従業員スライビング(employee thriving)
従業員スライビング(employee thriving)とは?
「従業員スライビング」とは、「従業員の成功」を示す指標です。英語の「スライビング(thriving)」には「繁栄する」「富む」「目標を達成する」といった意味があり、従業員スライビングは有意義な仕事をするためのエネルギーと充実感を得られている状態を指します。マイクロソフト社のピープルアナリティクスチームが2022年6月に発表した職場に関するレポートの中で従業員スライビングを提唱しました。同社はこの概念を「従業員エンゲージメント」に代わる新たな指標になるとして、今後重要視すると述べています。
「成功している従業員」とは何か?
マイクロソフト社にみる3要素
この数年で、多様な働き方を推進する企業が増えました。出社とリモートワークを使い分けるハイブリッドワークや週休3日制など、労働者がそれぞれのライフスタイルにあった働き方を選びやすくなっています。生産性の向上だけでなく、従業員の幸福度の向上も期待して「働き方改革」を行った企業もあるでしょう。しかし、マイクロソフトが実施した調査によると、ワーク・ライフ・バランスと従業員スライビングは必ずしも相関関係にないことが分かりました。
同社では、従業員スライビングを「有意義な仕事をするためのエネルギーとエンパワーメントを得られること」と定義しています。では、成功している従業員とはどのような人を指すのでしょうか。同社は従業員調査で「自分は成功している」という設問への5段階評価での回答に基づいて、従業員スライビングを測定。成功を分解すると、「有意義な仕事」「エンパワーメント」「エネルギーを得ている」という三つの要素に分けられました。
さらに成功の背景を分析すると、三つのテーマが浮かび上がってきました。一つ目は、職場の文化。成功している従業員は、同僚とのチームワーク、インクルーシブな文化、ウェルビーイングへのサポートなどがあると回答。一方、成功していない従業員は縄張り意識や官僚主義、協働の欠如を経験したと回答しています。
二つ目は、マネージャーの在り方。「マネージャーは尊厳と敬意をもって私に接している」「マネージャーは有能だと思う」「キャリアに関してマネージャーからサポートを受けている」という質問に高いスコアが出ており、成功にはマネージャーが重要な役割を担っていることが可視化されました。
三つ目は冒頭に挙げた、ワークライフバランスと従業員スライビングは別の概念であること。ワークライフバランスが整っていれば、仕事のエネルギーやエンパワーメントがより得られるわけではありません。忙しさでワークライフバランスが乱れていても、成果を残して充実感を得られる場合もあります。だからといって働きやすさは蔑ろにしてよいわけではなく、持続可能な働き方のために欠かせないもの。従業員スライビングにかかわらず取り組んだほうがよいことには変わりありません。
従業員スライビングを高めるために必要なのは、従業員が何を考え、何を目指しているかを理解すること。また従業員の目標が組織の目標と重なっていることも重要です。有意義な仕事をするために、エネルギーやエンパワーメントを得られている。そう実感できるためのポジティブな従業員体験とは何かという視点を持ち、施策へとつなげることが重要です。
参考:マイクロソフトの掲げる新指標「従業員スライビング」とは何か│ハーバード・ビジネス・レビュー
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