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成長企業における1on1導入の最前線と本質

<協賛:ビジネスコーチ株式会社>
  • 甲田 哲也氏(株式会社MonotaRO 常務執行役)
  • 橋場 剛氏(ビジネスコーチ株式会社 取締役副社長/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ)
東京パネルセッション [E]2018.06.25 掲載
ビジネスコーチ株式会社講演写真

近年、1 on 1が注目を集めているが、上司がすべての部下と1対1で定期的に対話するには多くの時間が必要だ。なぜ長時間労働の削減が叫ばれる中、このような施策が注目されているのか。事例からは手間を超えた多くのメリットが見えてくる。1 on 1支援を行うビジネスコーチ社の橋場氏と、1 on 1を導入しているモノタロウの甲田氏が、1 on 1の本質と運営するポイントについて意見を交わした。

プロフィール
甲田 哲也氏( 株式会社MonotaRO 常務執行役)
甲田 哲也 プロフィール写真

(こうだ てつや)1999年に司法試験に合格、2001年に法律事務所に入所。2008年には米ニューヨーク州の司法試験に合格、2009年には大手コンサルティング会社のA.T.カーニーに入社。2014年に株式会社MonotaROに入社し、執行役管理部門長に就任。2018年3月より現職。


橋場 剛氏( ビジネスコーチ株式会社 取締役副社長/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ)
橋場 剛 プロフィール写真

(はしば ごう)中央大学法学部卒業。アクセンチュア株式会社にて主に大手ハイテク企業に対するコンサルティングに携わる。同社通信ハイテク産業本部マネジャーを経て、当社設立に参画。2010年専務取締役、2017年12月より現職。


ビジネスコーチ 橋場氏によるプレゼンテーション:1 on 1の本質について考える

ビジネスコーチは各種コーチングサービスを展開しており、これまでに500社を超える企業を支援してきた。1 on 1ミーティングの導入も行っており、モノタロウは支援企業の一つだ。最初に登壇した橋場氏は、1 on 1とは何かについて解説した。

「1 on 1とは、上司と部下が1対1で定期的に行う対話です。コーチング、ティーチング、フィードバックなどを効果的に組み合わせ、部下の成長支援を目的として実施します。一般に7割程度は部下が話をし、残りの3割で上司が質問を投げかけ、アドバイスを行います」

しかし、いざ1 on 1を導入しようとすると、現場からは抵抗の声が聞かれることも多いという。特に聞かれるのは、かかる時間の長さに対する意見だ。例えば、部下が8名いる上司が毎週30分1 on 1を実施すると、毎週4時間もかかることになる。「ただでさえ忙しく、残業削減に取り組んでいるのに、1 on 1を導入したら残業が増えて、かえって現場が疲弊する」と反発の声も聞かれる。どう対処すればいいのか。

「本質が捉えられていないと、このような不満がどんどん出ることになります。上司が毎週4時間をかけたとしても、将来的にはそれを上回る成果が得られるはずです。ただし、継続しないと成果には結びつきません」

世の中で注目される1 on 1。変化が激しく、スピードが求められる時代になってきたことが、その背景にはある。橋場氏は、1 on 1のメリットを四点をあげた。一つ目は「働き方改革・生産性向上の実現」。今は時間当たりの生産性を上げる必要があり、聞く力・話す力を含めた対話力が求められる。二つ目は「上司・部下の関係の質の向上」。コミュニケーション量が減ると関係性も希薄になる。1 on 1は関係の質に結びつく施策だ。そして三つ目は「自ら考えて自ら動く、自律的人材の育成」だ。

「導入理由としては、これがもっとも多いかもしれません。キーワードは質問力、問いかける力です。いかに部下に考えさせ、自ら動くか。ここで自律性を問う質問例を紹介します。それは『皆さんの仕事の生産性を今の倍にするには、どんな仕事の仕方をしたらよいと思いますか』です。この質問にはすぐ答えが出せません。しかし、相手に考えさせるからこそ、よい質問なのです。自分で考え、何らかの答えを出すことが重要。自分で考え出したことには納得感があり、腹落ち感があります。だからこそ、やってみようと思える。これで成果が出たら、続けようと思えるのです」

