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HRペディア 最終更新日:2021/05/17

【ヨミ】フレックスタイムセイ フレックスタイム制

働き方改革への意識が高まるなか、労働者が柔軟に勤務時間を決められるフレックスタイムに注目が集まっています。フレックスタイム制では、労働者自身が勤務時間帯を自由に決めることが可能。一定期間に働く総時間数を決めておき、労働者はその時間内であれば何時に出勤・退社してもよいという仕組みです。

1.フレックスタイム制とは

フレックスタイムは「flex=曲げる、収縮する」という語源から、労働時間が柔軟であるという意味を持ちます。始業と終業時間が規定されている勤務形態とは異なり、労働者自身が勤務時間帯を自由に決めることができます。一定期間(清算期間)に働く総時間数を決めておき、労働者はその時間内であれば自由に出勤・退社することができます。

フレックスタイム制は1987年の労働基準法改正により、翌年、正式に導入されました。背景には、仕事と生活のバランスに関する労働者の意識の変化があります。また、雇用する側にとっても、生産性と創造性の向上を目指すうえで、労働者の能力を生かせる体制をとる必要性がありました。

多様化する労働者の価値観やライフスタイルへの対応が求められる現在、柔軟な働き方を実現できるフレックスタイム制にあらためて注目が集まっています。

フレックスタイム・コアタイムとは

フレックスタイム制には、二つの仕組みがあります。一つは、一定期間における総労働時間の範囲であれば、始業・終業時間を完全に労働者の自由裁量とするもの。もう一つは、必ず勤務しなければならないコアタイムを定め、それ以外の時間帯であれば、始業・終業時間をフレキシブルに決められる、というものです。仮にコアタイムを10時~15時と決めた場合、労働者は8時に出社、16時に退社といたスタイルで働くことが可能です。

コアタイムを設定するメリットは、ミーティングや情報共有が必要な場合、または共同で作業する必要性がある場合に、全員が勤務している時間帯を確保できることです。コアタイムは会社側で自由に決めることができます(労使の合意は必要です)。ただし、コアタイムの割合が多く、フレキシブルになる時間が極端に短い場合はフレックスタイム制とみなされないため、注意が必要です。

また、採用においてフレックスタイム制を打ち出す際は、コアタイムの有無を募集要項に記載することも必要です。

2.フレックスタイム制を導入するには

フレックスタイム制の導入に際しては、以下の要件を満たす必要があります。

労使協定

フレックスタイム制の基本的な枠組みについて、労使間での協定がなされる必要があります。労使協定は労働組合がある場合はそのなかにおいて締結、労働組合がない場合は代表者との間で定めます。労使協定の必要事項は以下の通りです。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 清算期間(2019年3月31日までは1ヵ月以内)
  • 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  • 標準となる一日の労働時間
  • コアタイム、フレキシブルタイムの開始および終了の時刻

就業規則

労使協定を結ぶとともに、始業・終業時間を労働者の決定に委ねることを自社の就業規則に明記する必要があります。また、清算期間および清算期間内の総労働時間についても、就業規則のなかで定めます。コアタイム、フレキシブルタイムを設定した場合は、この時間についても明記します。

2019年4月1日施行の法改正ポイント

法改正により、2019年4月1日からは以下の点が改正されます。

(1)清算期間の上限
清算期間が1ヵ月から3ヵ月に延長されました。これにより、繁閑がある事業では、より効率化を図ることができます。

たとえば、1ヵ月目は繁忙期、2ヵ月目、3ヵ月目が閑散期となる場合を見てみましょう。現行の1ヵ月以内の清算期間の場合、繁忙期の1ヵ月目は所定労働時間を超えやすくなるため、残業代・割増賃金を支払う可能性が増大します。逆に2ヵ月目、3ヵ月目の閑散期は所定労働時間に届かなくなり、欠勤扱いの可能性が生じます。

清算期間を3ヵ月とした場合、企業にとっては残業代や割増料金を支払う必要性が減り、労働者にとっては閑散期に労働時間を減らしても欠勤にならないというメリットを享受できます。つまり、繁閑がある事業においては、総労働時間の無駄を省くことが可能になります。

(2)労使協定の届出義務
現行の制度では、フレックスタイムの導入にあたって企業側が届け出る義務はありません。改正案が施行される2019年4月1日以降は、清算期間が1ヵ月を超える場合に、労使協定および就業規則への明記を行ったうえで、労働監督署への届出が義務付けられます。

