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人事担当者に求められる「人材像」とは
何を学び、どんなキャリアを描いていけばいいのか

  • 髙倉 千春氏(味の素株式会社 理事 グローバル人事部長)
  • 藤間 美樹氏(武田薬品工業株式会社 グローバルHR グローバルHRBPコーポレートヘッド)
  • 守島 基博氏(学習院大学 経済学部経営学科 教授)
東京パネルセッション [F]2018.07.04 掲載
アイ・キュー講演写真

企業競争を勝ち抜いていくために、人事に期待されるものがますます大きくなっている。その期待に応えるために、人事パーソンは何を学び、どんなキャリアを目指せばいいのか。どのように仕事に向き合い、社員とどう接するべきなのか。味の素・髙倉氏、武田薬品工業・藤間氏、学習院大学・守島氏が、人事に求められる「人材像」についてディスカッションを行った。

プロフィール
髙倉 千春氏( 味の素株式会社 理事 グローバル人事部長)
髙倉 千春 プロフィール写真

(たかくら ちはる)1983年、農林水産省入省。1990年にフルブライト奨学生として米国Georgetown 大学へ留学し、MBAを取得。1993年からはコンサルティング会社にて、組織再編、新規事業実施などにともなう組織構築、人材開発などに関するコンサルティングを担当。その後、人事に転じ、1999年ファイザー株式会社、2004年日本べクトン・ディキンソン株式会社、2006年ノバルティスファーマ株式会社の人事部長を歴任。2014年7月に味の素株式会社へ入社し、2018年4月から現職。味の素グローバル戦略推進に向けた、グローバル人事制度の構築と実施をリードしている。


藤間 美樹氏( 武田薬品工業株式会社 グローバルHR グローバルHRBPコーポレートヘッド)
藤間 美樹 プロフィール写真

(ふじま みき)1985年神戸大学農学部卒業。1985年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に入社、営業、労働組合、人事、事業企画を経験。人事部では米国駐在を含め主に海外人事を担当。2005年にバイエルメディカルに人事総務部長として入社。2007年に武田薬品工業に入社、海外人事を中心にCMC HRビジネスパートナー部長などを歴任。現在は本社部門の戦略的人事ビジネスパートナーをグローバルに統括するグローバルHRBPコーポレートヘッドの任務に従事。M&Aは米国と欧州の海外案件を中心に10件以上経験し、米国駐在は3回、計6年となる。武田薬品工業のグローバル化の流れを日米欧の3大拠点で経験し、グローバルに通用する人材像とその育成を探求。人と組織の活性化研究会「APO研」メンバー。


守島 基博氏( 学習院大学 経済学部経営学科 教授)
守島 基博 プロフィール写真

(もりしま もとひろ)人材論・人材マネジメント論専攻。1980年慶應義塾大学文学部卒業、同大学院社会研究科社会学専攻修士課程修了。86年米国イリノイ大学産業 労使関係研究所博士課程修了。組織行動論・人的資源論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部助教授。90年慶應義塾大学総合政策学部助教授、98年同大大学院経営管理研究科助教授・教授、2001年一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年4月より現職。主な著書に『人材マネジメント入門』『人材の複雑方程式』『21世紀の“戦略型”人事部』『人事と法の対話』などがある。


守島氏によるイントロダクション:
いま、人事リーダーに求められる人材像とキャリア

最初に守島氏が、企業の競争力に貢献するため、いま人事に求められているものについて語った。「ビジネス貢献」「組織開発」「働く人支援」の三つだ。

「一つ目は、『ビジネス貢献』。現場の人材・組織の問題を解決し、ビジネスの成果に貢献することです。二つ目は、『組織開発』。組織を強くして、長期的な競争力を確保します。三つ目は、『働く人支援』。働く人を応援し、働きがいと働きやすい環境を提供します。

これらの三つはもちろん人事が行うべきものだが、そこにはそれぞれ違った人事としてのコンピテンシーや能力、スキルが必要になる。守島氏は、人材マネジメントが経営に資するには、「戦略を達成する人材マネジメント」「組織を強くする人材マネジメント」「働く人を支援する人材マネジメント」の活動が必要と語る。

「では、こうした貢献ができるようになるために、人事には何が必要なのでしょうか。今日のセッションで、皆さんと一緒に考えたいと思います」

講演写真

高倉氏によるプレゼンテーション:
人事において将来的に重要となる機能とは

次に高倉氏が登壇。ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授のセミナー「人事コンピテンシー・スタディ」に出た際の、3万人サーベイの結果を伝えた。ここで大事だとされた要素は次の通りだ。