最後の四つ目は「びっくり退職、びっくり休職を始めとする離職率の低減」だ。

「優秀な人材を採用したのに1年経たずに辞めたいと言ってきた、という企業がありました。詳しく聞いてみると、実は辞めるときに初めて1対1で面談をしたということでした。1 on 1を行っていれば、こんなことにはなりません」

講演写真

次に橋場氏は、1 on 1導入でよくある失敗ケースを紹介した。一つ目は「1 on 1導入が目的になっている。○○社でやっているから、うちもとりあえず」というケース。

「1 on 1導入はあくまでも手段。目的・意義について社員が腹落ちしないと浸透・徹底・成果にはつながりません。何でも話せる安全・安心の空間醸成も重要です。私がお世話した企業で成功しているところは、どこも導入の目的や意義が明確です」

二つ目は「経営幹部は言うだけ、指示するだけ。自らは1 on 1を実施しない。高い目標にチャレンジしない」というケースだ。経営幹部自身が誰よりも積極的に1 on 1を実践して率先垂範すべきであり、経営幹部自らが自己変革にチャレンジすべきだ。

三つ目は「上司や管理職が1 on 1を意識し続ける仕組みがない。そのため、飽きてしまい長く続かない」というケース。ここでは定期的な1 on 1フィードバックや効果的なフォローアップにより、現場に根付かせる仕組みをつくる必要がある。

最後に橋場氏は、1 on 1の本質につながる成功ポイントを三つあげた。

「中長期的な視点を持つこと。十分な信頼関係を構築すること。そして、1 on 1の先にあるヴィジョン、実現したいことを明確にイメージすることです。これらの条件が揃えば1 on 1は成功します」

モノタロウ 甲田氏によるプレゼンテーション:モノタロウにおける1 on 1の活用

モノタロウは、中小事業者を主なターゲットにインターネットやカタログを通じて、間接資材を提供する企業だ。2018年3月末時点で取扱点数1500万点超、国内顧客数は287万アカウント。2017年の売上高は883億円で、Forbesによる「世界で最も革新的な成長企業ランキング2017」では全世界6位に選出されるなど、右肩上がりの成長を見せている。モノタロウでは1 on 1をどう活用してきたのか。

「当社では、創業以来、週次で面談(1 on 1)を行うことが奨励されてきました。当社の成長の源泉として、顧客への価値提供の継続的な向上に加え、組織における学びの速さと柔軟性が挙げられます。そして、1 on 1は意思連携の強化手段として「学びの速さと柔軟性」を可能にする重要な要素だと考えています」

モノタロウでは、週次の面談(1 on 1)や週報(毎週金曜に、各メンバーが社長を含むライン上の上司全員と部門長に行う報告)を通じ、相互の対話、振り返りが行われている。

「1 on 1によって、事業方針が迅速にオペレーションに落とし込まれます。1 on 1で対話し、上司が部下に伴走することで組織の運動神経が強化されます。対話の中で課題が発見され、上司と部下が一緒に解決策を考え実行に移しています」

「このように創業以来行われてきた1 on 1を、2017年に人材育成方法の一つとして位置づけました。OJTを中心とした『仕事を通じた成長』を1 on 1などのコミュニケーションが補完し『組織を通じた成長』を図るという考え方です。そのために、1 on 1でのテーマ設定についても改めて整理し、やり方の改善を行っています。」

では、1 on 1において、具体的にどのような目的が設定されているのか。意識すべき目的は三つ。一つ目は「振り返り・気づき」だ。仕事を通じて得た経験を振り返り、対話を通じて、次の行動への気づきを得る。二つ目は「目標達成」。設定した目標の達成に向け、助言等の支援を得る。三つ目は「成長支援」。会社でやりたいこと・実現したいこと、そのための仕事力をどう身に付けていくかを共に考える。そして、実行の過程で助言などの支援を得る。モノタロウでは、「目標達成」と「成長支援」は、「半期の目標設定」、個人の「成長計画」という別の制度とリンクされ、そのフォローアップのためにも1 on 1が活用される。

