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サイバーエージェント・メルカリと考える
「テクノロジーは人事の現場をどう変えているのか?」

<協賛:エン・ジャパン株式会社>
  • 向坂 真弓氏(株式会社サイバーエージェント 人材科学センター)
  • 石黒 卓弥氏(株式会社メルカリ People Partners Group マネージャー)
  • 西村 賢氏(フリーランスITジャーナリスト (元TechCrunch Japan編集長))
  • 寺田 輝之氏(エン・ジャパン株式会社 執行役員)
TECH DAYパネルセッション [TE]2018.06.25 掲載
エン・ジャパン株式会社講演写真

近年、HRテクノロジーが注目を集め、人事分野でさまざまなサービスが提供されている。成長企業はどのようにテクノロジーを人事業務へ導入し、どういった効果を上げているのか。HRテクノロジーに詳しいサイバーエージェントの向坂氏、メルカリの石黒氏、エン・ジャパンの寺田氏を迎え、TechCrunch元編集長の西村氏の司会で、人事の現場で起きている変化をテーマにパネルセッションを行った。

プロフィール
向坂 真弓氏( 株式会社サイバーエージェント 人材科学センター)
向坂 真弓 プロフィール写真

(こうざか まゆみ)一橋大学社会学部卒業後、2003年にサイバーエージェントに新卒で入社。インターネット広告代理事業の営業、マーケティング、SEMコンサルを経験。人事データ分析を目的として設立された人材科学センターに2016年に参画。採用、適材適所、退職予防などを目的としたデータ分析をし、経営への提言を行っている。


石黒 卓弥氏( 株式会社メルカリ People Partners Group マネージャー)
石黒 卓弥 プロフィール写真

(いしぐろ たかや)成長期のNTTドコモに新卒入社、ドコモでは営業、人事、新規事業会社立ち上げ、その後に新規サービスの企画運営を担当。2015年より現職。メルカリでは採用を中心とした人事企画を担当。


西村 賢氏( フリーランスITジャーナリスト (元TechCrunch Japan編集長))
西村 賢 プロフィール写真

(にしむら けん)1990年代半ばの学生時代に寄稿を始めたPC雑誌「月刊アスキー」や「週刊アスキー」の編集・記者としてインターネット・PC産業の興隆を取材。ITプロフェッショナル向けWebサイト「@IT」の副編集長、スタートアップ情報サイト「TechCrunch Japan」の編集長を経て2018年に独立。


寺田 輝之氏( エン・ジャパン株式会社 執行役員)
寺田 輝之 プロフィール写真

(てらだ てるゆき)2002年、エン・ジャパン入社。中途採用支援の法人営業を経て、WEBサイトの企画・開発、マーケティングを手掛ける現部署に配属。『エン転職』 『エンバイト』 『カイシャの評判』 『 CAREER HACK 』など同社を代表する多数のWEBサービスの新規立ち上げ・リニューアルを牽引。
2014年4月にデジタルプロダクト開発本部長、2015年4月に執行役員に就任。現在、2016年7月ローンチ後、導入企業数9万社突破の無料の採用クラウドツール『 engage 』の開発責任者も務める。


エン・ジャパン 寺田氏:HR テクノロジーを「求人、選考、入社後フォロー」に活かす

まずエン・ジャパンの寺田氏が、自社採用サイト作成ツール「engage」について語った。同社では人事に向けたテクノロジー支援に関して、重点領域を定めている。一つ目は「求人」。特に重視しているのは採用広報だ。二つ目は「選考」。人物の見極めと企業の魅力付けへの活用を促している。三つ目は「入社後のフォロー」。特に、入社後1年間における早期離職の防止に注力している。

「エン・ジャパンは前身が人事コンサルタント企業なので、そこで培ったノウハウをテクノロジーに載せて提供していきたいと考えています。現在私たちが力を入れているのは、自社採用サイト作成ツール『engage』。現在8万社が使用しています。エンジニアでなくても、誰もが簡単に採用サイトを作成でき、企業の各部門や単体の店舗など、規模が小さな組織でも気軽に使うことができます。ATS(採用管理システム)として、応募者管理や求人の情報発信も容易にできる点も強みです。基本機能は無料で使用可能です」

