業務効率化と労務管理リスク回避をかなえる
おすすめ勤怠管理システムと選び方

働き方改革関連法の改正を受けて、勤怠管理の重要性が再認識されています。従業員の勤怠状況を正確に把握しなければならない一方で、働き方が多様化し、管理者側の業務負荷が増大しています。そのため、「勤怠管理システム」を導入し、業務の効率化を図る企業が増えています。
そこで『日本の人事部』では、勤怠管理に必要な項目や管理方法別のメリット・デメリットを整理。勤怠管理システムを選ぶときのポイント、おすすめのサービスを紹介します。
勤怠管理の目的と効率化の必要性~多様な組織に対応するために
勤怠管理は、原則として労働基準法が適用される全ての事業場において実施する必要があり、賃金の支払いが発生する全ての労働者が対象となります。

その目的は、「適切に賃金を支払うこと」「過剰労働の早期発見と防止」「従業員の健康状態の管理」であり、企業は従業員の労働状況を正確に把握することが義務付けられています。
働き方改革関連法の改正により、2019年4月以降は残業時間の上限規制(罰則付き)や有給休暇取得の義務化が施行されるなど、勤怠管理における意味合いが広がりつつあります。これまでのように労働状況を正確に把握するだけでなく、長時間労働のリスクを事前に回避する必要が生じています。加えて、従業員の健康管理の観点から、休日をしっかり確保できるよう管理しなければなりません。
その一方で、テレワークやフレックスタイム制の導入といった働き方の多様化が進み、勤怠管理業務にかかる負担は以前にも増して大きくなってきました。これらの状況を受けて、業務効率化とリスク回避のための正確かつスピーディーな運用を目的に、勤怠管理システムの導入を検討する企業が増えています。
勤怠管理システムを選ぶときの六つのポイント~近年の傾向とは
ここからは、勤怠管理の方法やそれぞれのメリット・デメリットを整理するとともに、勤怠管理システムを導入する際の選び方について紹介していきます。
勤怠管理の方法と近年の傾向
従来の勤怠管理は、主に賃金の支払いを計算するものと位置付けられていたため、出勤・退勤を把握できれば十分と考えられてきました。そのため、手書きの出勤簿やタイムカードなど簡便な運用が主流となっていました。パソコンの普及後は、Excelを利用して勤怠管理の集計作業を効率化する企業が増えていきます。
現在は、効率的な運用を実現し、さまざまな事業環境に対応できる勤怠管理システムを導入する企業が増加しています。勤怠管理システムには、ソフトウェアをインストールして使うパッケージシステム型と、インターネット上で作業するクラウド型があります。それぞれの勤怠管理の方法は、以下のように整理できます。
勤怠管理の方法 | 特徴 |
---|---|
手書きの出勤簿 | 始業時間・終業時間を自己申告で記入し、管理者が確認する。 |
タイムカード | タイムレコーダーに専用カードを入れて出勤時刻・退勤時刻を記録し、管理者が確認する。 |
Excel | 始業・終業時間を自己申告で記入し、管理者が確認する。あらかじめ計算式を組んでおき、労働時間や賃金の集計をする。 |
勤怠管理システム(パッケージシステム型) | ソフトウェアを使って始業・終業時間を入力し、管理者が確認する。自社専用に開発する方法と、パッケージシステムを購入して自社のパソコンにインストールする方法がある。 |
勤怠管理システム(クラウド型) | クラウドサービスにアクセスして始業・終業時間を入力し、管理者が確認する。パソコンやスマートフォンからインターネットを介してアクセスするため、ハードウェアを別に準備する必要がない。 |
勤怠管理の方法とメリット・デメリット
働き方改革関連法の改正を受けて、2019年4月以降は勤怠状況の客観的な記録が求められるようになりました。これにより原則、自己申告による勤怠管理が認められなくなっています。やむを得ず自己申告制をとる場合でも、適切な運用ができるよう管理者は従業員に周知徹底を図るほか、実態との乖離(かいり)を生まないためのチェック体制を組む必要があります。
これを踏まえ、それぞれの勤怠管理の方法別にメリット・デメリットを整理すると、以下のようになります。出勤簿やタイムカードといった従来の管理方法によるメリットは、一見すると運用コストがかからないことに尽きます。勤怠管理システムは、人的ミスや集計の手間を減らし、出退勤の確認以上の運用ができる可能性があります。
勤怠管理の方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
手書きの出勤簿 |
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タイムカード |
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Excel |
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勤怠管理システム (パッケージシステム型) |
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勤怠管理システム (クラウド型) |
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勤怠管理システムを選ぶときの六つのポイント
勤怠管理システムには、労働状況の正確かつ客観的な把握、過重労働の事前回避、集計作業の効率化など、さまざまなメリットがあります。さらに最近では、労働時間傾向の分析機能など、プラスアルファの機能を搭載したものもあり、ますます便利になっています。しかし、一度導入すると簡単には変更できないため、自社に適したサービスを選択することが重要です。
勤怠管理システムの導入を検討する際は、自社の従業員規模や用途などと照らし合わせながら、必要な機能を備えているかチェックすることが大切です。選ぶときは、以下のポイントを参考にしてください。
チェックポイント | 注意点 |
---|---|
1.自動化したい業務に対応しているか | 基本機能(出社・退社の打刻記録や労働状況の集計)はもちろん、休暇などの申請・承認、給与計算システムとの連携など自動化したい業務に対応できるか確認します。 |
2.勤務形態に合っているか | 営業先などへの直行直帰に対応したGPS機能付き商品もあります。シフト制、テレワーク勤務など、自社の勤務形態に対応できるシステムか確認します。 |
3.従業員が打刻しやすい方法か | パソコンやスマートフォンで時刻を入力するタイプや、ICカードを専用機器にかざすタイプ、指を機器に差し込む生体認証などがあります。従業員が使いやすいと感じればシステムの浸透につながります。よく利用するインターネットブラウザに対応しているか、社外で打刻させる場合は従業員が持ち歩く携帯端末で打刻できるかといった観点からも考えましょう。 |
4.法令遵守をサポートする仕組みがあるか | 残業時間が一定を超えるとアラートする機能や、有給休暇の付与・取得状況を把握する機能など、さまざまなサービスがあります。必要に応じて選択します。 |
5.導入・運用のサポート体制があるか | 導入時や運用中にサポートがあるか確認します。対応してほしい時間や方法(電話・訪問・Web)も企業によって異なることでしょう。また、サポートが無料か有料かも明らかにしておきましょう。 |
6.コストがメリットに見合っているか | パッケージ購入やシステムの月額利用費以外に、導入にあたって設備投資費(レンタル含め)が必要になったり、後々アップデート費用などがかかったりすることがあります。システム導入によるメリットと照らし合わせ、費用対効果の観点から導入サービスや機能の検討を進めましょう。 |
『日本の人事部』がおススメする「勤怠管理システム」のためのサービス
株式会社オービックビジネスコンサルタントの「奉行Edge 勤怠管理クラウド」は従業員の打刻や勤怠届と総務部門の勤怠集計業務をクラウドでつなぐことで、一連の勤怠管理業務を自動化します。また、法改正や労務リスク対策にもスピーディーに対応できます。
株式会社クロスヴィジョンインターナショナルの「AttendancePro」は、フレックス、シフトなどの多様な勤務タイプに対応可能。勤怠項目の申請・承認やニーズに応じた打刻機能などを搭載しています。定期的なバックアップの実施などにより、高度なセキュリティーのもとでシステムを管理しています。

