育児短時間勤務:労使協定の適用除外と代替措置
育児休業から復帰した社員から短時間勤務の希望がありました。しかし、その社員は派遣営業職として採用されており、社内の事務職や、他の専門職への転換が困難です。
また、この職種は派遣先クライアントの営業社員として勤務します。したがって、勤務時間も会社とクライアントとの契約に基づいて運用される為、育児休業前の職務に復帰する以上、短時間勤務実現のハードルがとても高い状況です。
派遣元の我々としては、数少ない短時間派遣契約や、在宅またはリモート勤務可能な派遣契約を獲得できるよう最大限の努力をしており、それらの案件が見つかった場合は、短時間勤務を希望する社員にアサインするようにしています。
今回育児短時間勤務を申し出た社員に対して、そういった案件を開拓してアサインできなかった場合を想定して、育児短時間勤務対象者の適用除外条件として、「個人ごとに担当企業・地域が厳密に分担され、他の労働者では代替が困難な営業業務」を明示した労使協定を締結し、代替措置として1.フレックス勤務適用 2.ベビーシッター補助 を設けることを検討しております。
上記を踏まえ、以下3点ご意見をいただきたく、お願いします。
1.「個人ごとに担当企業・地域が厳密に分担され、他の労働者では代替が困難な営業業務」として、派遣営業職が適用可能かどうか。
2.労使協定による適用除外職種の明示+代替措置の提示、で初めて個別の育児短時間勤務を適用できないことを当該労働者へ説明できる根拠となる、と考えますが、その他の手段はありますしょうか。
3.派遣営業職という性質上、リモート勤務(在宅勤務)は条件に適う派遣契約がかなり少なく、適用するのが困難です。代替措置としての提示が義務化されていますが、これについてよい解決案等がありましたら、ご教示ください。
投稿日:2025/09/24 16:47 ID:QA-0158612
- 筋トレ人事さん
- 東京都/医療・福祉関連(企業規模 501~1000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.適用除外の対象として「派遣営業職」が該当するか
法的根拠
育児・介護休業法第23条(短時間勤務制度)および同法施行規則第59条の2~4に基づき、事業主は3歳に満たない子を養育する労働者に対して短時間勤務制度を設ける義務があります。
ただし、以下の場合は労使協定により適用除外が可能です(同規則第59条の3)。
(1) 日々雇用される者
(2) 所定労働時間が1日6時間以下の者
(3) 短時間勤務をすることが困難な業務に従事する者
(4) 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、代替要員の確保が著しく困難な者
(5) 適用除外とすることについて労使協定がある者
検討
「個人ごとに担当企業・地域が厳密に分担され、他の労働者では代替が困難な営業業務」というのは、(3) および (4) の要件に合致する余地があります。
ただし、行政解釈上も「一律に営業職だから除外」ではなく、代替要員が配置できない、業務体制上短時間勤務が実現できない、という具体的理由が必要です。
→ よって、派遣営業職であっても、 労使協定において適用除外に該当すると明示することは可能 です。
ただし、労働局から「除外の濫用」と見られないよう、職務の特殊性・代替困難性を文書で具体的に説明できる体制が必要です。
2.労使協定による適用除外と労働者への説明の根拠
ご認識の通り、労使協定を締結し、適用除外職務を明示し、かつ代替措置を講じることによって、初めて「この労働者には短時間勤務制度を適用できない」と説明する法的根拠が成立します。
その他の手段としては、
個別同意方式:労働者本人と個別に短時間勤務制度を適用しない合意をすることは、法律上は許されません(強行法規)。
就業規則での一律除外:就業規則で一律除外を定めても、労使協定がなければ効力は認められません。
→ よって、実務的には 労使協定の締結が唯一の適法ルート と整理されます。
3.代替措置(リモート勤務困難な場合)の考え方
代替措置の義務
育児・介護休業法第23条第3項に基づき、短時間勤務の適用除外を行う場合には、「短時間勤務に代わる措置」を講じなければならないとされています。
例示として厚労省指針では以下のようなものがあります:
始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(フレックス制度)
