日本マクドナルドの多様性を重視した採用活動について語った。

「日本のマクドナルドの店舗数は2911で、米国に次いで第二の市場規模となっています。創業者は『一人の力は我々全員が団結した力には決して及ばない』というチームワークの重要性を語る言葉を残しましたが、これは現在のマクドナルドのビジネスにつながるものです。したがってダイバーシティ活動を進める上でのビジョンはPower of ONE。企業のミッションである『おいしさと笑顔と快適なひとときをすべてのお客さまに』を実現するため、Power of ONE、つまり多様な個が自分たちの力を最大限に発揮しながら、一つのチームとして働くことを意味します」

ダイバーシティ戦略としては、ジェンダー、クルー、インクルーシブなカルチャー、という三つにフォーカスしている。今回は、クルーに関する取り組みが披露された。

マクドナルドスタッフポスター プレゼンテーションの中で
アルバイト採用に関する動画を公開

「マクドナルドというと若者の職場のイメージが強いかもしれませんが、少子高齢化や組織強化の考え方のもと、昨秋から主婦、シニアをターゲットとしたアルバイトの採用強化キャンペーン『大丈夫。』を始めました。不安を払拭するために、実際に当社で働いているシニアや主婦が出演するビデオを作成し、勤務時間の柔軟性、サポート体制や福利厚生の充実、成長プランを伝えています。これは、クルーにマクドナルドが提供できる価値、Employer Value Proposition、略してEVPを訴求するアプローチです。5年をかけてクルーの構成をより多様にしていきたいと考えています」

今春からは、学生も含めた求職者向けに『大歓迎!!』というフレーズを使ったキャンペーンをテレビCMなどで展開。個性ある一人ひとりが抱いている多種多様な夢や目標が実現できるフィールドがマクドナルドにはある、というメッセージが込められている。これはもともと社外に向けたものだが、ダイバーシティを推し進めた先にどんな世界が実現可能かといったビジョンを社内に示していくことも重要であり、そういった意図も目的に展開された。

各社はどのように多様性を推進してきたのか (2)サイボウズ

サイボウズの中根氏は、従業員の多様性ある働き方への取り組みを紹介した。

「当社は今年が創業21年目で、国内の従業員600名弱のうち約40%が女性です。当社が提供しているグループウェアは、さまざまな情報を集約・共有し、たくさんの人がコミュニケーションをとることで、さらに良いものを生むためのサポートを行うツールです。最終的にはチームワーク向上をより促すソフトを目指しています。そのため、当社の事業そのものが、多様性に親和性があると考えています」

多様化に取り組んだきっかけは2005年、離職率28%という状況に直面した時期だ。四人に一人は1年後に退職しているようでは、生産性が伸びない。そこで、採用を増やすことではなく、より多くの人がより長く、より成長して働ける会社にしようと対策を講じることになった。退職理由を分析し、まずは働く時間や場所を選択できるようにした。いろいろな働き方が生じたため、次はそれをどう評価するのかを考え、チームワークよく働けるように風土改革にも挑んだ。

講演写真

「多様な働き方の実現のために、風土は重要です。『公明正大』『自立と議論』を掲げ、いろいろな考え方を受け入れ、自分で責任を持った上で議論できる環境づくりを10年かけて醸成しました。今では、働く時間と場所が選べるだけではなく、子どもの急な病気などの事情による突発的な変更も可能です。一旦会社を離れても戻れる休暇制度をつくり、テレビ会議のシステムや持ち出し可能なノートPCといった、ツール面も整備しました。副業は、昔は申請制でした。すると、PTA活動やユーチューバーも含めて、報酬の有無にかかわらず内容が多様に広がっていったのです。どれも価値創造の活動であり、それを禁止する必要はないと考え、自由化しました。副業をしている人も短時間で働く人も在宅で働く人も、オフィスを中心に時間と場所を境目なくつながれるような環境の整備を次々と進めています」

各社はどのように多様性を推進してきたのか (3)ローソン

続いてローソンの山口氏が、店舗内外の多様性の動きを中心に語った。

「ローソンは国内外に約1万6000店舗あります。もともと若い男性がお客さまのメイン層でしたが、現在は、国籍、性別、年齢などが多様になっています。一方で、ローソンの社内は日本人男性の割合が高く、ギャップが生じていました。これでは満足いただける商品やサービスは提供できないと考え、経営ボードメンバーの多様化を進め、約4割を女性という構成に変革。店舗戦略としても、コア層は青い看板のローソン、女性層は赤い看板のナチュラルローソン、中高年や単身者層は緑色の看板のローソンストア100といった多様な形での展開を広げました」