講演写真

モノタロウでは、1 on 1に取り組むに当たり、効果を最大化するための工夫を行っているという。そこには三つのポイントがある。

「一つ目は、目的の明確化と対話フォーマットの準備です。アウトラインの準備を通じ、部下は予め考えを整理し、コーチである上司は、どのテーマにどれくらいの時間を配分すべきかを前もってイメージすることができます。二つ目は、1 on 1アセスメントの実施とフィードバックです。半期ごとに実施することで、コーチ側も振り返る機会となります。三つ目は、コーチングのためのワークショップの実施。ベストプラクティスの共有やロールプレイングを行う中で、互いに悩みを共有しつつディスカッションを行います」

「これまで1 on 1アセスメントを複数回実施しました。成長計画の提出後は受け手(部下)の課題感も高まってきており、その結果、1 on 1に対する要望もより密度の濃いものになってきたと思います。多くの改善点も寄せられ、未だ道半ばですが、今後も1 on 1の品質向上に取り組み、モノタロウが社員と共に継続的に成長する仕組みとして進化させていきたいと思います」

質疑応答

Q 社内で1 on 1を継続的に実施される経験の中で1 on 1をやってよかったと思える事例やエピソードを教えてください。

甲田:1 on 1が課題解決の場になっています。毎週提出される週報では、課題も報告されますが、対応について「次の1 on 1で相談します」といったコメントがあり、1 on 1が定着していることを感じます。また、1 on 1アセスメントが活かされている例として、こんなやり取りがありました。部下の匿名コメントに「自分の上司が自分の年齢のころに、どんな悩みがあり、どんな解決を図ってきたか教えてほしい」というものがあり、それを読んだ上司が「意外だった。今後はそんな内容も織り交ぜたい」という感想を週報で書いていました。このように全体としてコミュニケーションの質が向上している点に1 on 1の良さがあると思っています。

Q 貴社では1 on 1の実施は評価制度に組み込まれていますか。また、1 on 1の実施状況や部下からの評価結果は人事評価に影響しますか。今後の運用に関する考えについてお教えください。

甲田:週報には減点がありますが、1 on 1は対話という人対人の問題でもあり、評価の対象にしていません。ただ、1 on 1の時間が作れていないことは、マネジメント能力にも関わりますので、間接的に上司の評価に影響することはあると思います。

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Q 貴社のさらなる成長のために、今後必要となる人材育成に関して考えられるキーワードを挙げるとすれば何ですか。

甲田:キーワードとして考えているのは「成長ストーリー」です。会社が成長していく上では、顧客のニーズを捉えて応えていくなど会社自体のストーリーを構築し、それを実現していくことが必要になります。人材育成も似た部分があり、個人がどのような成長ストーリーを持っているのかを明確にするプロセスを踏んだ上で、それが実現できるような会社であるべく、必要な仕組みを整えていきたいと思います。

最後に橋場氏は、1 on 1の本質に関するまとめとして、次のようにコメントし、セッションを締め括った。

「1 on 1は部下の成長を目的として行うものであり、その人らしい仕事ができれば、組織の生産性は劇的に高まります。上司自身もチャレンジし、成果を求め続けることで、部下も動きます。やはり、1 on 1はまずやってみることが大事でしょう。いきなりうまくやる必要はありません。個人と組織がありたい姿に向き合う機会と捉えることで、意義のある対話が実現できると思います」

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本講演企業

ビジネスコーチ株式会社は、社員の自発的な行動変革を起し、ビジネスの成長を加速させたい企業・経営者のためのビジネスパートナーです。行動変革の見える化、定着化を根付かせ、ビジネス成長を加速させる企業体質づくりを可能にします。私達は、「行動変革のプロフェッショナル」として、お客様それぞれの理想と課題を伺い、確実に変化が起きる、ソリューションサービスの提案から実施まで日々取り組んでいます。

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ビジネスコーチ株式会社は、社員の自発的な行動変革を起し、ビジネスの成長を加速させたい企業・経営者のためのビジネスパートナーです。行動変革の見える化、定着化を根付かせ、ビジネス成長を加速させる企業体質づくりを可能にします。私達は、「行動変革のプロフェッショナル」として、お客様それぞれの理想と課題を伺い、確実に変化が起きる、ソリューションサービスの提案から実施まで日々取り組んでいます。

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