講演写真

同社は他にも、さまざまな人事向けサービスを提供している。ビデオインタビューは、撮り直し可能な動画を通じてコミュニケーションが図れる面談ツール。応募者は企業側の動画を閲覧したうえで、自身の返答メッセージを録画し送ることができる。地方在住の学生とのコミュニケーションなどを目的に使われているという。また、タレントアナリティクスは、オンラインでの適性診断。学歴や職務経歴だけではわからないビジネスに必要な知的能力や、面接では見抜きにくい性格やストレス耐性、キャリアに対する価値観などを把握できる。

入社後に使えるツールもある。離職リスクを可視化するHR OnBoardだ。

「入社1年で人が辞める原因は、大きく三つあります。一つ目は入社後のギャップ。二つ目は直属の上司とのリレーション。そして三つ目は仕事量の多さです。そこで入社者に毎月アンケートを取り、現状の意識を探ることで離職リスクの高そうな人を把握します。利用企業の中には、平均離職率が13.6%から5.3%へと大幅に改善した例もあります」

他にも同社は「カイシャの評判」という社員や元社員による口コミサイトを運営。企業の評判といった無形の支援サービスもラインアップに加えている。

サイバーエージェント 向坂氏:HR Techの定着に必要なのは「運用チーム、テクノロジー、風土・制度」

次に、サイバーエージェントの向坂氏が同社の取り組みについて語った。同社の人事業務は「採用」「育成」「活性化」「適材適所」「企業文化」の五つに集約される。これらを行っていくうえで重要な情報源となっているのが、従業員のコンディション変化発見ツール「GEPPO(ゲッポー)」だ。

「GEPPOは社員へのアンケートシステムです。全社員が毎月、コンディションやキャリア志向、抱えている問題などについて答えます。固定で聞くのは当月の個人のコンディションとチームコンディション。天気に例えて晴れ、くもりなどと、5段階で答えてもらいます。質問数は3~4問なので1分程度で答えられます。フリーコメント欄も設けています」

例えば、急に天気が悪化した人に面談を設定したり、個人とチームの天気が違い過ぎる人を面談の対象にしたりしているという。アンケートを始めた理由は、全社で事業をスマホにシフトした際に新たな職種の人材を採用して、人材の流動化が起きにくくなったから。個人のコンディションや強みを把握できるシステムをつくる必要があったのだ。

「社内には社員の適材適所を担うヘッドハンターチームとして、キャリアエージェントという部署があります。スタッフは毎月GEPPOを読み込み、個別にコメントを返したり、気になった人には実際に会いに行ったりしています」

講演写真

適材適所を図るには、各部署にどんな人材ニーズがあるのかを知る必要がある。そこに一役買っているのが、グループ内のさまざまな部署の職場環境や人材ニーズを可視化できるシステム、キャリバーだ。同社は多岐にわたる事業を展開しており、部署ごとにどんな仕事があり、どんな人員ニーズがあるのかがわかりづらい。そこで、人材ニーズのある部署は部署の紹介情報をアップし、異動の希望を募っている。年2回行われる社内公募も、活性化の役割を担う。

「『人事制度は運用が8割』と言われますが、HRテクノロジーでも同じです。キャリバーはまさに定期的な情報更新などの運用が肝ですし、キャリアエージェントはGEPPOをしっかり読み込んでアクションを起こしている。ツールを入れることで作業的な時間を減らしつつ、人に会う、声をかけるなどクリエイティブな作業に時間を使うよう心がけています」

メルカリ 石黒氏:HR Techで人材に関わるデータを可能な限り残し、すべてを可視化する

続いて、メルカリの石黒氏が同社の取り組みについて語った。メルカリの人事には採用、労務、総務、を含めた「ぴーかる(People & Culture)」というチームがある。2018年1月には、エンジニアリングで経営課題を解決する「コーポレートエンジニアリングチーム」を発足させた。

「メンバーは8名で、人事データベースや評価システムをつくっています。人事におけるテクノロジーの活用では、人材に関わるデータを可能な限り残し、そのすべてを可視化できるようにしたい、と考えています。例えば、1 on 1のログは現在、本人以外は引き継ぎにくいものになっていますが、必要に応じて評価の引き継ぎを行えるように変えたいと考えています」

