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【ヨミ】ザイタクキンム 在宅勤務

ライフスタイルに合わせた働き方が実現できる「在宅勤務」は、企業と労働者の双方に多くのメリットをもたらします。一方で、事業内容や職種によって決めるべきルールや整備すべき体制が異なるなど、導入に際して難しさを感じている企業も少なくありません。ここでは在宅勤務のメリットを整理しながら、導入時に注意すべきこと、就業規則作成のポイントを解説していきます。

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1. 在宅勤務とは

在宅勤務の概要

在宅勤務とは、勤務先の事業場ではなく、自宅で仕事をする勤務形態のことです。主にパソコンやインターネット通信環境を自宅に整備して作業を行います。企業によって全日を在宅勤務可としているケースもあれば、週に数日というように日数を規定して運用しているケースもあります。

連絡の際は、メールやチャットツール、電話などを使用します。定期的な出社日を定めてミーティングを実施したり、オンライン会議などで情報共有したり、従業員同士がこまめにコミュニケーションを取れたりする環境を整備している企業も増えています。

以前は、プログラマーやシステムエンジニアなどIT系職種に適した勤務形態という認識が一般的でした。しかし、ICT(情報通信技術)が発展した現在では、オフィスワーク系など多様な職種で在宅勤務を導入する企業が増えています。

在宅勤務とテレワークの違い

在宅勤務としばしば混同される言葉に「テレワーク」があります。テレワークとは、ICTを活用して場所や時間にとらわれず働くことをいい、在宅勤務もこの中の一つに位置づけられます

テレワークは、働く場所によって次の三つに分類されます。

テレワークの分類 働く場所 特長
在宅勤務 自宅 自宅にIT機器や通信環境などを整備して業務を行う
モバイルワーク 外出先 持ち運べるIT機器や通信端末などを活用して、移動先で業務を行う。営業職に多く見られる
サテライトオフィス勤務 勤務先以外に設置される遠隔勤務用のオフィス 職住近接を実現し、通勤にかかる負荷軽減を主な目的として設置される。本社が都心部にある場合、郊外や地方に設置されることが多い

いずれも、柔軟な働き方を実現できる勤務形態として注目を集めています。

在宅勤務が注目を集める背景

在宅勤務が近年注目される背景をまとめると、次のようになります。

  • 少子高齢化が背景の人材不足→オフィス通勤が困難な労働力の活用
  • 企業の成長戦略の一環
  • 環境問題の解決策

政府は働き方改革の一環として、在宅勤務をはじめ、テレワークの導入を推進しています。この背景には、少子高齢化による労働力人口の減少、交通渋滞がもたらす環境負荷の問題などがあります。

職に就いていない、あるいは離職を余儀なくされた人の中には、「働く意思はあるものの、出勤できる状況にない」といった人も少なくありません。例えば、出産・育児、介護などは代表的な例です。

専門スキルや豊富な実務経験を有しながら、通勤が困難なために就業機会を得られずにいる人もいます。このような人材を雇用できる在宅勤務制度は、多くの企業が悩んでいる人材不足を解消する手段として期待を集めるようになりました。

さらに近年では、ワーク・ライフ・バランスの実現による従業員モチベーションの向上、通勤時間の削減による業務効率化など、企業の成長戦略として導入を進めるケースも増えています。

2. 在宅勤務のメリット・デメリット、向いている職種

それでは、在宅勤務のメリット・デメリットを簡単に見ていきましょう。

在宅勤務のメリット

在宅勤務のメリットとして、大きく二つを挙げることができます。

【特に育児や介護で課題を抱える人材を確保できる】

待機児童の問題に代表されるように施設不足などの理由から自宅で育児をしなければならない人、また、家族の介護を行わなければならない事情を抱えている人は少なくありません。スキルや経験を持ちながら、このような事情により働けずにいる人材を獲得する上で、在宅勤務制度は大きなメリットとなります。また、育児や介護などの事情で離職する社員を減らすことも可能です。