3.フレックスタイム制における残業代

フレックスタイム制においても、法定労働時間は適用されます。清算期間内における所定労働時間は決まっているため、これを超えた場合には残業代を支払う必要があります。深夜割増や休日割増賃金も、労働基準法を遵守しなければなりません。

フレックスタイム制における残業の考え方

フレックスタイム制における基本的な残業代の考え方としては、次の三つがポイントになります。

  1. 残業時間は「実労働時間-定められた総労働時間(法定労働時間)」として計算する。
  2. 実労働時間は、所定労働日+法定外休日の合計労働時間で計算する。週に一日定められる「法定休日」に行った「休日労働」は、別に計算する。
  3. 固定残業代を給与に含めている場合は、あらかじめ設定した残業時間を超えた時間分を、別途残業代として支払う。

残業時間の具体例

例えば、フレックスタイム制を導入している企業で、次のように時間が決められていたとします。

コアタイム 10:00-15:00
フレキシブルタイム 8:00-10:00,15:00-20:00

上記の場合は、一日の標準労働時間8時間のうち、10時から15時のコアタイムに勤務していれば、残る3時間は朝早くに出社して消費しても、20時まで休憩を取りながら消費してもいいことになります。仕事の進捗によっては、かなり早く帰れる日もあるかもしれません。

この条件で、一日に10時から21時まで勤務した場合、残業代はどうなるのでしょうか。通常、フレックスタイム制を導入している企業では、残業代は1ヵ月などの定められた清算期間単位で計算しています。

1日標準8時間×22日の労働が義務付けられている企業で、ある一日だけ10時間働いても、清算期間の週の平均労働時間が40時間(1日の標準労働時間が8時間の場合)に満たなければ残業代はでない計算になります。ただし、フレックスタイム制では一日の労働時間を固定させることはできず、定められるのはあくまで一日あたりの「標準」労働時間であるため、注意が必要です。

3ヵ月単位のフレックスタイム制の残業代について

2019年4月から導入された「3ヵ月単位のフレックスタイム制」は、文字通り、清算期間を3ヵ月とするものです。このため、残業代も3ヵ月の精算期間区切りで精算することになります。

ここで注意すべきなのは、「時間外労働」と判断される時間のルールが異なること。清算期間が1ヵ月以内であれば、週平均40時間を超えた場合に残業代が支払われます。一方、清算期間が1ヵ月を超える場合は、清算期間中の労働時間が週平均40時間を超える、もしくは1ヵ月ごとの労働時間が「週平均50時間」を超えた場合に残業代を支払わなければなりません。

また、固定残業代を支払っている場合は、これまでと同様に固定残業代を毎月支払い、固定残業代を上回った分を、3ヵ月の清算期間後に支払う手続きを行うことになります。そのため、毎月5万円の固定残業代を3ヵ月後にまとめて15万円で支払うのではなく、精算時に払うとすれば固定残業時間を超えた分の残業代だけになります。

4.労働者側のメリット・デメリット

人事制度の充実化を図るうえでは、労働者の目線から見たメリット・デメリットを理解しておく必要があります。具体的な内容として、以下のものがあります。

メリット

(1)通勤ラッシュを避けられる
混み合う時間帯の通勤を避けられることは、労働者にとって大きなメリットです。たとえば電車通勤の場合、空いているスペースで読書ができるなど、時間の有効活用が可能になります。車通勤の場合は、出勤前・退社後の時間に余裕が生まれます。

通勤にかかるストレスは少ないものではありません。これが改善できることで、勤務中の集中力アップにつながることも期待できるでしょう。

(2)ワーク・ライフ・バランスの実現
勤務時間を労働者自身がコントロールできることで、ワーク・ライフ・バランスの実現が可能になります。

たとえば、育児中であれば仕事を休まずに子どもの送迎や学校の用事を済ますことができます。また、銀行や役所での用事も容易に対応できるなど、従来の就業時間が決められた勤務形態では難しかったことができるようにもなります。

常に仕事を優先しなければならなかった状態から解放されることは、生活における充実感を生むことにつながります。とくにワーク・ライフ・バランスを重視する労働者にとって、フレックスタイム制の有無は大きな意味を持つといえるでしょう。