「人事の活動の方向性を決めるコンピテンシーは、『Strategic Positioner:組織内外の事情を見極め、洞察する』です。有言実行により社内外の信頼・尊厳を得て組織を動かすコンピテンシーは、『Credible Activist:周囲から行動と結果に対して信頼を得る』。矛盾する要素のバランスをとり、組織のパフォーマンスを上げるコンピテンシーは、『Paradox Navigato:組織内の矛盾に取り組み、結果最大化を図る』。戦略的に定められた活動を実現するためのコンピテンシーは、『Culture and Change Champion:事業ニーズを踏まえた組織構築、風土醸成』『Human Capital Curator:将来事業ニーズを踏まえて人財発掘、登用』です」

次に、ウルリッチが提唱した人事の主要機能である、HRフレームワークを解説した。これは「未来⇔日常」「戦略⇔基盤」という二軸によるマトリックスだ。ここで注目すべき機能は、未来・基盤の領域に入る「継続した成長を支援する人事部門」だ。

「ビジネスパートナーとして将来を洞察し、人事の方向性、必要となる人事施策を展開します。3年、5年先はなかなか見えませんが、周りが付いてくるには、半歩先を進んでいかなければなりません。そして将来的には、事業を創造する人事になっていたいという思いがあります」

もう一つの注目機能は、日常・基盤の領域に入る「働く人の支援者としての人事部門」だ。社員に寄り添い支援していく人事であり、各自の異なる特性(can)と志(will)を基に多様性を尊重した人事施策の展開を行う。

「私にとって味の素は初めて入った日本企業ですが、もっとも違和感があったのは、一人ひとりの自律的成長の捉え方でした。自分でも何をやりたいのかがわかっていないメンバーが多いように思ったのです。特性(can)と志(will)がキャリアを構成すると考えると、この二つの要素は自分で決めなければいけません。人事には、社員に寄り添ってこれらを引き出す役割がある。私はそのために、もっと人間そのものを勉強する必要があると思っています」

講演写真

高倉氏は最後に、今が変革の時代だからこそ、真の人事リーダーが必要だと語った。

「人事からアクションを起こさなければ、絶対に人事への信頼は生まれません。結果にこだわることです。そして、一人ひとりの社員を鼓舞していきいきと働ける職場風土をつくり、個を尊重する。人材は企業成長の源泉です。そういった判断軸で地道に活動することが重要だと思います。人事に近道はありません」

藤間氏によるプレゼンテーション:
人を動かし、変革の勇気を持つ人事へ

これからの人事はどうあるべきなのか。グローバルで負けない人事とはどういうものか。藤間氏は、今の人事の基軸に「経営に資する戦略人事」「人と組織の活性化」をあげる。その上で、人事担当者に求められる人材像の3要素を示した。

一つ目は「ビジネスの方向性と人事の役割の理解」だ。いい戦略があっても組織、風土に合わなければ結果は出ない。また、ここではリーダーの存在が重要となる。ある調査によると、業績に対して組織風土は30~40%の影響があり、その組織風土に対するリーダーの影響は70%だった。

「人事は人事制度や施策をつくるだけでなく、求められる経営目標を達成するまでやり抜くことが求められます。継続的なコミュニケーションを心がけ、改善課題が見つかればすぐに修正する。次に大事なことは、経営方針に沿った組織風土を醸成するリーダーの育成です。現場と一体になった組織開発がポイントですから、人事も現場を知らなければいけない。また、外に目を向けてビジネストレンドをつかむことも大事です。良いと思ったものは取り入れ、自社に合うかを見ていきます」

人材像の二つ目の要素は「人を動かす」だ。人事が素晴らしいと思う制度より、現場が使いやすい制度をつくる。そして人事も修羅場を経験し、極限状態の人の心を知るべきだという。

「人事も、人の極限状態での本音のぶつかり合いを知るべきだと思います。そして、絶対に逃げない。学ぶために頑張る。すると、仕事だけでなく人がわかってきます。人を動かすには、自分も実践することがポイントになります」

人材像の三つ目の要素は「厳しい判断、腹をくくり変革する勇気」だ。今まで以上の速さでビジネス環境は変化している。人事はフォロー役になりがちだが、今後は変革をリードすべきだと、藤間氏は言う。