株式会社ソリューション・アンド・テクノロジーの「WiMS/SaaS勤務管理システム」は、労務管理をサポートする豊富な標準機能を搭載。出退勤の管理だけでなく、どの業務にどれだけ時間をかけたのか、業務計画と実績の乖離を可視化。1日の予実績管理で、従業員一人ひとりのセルフマネジメントを促進します。
株式会社チームスピリットの「働き方改革プラットフォーム『TeamSpirit』」は、勤怠管理や工数管理など複数のバックオフィス業務をクラウドで統合。収集したデータをリアルタイムに自動集計し、必要に応じてデータを可視化できます。「統合」「自動化」「可視化」を実現することで、労働時間短縮と生産性向上の双方に貢献します。
株式会社ニッポンダイナミックシステムズの「e-就業 ASP」は10年以上の販売実績を誇る勤怠管理システム。従業員50~数千名規模まで、幅広い企業が利用しています。導入検討時から稼働時まで労務管理に強い担当者がフォローするのも大きな強み。稼働後も運用相談に対応します。

株式会社ネオキャリアの「jinjer 勤怠管理システム」は、リーズナブルな価格ながら、ハイスペックな機能を搭載しています。マルチデバイス対応で、どこからでも打刻・勤怠管理を実現。シームレスな運用により、企業のパフォーマンス向上に貢献します。jinjerシリーズと連携により、他領域の人事データとの一元的な管理が可能です。

株式会社ロココの「RocoTime(ロコタイム)」は、業界・業種、社員数の規模を問わず、日本の商慣習を網羅したパッケージ製品です。36協定限度時間の超過時は、従業員へアラートを表示し特別条項申請を促すことも可能です。
効率化だけではない、勤怠管理システムに期待される役割
法改正により、企業は従業員の勤怠状況を客観的なデータとして残すよう求められるようになりました。この背景には、企業には安全配慮義務があり、過剰労働による従業員の健康被害を防ぐ責任を負っているという考えがあります。過去には、健康を害した従業員の実際の労働時間と、企業が把握していた勤怠状況とが乖離(かいり)していたために、大きなトラブルに発展した事例もあります。
勤怠管理システムは業務の効率化にとどまらず、こうしたリスクを未然に防ぐ役割も期待されています。健全な事業運営を実現する一つのツールとして、勤怠管理システムを有効に活用されてみてはいかがでしょうか。
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