ワーク・ライフ・バランスを重視する人材へのアピールや、地方に雇用対象を広げられることなども、企業にとってメリットといえるでしょう。

【通勤費や備品のコスト削減】

在宅勤務には、通勤交通費がかからないというメリットもあります。また、社員を雇用した場合、通常はオフィススペースを確保し、机やイスなどの備品を用意する必要がありますが、在宅勤務ではそのようなコストを削減することができます。オフィス環境の整備が不要になるため、人事担当の業務削減にもつながります。

ただし、在宅勤務では対象者の自宅で業務ができるように通信環境を整える費用がかかるほか、光熱費も発生します。仕事と私用を区別するのが難しいコストについては、会社と従業員の間で負担割合の取り決めが必要となるので注意が必要です。

在宅勤務のデメリット

人材確保やコスト削減に大きく貢献する一方、見逃せないデメリットもあります。

【労働時間の把握がとても難しい】

在宅勤務であっても、会社側は適正に労務管理を行う必要があります。しかし、管理の目が行き届かないことから労働時間の把握は困難です。

労働時間を把握する方法としては、遠隔管理を可能とする勤怠管理ツールの導入が代表的です。また、在宅勤務者に対して、みなし労働時間制や裁量労働制、成果報酬制度などを適用するケースもあります。在宅勤務では、これらの制度を組み合わせて検討することも必要でしょう。

【情報漏えいのリスクが大きい】

在宅勤務では、情報漏えいのリスクが高まります。不正アクセスやマルウェアに備えるため、従業員の私物ではなく、セキュリティー対策を施したパソコンを貸与するなどリスクに備える必要があります。また、セキュリティーガイドラインを定め、在宅勤務者にルールを厳守するよう指導することも重要です。

【オフィス勤務者とのコミュニケーションが不足する】

在宅勤務では、業務時間帯を従業員の裁量に任せることが多くなります。また、居住地を問わないケースでは、海外在住も可能になります。この場合、オフィス勤務者と労働時間の時差が生じるなど、コミュニケーションが取りにくくなることが想定されます。

業務連絡や緊急時の連絡にタイムラグが発生し、速やかな行動ができない、仕事が遅れる、といったデメリットも考えられます。緊急時の連絡手段や業務方針については、あらかじめ取り決めが必要です。

在宅勤務が向いている職種

在宅勤務の大きなメリットは、育児や介護問題を抱える人材を確保できることです。育児・介護を理由に従業員が離職するケースが多い企業は、在宅勤務の導入を検討すると良いでしょう

在宅勤務は、システムエンジニアやプログラマーなどの専門性の高い仕事、企画・資料作成、データ入力などの事務作業で導入しやすくなっています。これらの仕事と介護・育児を抱えている人材をうまくマッチさせることで、在宅勤務のメリットを最大限に引き出すことが可能です。

3. 在宅勤務制度の就業規則を作成する前に注意すべきこと

就業規則を変更する必要があるかの確認

在宅勤務制度を導入する際は、既存の就業規則を変更する必要があるかどうかを事前に確認します。労働時間や労働条件などが同じであれば、特に就業規則を変更する必要はありません

ただし、在宅勤務の場合、労働者側に通信費を負担させるケースが出てくるなど、オフィス勤務にはない項目が発生することがあります。このような場合は労働基準法第89条5に従い、就業規則に反映して届け出をしなければなりません。

通信費と同様に、在宅勤務に限って発生する内容がある場合は、就業規則の変更・届け出が必要になります。

労働条件の明示・合意が必要

在宅勤務であっても一般の従業員と同様に、労働基準法をはじめとした各法令が適用されます。

労働条件を変更する場合は、労働契約法第8条に基づき、労働者との個別合意が原則となっています。また、仮に労働者と合意の上での変更であったとしても、就業規則の定めよりも下回る条件を提示することはできません。

労働条件の変更では、労働基準法第15条に定められている「労働条件の明示」に留意しなければなりません。すでに労働契約を結んでいる従業員が新たに在宅勤務の形態をとる際は、就業場所として労働者の自宅を明示し、書面を交付する必要があります。

在宅勤務規程の作成

在宅勤務の導入に際して就業規則の変更が必要となった場合、以下の二つの方法から選択します。

  • すでにある就業規則に盛り込む
  • 新たに「在宅勤務規定」を作成し、就業規則に追加する
どちらの方法をとるかは企業の判断によります。ただし、従業員に周知徹底する上ではわかりやすさが重要になるため、新たに在宅勤務規程を作成するほうが望ましいといえます。



