私傷病休職からの復職時、多くの条件を出す従業員の休みの取扱い
ハウスダストなどのアレルギーを理由として私傷病休職を繰り返している従業員がいます。これまで色々な部署に配属し配慮してきましたが、どこの部署でも、職場に浮遊しているホコリやシュレッダーカスを吸引してしまって体調不良になったと診断書を取得してきて休みに入り、長期の休職をこれまで何度か取得しております。(同様の主張をする従業員は他におらず、就労環境に大きな問題はないと考えております)
このたび当該従業員が主治医より復職可能の診断書を取得し復職の申請をしてきたのですが、配属する職場を調整するのにかなり時間がかかりそうです(受け入れられる部署を探したり、就労環境を整える時間が必要なため)。
その場合、復職までの期間を本人の私傷病休職の延長として休みを取り扱うことに問題はあるでしょうか。
ご教示のほど、よろしくお願い申し上げます。
投稿日:2025/05/26 18:00 ID:QA-0152959
- 人事課員さん
- 東京都/その他業種(企業規模 1001~3000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、文面内容を拝見する限りすぐに復職が出来ないのは、当該従業員の自己都合によるものといえます。
すなわち、従業員本人の特異な体質に起因するものですので、復職まで時間がかかるのはやむを得ないものといえるでしょう。
ちなみに、今後も同様の事を繰り返されるようでしたら、あくまで私傷病である事から一種の勤怠不良に当たるものといえます。通常であれば勤怠不良については就業規則上の解雇事由に該当するものといえますので、そうであれば最終的には解雇措置を採られる事も可能になるものといえるでしょう。
投稿日:2025/05/26 20:09 ID:QA-0152973
相談者より
ご回答ありがとうございます。会社としても「自己都合の休み」として取り扱いたいと思いますが、他の方のご回答には会社都合とした方がよい、という主旨の内容もありましたので、慎重に検討したいと思います。
投稿日:2025/05/27 09:40 ID:QA-0153000大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
原則として、復職可能との診断書が提出された時点で、私傷病休職の要件(=労務不能)は消滅しており、その後の休職延長には慎重な対応が必要です。
やむを得ず復職に時間がかかる場合でも、その期間を単純に休職延長とすることは法的リスクを伴います。
2.背景整理
(1)私傷病休職制度は、「就労不能な状態にある従業員を、一定期間解雇せずに待機させる制度」であり、労務不能が前提です。
(2)主治医から「復職可能」との診断書が提出された場合、その労務不能状態は回復したとみなされます。
(3)復職可とされたにもかかわらず、「就業場所の調整ができていない」という会社都合で復職を引き延ばす場合、休職延長の法的根拠が失われる可能性があります。
3.問題点とリスク
観点→問題点→リスク
休職制度→労務不能ではないのに休職扱いとする→休職期間の不当な延長と主張される可能性
賃金→労務提供の意思と能力がある場合、会社の責により就労できない状態→休業手当(労基法26条)支払義務が発生する可能性
ハラスメント→特定の従業員を理由なく復職させない→不当な取扱い(パワハラ等)のリスク
安全配慮義務→就労環境が原因で再発の可能性あり→安全配慮義務違反とされないよう慎重な復職判断が必要
4.望ましい対応案(実務的提案)
(1) 主治医の診断書の内容精査
「復職可」とされていても、就労条件付き(例:アレルゲンの少ない環境であれば復職可)などの記載がある場合は、実質的に「条件付き労務不能」状態とみなすことも可能です。その場合、条件整備までを休職延長とする合理性が増します。
(2) 産業医による就業可否判断
産業医による復職判定(意見書)を別途取得し、職場復帰が本当に可能かどうかを会社としても独自に確認します。安全配慮義務を果たす観点からも非常に重要です。
(3) 復職手続の一環としての「就業環境整備期間」
復職可とする前に、職場調整や試験的就労(トライアル出社)などを復職プロセスに含める規定・運用を整備しておくと、一定期間を「復職準備期間」として合理的に位置づけられます。
(4) 休職延長扱いではなく、「会社都合の自宅待機」や「一時的有給付与」で対応する選択肢も
明確に復職不能とは言えない状態であるため、一方的な休職延長は避け、「有給」「就業環境整備のための自宅待機」等として対応する方がリスクが低いです。
5.就業規則の整備の必要性
このようなケースを想定し、就業規則または休職規程に以下のような条項を設けておくと、実務的に運用しやすくなります:
「復職にあたっては、会社が必要と認めた場合、就業可能な職場の調整や医師・産業医の意見を踏まえたうえで復職日を調整することがある」
6.まとめ
復職可能の診断が出ている場合、単純に休職延長することは法的に危うい。
復職に条件が付されているかを確認し、職場整備のための合理的な準備期間として扱うことが望ましい。
安全配慮義務と法的トラブルを避けるためにも、産業医の意見聴取と、本人とのコミュニケーション(書面記録含む)を丁寧に行うことが重要です。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/05/26 20:50 ID:QA-0152978
相談者より
ご回答誠にありがとうございます。
