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【ヨミ】サイリョウロウドウセイ 裁量労働制

働き方改革の推進にともない、労働者が働く時間を柔軟に選べる職場環境の整備が望まれています。労働者のワーク・ライフ・バランスはもちろん、生産性向上や人件費の問題を考える必要性も生じています。こうしたなか注目されているのが「裁量労働制」です。裁量労働制は、労働者自身が業務効率化を図り、時間を有効活用できるというメリットがあります。一方で、長時間労働などの諸問題も懸念されています。ここでは、裁量労働制の概要や導入手続き方法、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
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1.裁量労働制とは

裁量労働制の概要

裁量労働制とは、実際に働いた時間に関係なく、労働者と使用者との協定においてあらかじめ定められた労働時間に基づき、賃金を支払う制度のことです。定められた時間以上働いても原則残業代は出ず、逆に、実際に働いた時間が短かった場合でも決められた賃金が支払われます。

たとえば、労使間であらかじめ定めたみなし労働時間が1日7時間の場合、5時間働いても、10時間働いても、7時間勤務したものとして賃金が支払われることになります。

労働者自身が時間配分などの管理をして仕事を進めていくため、使用者側が具体的に指示をしないことも定められています。また、裁量労働制が適用される職種は限られています。

裁量労働制と他の労働時間制度との違い

裁量労働制と混同されやすい労働時間制度に以下のものがあります。それぞれの違いを見ていきましょう。

(1)みなし労働時間制

みなし労働時間制は、実際の労働時間を算出することが難しい場合に、みなしで労働時間を算出する制度です。裁量労働制はこのなかに含まれます。

みなし労働時間制は、「事業場外みなし労働時間制」と「裁量労働制(専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制)」の二つに分けられます。

事業場外みなし労働時間制は、出張・外出の頻度が多い営業職など、使用者の指示・監督が及ばない事業場外での業務が発生する場合に適用されます。一方の裁量労働制(専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制)は、専門性があるなど決められた職種に対して適用されます。

この二つは制度の目的が異なっています。事業外みなし労働時間制が労働時間を把握しにくい職種において定めているのに対し、裁量労働制では労働者に裁量を与えることで、生産性向上・業務効率化を図ることに焦点をあてています。

(2)変形労働時間制

変形労働時間制は、繁忙期に法定労働時間を超えて働けるかわりに、閑散期にはその分の労働時間を減らすとことができる制度です。業務の繁忙期・閑散期や特殊性などに応じて、全体的な労働時間の短縮を目指すことが目的です。

変形労働時間制には、1ヵ月・1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、フレックスタイム制があります。1年・1ヵ月・1週間といった一定期間を平均し、法定労働時間の範囲での勤務が認められます。

裁量労働制と大きく異なる点は、繁忙期・閑散期の差が明確な業種であれば制度の実施が認められている点です。また、変形労働時間制では実労働時間が適用され、法定労働時間を超えた場合は、時間外労働として残業代が発生します。

(3)フレックスタイム制

フレックスタイム制は変形労働時間制に含まれ、自由勤務時間制とも呼ばれます。1ヵ月以内の一定期間において、あらかじめ総労働時間を決めておき、そのなかで労働者が始業・終業時間を決められる制度です。

1日の労働時間帯のなかで、勤務すべき時間(コアタイム)と労働者個人が選択可能な時間帯(フレキシブルタイム)に分け、出退勤時間はその日に応じて労働者の判断で決めることができます。就業時間が自由な点で裁量労働制と類似していますが、フレックスタイム制は実労働時間で計算します。

フレックスタイム制は、多様で柔軟な働き方を推進する企業で導入が進んでいます。時間外労働の軽減やワーク・ライフ・バランスの実現を期待できる制度といえます。

2.裁量労働制の二つの対象職種

裁量労働制では、業務内容によって対象職種が二つに分けられます。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、業務の進め方や時間配分において労働者の裁量にゆだねる必要がある業務に適用されます。これは厚生労働省大臣告示により定められたものです。

そもそも仕事において、賃金を確定する際の大きな指標の一つとなるのが労働時間です。基本的には働いた時間に基づき、時間外なども含めて総支給額が確定します。しかし、なかには仕事に従事した成果と時間の関連性を客観的に把握しにくい業務があります。

こうした背景を踏まえ、労働者の裁量にゆだねたほうが適切だと判断された業務において、裁量労働制が適用されています。労働基準法の第38条の3と労働基準法施行規則で対象や手続きなどが具体的に定められており、2018年11月現在、以下の19業種について専門業務型裁量労働制の適用が認められています。

  1. 新商品もしくは新技術の研究開発、人文科学もしくは自然科学に関連した研究の業務
  2. 情報システムの分析または設計の業務
  3. 新聞や出版事業での記事取材や編集、放送番組やラジオ放送制作における取材や編集の業務
  4. 衣服・インテリア・工業製品・広告などの新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画などの制作の事業におけるプロデューサーやディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用のソフトウェア創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士(一級建築士・二級建築士・木造建築士)の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、事業運営において重要なポジションとなる企業本部などにおいて、企画・立案・調査・分析などを行う労働者を対象としています。

専門業務型裁量労働制との大きな違いは、適用業務の範囲に加え、適用される業務が存在する事業場が限定されることです。具体的には、本社や本店をはじめ、事業運営に大きな影響がある事業場が挙げられます。また支店・支社であっても、独自に事業運営に大きく影響を及ぼす計画決定を行っている場合、適用対象となります。

