業務態度に問題のある社員の試用期間延長後の対応、判断について
いつも参考にさせていただいております。
業務態度に問題のある社員について、試用期間延長後の試用期間満了の判断の基準とプロセスについて、それでも改善しなかった場合の対応についてご相談させてください。
本年年初に採用した社員ですが、業務上のパフォーマンスは想定どおりなのですが、態度が非常に問題です。
気に入らないことがあると会議中でも舌打ちをしたり、頭をかきむしったりします。常に何かに怒っており、会議などでも常にだれかを批判し、何かを批判しないと気が済まないようです。また、気に入らない先輩社員を陰で「あいつ」「ばばあ」とよび、挨拶しても話しかけても無視したりします。言動に気を付けるよう注意した上司を「あんた」呼ばわりし、さらに、他部署の部長と比較して、「●●さんと比べて、あんたは部長としてなっていない」等の発言もありました。チームの雰囲気は非常に悪くなり、メンバーからは、いつ自分が標的になるかわからない、なるべく関わりたくないとのコメントもでています。
これでは機能しないので、「本人の言動により周囲から不安の声があがっており、職場環境への適正が判断できないため」、として、3カ月試用期間を延長しました。また、正式雇用にむけた改善目標として、以下を設定しました。
・自主的に協力すること
・適切な言葉遣い
・チームメンバーとの良好な関係づくり
*因みに、就業規則では、試用期間は6か月、さらに最大6か月まで延長できることになっております
つきましては、以下のポイントにつきご教示ください。
① 改善の評価基準として、上司、チームメンバーからの毎月フィードバックを取得するとしましたが、チームからのフィードバックの取得方法について、気を付けること
② すでに40代ということもあり、行動が改善することは難しいと考えていますが、試用期間の終わりに不採用とする場合の注意点
③おそらく合意退職の道を探ることになると思いますが、延長した試用期間の途中で、合意退職をもちかけることはできるか
④その他、本件に関し、留意すべきこと
よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/09/10 12:05 ID:QA-0158052
- 色々ありますねさん
- 東京都/医療機器(企業規模 31~50人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
ご相談のケース、とてもリアルに想像できました。社員のスキルは問題ない一方で、態度や言動がチームを不安定化させる典型的な「職場適応性」の問題ですね。試用期間延長後の対応を進める上で、以下の観点で整理いたします。
1.フィードバックの取得方法と留意点
直接的なヒアリングは避ける
チームメンバーに「本人についてどう思うか」と直接聞くと、人間関係が悪化し、本人が報復的態度をとるリスクがあります。
匿名・間接的な方法を使う
上司や人事が定期的に1on1を行い、「働きやすさ」「チームの雰囲気」など、本人を名指ししない設問を投げかける。
アンケート形式や人事面談で「具体的な言動に困っていることがあるか」を聞く。
評価は事実ベースで記録する
「舌打ちした」「挨拶を無視した」など、日時・場面・具体的言動を記録。抽象的な「態度が悪い」では弱いので、客観的証拠を積み上げることが重要です。
2.試用期間満了時に「不採用」とする場合の注意点
解雇と同等の扱いになる
試用期間満了時の「本採用拒否」は法的には「解雇」に準じるため、客観的合理性と社会的相当性が必要です(労契法16条)。
理由を明確に記録・提示
「業務能力」ではなく「職場適応性・協調性」の観点で、改善指導を行ったにもかかわらず改善が見られなかったというストーリーが重要。
手続きの公正さ
就業規則に基づき、試用期間延長・終了を行っていること。
指導・注意の内容、フィードバック記録を残すこと。
解雇予告手当の考慮
試用期間中でも14日を超えて勤務していれば、解雇の場合は30日前予告または解雇予告手当が必要です。
3.延長中に合意退職を持ちかけることの可否
途中で打診は可能
本人との面談で「改善が見られず、このままでは本採用は難しい」と説明し、合意退職の選択肢を提示することは可能です。
慎重な伝え方
脅迫や強要に見えないよう、「本採用を見送る可能性が高いが、転職活動の準備も考えてほしい」と相談ベースで伝えることが望ましい。
合意退職書面の確保
署名・捺印をもらうことで、後日の「辞めさせられた」主張を防げます。
4.その他の留意点
メンタル面・ハラスメントリスクの確認
もし精神的な不調が背景にある場合、障害者差別禁止や安全配慮義務にかかわる可能性あり → 医師面談や産業医相談を検討。
配置転換の検討
