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HRカンファレンストップ > イベントレポート一覧 > 日本の人事部「HRカンファレンス2018-春-」  > パネルセッション [B] 良いキャリア採用・悪いキャリア採用

良いキャリア採用・悪いキャリア採用

<協賛:エン・ジャパン株式会社>
  • 河村 大督氏(グーグル合同会社 人事部 採用企画マネージャー)
  • 服部 泰宏氏(神戸大学大学院 経営学研究科 准教授)
  • 鈴木 孝二氏(エン・ジャパン株式会社 代表取締役社長)
東京パネルセッション [B]2018.06.25 掲載
エン・ジャパン株式会社講演写真

かつてない売り手市場の中、企業にとってますます採用難易度が高まっているが、昨今は採用のみならず、入社した人材の「定着」にも注目が集まっている。本セッションでは「良いキャリア採用と悪いキャリア採用」をテーマに、採用学の第一人者である服部氏が採用学の研究成果から見える良い採用の条件を、Google人事部の河村氏がデータに基づく同社の採用事例を解説。エン・ジャパンの鈴木氏によるファシリテーションで、人事が「良いキャリア採用」のために行えることを議論した。

プロフィール
河村 大督氏( グーグル合同会社 人事部 採用企画マネージャー)
河村 大督 プロフィール写真

(かわむら だいすけ)カナダ ウェスタンオンタリオ大学経済学部卒業後、日系電話機メーカーにて営業・マーケティング業務、欧州系人事コンサルティング企業でのコンサルタント業務を経て、2011年8月グーグルに入社。現在は日本およびアジアパシフィック地域における採用オペレーションに従事。


服部 泰宏氏( 神戸大学大学院 経営学研究科 准教授)
服部 泰宏 プロフィール写真

(はっとり やすひろ)1980年神奈川県生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了、博士(経営学)取得。滋賀大学経済学部情報管理学科専任講師、同准教授、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授を経て、現職。日本企業における組織と個人の関わりあい(組織コミットメントや心理的契約)、経営学的な知識の普及の研究、シニア人材のマネジメント等、多数の研究活動に従事。著書『日本企業の心理的契約: 組織と従業員の見えざる約束』(白桃書房)は、第26回組織学会高宮賞を受賞した。2013年以降は人材の「採用」に関する科学的アプローチである「採用学」の確立に向けた「採用学プロジェクト」に従事、同プロジェクトのリーダーを務める。著書『採用学』(新潮社)は、「HRアワード2016」書籍部門最優秀賞を受賞。


鈴木 孝二氏( エン・ジャパン株式会社 代表取締役社長)
鈴木 孝二 プロフィール写真

(すずき たかつぐ)1995年に同志社大学卒業、エン・ジャパン前身の株式会社日本ブレーンセンター入社。2000年1月、同社のデジタルメディア事業部がエン・ジャパン株式会社設立として分社独立すると同時に取締役営業部長に就任。2008年3月に常務取締役、同年6月に代表取締役社長に就任。全国求人情報協会理事長も兼務。


服部氏によるプレゼンテーション:良いキャリア採用のための条件

セッションは、服部氏のプレゼンテーションから始まった。

「そもそも採用とは、『企業の目標および経営戦略の実現』そして『組織や職場の活性化』を目的とし、外部から新たな労働力を迎え入れる活動のことです。1980年代のアメリカで、ある企業を定点観測した調査があります。人の流動性がなく、採用もローテーションもない組織は、初めのうちは良いパフォーマンスを発揮していても、すぐに鈍化し、パフォーマンスが低下していきます。組織は放っておくと劣化していくのです。人材の流動化は、組織を活性化させる上で重要な役割を担うと言えます」

ここで服部氏は、キャリア採用において重要なポイントを三つ提示した。一つ目は、求職者をランダムに採用したときに比べて、将来の時点で、より高い仕事成果を納めることができる人材を獲得できているか。二つ目は、人材が企業へより強くコミットし、高い満足度を得て、中長期的に企業にとどまるか。三つ目は、採用活動を行わなかった場合と比べて、組織を構成するメンバーに多様性が生じ、結果として組織全体が活性化しているかどうかだ。

「なぜ組織に同じような人が集まってしまうのでしょうか。これはASA理論(アトラクション・セレクション・アトリションの頭文字から)と呼ばれていますが、採用の際に『うちの会社っぽい人』をつい採用してしまうから。一方、思い切って異質な人材を採用しても『なんでこんな奴を採用したんだ』と反発を食らい、淘汰されていくケースもあります。ASAを突破しないことには、人材の多様性はありえません」