※上記は一般論であり、特殊なケースなどがあれば、社労士などの専門家に相談するのが良いでしょう。人事のQ&Aでは、専門家に匿名で質問し相談が可能です。

4. 在宅勤務制度における就業規則作成のポイント

ここでは、在宅勤務を実施する際の就業規則作成のポイントをまとめています。大まかに、以下の点を整えましょう。

  • 目的と定義
  • 対象者
  • 手続き・申請方法
  • 在宅勤務時の服務規程
  • 労働時間制度
  • 休憩時間・所定休日
  • 時間外労働・休日労働・深夜労働
  • 勤怠管理・業務報告
  • 賃金・費用負担・情報通信機器などの貸与

在宅勤務の目的と定義

在宅勤務を制度化するにあたり、まずは目的・定義を定めます。

    【目的の例】
    「この規定は、〇〇株式会社の従業員が、フレキシブルな就業環境で育児・介護など家庭と仕事の両立を図れることを目的とする」
    【定義の例】
    「在宅勤務とは、従業員の自宅やその他自宅に準ずる場所(会社指定の場所に限る)において、情報通信機器を活用した業務をいう」

在宅勤務の場合は基本的に本人の自宅が勤務場所として想定されますが、なかには実家(介護する親が住む場所)というケースも考えられます。制度化する際には一定の決まりを定めておくことが重要です。

在宅勤務の対象者

全員を在宅勤務の対象者にする場合は、次のように定めます。

【対象者の設定例】
  • 在宅勤務を希望する者
  • 自宅で仕事に従事する環境、セキュリティー、家族の理解などが適正だと認められる者 など
  • 勤務年数が●年以上の者
  • 育児・介護・傷病などで出勤が困難である者

このように、希望者を対象にするほか、一定の条件に限定して定める方法もあります。

手続き・申請方法

従業員が在宅勤務希望した場合の社内手続き・申請方法について次のように定めます。

【手続き・申請方法の例】
  • 在宅勤務開始日の一定期間前に申請書を提出する
  • 所属長に決められた事項(理由・業務内容・予定期間・社内との連絡方法など)を申請書に記載して提出・承認を得る
  • 本人および家族の病気が理由で申請した場合、診断書の提出が必要 など

申請する時期や申請先、必要な提出書類などを明示することがポイントです。

在宅勤務時の服務規定

在宅勤務に必要な服務規程を定めます。

【服務規程の例】
  • 在宅勤務中は業務に専念する
  • 会社の情報や成果物を第三者に漏えいしないよう、最大限の注意を払う
  • 在宅勤務中は定められた場所でのみ業務を行う
  • 会社の情報や成果物はセキュリティーガイドラインに準じて保管・管理を行う など

特に在宅勤務ではセキュリティー面に注意する必要があります。業務を遂行する上で順守すべきセキュリティーガイドラインを定め、周知徹底することが重要です。

労働時間制度

在宅勤務の場合、通常勤務と同様の労働時間制を適用するケースもありますが、業務内容や働き方によっては適さないこともあります。そのため、労働時間制度は企業によってさまざまな形態が採用されています。ここでは、在宅勤務で一般に多く見られる労働時間制度を挙げていきます。

【通常の労働時間制】

在宅勤務者もオフィス勤務者と同じ、時間帯に働く制度です。1日8時間、1週40時間の法定労働時間に基づいて、就業規則で定められた労働時間に業務を行います。

【フレックスタイム制】

フレックスタイム制では、一定期間内(清算期間)の総労働時間をあらかじめ定めておき、在宅勤務者が日々の始業・終業時間を自由に決めます。在宅勤務者は、1週間あたりの平均労働時間を40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内、清算期間(最長3ヵ月まで※)以内で所定労働時間を満たすように調整しながら働きます。

フレックスタイム制では、コアタイムを設定するケースが多く見られます。例えば、会議への参加が必須となる場合に、コアタイムを設定しておけばスムーズに運用しやすくなります。ただし、コアタイムを長く設定してしまうと在宅勤務者の裁量が狭まるため、注意が必要です。