新卒の採用活動では2005年から男女比5:5を目標に掲げ、2008年からは国際社員として留学生採用もスタート。女性比率も着実に伸び、なでしこ銘柄に5期連続選定されるまでになった。また、女性の継続就業とキャリアアップのための施策により、育児休職取得率100%、育児休職からの復職率96.1%という数字を実現し、ワーキングマザーも年々増加。一昨年の全社表彰で、大賞、準大賞を獲得したのも女性だったと、山口氏は成果を挙げる。

講演写真

「留学生採用によって約150名の国際社員は、マネジメントにも示唆を与えてくれました。日本人の間ではあうんの呼吸で通用していたものが国際社員には通じないため、『いつまで』『なぜか』を明確に伝えるように変更したのです。国際社員から、グローバルなマネジメントを教えられた形となりました。また、男性の育児休職促進にも取り組み、今では80%の男性社員が育児休職を取得。多数を占める男性側が変わらなければ風土は変わらないと考え、全体的な多様化をさらに進めているところです」

取り組みの過程での壁とは? また、新たな相乗効果とは?

後半は、四人によるディスカッションが行われた。

石山:多様性に取り組んできた中で、困難や苦労などはありましたか。

長:試行錯誤の連続でした。その中で得たのは、会社のカルチャーに合った進め方を選ぶ、ということです。当社の場合は、チームワーク・Funを意識してといった進め方がマッチしました。フランチャイズのオーナーの方たちに対しては、オピニオンリーダーになる方に前に走ってもらい変化を作っていく手法が有効だとわかりました。

中根:例えば一口に40歳男性といっても、その中に多様性があるという視点で、性別でも年齢でもない個々の多様性に目を向けながら、さまざまな制度を進めました。社員各自に、何時に出社するのか、どういうふうに働いてパフォーマンスを最大化するのかを考えてもらうようにしたのですが、選択肢があると逆に迷ってしまう現象が見られました。そこで、大事なのは時間なのか、チームへの貢献度なのか、収入なのか、社員が自分自身で優先順位をきちんとつけられるよう、マネジャーが支援するようにしています。

山口:国際社員採用を行った当初は、離職率が日本人対比では高く、定着に苦労しました。そこで、うまく国際社員をマネジメントできている管理職がいったい何を行っているのかヒアリングを行ったところ、あ・うんの呼吸などは通用しない、ということに気づきました。それを踏まえて、目標設定、「何をいつまでにどうするのか」というプロセス、「何が足りなかったのか」「これができたから次はこうしよう」という具体性をもったコミュニケーション、また結果に対するフィードバックをきちんと行うことの重要性を理解しました。そして、管理職に対するマネジメント研修も強化し、離職率の高さという問題は解決することができました。

講演写真

石山:当初の狙いとは違って生まれたような相乗効果があればご紹介ください。

長:イノベーションです。多様性の推進によって、本部スタッフに、店舗で働いてきたクルー出身者だけでなく外国人トップや中途社員がいることが大きな原動力となっているのは確かです。昔と同じように、本部スタッフを店舗経験者で固めていたら、時代から取り残され、イノベーションは推進できていなかったと思います。

中根:「一人イノベーション」が起こりました。副業を認めたために、週に一日農業をやっている人が得意のITを導入し、畑にセンサーをつけておいしいニンジンづくりを始めたり、PTAでの情報共有に社内で使っているようなアイデアを活用したり。一人の中にある多様な活動が、うまく刺激し合い混ざり合ってできた思わぬ成果です。

山口:新たなコミュニティが生まれました。加盟店の女性オーナーたちをメンバーとした「オーナー女子部」が発足し、女性フランチャイズオーナーたちが交流を図れるようになりました。社外の女性経営者の力も取り入れて、今後、ローソンの現場に活かしていきたいと考えています。

石山:イノベーションといっても、その内容は三社三様で多様性に富む点が非常に興味深いと思いました。今日はありがとうございました。

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