多様性のあるキャリア採用をするために、人事担当者ができることは何だろうか。キーポイントとなる「三つのマッチング」から目を背けてはならないと服部氏は言う。

「まずは『期待』のマッチング。個人が会社に対して期待するものと、会社が提供するもののマッチングです。仕事特性や雇用条件、組織風土などがこれにあたります。日本企業はここがかなり曖昧で、双方の理解が不十分のまま雇用契約を結んでしまうため“ズレ”が生じてしまうのです。次に、『能力』のマッチング。求職者が持っている能力を十分に生かせる仕事を準備できているか、ということです。最後に『フィーリング』のマッチング。主観的な相性がこれにあたります」

三つ目のフィーリングのマッチングは、組織内の居心地の良さを作り出すことはできても、本当に見なければいけないところを隠してしまっている面もある。日本企業に多く見られるのは、期待や能力のマッチングよりも、フィーリングのマッチングを重視してしまっているケースだ。限られた接点でのマッチングで、入社後の幻滅にもつながりかねない。

「ある企業は、採用パンフレットの右側に自社の良い情報、左側には悪い情報を載せました。すると、その年は良い採用ができたそうです。これはRJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)と呼ばれ、悪い面も含めてありのままを開示することで、個人の主体的な選択を補強することができます」

講演写真

入社後の幻滅を軽減するためには、RJPが欠かせない。効果がいくつかある中で、服部氏は二つの効能を説明した。一つは「ワクチン効果」。職場に対する過度な期待を事前に緩和することで、入社後の失望感を減らすことができる。もう一つは「スクリーニング効果」。ネガティブな情報を先に出しておくことによって、覚悟がない人は応募してこなくなる。数は減るかもしれないが、志望度の高い応募者集団を形成することができ、効率性的な採用が可能になる。

「良いキャリア採用とは何か。それは、活躍する人材、定着する人材、活性化させる人材を採用することです。自社にとってのベストを考える際に、参考にしていただければ幸いです」

河村氏によるプレゼンテーション:データの活用でバイアスを防ぐ、Googleの採用事例

続いて、Googleで日本を含むアジアパシフィックエリアの採用オペレーションに従事する河村氏が登壇。プレゼンテーションに先立ち、「Hiring is the most important thing you do.(採用は、あなたが行う業務の中でもっとも重要だ)」という言葉を引用した。Googleの元CEOエリック・シュミット氏が採用理念としていた標語だ。

「Googleの経営者が労働時間の中で、採用計画の設計・立案や面接、採用イベントへの登壇など、採用業務には多くの時間を割いている。採用に関する議論は目まぐるしく変わるので、世の人事担当者はたくさんの課題を抱えています」

Googleでは、採用基準を四つ設けているという。一つ目は「問題解決能力」。課題を正確に捉え、質の高いソリューションを導き出し、クリアに伝えるコミュニケーション能力を有しているかどうか、ということだ。二つ目は「リーダーシップ」。セルフスターターであり、オーナーであり、チームメンバーでもあることが求められる。三つ目は「Googleらしさ」。Googleが大切にしている「Diversity and Inclusion(多様性と受容性)」というカルチャーにフィットするか。Googleは世界中にユーザーがいるため、多様な価値観を理解しようとするスタンスが不可欠だ。最後に「職種に関する知識」を補足的に述べたが、これはほかの三つと比べるとそう重要ではないそうだ。目まぐるしい変化の中、3年後に同じものを評価しているとは限らないからだ。

「Googleには、採用委員会があります。この四つに足る人材であるかどうかを、面接官だけでなく、国や部署ごとの採用委員会の目を通して採用の可否が決まります。対面のバイアスがかかっていない人間からの意見を交えることによって、より適切でパワフルな採用を推し進めることができるのです」

講演写真

Googleでは選考を構造化し、誰が面接者になっても結果がブレることがないようにしている。トレーニングを受けた者のみが面接官を務めることができるのだ。採用活動を行うからには、不採用となる人が出てくる。Googleが掲げる理想のゴールは、面接という体験を通して縁がなかった人にも「学びがあった」「もっとGoogleを好きになった」と思ってもらうこと。そのため、候補者との接点に重きを置き、候補者に対して面接の満足度調査というサーベイを必ず実施している。その結果は、Googleの採用活動におけるKPIとなるという。

「データやテクノロジーを活用することで、バイアスを超えた採用を行っていきたい。そのため、技術者採用はオンライン上のクイズでスキルセットを確認するなどし、面接者との相性という主観的な良し悪しの評価を極力無くそうと努めています」

データを活用することで、対従業員、対候補者、対ユーザーへの一貫した姿勢を示すことができる。それがGoogleの誠意。「採用活動があらゆる仕事の中で最も重要だ」という採用理念を体現していることが分かる事例紹介となった。

