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社員の成長を促し、組織を元気にするためのアプローチ
ヤフーの事例から学ぶ「組織開発」

  • 本間 浩輔氏(ヤフー株式会社 常務執行役員 コーポレートグループ長)
  • 中村 和彦氏(南山大学 人文学部心理人間学科 教授/人間関係研究センター センター長)
東京パネルセッション [K]2018.07.11 掲載
アイ・キュー講演写真

「社員一人ひとりの才能と情熱を解き放つ」というテーマのもと、さまざまな施策に取り組む、ヤフー。「組織開発」の先進企業として知られるが、社員と組織が成長するための仕組みをどのように作っているのだろうか。本セッションでは、近年注目を集めている「1 on 1ミーティング」など、具体的な取り組みやその効果を同社の本間氏が紹介。「組織開発」研究で著名な南山大学の中村氏との議論で、組織開発に取り組む際の重要なポイントを明らかにしていった。

プロフィール
本間 浩輔氏( ヤフー株式会社 常務執行役員 コーポレートグループ長)
本間 浩輔 プロフィール写真

(ほんま こうすけ)1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。コンサルタントを経て、後にヤフーに買収されることになる株式会社スポーツ・ナビゲーション(サイト名:スポーツ・ナビ、現ワイズ・スポーツ)の創業に参画する。2002年同社が傘下入りした後は、ヤフー・スポーツのプロデューサー、ピープル・デベロップメント本部長などを経て、2018年より現職。


中村 和彦氏( 南山大学 人文学部心理人間学科 教授/人間関係研究センター センター長)
中村 和彦 プロフィール写真

(なかむら かずひこ)1964年岐阜県生まれ。名古屋大学大学院教育研究科教育心理学専攻後期博士課程満期退学。専攻は組織開発、人間関係トレーニング、グループ・ダイナミックス。アメリカのNTL Institute組織開発サーティフィケート・プログラム修了。組織開発の実践者養成を通して現場の支援に携わるとともに、実践と研究のリンクを目指したアクションリサーチに取り組む。著書に『入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる』(光文社新書)などがある。


ヤフーでは「組織開発」をいかに導入し結果を出してきたのか

まず中村氏が、組織開発とは何かについて語った。

「組織開発とは『職場や組織をよくしていくための意図的働きかけ』を指します。学術的な定義を使えば、『組織の健全性、効果性、自己革新力を高めるために、自分たちの組織の状態を理解して関係を発達させて変革していくような、計画的で協働的なプロセス』となります。人材開発は教育や研修という形で個人に働きかけますが、組織開発の場合は、組織全体に働きかけるだけではなく、部署間、部門間、職場、部署、対人間、個人といったさまざまなレベルに働きかけます」

ヤフーの組織開発に関する取り組み中では、1 on 1という、上司と部下の間で1週間に30分ずつ行う定期的な面談がよく知られている。1 on 1には多くの企業がチャレンジしているが、なかなか定着しないという声が多いのも実情だ。では、なぜヤフーではうまくいっているのか。

「その理由は、上司にコーチング研修で『どんなふうに聞くか』を学ばせたり、1 on 1による効果を部下から上司にフィードバックしたりと、1 on 1の周辺で補完的な仕組みを取り入れているからです」

講演写真

ヤフーでは他にも、第三者のファシリテートの下で部下が上司に対するフィードバックを伝える「ななめ会議」、ES調査の結果を職場に戻して自分たちで職場改善に取り組む仕組み、部署や部門の問題解決を組織活性チームがサポートする取り組みなど、複数の手法を組み込んだ組織開発を行っている。中村氏の話を受け、本間氏が組織開発において重視していることを述べた。

「組織とは、そもそも良くなる要素を持っています。チームワークを高めて関係の質を高めれば、高いパフォーマンスができるはず。しかし、それが人事制度や組織環境の慣例などによって阻害されているわけです。『1+1=1.5、1+1=2以下になっている組織の力をもう一度回復する』というイメージを持って臨んでいます。『社員の情熱と才能を解き放つ』というヤフーの人事スローガンにも、それは集約されています」

他の組織開発の手法と同じように1 on 1も導入するタイミングが一番難しい、と本間氏は言う。ヤフー流に言うならあくまでも最終的に「最高益を更新する」ためのものであること」を考慮した上で、導入しなければならない。

「心得ておきたいのは、私たちはいいOD(組織開発)選手権をしているのではない、ということ。手段と目的が変わってはいけません。例えば、コーチングの後に『今日のコーチングは最高でした。またやってください』と言われても満足してはいけません。それは本当のゴールではないからです。目の前の人が変化して、最終的に利益に近いところに結びつくことこそゴールなのです。手法論だけに走るのは危険だと思います」

「現場の人事力」を高めるのも人事の仕事であり、人事にとってはプロデューサーであるという意識も重要になる。なぜなら、評価もトレーニングも採用も、行うのはほとんどが現場だからだ。現場の管理職、マネージャーがODの主体であるべきなのに、「効果が注目されているから」「学んできたから」と、人事が現場に手法をそのまま持ち込むのは避けるべきだと本間氏は言う。

「現場の状況を正しく理解し、現場のキーパーソンと正しく結びつき、現場感覚を持ってどういうふうに進めていくのかを考えるところが、人事の腕の見せどころです」

講演写真

結果を出すには戦略性が必要だ。何か一つを行えばうまくいくわけではない。ヤフーの場合、人事異動もインフォーマルなネットワークもESも、使える手法は全て駆使している。