企画業務型裁量労働制は、労働基準法の第38条の4と労働基準法施行規則で対象や手続きなどが具体的に定められており、「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」において、対象業務の詳細な例が明記されています。
 
企画業務型裁量労働制は、それぞれの部署の業務に関して調査や分析を行うなど、企業全体に関わる計画策定などの業務が対象となっています。個別の製造作業やその事業場に限った工程管理、個別の営業活動やルーティンワークなどは対象外となります。

3.裁量労働制の導入手続き

裁量労働制を導入する際の手続きを見ていきます。

専門業務型裁量労働制の手続き

導入に際しては、労使協定の締結・所轄労働基準監督署長への労使協定の届出、就業規則の変更が必要になります。

労使協定に定めるべき事項は以下の通りです。

  1. 制度の対象となる業務や内容について明記します。
  2. 労働者に対し対象業務の進め方や時間配分などに対して具体的な指示をしないことを原則的な考え方として労使協定に明記します。
  3. 所定労働時間とは別で定める1日あたりのみなし労働時間を明記します。
  4. 対象労働者に対する健康・福祉を確保するための措置内容を明記します。たとえば、健康状態について定期的にチェックする社内の仕組み、特別健康診断の実施や相談室の社内設置など、具体的な取り決め内容を明記します。
  5. 対象労働者から苦情があった場合の具体的な処理方法・対応部署・対応範囲などを明記します。
  6. 労使協定の有効期間。厚生労働省においては、3年以内が望ましいとされています。
  7. 4、5に対して講じた措置の記録について、協定有効期間とその後3年間保存することとします。

企画業務型裁量労働制の手続き

企画業務型裁量労働制は、2000年4月に施行されました。しかし、専門業務型裁量労働制と比較して対象業務が明確でないこともあり、ルールが厳しく手続きも煩雑な傾向がありました。これを受けて、制度がより機能していくことを目指し、2004年1月に導入・運用についての要件や手続き関連が緩和されています。

導入に際して必要となるのは主に以下の通りです。

  1. 労使委員会の設置及び運営ルールの決定
  2. 必要事項において、労使委員会で5分の4以上の多数による決議
  3. 就業規則の変更
  4. 所轄労働監督署長への届出
  5. 対象労働者本人からの同意
  6. 制度の実施

4.裁量労働制のメリット

裁量労働制の導入によって得られるメリットには次のものがあります。

残業代の軽減

裁量労働制では、すでに定められている労働時間について働いたものとみなし、賃金を支払います。そのため、現状と比較して残業時間・残業代を削減できる可能性があります。

業務効率化の促進

社員が主体となって業務の見直しや時間管理をするため、業務効率化が進みます。結果として、企業全体の生産性向上につながることが期待できます。

多様な働き方の実現

社員自身が時間配分を調整しながら仕事を進めていくため、一定の就業時間に縛られることなく自由な働き方を実現できます。プライベートな時間を確保しやすくなるため、ワーク・ライフ・バランスを取りやすくなるメリットがあります。

5.裁量労働制のデメリット

裁量労働制には企業、労働者ともにメリットがある一方で、以下のデメリットも存在します。

長時間労働のリスク

裁量労働制の魅力は就業時間に縛られないことですが、一方では仕事の終了時間が不明確という側面があります。結果として、長時間労働をする社員が増えることも考えられます。企業には社員の健康を管理する責任があるため、体調を崩す社員が出た場合のリスクがあります。

企画・制作をはじめ、IT系やクリエイティブ系などでは、そもそも残業時間が多く長時間労働が常態化している傾向が見られるため、制度が機能するよう注意する必要があります。

導入手続きが厳格で煩雑

裁量労働制を導入するには、細かく煩雑な手続きを進めていかなくてはなりません。たとえば専門業務型裁量労働制の場合、労使協定の締結や就業規則の変更などが必要です。企画業務型裁量労働制では、労使委員会の設置・導入の決議など厳格な手続きが必要となり、専門的な知識を有していないと後々のトラブルに発展する恐れがあります。

労使協定では、みなし時間制の規定をはじめ、長時間の勤務をした労働者に対する健康確保措置・苦情処理措置などの細かな内容まで定める必要があります。安易に導入できない点はデメリットといえるでしょう。

時間外手当・割増賃金が発生する場合もある

裁量労働制は、あくまで労働時間をあらかじめ一定に定めておく制度です。深夜勤務や法定休日に出勤した場合は、通常と同様に割増賃金を支払う必要があります。この他、労使協定または労使委員会の決定内容によっては、時間外手当が発生することもあります。

6.裁量労働制の今後の動きに注目

裁量労働制には厳格な規定があり、企業・労働者双方の合意のもと導入する必要があります。また、対象業務が制限されていること、長時間労働が常態化する可能性もあるなど、すべてにおいてメリットばかりとは言い切れないのが現状です。

裁量労働制の対象拡大について、2018年6月に成立した働き方改革法案のなかに盛り込まれる予定となっていましたが、労働時間調査内容に諸問題があることが発覚し見送られました。長時間労働を懸念する労働者側と、効率化を進めたい企業側で意見が異なるケースも見られます。裁量労働制の対象拡大についての動向は、継続して注視していく必要があるでしょう。

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