【ヨミ】ワンオンワン 1on1
「1on1」ミーティングとは、定期的に上司と部下が1対1で話し合うことを言います。米国シリコンバレーでも“1on1 meeting”は文化として根付いており、人材育成の手法として世界的に注目を集めています。その特長は、上司が部下の成長のために時間をつかう、ということ。日本ではヤフーが取り入れたことで話題になり、現在は多くの企業で導入が進んでいます。
1. 今話題の「1on1」とは? 「1on1」の意味と求められてきた背景

目標や成果を確認する面談ではない
1on1ミーティングは、部下の成長を目的に行われる1対1のミーティングのことであり、プロジェクト遂行などのために、目標や成果を確認する面談とは異なります。
1on1ミーティングにおいて重要なのは、上司が部下に現状の問題の解決策を考えさせること。そのため、「部下に話をしてもらう」「上司が先に自分の考えや答えを言わない」「上司に依存した関係にならないようにする」といったことに注意しなければなりません。また、問題があれば、その解決に向かって部下を実際の行動に導くことも必要です。つまり、1on1ミーティングとは、あくまでも「人材育成」を目的にしたミーティングなのです。
さまざまな企業で行われる1on1ミーティング
ヤフー、パナソニック、日清食品、ソニー、楽天、クックパッドなど、1on1ミーティングは日本の大手企業でも続々と採用されています。企業はどのような効果を期待しているのでしょうか。
1on1ミーティングを先駆的に取り入れてきたヤフーは、「経験学習の促進」と「社員が自分の才能を自分で発見する」効果があるとしています。これらから「時代の流れの速さに対応できる社員を育成」という狙いも読み取れます。具体的にはどのような効果があるのか、見ていきましょう。
「経験学習の促進」
一人だけでは考えきれないこと、思い悩んで時間を無駄にしてしまうことでも、上司と話し合うことで、部下はより早く解決の糸口を見つけることができます。1on1ミーティングでは、積極的にその機会を設けることで、経験学習のサイクルを促進するという目的があります。
「社員が自分の才能を自分で発見する」
人は自分にどういった才能があるのか、何が得意なのか、自分ではよくわからないことがあります。ヤフーは「社員の才能を解き放つ」ことを重要視しており、1on1ミーティングを通して仕事や職場環境からの経験学習を促進することで、自らの才能に気づきやすい環境を整え、情熱あふれる職場にすることを目指しています。
例えば、1on1ミーティングの途中で、上司が「どのような仕事をしたいのか」と問いかけることがあります。この回答によって部署異動が決まることはあまりありませんが、このような問いかけをきっかけに、部下は自分のやりたいこと、あるいは現状の仕事の不満点などを自省し、「本当の自分」に気づくことができます。
時代の流れの速さに対応できる社員を育成
IT技術の発展で情報の移り変わりが加速化するなか、「自分で考える社員を育成したい」という各企業の思惑が、1on1ミーティングの流行を促進しているようです。指示された仕事をする社員ばかりでは、それぞれの知識をぶつけ合って相乗効果が生まれることもなければ、イノベーションが生まれることもありません。時代の流れの速さに対応できる社員を育成するために、1on1ミーティングが活用されているのです。
2. 「1on1」ミーティングの方法
「1on1」の前提条件は上司と部下の信頼関係

