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自ら成長できる人材が集まれば、強い現場が生まれる~「自律型組織」の作り方~

  • 中竹 竜二氏((公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター/株式会社チームボックス 代表取締役/一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長/一般社団法人スポーツコーチングJapan 代表理事)
  • 島田 由香氏(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長)
  • 小杉 俊哉氏(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任教授)
東京パネルセッション [I]2018.07.06 掲載
株式会社アイ・キュー講演写真

ビジネスのグローバル化や多様化が加速する現在、日本企業が世界で勝ち抜いていくには、「自律型組織」を作ることが重要である。では、自律とは何を意味するのか。そのために必要なものは何なのか。日本ラグビーフットボール協会の中竹氏、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの島田氏、慶應義塾大学大学院の小杉氏が、それぞれの知見と経験を語り合った。

プロフィール
中竹 竜二氏( (公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター/株式会社チームボックス 代表取締役/一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長/一般社団法人スポーツコーチングJapan 代表理事)
中竹 竜二 プロフィール写真

(なかたけ りゅうじ)1973年福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部に入学し、ラグビー蹴球部に所属。同部主将を務め全国大学選手権で準優勝。卒業後、英国に留学。レスタ―大学大学院社会学修士課程修了。三菱総合研究所等を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督を務め、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇など多くの実績を残す。2010年退任後、日本ラグビー協会初代コーチングディレクターに就任。U20日本代表ヘッドコーチも務め、2015年にはワールドラグビーチャンピオンシップにて初のトップ10入りを果たした。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』( CCCメディアハウス)など多数。


島田 由香氏( ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長)
島田 由香 プロフィール写真

(しまだ ゆか)1996年慶應義塾大学卒業後、日系人材ベンチャーに入社。2000年コロンビア大学大学院留学。2002年組織心理学修士取得、米系大手複合企業入社。 2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。中学3年生の息子を持つ一児の母親。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLPⓇトレーナー。


小杉 俊哉氏( 慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任教授)
小杉 俊哉 プロフィール写真

(こすぎ としや)早稲田大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。日本電気株式会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー インク、ユニデン株式会社人事総務部長、アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を経て独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て現職。元立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 客員教授。専門は、人事・組織、キャリア・リーダーシップ開発。著書に、『職業としてのプロ経営者』、『起業家のように企業で働く』(クロスメディア・パブリッシング)、『リーダーシップ 3.0-カリスマから支援者へ』(祥伝社新書)など。


自律型組織の定義、基本となるもの、その背景とは何か

最初に自律型組織の捉え方に関するそれぞれの考えを、三人が順に披露した。まず中竹氏が定義の重要性を説いた。

「皆さん、100メートルを速く走るにはどうしたらいいと思いますか。110メートル地点がゴールだと思えば、速く走れます。人間の脳は無駄にエネルギーを使わないようにストップをかけるからです。大事なのは、違う枠組みで考えるリフレーミング。そのため、『自律型組織の自律とは何か』を自らが再定義する必要があります。ただし、一般的な世の中にある定義を示すだけではブレイクスルーはできません」

中竹氏はスポーツの構造にはゲームがあり、それはビジネスでいう「現場」だと語る。ゲームで強くなるために大切なトレーニングをするのはプレイヤー自身だが、それをサポートするコーチがいて、コーチをサポートするリーダーがいて、さまざまなステークホルダーもいる。いろいろな人たちが関わって組織がつくられるのであり、全員に定義があり、理解されて浸透していなければ、自律した組織は生まれない。

「さらにゲームに強く臨むためには、プレイヤーに完璧なトレーニングが求められ、それをサポートするコーチやリーダーを含めたコーチミーティング、一対一のミーティング、リーダーミーティング、プレイヤーミーティングが欠かせません。

これらのミーティングの目的を明確にし、すべてを準備し、マネジメントしていく必要があります。ここでも、自分たちが自律することの定義を組織の中で徹底し共有することは必須です。それができれば、プレイヤーだけでなく全体の関係性が生まれるため、組織も強くなります」

