裁量労働制のメリット・デメリット
裁量労働制とは、実際に働いた時間に関係なく、労働者と使用者との協定においてあらかじめ定められた労働時間に基づき、賃金を支払う制度のことです。定められた時間以上働いても原則残業代は出ず、逆に、実際に働いた時間が短かった場合でも決められた賃金が支払われます。
実際の労働時間が短縮されれば企業・労働者双方にメリットをもたらしますが、長時間労働が常態化すれば人件費、従業員のワーク・ライフ・バランスに悪影響をおよぼします。
裁量労働制のメリット
裁量労働制の導入によって得られるメリットには次のものがあります。
残業代の軽減
裁量労働制では、すでに定められている労働時間について働いたものとみなし、賃金を支払います。そのため、現状と比較して残業時間・残業代を削減できる可能性があります。
業務効率化の促進
社員が主体となって業務の見直しや時間管理をするため、業務効率化が進みます。結果として、企業全体の生産性向上につながることが期待できます。
多様な働き方の実現
社員自身が時間配分を調整しながら仕事を進めていくため、一定の就業時間に縛られることなく自由な働き方を実現できます。プライベートな時間を確保しやすくなるため、ワーク・ライフ・バランスを取りやすくなるメリットがあります。
裁量労働制のデメリット
裁量労働制には企業、労働者ともにメリットがある一方で、以下のデメリットも存在します。
長時間労働のリスク
裁量労働制の魅力は就業時間に縛られないことですが、一方では仕事の終了時間が不明確という側面があります。結果として、長時間労働をする社員が増えることも考えられます。企業には社員の健康を管理する責任があるため、体調を崩す社員が出た場合のリスクがあります。
企画・制作をはじめ、IT系やクリエイティブ系などでは、そもそも残業時間が多く長時間労働が常態化している傾向が見られるため、制度が機能するよう注意する必要があります。
導入手続きが厳格で煩雑
裁量労働制を導入するには、細かく煩雑な手続きを進めていかなくてはなりません。たとえば専門業務型裁量労働制の場合、労使協定の締結や就業規則の変更などが必要です。企画業務型裁量労働制では、労使委員会の設置・導入の決議など厳格な手続きが必要となり、専門的な知識を有していないと後々のトラブルに発展する恐れがあります。
労使協定では、みなし時間制の規定をはじめ、長時間の勤務をした労働者に対する健康確保措置・苦情処理措置などの細かな内容まで定める必要があります。安易に導入できない点はデメリットといえるでしょう。
時間外手当・割増賃金が発生する場合もある
裁量労働制は、あくまで労働時間をあらかじめ一定に定めておく制度です。深夜勤務や法定休日に出勤した場合は、通常と同様に割増賃金を支払う必要があります。この他、労使協定または労使委員会の決定内容によっては、時間外手当が発生することもあります。
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裁量労働制
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