本人が特定の上司・チームとの相性だけ悪い場合、異動で改善するケースもあります。
同僚保護の観点
チームの安心感を守ることも「使用者の安全配慮義務」の一環。長期放置はむしろリスクです。
実務的ステップ例
改善目標を文書で提示(既に実施済み)
毎月のフィードバックを記録(匿名性確保)
改善がない場合 → 面談で「改善が見られず、このままでは本採用困難」と伝える
最終判断:
改善あれば本採用
改善なければ「本採用見送り(解雇相当)」または「合意退職」
4.まとめ
フィードバックは匿名性・事実ベースを重視
本採用拒否は「解雇に準じる」ので、理由と記録が必須
延長途中での合意退職打診は可能だが、慎重に進める
チーム保護と法的リスクの両立が重要
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/09/10 14:47 ID:QA-0158065
相談者より
丁寧かつ迅速なご回答誠にありがとうございます。
質問事項それぞれに、注意事項を記載いただき大変参考になりました。
当人に対するリーガルリスクにフォーカスしがちでしたが、チームのメンバーへの安全配慮義務という点も、非常に参考になりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/09/11 15:57 ID:QA-0158130大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
態度が問題なのは、よくわかりますが、
具体的に、就業規則の服務規定の第何条に違反しているのか、
明示して、注意・指導を繰り返すことです。
そして、注意、指導は必ず、メモ等記録を残してください。
そのうえで、改善の余地がない場合には、
本採用拒否ということになります。
本人には、警告もしておいた方がよろしいでしょう。
投稿日:2025/09/10 15:40 ID:QA-0158072
相談者より
ご回答ありがとうございました。
就業規則に則り対応いたします。
投稿日:2025/09/11 15:58 ID:QA-0158131参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
|改善の評価基準として、上司、チームメンバーからの毎月フィードバックを
|取得するとしましたが、チームからのフィードバックの取得方法について、
|気を付けること
↓ ↓ ↓
・上司が一対一で聞き取る、あるいは匿名アンケートで集める方法が
望ましいでしょう。
・感情論ではなく、具体的事実・行動内容を収集するようにしてください。
・また、本人に気づかれないようご注意ください。
|すでに40代ということもあり、行動が改善することは難しいと考えています
|が、試用期間の終わりに不採用とする場合の注意点
↓ ↓ ↓
・問題行動の都度指摘、具体的な改善指導、指摘と改善履歴の記録保管が必要。
・改善が見込めない場合は、雇用継続が難しいと判断する場合がある旨も、
複数回、繰り返してください。全て、記録をとっておくことが大切です。
|おそらく合意退職の道を探ることになると思いますが、延長した試用期間の
|途中で、合意退職をもちかけることはできるか
↓ ↓ ↓
・合意退職をもちかけることは可能です。本人合意があれば自己都合退職です。
・また本人が合意しない場合も、再三の指導履歴、改善が見られない結果が
明確であれば、懲戒規定にあてはめ、会社都合退職をしていただくことも
可能です。但し、労務的には、試用期間の途中ではなく、試用期間の終了時
に本採用見送りと判断する方が解雇問題のリスクは軽減されるでしょう。
投稿日:2025/09/11 07:39 ID:QA-0158092
相談者より
ご回答ありがとうございました。
匿名アンケートが望ましいとのこと、承知しました。
本採用見送りとする場合は、試用期間終了後がよいとのこと、参考になりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/09/11 16:01 ID:QA-0158132大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
① 上司、チームメンバーが自由にフィードバックができる環境を整備すること、そのためには、なるべく関わりたくないではなく、常に毅然とした態度で接し、「ダメなものはダメ」と勇気をだして伝え、決してその場から逃げないことです。
②試用期間満了時に本採用を拒否することは解雇にあたりますので、本採用を拒否するについても、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認できない場合には、権利を濫用したものとして無効になります。