なお、フレックスタイム制を導入する際は、就業規則などで始業・終業時刻を労働者の判断に委ねることを定めた上で、労働基準法第32条の3に基づき、労使協定で定める事項が決められています。

※働き方改革関連法の改正により、2019年4月からフレックスタイム制における清算期間の上限が1ヵ月から3ヵ月に延長されました。

【事業場外みなし労働時間制】

事業場外みなし労働時間制は、会社以外の場所で業務を行う場合に、実際の労働時間にかかわらず、所定の労働時間を働いたものとみなす制度です。業務内容が通常の所定労働時間を超えると想定される場合は、該当業務に必要となる時間を試算して労働したものとみなします。

この制度は労働基準法第38条の2により、「事業場外で業務にあたっていること」「労働時間の算定が困難であること」に該当する場合に適用可能と定められています。使用者による指揮監督が不可能な業務が対象となります。

【裁量労働制】

裁量労働制はみなし労働時間制の一つで、実際の労働時間にかかわらず、労働契約で決めた労働時間を働いたこととする制度です。例えば、みなし労働時間を1日8時間と定めた場合、実際には6時間であっても9時間であっても、8時間働いたこととみなします。

裁量労働制は業務の性質上、方法・手段・時間配分などを従業員の裁量に委ねる必要がある業務に対して認められている制度です。主に「専門業務制裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」があり、対象業務や手続き方法などが異なります。

休憩時間・所定休日

在宅勤務であっても、休憩時間を付与する必要があります。労働時間が1日6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には60分以上の休憩を与えなければなりません。休憩時間は一定の事業を除き、原則、同じ時間帯に一斉に与えなければなりません。ただし、あらかじめ労使協定を締結しておくことで、在宅勤務者とオフィス勤務者の休憩時間帯を別にすることも可能です。

所定休日では、労働基準法第35条に従って在宅勤務者にも週1回以上の休日を付与します。就業規則には「在宅勤務者の休日について、就業規則〇条に準ずる」のように明記します。

時間外労働・休日労働・深夜労働

在宅勤務者に時間外労働や深夜労働、休日労働を認めるかどうかは、企業によって異なります。認める場合は、既存の就業規則に基づいて定めるのが基本です。在宅勤務にのみ発生する手続きやルールがある場合は、在宅勤務規定として別途明記します。各手当についても同様です。

原則、認めないという場合は、就業規則に「在宅勤務者には原則として時間外労働・休日労働および深夜労働をさせない」旨を明記します。許可制の場合は、所属長の許可を得ること、所定の手続きが必要になることなどのルールを定めて明記します。

勤怠管理・業務報告

在宅勤務で重要となるのが、労務管理や業務報告の方法をルール化することです。多くの企業で利用されているのが、電子メールや勤怠管理ツール、電話です。

以前は電子メールでの連絡で労務管理を行うのが一般的でしたが、在宅勤務制度の導入が進み、現在では勤怠管理ツールを活用する企業も増えています。直属の上司はもちろん、人事・労務担当部署もリアルタイムで勤務状況を把握できるメリットがあります。

賃金・費用負担・情報通信機器などの貸与

賃金については、在宅勤務者でも勤務時間・日数などに変動がなければ、既存の就業規則に基づいた基本給・諸手当などを支給し、在宅勤務規程にもその旨を明示します。

ただし、通勤手当は在宅勤務の頻度によって支給金額の変更が想定されるため、適切に定めておくことが重要です。例えば、終日在宅勤務を行った日数が一定以上となった場合、定額の通勤手当ではなく、実費での支給などが考えられます。

また、在宅勤務にかかる費用について、労使のどちらが負担するのかを定めておく必要があります。例えば、在宅勤務時に使用する業務上必要な事務用品費や郵送費などは会社負担とし、水道光熱費は在宅勤務者の負担とする、といったように就業規定に明記します。あらかじめ在宅勤務手当を定めて支給する方法もあります。

パソコンやスマートフォンなどの機器を貸与する場合、取り扱いルールを明確にしておく必要があります。無断でソフトウェアをインストールすることを禁じるなど、セキュリティーを確保できるよう定めておくことが重要です。