事実の把握だけに特化した「面談」とは異なり、1on1ミーティングでは、部下の成長や信頼関係の熟成、コミュニケーションの質の向上などを目的にしています。そこで最初に重要なのが上司と部下の信頼関係の構築です。信頼関係が成立していなければ、部下が心を開いて話すことは難しく、話の中で気づきを得ることも少なくなってしまいます。
1on1ミーティングは上司が部下の話を聞くものであるため、部下は「本当のことを話すと評価が低くなるのではないか」「秘密を知られたくない」と考えがちです。カウンセリングのように、全く業務と関係のない人の方が部下も話しやすいかもしれませんが、1on1ミーティングの目的は、部下の成長。部下に適切なアドバイスができるのは、その業務内容を把握し、直接指導している上司でしょう。1on1ミーティングがうまくいけば、その利益は部下自身にとっても企業にとっても大きなものになるはずです。
「傾聴」~1on1ミーティングを成功させる技術~
傾聴とは、話を否定せず、耳も心も傾けて、相手の言葉を真摯に「聴く」技術です。よく知られている傾聴の基本的な技術として、「うなずき」「あいづち」「繰り返し」「言い換え」があります。
「うなずき」や「あいづち」は、相手に話をしっかりと聴いていることを伝え、共感していると感じてもらうことができるようになります。
「繰り返し」や「言い換え」は、話が詰まってしまったときや、相手がなかなか話そうとしないときなどに用いる技術で、「〇〇ということですね」と相手の発言を繰り返したり、「〇〇とは、つまり□□ということですよね?」と言い換えたりすることを言います。これによって、部下に自分の発言の再考を促し、その内容を確認させることができます。
1on1ミーティングではさらに一歩進んで、「レコグニション」つまり「無条件で相手を肯定する」という手法も効果的とされています。例えば、部下が会社に対する愚痴を言ってきたとします。そんなときにも、上司が不快感を口に出さずに「それはそうだな、いつも申し訳ない」などと言って相手を肯定してあげることが、信頼関係の構築には重要だとされています。
「1on1」ミーティングでよく聞く「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」
1on1ミーティングの基礎となる信頼関係が構築されたら、次はいよいよ部下の学びの時間のスタートです。1on1ミーティングでは、部下の成長を促すために、「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」などの積極的な働きかけをすることがあります。
「コーチング」
1on1ミーティングにおける「コーチング」とは、部下に問題解決を促す行動をさせるような質問をすること。例えば、「その根本的な原因はなにか」「どうして今回はうまくいったのか」「どうやったらもっとうまくいったのか」などを問いかけます。「今回の成功で学んだことはなにか」と問いかけるのも効果的でしょう。コーチングで重要なのは、上司が答えを出さないこと。部下に考えさせることで成長を促します。
「ティーチング」
1on1ミーティングにおける「ティーチング」とは、そのまま知識を教えることを意味します。上司は、部下の置かれた状況において、「ティーチング」と「コーチング」のどちらが適切かを判断しなければなりません。例えば、部下から「〇〇は誰に聞けばよいのですか?」と質問されたら「ティーチング」で対応するべきでしょう。
「フィードバック」
1on1ミーティングにおける「フィードバック」とは、相手が傷つくようなことだとしても、失敗を失敗だと認めさせたり、周りからはどう見えるかを素直に伝えたりする方法です。
例えば、「今回は準備に時間がかかりすぎてしまったね」「もう少し資料をちゃんと作るべきだったね」「最後のクロージングを丁寧にすべきだった」などという指摘が考えられます。部下にとっては耳が痛いことでも、適切なフィードバックを受けることで次の成長へとつながります。
ここで注意しなければならないのは、「人格の否定」につながらないようにすること。「人格の否定」は、パワハラになってしまいかねません。そのため、「生まれつきの問題だ」や「頭が悪いからだ」などとは、絶対に言ってはいけません。
「1on1」ミーティングの時間配分や話の内容
1on1ミーティングは週に1回、30分~60分くらいで行うのが一般的です。メインで話すのは部下ですが、上司が呼び水となるような話をするとスムーズに進行します。
1on1ミーティングの初期段階~信頼関係を構築するために~
1on1ミーティングは先述のとおり、信頼関係の構築が重要ですが、そのためには相手の健康状態を気遣ったり、モチベーションのアップにつながるような話題を取り上げたりするといいでしょう。場合によっては仕事以外の趣味の話も効果的ですが、踏み込みすぎると逆に距離ができたり、ハラスメントととられることもあるので、注意が必要です。
1on1ミーティングに慣れてきた頃~部下の成長につなげるために~
1on1ミーティングに慣れてきたら、部下の成長のために、業務内容や組織が抱えている課題、キャリア支援や戦略に関する話題などを取り上げるとよいでしょう。これまでに述べてきたとおり、1on1ミーティングの目的は自分で考える社員の育成です。
3.「1on1」ミーティングのメリット・デメリット
期待されるメリットは?
1on1ミーティングは、上司と部下とのコミュニケーション機会を制度として定期的に設置するものであり、以下のようなメリットが期待されます。
- 気軽な話し合いの場としてコミュニケーションを改善
- じっくり話し合うことによる関係性の改善
- 高頻度の進捗確認
- 短期間での評価
1on1ミーティングには、会社のコミュニケーションを円滑にするというメリットがあります。「忙しいから話しかけにくい」と思っていた上司とも、じっくりと話をすることができます。「苦手だな」と思っていた上司でも、一対一で話し合うことで、意外な一面を発見し、関係性がよくなることもあります。
週1回などと頻度を決めることで、定期的に部下の仕事の進捗状況を確認し、評価できるというメリットもあります。「あまり私のことを見てくれないから、適切な評価がされていない」といった部下の不満も、解消することができるかもしれません。
また、ハラスメントにならない程度に身近な話をすることで、お互いに親近感を感じるようになれば、仕事上のコミュニケーションもうまくいきやすくなります。このように1on1ミーティングには、コミュニケーションの活性化や進捗状況のこまめな把握、部下を平等に扱うことができることなど、さまざまなメリットがあるのです。
注意すべきデメリットは?
一方で、1on1ミーティングには、お互いに話し合いをする目的がわからなくなってしまったり、時間をとられてしまったりするなどのデメリットもあります。このデメリットに対処せずにいると、部下から「目的のない話し合いには参加したくない」「面談に時間をとられたくない」と思われてしまう恐れもあります。
デメリットに対処するためには、上司がしっかりと「部下の成長のため」という目的を意識し、戦略的に話を聞いて、効率的に時間を使うことが必要です。
4. 1on1ミーティングを活用して新しいリーダーの育成を!!

1on1ミーティングでは、部下の成長につながる気づきやアドバイスを与えることが重要です。自分の業務に対して、腹を割って相談できる相手は、1on1ミーティングなどで時間と場所を作らない限り、なかなか見つけることができません。
「面談」などのかしこまった場ではなく、業務を深く理解した上司と気軽に話す1on1ミーティングは、部下の成長を促します。この機会に、1on1ミーティングの導入を考えてみてはいかがでしょうか。
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