講演写真

次に島田氏が、自律に必要なものについて語った。

「組織という文字からは、一本一本のひもが組まれて織物になるように、一人ひとりが欠かせないイメージが浮かんできます。個々の意識によって、織物は大きく変わっていきます。最近話題の進化する組織であるティール組織で、衝動型、順応型、達成型、多元型、進化型という組織の進化が示されているのと同じように、私たちの意識も進化します。織り成される組織も当然、進化していくわけです。そのため、『どんな意識でいるのか』は自律型組織を考えていく上でポイントになると思います」

島田氏は、自律には五つのステップがあるという。『自立』できるからこそ自ら律し整える『自律』があるが、『自立』は『自信』によって育まれ、『自信』は『自発』していくことで生まれ、『自発』は『自覚』によって可能になる。自覚が自律のカギになり、自覚とは自分を知ることで、自分とは何者なのか、いま自分はどこにいるのか、どんな経緯を経てここにいるのか、どこにいきたいのかを指す。「これらに気付いてもらうためには、刺激を提供し続けるしかない」と島田氏は言う。とにかくいろいろな方面から刺激を与え続ける。これが、人事を含めリーダーや経営者の責務ではないか。

「自分を自分で知るには、切り口が四つあります。一つ目は、ワクワクすること。二つ目は、自分の強みを知ること。三つ目は、自分がどんなときに感情がワーッと出て反応するか、どんなときに怒るかを知ること。四つ目は、無意識のうちに『何をしなければならない』『何でなければならない』と考えているかを知ること。この四つは自律への基本です」

講演写真

小杉氏は、自律型組織が求められるようになった流れを述べた。

「自律型組織よりも先に登場した概念は、個人の自律です。それまでは、自律した社員は辞める、コントロールがきかなくなる、という考えが強くありました。ところが、社員が自律的に働くほうがイノベーションは生まれやすく生産性が上がりやすい、と認識されるようになってきました。リカレント教育、学び直し、副業2.0、越境キャリアという流れもあるように、自律的に働くことは、本人だけではなく組織にも重要だという理解が広まったのです」

その背景には、環境変化が激しく答えがない時代に、一人ひとりがwhatを考えて自律しなければならない現状がある。20世紀まではノウハウの時代だったが、今はknow whatの時代で、問題文を解くのではなく、問題文自体を考えなければならない。同時に、支援型リーダーが求められる時代になった。答えが分からない中で、試行錯誤しトライする一人ひとりを、いかにリーダー側が支援し、向き合い、信頼関係を結び、環境をつくるかが重視されている。

「会社側が自律を支援する態勢を取れば、社員は自律することができます。期待せずに『指示しないと怠けるだろう』と管理すると、社員はそのように動き、期待をかけるとその通りに社員は動いて成長するという、ピグマリオン効果もそれを証明するものです」

小杉氏は最後に日米における自律支援の潮流について解説した。

「日本の人材マネジメントや制度はアメリカの後追いが多く、その手法がすべて優れているとは言えませんが、いま米国では、年次評価をやめる企業が続出しています。これは、個々と向き合って自律的な目標達成について話し合い、マネジャーが支援していく重要性を示した潮流だと思います」

講演写真

自律性を引き出す「刺激、対話、ストーリー」

三人によるトークセッションでは、まずは自律性の引き出し方が話題に上った。

島田:先ほど、人事やリーダーが刺激を提供することがメンバーの自律を促すと話しましたが、刺激が必要な理由を、私は四つの「き」を用いて説明しています。まず、心身共に「元気」でなければ何も始まりません。「元気」でいるからこそ、いろいろな「刺激」を捉えることができます。「刺激」によって「気づき」を得られますが、「気づき」は自発的に起こるものですから、周囲からは「刺激」を与え続けるしか術はありません。そうして「気づき」が生まれると「本気」が芽生えて、自覚、そして自律へと結びついていきます。刺激のためにも、私は上司と部下の間の対話を大切にしています。

小杉:特に小さい頃から絶えずネットで調べてきたミレニアル世代は、半年に一度のフィードバックで何ヵ月も前のことを指摘されてもピンとこないでしょう。タイムリーなフィードバックが必要です。しかも、「できなかったこと」を叱責するより「これから先どうしたらいいか」を考えさせる必要があります。