復職の条件として「アレルギー物質(シュレッダークズ・ホコリ)からは距離を置くこと」「シュレッダーゴミ袋から距離を置くこと」「シュレッダーゴミ袋を持って当該従業員の近くを歩かないこと」と診断書に記載されております。
本人は過去に所属した部署の復職は無理、と言ってきており、今後は新しい部署を探す必要があるのですが、どこも小さいオフィスで上記条件をクリアするのが難しい状況です。また作業環境測定を行いましたが、当該従業員がアレルギーを発症したいくつかの部署もその他の部署とほぼ同じような数値でした(一般的には問題のない数値です)。
よってどの部署に配属しても再びアレルギーを発症する可能性があり、部署の環境改善をせずに配属することは安全配慮義務違反を問われる恐れもあるのかな、と危惧しております(一方で職場にクリーンルームのような施設を設置するのも現実的ではないのですが)。
以上により当面は【実質的な「条件付き労務不能」状態】にあると解釈し、根本的な体質の改善や治療が完了するまで休職の延長としたいと思いますがいかがでしょうか。
投稿日:2025/05/27 09:57 ID:QA-0153002大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
まず、傷病の状況を判断し、復職させるかしないかを最終的に判断するのは、
会社側となります。貴社としても産業医の見解も踏まえて、慎重な復職判断を
なさった方が宜しいかと思案いたします。
その上で、傷病の状況から復職が難しいと判断すれば復職拒否することも
可能です。但し、産業医の見解など一定の合理的根拠があることが重要です。
会社側が傷病の状況から復職可と判断している一方で、配属先調整中を理由に、
復職開始を一定期間待機させる場合は、休業手当の支払い対象となります。
休業手当は、使用者の責に帰すべき事由(会社都合)で労働者を休業させる場合、
労基法26条より、会社は労働者に平均賃金の60%以上の手当を支払わなければなり
ません。
また、「休業」とは、労働契約上労働義務のある時間において、労働者が労働の用
意をなし、労働の意思をもっているにもかかわらず、その給付の実現が拒否され又
は不可能となった場合のことを指します。
投稿日:2025/05/27 08:55 ID:QA-0152988
相談者より
ご回答誠にありがとうございます。
復職の条件として「アレルギー物質(シュレッダークズ・ホコリ)からは距離を置くこと」「シュレッダーゴミ袋から距離を置くこと」「シュレッダーゴミ袋を持って当該従業員の近くを歩かないこと」と診断書に記載されております。
本人は過去に所属した部署の復職は無理、と言ってきており、今後は新しい部署を探す必要があるのですが、どこも小さいオフィスで上記条件をクリアするのが難しい状況です。また作業環境測定を行いましたが、当該従業員がアレルギーを発症したいくつかの部署もその他の部署とほぼ同じような数値でした(一般的には問題のない数値です)。
よってどの部署に配属しても再びアレルギーを発症する可能性があり、部署の環境改善をせずに配属することは安全配慮義務違反を問われる恐れもあるのかな、と危惧しております(一方で職場にクリーンルームのような施設を設置するのも現実的ではないのですが)。
このような状況でも復職部署の調整機関を「使用者の責に帰すべき事由での休業」と解釈し休業手当を支払うべきでしょうか。
投稿日:2025/05/27 10:02 ID:QA-0153003大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
復職を最終的に判断するのは会社です。
また、前職復帰が前提です。
医師の診断をもとに、復職が無理な場合には、休職延長でも問題ありませんが、
受け入れ先がないでは不合理となりかねません。
まずは、前職復帰を検討する必要があります。
安全配慮の観点から前職が無理な場合いは、配置転換まで検討する義務はありません。
投稿日:2025/05/27 09:28 ID:QA-0152999
相談者より
ご回答誠にありがとうございます。
前職復帰が基本である、とのことですが、当人は前職復帰を拒否している状況です(狭いオフィスでホコリも舞っているので働きたくない)。
「安全配慮の観点から前職が無理な場合いは、配置転換まで検討する義務はありません。」とお書きいただきましたが、現下の状況は解雇事由に相当しうる、という解釈でよろしいでしょうか。
投稿日:2025/05/27 10:06 ID:QA-0153004大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答誠にありがとうございます。
復職の条件として「アレルギー物質(シュレッダークズ・ホコリ)からは距離を置くこと」「シュレッダーゴミ袋から距離を置くこと」「シュレッダーゴミ袋を持って当該従業員の近くを歩かないこと」と診断書に記載されております。
本人は過去に所属した部署の復職は無理、と言ってきており、今後は新しい部署を探す必要があるのですが、どこも小さいオフィスで上記条件をクリアするのが難しい状況です。また作業環境測定を行いましたが、当該従業員がアレルギーを発症したいくつかの部署もその他の部署とほぼ同じような数値でした(一般的には問題のない数値です)。
よってどの部署に配属しても再びアレルギーを発症する可能性があり、部署の環境改善をせずに配属することは安全配慮義務違反を問われる恐れもあるのかな、と危惧しております(一方で職場にクリーンルームのような施設を設置するのも現実的ではないのですが)。