人材採用の過程をデータ化することでも、さまざまなことがわかってくる。オファーを出し、それに対するアクションでわかることがある。

「返事を返すまでの時間で、熱心さは伝えられます。速いほうが熱意も伝わりますし、選考のプロセス自体も短いほうが圧倒的にいい。ただ、面接を1回減らすとスピードは速くなっても、人材像の把握に関しては正確性が犠牲になる面もある。4回以上面接すると答えは同じとも言われますが、最適な進め方はどれなのか、データによって見える化していきたいですね」

また、石黒氏はこの先、採用面接において、企業側へのフィードバックも必要になると語る。どんな人も事業にとって顧客であり、その点を意識する必要があるからだ。

「採用面接をされる応募者側から、行った企業側へのフィードバックはなかなかありません。当社では入社された人に面接についてのアンケートを取っていますが、将来は入社されなかった人にもサーベイを取りたいと考えています」

講演写真

石黒氏は、人事システムにおいては社員IDを共通化し、すべてのシステムで使えるようにすることが重要だと語る。使えるシステムにする鍵は効率化なのだ。

「ワンアカウントですべてのデータが扱えることは、効率面から考えて特に重要です。将来的にはすべての関連システムを連動させ、一つのIDで使えるようにしなければならないと考えています」

ディスカッション:「HR テクノロジーはどのように導入すべきか」

西村:HRテクノロジーのツールは「大きな目的がなければ導入できない」と思いがちですが、皆さんの話をうかがって、身近な業務の効率化から始めてもいいのだとわかりました。具体的に、導入するメリットとは何でしょうか。

石黒:収集したデータを使って上層部に説明すると、言うことを聞いてもらいやすくなる面はあると思います。これからの人事に関わる人が経験や年功ではない部分で頼れるものをつくれることは、非常に大事だと思います。

西村:HRテクノロジーの導入時に、注意すべきことは何でしょうか。

石黒:最初に「テクノロジーを入れることは難しそう」などと考えてしまうと、どんどん導入が難しくなります。言葉の使い方は実に大事。ポジティブなワーディングを意識して使うようにしています。導入そのものは、決して難しいことではありません。

向坂:GEPPOもテクノロジーと言うと難しく聞こえますが、実態はアンケートを取っているだけです。紙でもできることですが、それを定期的に行い、きちんとデータを貯められるのでシステム化しました。

寺田:効率という点から考えると、どんな点がポイントになりますか。
  
向坂:石黒さんの話にあった、一つのIDですべてが行えるようにすることは大変効率がよいと思います。私は以前、何でもエクセルでデータをつくっていて、ひたすら社員番号を入力しVLOOKUPするという作業ばかりしていました。皆さんもご経験があるのではないでしょうか。『この人の今月のGEPPO情報と採用時の選考情報を一つの表にして』と頼まれると、ひたすらVLOOKUPです。それが一つのIDでどのシステムも入れるようになれば、自動的に集計ができてしまう。データ収集作業の効率化は重要です。

講演写真

寺田:メルカリは今、社員数が増えている過程にあると思いますが、サイバーエージェントの話を聞いていて参考になった点はありましたか。

石黒:「システムがきちんと使われているな」と社員が実感できるのは、今回の例でいうとGEPPOで書いたことに対してさまざまな人からフィードバックがある点だと思います。聞いたところでは経営層も書き込みを読み、気になる提案などを検討されたりするそうですね。「どうせ書いても会社は変わらない」と思ったら、社員は誰も書かなくなります。

向坂:先日、社内で新卒エンジニアの給与をスキルに応じて差を付けることを決めたのですが、その制度に対して、賛否さまざまな意見がGEPPOで集まりました。常にいろんな意見が聞ける点はよいところです。人事制度を変えたときは人事もフィードバックが欲しいので、GEPPOを通じて聞けるのは大変便利です。

西村:本日は大変参考になるお話を、ありがとうございました。

本講演企業

エン・ジャパンは採用支援だけではなく入社後の活躍・定着に注視し、求人情報サービス、人材紹介、社員教育・評価事業を提供。売上高395億円、経常利益90億円(いずれも連結、2018年3月期予想)、グループ会社含めて従業員数2,301名(2017年3月時点)、世界7カ国で事業を展開。

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