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【ヨミ】サテライトオフィス

サテライトオフィス

サテライトオフィスとは?

サテライトオフィス(satellite office)とは、企業の本社や主要拠点から離れた場所に設置されるオフィスのことを指します。本社を中心にして、衛星(=サテライト)のように配置されることから生まれた言葉です。

更新日:2024/03/19

1. サテライトオフィスの概要

サテライトオフィスには、自社の専用施設として設置する「専用型」と、複数の企業が共同で利用する「共用型」があります。いずれの場合も、通常通りの勤務ができるように設備や通信環境が整えられているのが一般的です。

「サテライトオフィス設置に係る民間企業等のニーズ調査」(総務省・2017年)によると、「すでにサテライトオフィスを導入済み」の企業は7.8%、「導入を検討中あるいは興味がある」と回答した企業は約20%となっています。

導入済み企業の割合は高くないものの、「働き方改革に前向き」な企業に絞り込んで見ていくと、87.3%の企業がサテライトオフィスに関心を持っていると回答しています。このことから、サテライトオフィスには多様な働き方を推進する効果が期待されていると考えられます。

サテライトオフィスの三つの種類と役割

サテライトオフィスは配置する場所によって大きく三つに分類され、それぞれに設置する目的が異なります。

【都市型サテライトオフィス】

都市型サテライトオフィスは、都市部に設置されます。本社が都市部にある場合でも、営業強化や新規事業拠点など別の役割を持たせる目的で置かれるケースが多くなっています。

また、地方に本社を構える企業が、都市部への進出に際して都市型サテライトオフィスを設置することもあります。まずは都市部での営業活動や販売促進を行う拠点としてサテライトオフィスを活用し、事業が軌道に乗ったら支社を設置して本格的な事業活動へつなげるケースが多く見られます。


【地方型サテライトオフィス】

地方型サテライトオフィスは、都市部に本社を持つ企業が地方に設置するパターンを指します。自然に囲まれた立地にオフィスを置くことで、社員のメンタルヘルスケアに生かしたり、災害時にも事業を継続できるようにリスクを分散させたりするなど、さまざまな目的があります。

現在では自治体が地方創生に生かすべく、サテライトオフィスを誘致するケースが増えています。これにより、地方での雇用促進につながるというメリットも生まれています。


【郊外型サテライトオフィス】

郊外型サテライトオフィスは、いわゆるベッドタウンと呼ばれる郊外エリアに設置されます。主な目的は、社員の通勤にかかる時間的・精神的負荷の軽減です。また、職住近接によってワーク・ライフ・バランスが向上したり、育児や介護と仕事の両立ができたりするなど、多様な働き方をサポートできます。

2. サテライトオフィス・支社・テレワークの位置付け

サテライトオフィスと支社の違いはどのような点にあるのか、また、テレワークとサテライトオフィスの関係についても整理していきます。

サテライトオフィスと支社の違い

サテライトオフィスと支社を区分けする明確な定義はありません。一般には、サテライトオフィスは支社よりも小規模な施設・設備で運営されています。支社が各地の市場開拓を目的に開設されるのに対して、サテライトオフィスは社員の働きやすさや利便性に力点を置いているからです。そのため、支社よりも少ない社員数で運営されるケースが多くなっています。

サテライトオフィスとテレワークの位置付け

サテライトオフィスは、テレワークの一つに位置付けられています。テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用して場所や時間の制限を受けずに働く勤務形態のことをいいます。テレワークは「Tele=遠く」と「work=働く」を組み合わせた造語です。

テレワークは働く場所によって、サテライトオフィスなどを利用する「施設利用型」、自宅で働く「在宅勤務型」、モバイル端末を活用して場所を問わず働く「モバイルワーク型」に分けられます。

他のテレワークが主に一人で業務に従事するのに対して、サテライトオフィスの場合は他の社員と一緒に勤務する点が大きく異なっています。

テレワークの普及において期待されるサテライトオフィス

柔軟な働き方を実現するテレワークは、ICTが普及する現代に即した勤務形態として認知されつつあります。しかし、総務省の「平成 30 年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している企業の割合は19.1%にとどまっています。

同調査によると、テレワークを導入する目的は「定型型業務の生産性向上」が56.1%と最も多く、その後を「勤務者の移動時間短縮」が48.5%、「通勤弱者への対応」が26.0%で続きます。一方、テレワークを導入しない理由には「テレワークに適した仕事がない」「業務の進行が難しい」「情報漏えいが心配」といった回答が多くなっています。テレワークによるメリットは認識していても、不安要素があって導入に踏み切れない企業が多く存在していることがわかります。

サテライトオフィスは、在宅勤務やモバイルワークと比較すると、勤怠管理・業務管理が容易であることやセキュリティー対策をしやすいというメリットがあります。また、導入の障壁を比較的下げやすいことから、今後、働き方改革を推進していく上で大きな期待が寄せられています。

3. サテライトオフィスのメリット・デメリット、向いている職種

サテライトオフィスのメリット

【地方の活用により、人材確保や災害対策になる】

都心部に本社を構える企業の場合、地方にサテライトオフィスを設置することで雇用対象エリアを広げられるメリットが生まれます。現在、政府や自治体が地方創生を目的にサテライトオフィスの誘致を積極的に進めているため、展開しやすいこともポイントの一つでしょう。また、企業にとっては拠点を分散しておくことで、災害時の事業継続が容易になることもメリットといえます。物流関連やカスタマーサービス部署を持つ企業など、顧客が全国に広がっている業種では特に、複数拠点を持つことのメリットが高まります

