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週休3日制をどう考えるか ~実態把握を中心に~

リクルートワークス研究所 坂本貴志氏

週休3日制をどう考えるか ~実態把握を中心に~

選択的週休3日制の議論が盛り上がっている。2021年4月13日には、内閣府経済財政諮問会議の場で民間議員から「従業員の学び直しへの支援を強化するため、選択的週休3日制を導入するなど働きながら学べる環境を整備すべき」と提言された。自民党一億総活躍推進本部においても提言書が公表され、選択的週休3日制の普及を目指すことが明示されており、こうした動きは今後ますます広まっていくと考えられる。

今回は、実態把握のため、週休3日制は現状でどの程度導入されているのかを検証する。日本の労働者はそもそも週何日働いているのか。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いて、その実態を中心に把握していこう。

週4日勤務の就業者は500万人超存在

就業者は週何日働いているのか。まずは週労働日数の分布を確認してみると、最も多いのは5日。全体の64.9%にあたる4300万人が週5日勤務である(図表1)。

その次に多いのは週6日勤務で就業者全体の12.7%(843万人)にあたる。そして3番目に多いのが週労働日数が4日つまり週休3日である。現状は、就業者全体の8.2%、546万人が週休3日で働いている。

ちなみに本調査で用いている設問では「昨年12月時点についていた仕事における平均的な1週間の総労働日数はどれくらいでしたか」と尋ねている。つまり、実働ではなく「平均的」な労働日数を聞いているため、有休消化などにより偶然そうなったのではなく、常日頃から週4日勤務で働いている人がこの程度いると考えられる。

図表1:週労働日数の分布
図表1:週労働日数の分布

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値、括弧内は就業者全体に占める割合

週4日勤務の正規雇用者はごく少数

これは就業者全体の数値であるが、就業形態・雇用形態を分けてみるとどうか。図表2が週労働日数4日に該当する546万人の内訳となっている。

これを見ると、週労働日数4日の就業者の大部分はパート・アルバイト(359万人)で占められている。パート・アルバイト全体のなかで週労働日数が4日である人の割合は22.5%に上り、この雇用形態では週4日勤務はよく選択されていることがわかる。

一方、正規雇用者で週4日勤務している人の割合は1.7%(49.3万人)と少なく、現状、正規雇用者のなかでは週休3日制はほとんど普及していない。正規雇用者については、週5日勤務が81.4%、週6日勤務が14.4%となっており、この2つが大半を占め、1週間の勤務日数が4日以下の労働者はごく少数となっている(図表3)。

これ以外の雇用形態を見ると、派遣社員(7.4%)、契約社員(7.7%)、嘱託(9.9%)と、パート・アルバイト以外の非正規雇用者も一定数がこうした働き方をしている。非雇用者で見ても、自営業主(雇い人なし)の週4日勤務の人の割合が9.6%など、週4日働いて週3日休むという働き方は決して珍しいものではない。週何日働くかという選択肢は、ほぼ正規雇用者だけに許されていないのが現状である。

図表2:週4日勤務者の人数(就業形態・雇用形態別)
図表2:週4日勤務者の人数(就業形態・雇用形態別)

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値、括弧内の数値は同就業形態の就業者のうち週労働日数4日に該当する就業者の割合を示す。たとえば、パート・アルバイトのうち22.5%の人が週休4日で働いている。

図表3:正規雇用者の週労働日数の分布
図表3:正規雇用者の週労働日数の分布

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値

週4日勤務と週5日勤務では、時給はさほど変わらない

週労働日数を短縮したとすると、多くの人が最も気になるのが収入がどうなるかということである。正規雇用者の週労働日数別に主な仕事からの年収の平均値をとってみると、図表4のような結果が得られた。

最も年収が高いのは週労働日数が5日の労働者で476.5万円となる。週4日勤務の正規雇用者の平均年収は407.3万円で、週5日勤務者よりも14.5%給与が低くなる。なお、週6日勤務者の年収も408.7万円と低い。この理由は定かではないが、労働条件の悪い会社で働く人が同時に給与も低くなっていることや、給与の少ない労働者が少しでも多くの稼ぎを得ようと週6日勤務を選択することなどの理由が考えられる。

週労働日数が4日の労働者の給与は、労働日数の減少幅(労働日数は5日から4日へ2割減)ほどには年収は下がらない。これがなぜかというと、週労働日数を減らしている人はその分1日の労働時間が長くなるからである(図表5)。週4日勤務者の総労働時間は36.2時間であるが、1日あたりの労働時間は平均9.0時間と週5日勤務者より多い(週5日勤務者の総労働時間は42.0時間で1日平均労働時間は8.4時間)。

週4日勤務者の総労働時間(36.2時間)は、週5日勤務者の総労働時間(42.0時間)より13.8%少ないが、給与も14.5%低いため、時給ベースで見るとそれほど変わらない。現状で週労働日数4日を選択する人と5日を選択する人の労働者の特性は大きく異なるため一概には比較できないが、労働時間を短縮させた分だけその労働者が生み出す付加価値が失われると考えれば、この結果はうなずけるものといえる。

図表4:正規雇用者の週労働日数別の年収
図表4:正規雇用者の週労働日数別の年収

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値

図表5:正規雇用者の週労働日数別の労働時間
図表5:正規雇用者の週労働日数別の労働時間

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」
注:2019年の数値

週4日勤務者の仕事満足度、幸福度は高い

続いて職種別に週4日勤務者の割合を見てみると、多かったのはタクシードライバー、宿泊接客、施設管理、医師、警備職などとなった(図表6)。例えば、タクシードライバーについては、当日朝から翌早朝までの長時間勤務を行い、その後は一日休暇を取得するといったような働き方が普及しており、正規雇用者でも週4日や週3日での勤務が可能なことが多い。