(3)ストレスが減る
毎日決まった時間に起きなければならない、パートナーとの時間が取れない、子どもの送迎時間が常に気になるなど、毎日のなかでストレス要因となることは多数存在します。フレックスタイム制は、これらのストレスの軽減に役立ちます。

デメリット

(1)自己管理の必要性
始業・終業時間を調整できる反面、毎日のリズムを崩しやすく、仕事効率が下がる可能性があります。たとえば、始業時間を遅くした場合、夜に集中力が途切れてしまうケースも考えられます。フレックスタイム制では、社員一人ひとりがしっかりと自己管理できることが重要です。

(2)コミュニケーションロス
フレックスタイム制では、社員同士あるいは管理職とのコミュニケーションロスが発生しやすくなることが想定されます。そのため、チームワークの醸成や目標達成において弊害が生じることがあるかもしれません。コミュニケーションツールを用意するなど、社員同士をつなぐ仕組みを検討しておくことが必要です。

(3)仕事効率の低下
他者と連携を取らなくてはならない職種の場合、就業時間が決まっていれば一日で終了するような仕事が、タイミングのずれにより進行が滞る可能性があります。フレックスタイムを導入するときは、これらの可能性に留意して、仕事への影響が出ないような進め方をあらかじめ検討することが必要です。

5.企業側のメリット・デメリット

次に、企業側から見たときにどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていきます。

メリット

(1)繁閑の波による無駄の削減
企業側から見た場合に大きなメリットとなるのが、清算期間内において労働時間をコントロールできる点です。とくに繁忙期・閑散期の差が大きい事業では、賃金や時間の無駄を改善することが可能です。

(2)優秀な人材の獲得
採用市場の厳しさが増すなかで優秀な人材を獲得するには、自社の魅力をアピールする必要があります。フレックスタイム制の導入は、自己管理能力が高く、自由裁量で能力を発揮したいと考える人材へのアピールとなります。また、優秀人材の離職防止につながるというメリットもあります。

(3)従業員満足度の向上
従業員のストレスが軽減される、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすいという環境は、会社への満足度・貢献度の向上を期待することができます。長期的に従業員満足度が高い状態を維持できれば、離職率の低下など副次的な効果も期待できます。

デメリット

(1)顧客満足度の低下
労働者が出退勤の時間帯を自由に決められることにより、取引先との打ち合わせや対応に影響を及ぼす可能性が生じます。

たとえば、これまではすぐに対応していたものが遅延する事態が想定されます。また、社内の連携に影響が出ることも考えられます。結果、従業員満足度は上がったとしても、顧客満足度が低下してしまう可能性が生じます。

実際に、社内外との連絡を頻繁に行う部署や職種では、フレックスタイム制の導入が難しいといわれています。フレックスタイム制を検討する際は、体制や業務フローを見直すとともに、対象とする職種を慎重に検討する必要があるでしょう。

(2)社員による自己管理のリスク
フレックスタイム制は、社員の自己管理能力に依存する仕組みでもあります。そのため、社員のなかに自己管理能力が乏しい人材が存在する場合、仕事や組織風土に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3)マネジメントの高度化
フレックスタイム制では管理職の目が行き届きにくくなります。そのため、一体感の醸成やモチベーションへの働きかけ、メンタルヘルスの管理において高度なマネジメント力が求められます。また、勤怠管理や労務管理が煩雑になる、社員の勤務評定の難度が上がるといった点もデメリットとして挙げられます。

(4)光熱費の増加
労働者がオフィスにいる時間帯が広がることが想定されるため、照明やエアコンなどの光熱費が増加する可能性があります。

6.柔軟かつ自律的な働き方を促進する必要性

フレックスタイム制は、ライフスタイルや働き方の多様化に対応できるメリットの多い制度ですが、その一方で、中小企業では導入が進んでいない、大手企業では一度は制度を取り入れたが、さまざまなデメリットに直面して休止している、といったケースが見られます。

しかし、変化に対応できる柔軟な組織をつくることは、今後の経済活動においてますます重要な意味を持つことが予想されます。フレックスタイム制の導入は、自律的な働き方をいち早く定着させるうえでも、有効な方法といえます。

現在は、コミュニケーションツールや勤怠管理システムなど、フレキシブルな働き方をサポートする仕組みが進化しています。これらのツールは、フレックスタイム制導入のハードルを下げてくれるものとなるでしょう。

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