5. 在宅勤務と給料の考え方

在宅勤務にすると給料は減るのか

働き方改革において在宅勤務が推進される背景には、長時間労働の問題があります。通勤にかかる精神的・時間的負荷を軽減できれば従業員の業務効率化につながり、残業時間の削減も期待できます。

しかし労働者側から見ると、残業代が減る分、給料が減るといった不満の声が上がる可能性もあります。在宅勤務においても時間外労働手当や深夜手当の考え方は法令に準じますが、業務効率が上がれば自ずと残業代は減ります。また、実際の労働時間管理が難しいことから、サービス残業の実態があることも不満要因の一つと考えられます。

一方で、そもそも残業を良しとしない風土が根付いている企業では、こうした不満の声はあまり聞かれません。また、みなし労働時間(裁量労働時間)制度を採用している企業でも、在宅勤務に移行した際に給与面での不満は出にくい傾向が見られます。

働き方改革が進み、労使ともに時間外労働削減への意識は高まりつつありますが、在宅勤務制度を導入する際は、労働時間と賃金について十分に理解を得る努力が必要です。

賃金制度の見直しも視野に入れることが必要

在宅勤務制度は現在、自己裁量で仕事を進められる専門性の高い職種(IT系・エンジニア系など)や事務職系で導入が進んでいる傾向があります。しかし、将来的には営業職や管理職などの残業時間が多い職種においても、在宅勤務制度が検討されるケースが考えられます。

その際に大きな障壁となるのが、残業代が減ることによる収入減です。労働者側の抵抗感が強ければ、制度を浸透させることは困難です。

日本では労働時間に対して給料を支払う考え方が一般に浸透していますが、例えば生産性を重視する場合、成果を評価する報酬の仕組みを視野に入れるのも一つの方法です。在宅勤務制度を推し進めるには、賃金制度の根本的な見直しが必要といえるでしょう。

在宅勤務の推進によって長時間労働の是正が進む一方、労働者にとっては「残業代が減る分、給与が減る」といった不満につながる可能性があります。さらには在宅勤務という制度を口実とした給与減額に、労働者側が大きな反感を持っていることも事実です。

厚生労働省作成の「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」では、賃金に関する規定例にも触れられていますが、在宅勤務だからという理由で基本給・諸手当を引き下げることはできません。

これは、労働者の不利益変更にあたるためです。たとえば勤務日数や労働時間が短くなった、会社への通勤日数が少なくなったなど、正当な理由があってはじめて基本給・諸手当の引き下げが認められます。

在宅勤務者の職務に応じて給与が引き下げられるケース

在宅勤務者の給与を変更する(引き下げる)場合、労働契約法7~9、12条が適用され、就業規則の変更および在宅勤務者と個別に合意する必要があります。合意については在宅勤務者の自由な意思に基づき、書面での説明・確認、合意が重要となります。

合意が得られなかった場合には、労働契約法10条に基づき、変更された就業規則を労働者に周知させ「一定条件」において合理的であると認められれば変更できるケースもあります。一定条件とは、労働者の不利益の程度・就業規則変更の必要性・内容の相当性・労働組合などとの交渉状況や、その他就業規則の変更に関係する事情が含まれます。

在宅勤務制度を推し進めるには、現行制度の見直しはもちろんのこと、労働者から最大限の理解を得ることが大変重要です。

6. 在宅勤務制度にはICTを活用した運用面の整備が不可欠

以前の在宅勤務制度は、通勤困難者に向けた支援制度の意味合いが強いものでした。しかし、柔軟な働き方の実現が企業の競争力に大きな影響を与えるようになっている現在、在宅勤務は企業の成長戦略の一つとなりつつあります。

ICTの進化によって、在宅勤務の課題とされてきたコミュニケーションロスやセキュリティーへの懸念、管理の煩雑さは解消に向かっています。今後はさらに対象職種を広げて、戦略的に制度を運用する企業が増えることも見込まれています。

在宅勤務制度を成功に導くには、運用面の整備が必須です。ICTを基盤としたシステムの整備と社内ルール策定が重要なポイントになるといえるでしょう。

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