以上により当面は【実質的な「条件付き労務不能」状態】にあると解釈し、根本的な体質の改善や治療が完了するまで休職の延長としたいと思いますがいかがでしょうか。
投稿日時:2025/05/27 09:57 評価:大変参考になった
にご回答申し上げます。
ご担当者様のご苦労がよくわかります。
あとは、会社としての決断の段階かと存じますが、
安全にことを運ぶのであれば、所轄の労働基準監督署の監督官に
事前にご相談されることをお勧め申し上げます。
労基署は、「それでいい」とは、言わないとは思いますが
後日、何かあったときにその事前相談は役にたつと立つと思います。
よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/05/27 10:07 ID:QA-0153005
相談者より
ご返信誠にありがとうございました。他の先生方のご意見も確認し、労基署に相談に行こうと思います。
投稿日:2025/05/27 11:18 ID:QA-0153023大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
まず会社としてできること、できないことの整理ではないでしょうか。
1人の社員のために全社の環境変更など現実的にできることなのか、何をすれば問題がなくなるのか、本人がわからなければ対応しようがありません。また単なる個人の感想ではなく、医学的視点で医師による指示なども欠かせません。
こうして就業できる環境が現実的に実現できるなら対応。コスト的にもできそうもないなら、就業環境を変えられないことを告げて進退を判断してもらうしかないと思います。
勝手に心情を斟酌して対応を先行させても、それが有効でなければ費用と時間の無駄なので、話し合いながらが重要です。最終的に合意が取れなければ期限を決めて退職も視野に入れた対応準備も必要でしょう。
投稿日:2025/05/27 11:18 ID:QA-0153024
相談者より
ご回答誠にありがとうございました。
お書きいただいた通り、会社としてできることとできないことを整理し、本人や主治医・産業医とも連携しどのようにするかを決めていきたいと思います。
投稿日:2025/05/27 13:21 ID:QA-0153033大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
復職可否の判断基準
以下、御参考になれば幸いです。
(1)復職の可否についての裁判例として、次の旨のものがあります。(JR東
海(退職)事件 大阪地裁 平成11年10月4日判決)(この判決は、最高裁の片
山組事件 平成10年4月9日判決における判示を応用したものとみられていま
す。)
1)労働者が私傷病により休職となった以後に復職の意思を表示した場
合、使用者はその復職の可否を判断することになる。
2)労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合に
おいては、休職前の業務について労務の提供が十全にはできないとして
も、
3)その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動
の実情、難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の
有無を検討し、
4)これがある場合には、当該労働者に右配置可能な業務を指示すべきで
ある。
5)当該労働者が復職後の職務を限定せずに復職の意思を示している場合
には、使用者から指示される右配置可能な業務について労務の提供を申
し出ているものというべきである。
(2)本件を上記に照らし合わせてみると、以下のように考えられます。
1)「復職の申請をしてきた」とのことであり、「復職の意思を表示した
場合」に該当すると考えられます。
2)復職の条件や、本人の意向を踏まえれば、「休職前の業務について労
務の提供が十全にはできない」に該当すると考えられます。
3)オフィスの状況や、作業環境測定の実施等を踏まえれば、「その能
力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、
難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検
討し」に該当すると考えられます。
4)検討結果に基づけば、「現実に配置可能な業務がある場合」には該当
しないと考えられます。
(3)以上を踏まえると、本件については、現状、復職可能な状態にあるとは判
断できないとみられます。今後、専門家(産業医)に相談し、その見解をい
ただくことも重要であると考えられます。その上で、依然、復職可能とは判
断できないのであれば、一般に、所定の休職期間が到来すれば、就業規則に
則り、自然退職若しくは解雇になるものと思われます。
投稿日:2025/05/27 12:01 ID:QA-0153025
相談者より
ご回答誠にありがとうございます。
皆様のご意見を参考に、別の先生からアドバイスいただいたとおり労基署にも相談に行ってみようと思います。
投稿日:2025/05/27 13:28 ID:QA-0153035大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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