中竹:ただし、「何ヵ月も前の話はもういらない」と思うのは間違いです。「1年前はこうだったけど、半年前にはこうなっていて、1週間前はこうだった」と過去からつなげて、上司がストーリーを語ってあげることが大事です。それによって成長の軌跡を知り、振り返りをする場が持て、さらに目指すものを考えることができます。

島田:ストーリーの大切さは、脳神経言語学の観点からも、いろいろなところで証明されていますね。「できていなかった」「できている」という事実だけでなく、それをつなぎ合わせたストーリーになっていると、「自分はこれを経て今ここにいるんだ」「だから今はこれができるんだ」と、自覚することにつながります。

中竹:ゴールや理想も大事ですが、そもそも今どこにいるのかが分からなればいけません。それによって、最初の一歩も変わります。でも、意外と人間は自分のことが分かっていません。だから、フィードバックやストーリーを伝えてくれる上司や仲間が必要なのだと思います。

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パフォーマンスを高める人間味とそれぞれの個性

小杉:日本の職場はオンとオフがはっきりしすぎていて、運動会や社員旅行もなくなりつつあり、ストーリーが共有できていないのではないかと思います。目の前の仕事を見ることはできても、その人を見ることができていない。そんな懸念を持っています。

島田:オンとオフの切り分けがもたらした弊害の一つが、感情を表さないことです。職場で感情を出さないことがプロフェッショナルだと考えてそう振る舞っていると、喜怒哀楽に鈍くなって「何にワクワクするか」「何にうれしくなるか」も感じられなくなり、自覚を遠ざけてしまいます。

小杉:アメリカの学者やコンサルタントは、「人間味」がなければ信頼は築かれないと指摘しており、実際に企業でもオフサイトミーティングやパーティーなどのイベントを重視しています。人とのつながりから自律心を育むことを、仕組み的に実践しているのです。

中竹:大会でメダルを取れるコーチとそうでないコーチには、差があります。前者には、人間味があるだけでなく、利己的、負けず嫌い、完璧主義といったネガティブな要素も高いという、意外な事実が海外で発表されました。要するに、自分の個性を出し切ることが最も大事であり、パフォーマンスを上げるのです。

島田:持って生まれた素晴らしい個性を出さずに、社会的な理想や組織での作法に従って自分を抑えるのは好ましくありません。個性を本当に出せる場を自ら作っていくことも、自律の一つだと思います。

小杉:ジョブや役割でつくろって自分の個性や感情を押さえ込んでいると、信頼関係は作りにくく、関係性は薄くなります。逆に、お互いをさらけ出して理解し合っている関係性は非常に強固です。

島田:チームが心理的安全性な場所かどうかが、チームが結果を出せるかどうかに一番影響すると言われています。「ここでは何を言っても大丈夫」「何でも聞いてもらえる」という環境であれば、「自分をさらけ出そう」と思えるチームになり、信頼関係も厚くなります。その環境を最初に作るには、リーダー自身が自分をさらけ出せるかどうかが肝です。

小杉:改めて、なぜ自律型組織が良いのでしょうか。

中竹:主体的だとパフォーマンスが高いからです。主体的に動いていると、例えばきつい練習に取り組んでも、疲労度は高くなりません。集中してパフォーマンスが上がっている、ということです。仕事の上でも、自分で物事を決めて主体的に動いていけば、パフォーマンスが上がり、組織にとっても良いと思います。

島田:主体的な状態だと、持っている力が大きく引き出されます。嫌だと思っているときと、夢中になっているときの結果の違いを、皆さんも体験されたことがあると思います。これはエネルギーの使い方が外向きか内向きかの違いで、外にばかり意識が向くとエネルギーが放出されて疲れるためです。だから、自律型組織が望ましいのだと思います。

小杉:失敗の経験から教えることは必要だと思います。ただし、上司や先輩からの教えに従っているだけでは自分で思考できなくなり、スランプに陥っても脱することができず、誰かに教えてもらうしかなくなってしまいます。すると伸びにくくなる。こういう弊害から考えても、主体的に動けるように力を引き出す自律型組織は優れていると考えています。本日はありがとうございました。

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