一方で、建設作業者(1.3%)、一般事務(1.2%)、管理職(0.9%)、営業(0.7%)、小中高教員(0.3%)などは週4日勤務者は少ない。こうした職種では朝から夕方までの一日がかりの勤務を基本として行うことになるため、そのほとんどが週5日または週6日勤務となり、週4日勤務などは例外的な事例となる。

最後に、正規雇用者の週労働日数と仕事満足度・幸福度との関係を見てみよう(図表7)。週4日勤務者を週5日勤務者と比較すると、仕事満足度も幸福度も高いという結果となった。週5日勤務者で仕事に満足している人の割合は37.0%であるが、週4日勤務者は41.6%である。幸福度に関しても幸福だと感じている人の割合は週5日勤務者(50.3%)より週4日勤務者(55.0%)の方が高くなった。

図表6:正規雇用者の週4日勤務者の割合(主な職種)
図表6:正規雇用者の週4日勤務者の割合(主な職種)

出典:総務省「労働力調査(基本集計)」より作成
注:数値はいずれも季節調整値

図表7:正規雇用者の仕事満足度と幸福度(週労働日数別)
図表7:正規雇用者の仕事満足度と幸福度(週労働日数別)

出典:総務省「労働力調査(詳細集計)」より作成
注:数値はいずれも季節調整値。労働力調査(詳細集計)による集計であるため、労働力調査(基本集計)による集計とは数値は一致しない

週休3日制をどう考えるか

今回の分析の結果をまとめよう。まずは週休3日制(=週4日勤務)で働く人は一定数存在するがその多くはパート・アルバイトなどが中心であり、正規雇用者に限ってみるとほとんど選択されていない。

また、勤務日数が少ない人は週労働時間が短く、その分賃金も低い。正規雇用で週4日勤務をしている人はタクシードライバーや宿泊施設の接客業で働く人などが多く、事務職で同制度を採用している企業は少ない。最後に、仕事満足度や幸福度は週4日勤務の人の方が週5日勤務の人よりも高くなっている。

以上の結果は、概ね経済学の標準的なフレームに沿ったものといえる。つまり、週労働日数を減らせば、その分労働投入量が減るため、生産量が減少して給与も下がる。その一方で、労働者とすれば余暇が増えるので、その分厚生水準が向上する。なお、給与が減ったなかで幸福度が上昇するという結果は、本来はもう少し余暇に重きをおきたいにもかかわらず、正規雇用だと労働日数が硬直的で自由に選択できていない状況があることを示唆している。

選択的週休3日制についての世の中の受け止めを見ると、実際にこのような帰結を予想する声が多い。つまり、労働日数が減ることは嬉しいが、給与が減ることは困るという受け止めである。給与が減らずに労働日数が減ってくれればそれは望ましいが、そのような都合の良い結果を生み出すことはなかなか難しいだろう。

政府はあくまで学び直しのためというが……

こうしたなか、政府・与党の提言を見ると、少しニュアンスが異なっていることがわかる。政府はあくまで「従業員の学び直し」のために選択的週休3日制を導入すると言及している。経済財政諮問会議の民間議員ペーパーには、「休日を大学院進学や地方兼業、子育て、介護、治療、ボランティア活動に活用することが想定されている」とあるように、単に余暇を増やすことを主眼には置いていないようだ。

政府としては、あくまで生産性を高めることなどを目的に選択的3日制を導入すべきだといっているのである。単に労働日数を削り余暇を増やすのであれば経済活動が縮小してしまうため、余暇充実のための選択的週休3日制は導入したくないのであろう。

しかし、学び直しのために週休3日制を導入すべきとする議論には疑問が残る。以前リクルートワークス研究所が行った分析(※)では、パネルデータを利用したうえで、余暇時間が増えても必ずしも自己啓発活動は増えないということを指摘している。

確かに、週労働日数を縮減させ、そのうえで経済活動も拡大させるといえば聞こえはいいが、そのようなパレート改善的な帰結はおそらく生じない。週休3日制を導入するのであれば、余暇が増えた分だけ経済活動が縮小することを覚悟したうえで、その縮小の程度を最小限に抑えるというアプローチが現実的である。

かつて、経済学者であるケインズは生産性が向上する未来において、1日に3時間も働けば生活に必要なものは得ることができる時代が訪れると予想した。生産性が高まる分だけ労働時間を減らしても生産量を保つことができるのだから、その分余暇時間を増やす方向に進むと予想したわけである。

しかし、これまで日本社会は生産性の向上によって余暇時間を増やすことをあまり選択してこなかった。むしろ、労働時間はそのままに、もっぱら生産活動を拡大し消費量を増やすことを選択してきたといえる。

このような状況下、正規雇用者であっても、自由に労働日数を選べる働き方が実現するという方向性は望ましいものであると考えられる。週休3日制が本格的に検討され、今後の議論がさらに進展することを期待したい。

(※)リクルートワークス研究所「どうすれば人は学ぶのか―『社会人の学び』を解析する」参照

※本稿は筆者の個人的な見解であり、所属する組織・研究会の見解を示すものではありません。

リクルートワークス研究所

リクルートワークス研究所は、「一人ひとりが生き生きと働ける次世代社会の創造」を使命に掲げる(株)リクルート内の研究機関です。労働市場・組織人事・個人のキャリア・労働政策等について、独自の調査・研究を行っています。
https://www.works-i.com/

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【用語解説 人事辞典】
ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)
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