委託や外部サービスの利用補助(ベビーシッター補助など)
その他子育てと両立を容易にする制度
派遣営業職での工夫例
フレックスタイム制の適用
クライアント対応の範囲内で、出退勤の一部柔軟化を認める。
時間単位年休・半日休暇制度の活用
短時間勤務の代替として「育児対応のため午後のみ勤務」などを取りやすくする。
在宅勤務の部分的導入
フルリモートは困難でも、「内勤業務部分のみ在宅可」とする運用は一定の代替措置になります。
ベビーシッター利用補助
特に営業・外勤系でリモート困難な場合には、代替措置として現実的です。
派遣契約上の工夫
派遣先に対して「時短派遣」の需要開拓を依頼・交渉する取り組みを代替措置の一環として位置付けることも可能です。
→ 要は、必ずしもリモート勤務に限定されず、会社として可能な範囲での柔軟勤務・補助制度を整備すれば代替措置として有効です。
4.まとめ(ご質問への回答)
(1)派遣営業職でも、業務の性質上「代替困難」であれば適用除外に該当する可能性あり。ただし個別具体的な理由を明示し、濫用とならないよう注意が必要。
(2)労使協定の締結+代替措置の整備が唯一の法的根拠。就業規則や個別同意のみでは足りません。
(3)リモート勤務が困難な場合でも、フレックス勤務・時間単位年休・ベビーシッター補助など他の柔軟措置で代替措置義務を果たせる。派遣先との調整や案件開拓努力も代替措置に位置付け可能。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/09/24 18:26 ID:QA-0158618
相談者より
適用除外とするためのポイントや、リモート勤務を内勤のみに適用することも、代替措置として認められるなど、具体的かつ実践的なアドバイスをいただき、助かりました。大変参考になりました。
投稿日:2025/09/26 17:55 ID:QA-0158758大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
1について
育児介護休業法では、事業の正常な運営を妨げる場合に短時間勤務を適用しない
ことができると定めています。労使協定で適用除外とする業務を定める場合、
合理的かつ、客観的な基準であれば可能と判断できます。
2について
代替措置の提示も含めることは、大変有効的と考えます。
また、加えるとするならば、会社として対応を尽くしている経緯(就業先企業の
アサイン状況等)を出来る範囲で開示できると、個別対応が必要とはなりますが、
更に合理性ある説明へと結びつくかと存じます。
3について
業務の性質上、就業条件を大きく変えることが通常よりも困難かと思いますので、
ベビーシッター補助のような金銭補助が有効的ではないでしょうか。金銭補助と
いう観点では、認可外保育施設や病児保育の利用料補助などが考えられます。
投稿日:2025/09/25 08:19 ID:QA-0158623
相談者より
シンプルでわかりやすいアドバイスをいただき、ありがとうございます。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/09/26 17:49 ID:QA-0158755大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、1につきましては、単に派遣営業職であるから適用可能という事ではなく、あくまで実際に短時間勤務の適用が業務上困難である事が必要といえます。その上で、文面内容を拝見する限りですと、御社同職の場合には適用も可能と考えられます。
2につきましては、示された方法が法的にも妥当であり、それに代わる方法は考え難いものといえます。
3につきましては、テレワークはあくまで代替措置の選択肢の一つに過ぎませんので、実施困難であれば代替措置から除かれる事で差し支えございません。
投稿日:2025/09/25 13:50 ID:QA-0158653
相談者より
的確なアドバイスをいただき、ありがとうございます。リモート勤務の選択肢を提供することは必須ではなく、他の手段でも代替可能とのこと理解いたしました。大変参考になりました。
投稿日:2025/09/26 17:51 ID:QA-0158757大変参考になった
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