「世界の競合に勝つためには、スピードも重要です。すべての判断材料を待って判断しているようでは、負けてしまう。経営のマインドセットで厳しい判断を行うべきです。もう一つ大事なことは、腹をくくる勇気。変革には抵抗がつきものです。正しいと思えば、不屈にやり抜くべきです」

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最後に、人事はこれから何を学び、どんなキャリアを描くべきか。藤間氏は三つの要素をあげた。

「一つ目は修羅場、一皮むけた経験です。やはり、責任を負うという経験は有効です。二つ目は、経営視点で人事を考えること。『自社や自組織ではどうするか』と考える。これがクセになっていないといけません。三つ目は、キャリアは自分で描き、築くものであること。自分が成し遂げたものについて、人に語れるくらいになるといいと思います」

ディスカッション:
人事がリーダーシップを発揮し、企業の方向性について発言しなければいけない

守島:まず高倉さんにうかがいます。お話を聞いて、「信頼される人事」がキーワードだと感じましたが、どのように行動すべきだとお考えですか。

高倉:私はいつも、相手の立場から自分を見たときにどう見えるかを考えています。例えば、当社でグローバル人事制度を取り入れたとき、社内にさまざまな意見がありました。「なぜ従来の年功ではいけないのか」についても議論しました。そんなとき私は「なぜこの人はそのような発言をするのか」と考えるようにしました。もう一人の自分の目で客観的に場を見てみる。そんな大局的視点を入れたプロセスが大事だと思います。

守島:企業に変革が起こるとき、社員は不安な状態になりますから、人に寄り添うことは大事ですね。何かコツはありますか。

高倉:気を付けているのは、相手に敬意を払うことです。相手の話しっかりと聞くようにしています。そして、お互いの将来のために何があればベストかに意識を向けます。誰もが会社が存続し継続的に成長することを望んでいます。そのために一緒に汗をかきましょう、と言えることが大事だと思います。

守島:では、藤間さんにうかがいます。人事が戦略を変えることもあるという話をされましたが、それを実現するにはどんなパワーが必要ですか。

藤間:過去の実績で信頼されていないと、誰も話を聞いてくれません。「藤間が言うなら」という状況になっていなければならない。そのためにやるべきことはたくさんあると思います。

高倉:ビジネスは結果です。でも、人事は直接的な数字を持たない。だから、数字を出していく人への敬意を持って話さないと、ビジネスパートナーにはなれないと考えています。

守島:お二人ともおっしゃっているのは、どんなときでも人事がリーダーシップを発揮し、企業がどういう方向にいくべきかについて発言しなければいけない、ということ。例えばM&Aをするなら、ビジネスとしてうまく回すために「ここに注意すべき」だと指摘する。そこまで食い込んでいくことが、ビジネスパートナーということですね。ところで、先ほど藤間さんから修羅場という言葉がありましたが、これは与えられるものですか、それとも自分で獲得していくものですか。

藤間:両方だと思います。信頼がないと任されませんし、そのためには実績が必要です。一方で「やりたい人はいないか」と聞かれる場合もある。チャンスはいつ来るかわからないので、常に備えておくべきだと思います。

高倉:自ら考えて仕事をつくる。これしかキャリアをつくる基はないですよね。いまの時代の人事は、仕事をつくることが役割だと思います。

守島:高倉さんから「社員に寄り添う」という言葉がありましたが、今の人事は現場から距離感があるように思います。寄り添うためには、どうすればいいのでしょうか。

高倉:現場に行くことが大事だと思います。前の会社ではほとんど席にいなくて、営業と同行したり、マーケティングの会議に出たり、製品開発の部署に顔を出したりしました。答えは現場にあると思います。現場で得られる情報は、とても重要です。また、人事に期待されるのは組織のフォーメーションをつくり、そこに誰を当てるのかを考えることです。人事が自分の部署の中にばかりいたら、社員それぞれのことはわかりません。現場の人と一緒に食事したり話したりして、特性を知っておく。データも大事ですが、直接「ヒト」と接することが人求められると思います。

藤間:会社が大きくなると、個々を見られなくなってしまいます。タレントレビューという仕組みを入れるのも、人のことがわかるように工夫したからですね。その点、現場のリーダーはメンバーのことをよくわかっていますから、そんな人と人事が密にディスカッションすることも重要だと思います。

守島:これからは、社員のキャリアの自律化もありますが、仕事そのものの自律化も考えていかないと、働く人もハッピーにならないし、企業としてのビジネスでも成長しないと思います。そういう意味でも、人事の役目は重要です。本日はありがとうございました。

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