ディスカッション:採用の成功は、面接官の練習に尽きる

鈴木:お二人の話にはたくさんのポイントがありました。服部先生からは、良い採用には三つあって、活躍人材、定着人材、活性化人材を採用することであるとの話がありました。最近は、どの企業も「定着」に課題を抱えているように思います。

服部:そういう意味でも、フィーリングのマッチングより、期待・能力のマッチングに比重を置いていく必要があると思います。人材は企業にとってのインフラ。河村さんのお話にもあったように、曖昧さを排除していくことが求められますね。

鈴木:Googleでは、経営者が全業務のうち多くの時間を採用に充てているとのことで、採用の優先順位を上げていく必要を感じました。合わない人材を入社させることで無駄なコミュニケ―ションを発生させるくらいなら、最初の選ぶ段階に力を注ぐべきですね。

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服部:欲しい人材を採用するために、質問内容やそのための時間を決めるなど、ロジックによって支えられている、Googleの構造化面接。その対極にあるのは、当意即妙に対応していく面接です。どちらが良いかというと、「採用学」の中では、面接官の対応能力が圧倒的に高い場合を除いて、前者の構造化面接を薦めています。

鈴木:河村さんのお話から、Googleの採用は「選ぶ」というより「選んでもらう」スタンスのように感じました。

河村:まさにおっしゃる通りです。ピンと来る人がいたら、前傾姿勢で「Googleで働きませんか?」と声をかけるようにしています。評価されている意識を持つことで、私たちもチャレンジングな姿勢を忘れずにいられます。

鈴木:私も面接を教わった経験はあまりないので、トレーニングの話には驚きました。

服部:質問一つとっても、実は難しいものです。学生のストレス耐性を見たい企業が聞きがちな質問に「これまでに苦労したこと」が挙げられますが、落とし穴もあります。聞き手がエピソードそのもののインパクトに引っ張られてしまうからです。対処の方が重要なのに、経験を評価してしまう。このシーンで人事がやるべきことは、ディテールを引き出すことですね。誰に相談したのか、その相談はSNSなのか対面なのか。そうすることで、ストレスの中にいるときに彼らがどんな行動をとる人物なのかが浮き出てきます。

鈴木:知識があるのとないのとでは、面接から得られる情報量が変わってくるのですね。Googleでは、面接官トレーニングはどれくらい行っていますか。

河村:頻繁に対面とオンラインの両方で実施します。候補者による面接満足度サーベイもありますが、高評価を受けている人はやはり面接後の受諾率も高い。

鈴木:思いつきや偶然ではなく、事前に持ってきた「考え」を優先するという話も本の中にありましたね。面接でその場の反応を試すような人事担当者もいますが。

服部:たまたまの反応を拾ってしまうことは、候補者にとっても企業にとっても利益になりません。いつもロジカルな人でも、緊張して受け答えがうまくいかないこともあります。

鈴木:理論と実践で話を進めてきました。服部先生からは、そもそもの採用の目的を考え、活躍・定着・活性化できる人材を採用していく。その際にフィーリングによる曖昧さはできるだけ排除していこうというお話をうかがいました。そして河村さんからは、体系化された同じ物差しで評価していくということと、面接を候補者に評価してもらうことでブラッシュアップさせていくという仕組みについてお話しいただきました。参加者の皆さんには、自社の採用にお役立ていただければと思います。

服部:最後に一つ、皆さんにご紹介したいデータがあります。2017年にアメリカのフォーブス誌に掲載された調査によると、アメリカ国内で「最も幸せな職業」のトップ1~3に必ず「採用担当者」がランクインしているそうです。なぜ仕事に幸福を感じられるかというと、「10年後の会社を作る重要なポジションだから」。少ないサンプルの中の調査ではありますが、非常に勇気づけられる結果でした。皆さんもぜひ、採用という仕事に誇りと自信を持って採用活動に臨んでほしいと思います。

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本講演企業

エン・ジャパンは採用支援だけではなく入社後の活躍・定着に注視し、求人情報サービス、人材紹介、社員教育・評価事業を提供。売上高395億円、経常利益90億円(いずれも連結、2018年3月期予想)、グループ会社含めて従業員数2,301名(2017年3月時点)、世界7カ国で事業を展開。

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エン・ジャパンは採用支援だけではなく入社後の活躍・定着に注視し、求人情報サービス、人材紹介、社員教育・評価事業を提供。売上高395億円、経常利益90億円(いずれも連結、2018年3月期予想)、グループ会社含めて従業員数2,301名(2017年3月時点)、世界7カ国で事業を展開。

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