「どのタイミングで異動がある、どんな人がいる、組織がどういう状況にある、人事が使えるカードはこれだけあると眺めつつ、その中からタイミングを見計らって選んで融合させる、トータルな視野が求められます。

また、忘れてはならないのが、ロジカルの積み上げです。これを実践すればゴールに近づくのか、雰囲気の良い組織を作ったら成果が出るのか、という問いへの説明ができなければ、現場の協力が得られません。表面に出さなくても結果的にみんなが信じて支持する流れへと持っていくべきだと、さまざまなODの現場を見てきて感じます」

健全性、効果性という二つのキーワード

しかし一方で、ODの現場で見られる、アイスブレイクやポストイットなどの小道具に、本間氏は違和感を覚えるという。その原因を探るところから、ディスカッションは始まった。

中村:私が組織開発の講座のスタートでチェックインをよく行います。日頃は成果や業務について論理的に話すためのモードばかりを使っているので、気持ちや自分自身の今の状態を話して、いつもとは違うモードでも関わるために取り入れています。組織ではタスクが優位になっていますが、組織の中には感情や関係性という側面もあり、感情や関係性や人を大切に思うモードも組織開発では重視します。

本間:そういう意味や目的を説明しないで進められるところが、違和感の原因かもしれません。

中村:本間さんは「介入手法の過度なこだわり」に違和感があるようですが、手段と目的の混同が多く見られることが原因だと思います。「上から組織開発をしなさいと言われたから」では、組織開発自体が目的になり、現場のための組織開発になりません。例えば、1 on 1を単に「実施する」と告げるだけでは、現場は「忙しいのになぜやらなくてはいけないのか」となります。何か新しいことを人事が始めようとすると抵抗を受けるものです。導入に際しては、現場のためになる目的や意図を明確に示す必要があります。

本間:「上から命じられて困った」「どうすればいいのか分からない」というときに、人事コンサルタントに頼む。それはいいのですが、ワークショップやワールドカフェでもコンサルタントが司会をしているようでは、現場はついてきません。コンサルタントのサポートを受けてもいいので、社内の人間がまずは前に立つようにするべきです。

中村:対話やイベントの場を設けることが組織開発では多いのですが、対話やイベントの場を設けることが組織開発であるという認識は間違いです。対話やイベントの場では、現状を理解し、気づきを深め、行動計画を立てますが、「日頃の中で」どう行動計画が実行されて人間的側面が強化されていくのか、「日頃の中で」健全性や効果性や自己変革力がどう高まってくるのかが重要です。対話の場はよかったけれどその後は続かない、というのが実際には多いのではないでしょうか。『対話型組織開発』という本に「対話型組織開発は組織の日常で交わされる言葉が変わることを目的とする」と書かれています。

本間:言葉の総量が組織の力や健全性を高めていくという話は大賛成です。その上で、うまく自分たちの企業カルチャーに合わせてチューニングすることが大事ですね。手法をそのまま取り入れようとせず、現場にアダプトするようにチューニングするところが人事の腕の見せどころであり、組織開発がうまくいくかどうかのポイントだと思います。

講演写真

中村:「現在の経営の主流」は、限られた時間やリソースの中で効率的に成果を出すという結果重視の発想です。それに対して「組織開発の原点」は、人々が活き活きとすることで効果的に成果を出すという過程重視の発想。この両者をトレードオフに捉えるために「組織開発は仲良しごっこだ」という発想になるのでしょう。計画的で協働的に生産性が高まる関係作りを目指すのが組織開発ですから、トレードオフではなく、結果と過程、効率性と人間的側面という二つの同時最適を目指すことが肝心だと思います。

最近の組織開発では、諸次元の一致性を高める、という定義も出てきています。リーダーシップや文化というソフトな側面だけでなく、ミッションやストラテジーや構造、方針というハードな側面も含めた一致性を高めていこうというものです。ヤフーも1 on 1だけでなく、異動や評価制度も活用して他の仕組みと連関をつけながら一致性を高めています。ここがヤフーの組織開発の強みだと思います。

本間:人事は補完性が大切です。一つの制度で完結するのではなく、補完性を頭の中で描きながら「これを入れるとこのタイミングでこうなるので、こういう人を配置しよう」といった頭の使い方をしないと、ゴールには向かっていかないと思います。

中村:最初に申し上げた定義に戻りますが、組織開発には健全性、効果性という二つのキーワードがあります。効果性とは個々が持っている力が最大限に生かされていること、健全性とは個々がその関係の中で幸福感を持って満足していることを指します。そういう意味では、本間さんは効果性を重視しているように感じます。

本間:私は数年前から幸福論に取り組んでいます。「会社は何のためにあるのか」を追いかけていくと、幸福論に入って行かざるを得ないからです。ヤフーの人事の大きなテーマでもありますが、それをメッセージとして出すことは非常に難しいため、大きな声で言わないようにしています。健全性は、相手をじっくりと見て把握しながら戦略的に使ってパフォーマンスが上がるよう仕向けたほうがいいと考えています。

中村:「情熱と才能を解き放つことによって成果を上げる」というヤフーのスローガンは、健全性も含まれた発想だと改めて思いました。本日の内容が一つでも皆さんのヒントになればと思います。

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