試用期間は、社員としての「適格性判定期間」であるとともに「教育期間」でもありますから、社員として不適格であるから本採用を拒否して解雇する場合であっても、試用期間中どのように教育し、指導したかが問題になります。
裁判例でも、本採用拒否すなわち試用期間における解雇は、採用決定後における調査の結果により、または試用期間中の勤務状態等により、当初知ることが出来ず、また、知ることが期待できないような社員としての不適格事実を知るに至った場合において、平均的社員を標準として十分に指導教育したが改善されず、正社員として定年まで雇入れることができないという場合でないと許されない。としています。(三菱樹脂事件 昭48.12.12 最高裁大法廷判決)
まずは、会社の評価を率直に伝え、指導・教育を徹底し、それらはすべて記録に残し、どうしても指導の効果が見込めず、改善が困難であると判断すれば、これ以上の雇用の継続は困難であると率直に伝えたうえで、退職・転職を勧めてみることです。
どうしても、応じない場合は、最悪、解雇することにはなりますが、会社としては一生懸命指導したが、どうしても改善できなかったということを説明できるようにしておくことが重要になります。
要は、「雇い続けようと努力したが、それでもダメだったので、やむを得ず解雇した。」ということが必要になります。
③できます。
退職勧奨は度を超さない限り自由、いつ、どのタイミングで勧奨をするかも自由です。
④勧奨にとどまる限りは解雇とはなりませんが、雇用の終了を働きかけるということは、実質的に解雇に近い行為をするわけですから慎重な対応が求められ、度を過ぎれば退職を強いることにもなります。
そのため、「はい」というまで執拗に説得する、別室にて複数人で長時間続ける等は論外であって、本人の自由な意思による退職の申し出が可能な状況を維持する必要がありますので、その点はよく留意しておかれたらよろしいでしょう。
投稿日:2025/09/11 08:18 ID:QA-0158093
相談者より
ご回答ありがとうございました。
指導・教育を試みること、その記録を残すことが肝要と理解しました。
投稿日:2025/09/11 16:05 ID:QA-0158134大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
人事管理は責任者(=実行者)と会社の方針が一致していなければ対応できません。
こうした不適合については、会社として雇用がふさわしくないのであれば、「チームでフィードバック」のような、責任は権限があいまいな対応は避けるべきでしょう。
直属上長が、問題行動や言動があるたびに面談し、事実確認と否定するなら警告を、認めるならその都度改善を誓約させるなどの、事実確認と本人確認の積み重ねにより解雇が可能になります。
問題行動はあっても試用期間延長など、ぜひとも雇用継続したいのであれば、そうした時ほど本人を外した席でチームの意見を別途聞き取るなど、対応を分けるべきでしょう。
試用期間で問題があっても、その人物は雇用したいという意思を伝え、チームの意見で同意が少ない時はどうするか間で考えてから諮ると良いと思います。
投稿日:2025/09/11 09:53 ID:QA-0158098
相談者より
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/02 15:47 ID:QA-0159064参考になった
プロフェッショナルからの回答
若干のコメント
以下、「試用期間の終わりに不採用とする場合の注意点」及び「合意退職をもちかけること」に関連して、コメントさせていただきます。
(1)試用期間延長の理由は、「本人の言動により周囲から不安の声があがっており、職場環境への適正が判断できないため」とのことです。
(2)当該社員に上記理由を御説明なされた際、この社員の反応はどうだったのでしょうか。仮に、弁明や反論等がなされたのであれば、それらを一度検討の俎上に載せ、可能なものは対応することも重要であると考えられます。
(3)そして、「不採用とする場合」や「合意退職をもちかける場合」に、上記検討に基づき会社として誠意をもって検討を尽くし対応したことについても御説明されることがよいのではないかと思われます。
投稿日:2025/09/11 10:29 ID:QA-0158105
相談者より
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/02 15:47 ID:QA-0159065参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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