他にも、サテライトオフィスの場所によっては、介護・育児を抱える人材確保につながるケースもあります。

【共用型を活用すれば、コスト削減につながることも】

他社とスペースをシェアする共用型のサテライトオフィスや、すでに設備が整っているレンタルオフィスを利用することは、コスト削減につながります。一方、自社専用のサテライトオフィスを設置する場合は、共用型のようなコスト削減効果を期待できません。

サテライトオフィスのデメリット

サテライトオフィスも、他のテレワークと同様の課題を持つことになります。ただし、ある程度リスクを抑えることができる場合もあります。

【労働時間の管理に課題】

テレワーク全般の課題点といえますが、労働時間の管理はオフィス勤務と比べると難しくなります。ただし、サテライトオフィスは拠点に出勤して勤務するため、他のテレワークと比較して労働時間の管理はしやすくなります。しかし、サテライトオフィスに管理者が不在で従業員自身に労務管理を任せているケースでは、労働時間管理に対する対処が必要です。

【セキュリティーのリスク】

情報漏えいなどのセキュリティーリスクも見逃せません。自社の専用型サテライトオフィスを設置し、本社のセキュリティーガイドラインに即した対策を取っている場合であれば、情報漏えいのリスクは本社勤務と同等になります。

しかし、共用型サテライトオフィスの場合は、自社のセキュリティー基準に合わせることが難しいケースもあります。セキュリティーの基準を満たせない場合は、機密性のある重要な情報をサテライトオフィスでは扱わない、などといった対策も必要でしょう。

【コミュニケーションの不足】

サテライトオフィスは一般的に複数名の社員が勤務するため、他のテレワークと比較すると対面のコミュニケーションを行いやすい勤務形態です。しかし、本社勤務の社員との交流は少なくなるため、情報共有に遅れが生じたり、不足したりすることもあります。ツールを活用するなど、本社との間でコミュニケーション不足が起こらない仕組みを検討する必要があります。

4. サテライトオフィスの活用事例

テレワークのなかでも、地方創生への貢献度が高いと期待されているのがサテライトオフィスです。山間部や海辺、離島など、インターネット環境は整っているけれど交通アクセス面で便利とは言いにくい場所にあえて設置し、成功を収めているケースもあります。そのような環境下で、どのように成果を上げているのでしょうか。実際の事例を見ていきましょう。

古民家サテライトオフィスで生産性が上がったSansan株式会社

話者:Sansan株式会社 人事部 部長 大間 祐太さん(当時)

クラウド名刺管理サービスを展開するSansan株式会社では、生産性向上のために数多くのユニークな人事制度を設置・運用しており、「個人とチームの生産性を高めて事業成長を後押しする」ことを人事施策のポリシーに掲げています。

同社では「生産性がアップする働き方」の追求を目的に、徳島県神山町(2019年6月現在、人口約5,000人)に地方型サテライトオフィス「Sansan神山ラボ」を設置。同町は徳島県とNPO法人によって、積極的なサテライトオフィスの誘致が行われており、システム開発会社や食品メーカー、会計事務所など、さまざまな業種の企業60社以上がサテライトオフィスを設置していることから「神山バレー」と呼ばれています。

神山バレーの一角をなす「Sansan神山ラボ」では、築70年を超える古民家をサテライトオフィスとして活用しています。現地では常駐メンバーの二人が日々の業務にあたっているほか、社員研修の場としても利用されています。

のどかな自然と古民家の風情から、一見すると保養施設のような側面もありますが、満員電車や通勤時間など余計な時間やエネルギーを使わず、遊びの誘惑から遮断された環境で仕事に集中できるため、自然と生産性がアップするそうです。

自然豊かな環境を「生産性向上」につなげる

Sansanがサテライトオフィスで行っている業務の一つに、オンラインによる営業活動があります。神山町からの遠隔営業で成果を上げているポイントは、商談数の多さです。

実際に訪問すると、どうしても移動時間のロスが発生しますが、オンライン営業を行うことで、一日9件ほどの新規アポをこなすこともあるそうです。また、緑が多く空気がきれいな環境で業務にあたるため、一日を通して心身をリフレッシュできることも集中力の維持に役立っているといいます。

同社はサテライトオフィスを設置する以前からオンライン営業に取り組んでおり、そのノウハウがあったことも成功のポイントになっています。リモート営業と親和性が高い事業であることも、成功の一因といえるでしょう。

インターネット環境があれば、どこにいてもビジネスを展開できる時代。自然豊かな環境だからこそ実現できる「生産性の向上」に着目した好事例といえます。

テレワークが注目される理由には、働く場所と時間の自由度が高まることによる生産性向上が挙げられます。しかし見方を変えると、従来の働き方にストレスを感じている労働者が多い、ということです。

サテライトオフィスは労働者の負荷やストレスを軽減しながら、企業に多くのメリットをもたらす方法ともいえます。総務省が支援する「おためしサテライトオフィス」制度のほか、自治体が設けている支援・助成制度もあり、積極的に検討を進める企業も増えつつあります。サテライトオフィス導入による働き方改革を推進する場合、まずはこうした制度を活用するのもよいでしょう。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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