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【ヨミ】ワークライフバランス

ワーク・ライフ・バランス

「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)は、「私生活を充実させることで仕事がうまく進み、また仕事がうまくいくことによって私生活も充実する」という、仕事と生活の相乗効果を高める考え方と取り組みを指すものです。

更新日:2024/02/16

1. 「ワーク・ライフ・バランス」の定義

2007年に「ワーク・ライフ・バランス」の「憲章」と「行動指針」が策定

最初に、「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)が求められるようになった経緯を見ていきます。2007年7月、少子化対策、男女共同参画など、仕事と生活の調和に関連する会議での議論を踏まえ、経済界、労働界の代表者、有識者、関係閣僚などから構成される「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」が設置。12月に「仕事と生活の調査(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。このことが「ワーク・ライフ・バランス」の実現に向け、日本の社会全体で取り組む大きな経緯(きっかけ)となりました。

ちなみに「憲章」では、「ワーク・ライフ・バランス」が実現した社会の姿(定義)を、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域社会などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会(※)」としています。また「行動指針」では、数値目標の設定や「仕事と生活の調和」実現度指標により、仕事と生活の調和した社会の実現に向けた全体としての進捗状況を把握・評価し、政策へと反映することを示しています。

【憲章の枠組み】

趣旨 ・仕事と生活の調和を推進するための「大きな方向性」を提示
示されているもの ・仕事と生活の調和の必要性
・調和が実現した社会の姿
・その実現に向けた各主体の役割(企業と働く者、国民、地方公共団体)

【行動指針の枠組み】

趣旨 ・「企業や働く者、国民の効果的な取り組み」「国や地方公共団体の施策の方向性」を提示
示されているもの ・各主体の取り組み
・目指すべき項目の数値目標
・実現性を測る指標
・推進状況の点検・評価の仕組み

統一された定義がないからこそ、各社の状況に応じた実行性のある取り組みが求められる

2000年代半ば以降、ワーク・ライフ・バランスの「定義」に関して、下記に示したような内容が政府関係省庁などから出されていますが、必ずしも統一的な見解があるわけではありません。共通しているのは、「老若男女全ての人にとって、仕事と仕事以外の諸活動のバランスが取れた状態にあること」「企業とそこで働く者は、協調して生産性の向上に努めつつ、職場の意識や風土改革と合わせて、働き方改革に自主的に取り組むこと」などです

企業のワーク・ライフ・バランスへの取り組みは、事業規模や業種、従業員の属性や雇用形態などの影響を受けます。そのため、個々の企業が自社の実情と課題を把握し、それぞれに適した効果的な進め方を労使で話し合い、実現可能性のある取り組みが求められます。

【政府報告書によるワーク・ライフ・バランスの定義】

内閣府:「ワーク・ライフ・バランス憲章」(2007年12月) 国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域社会などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて、多様な生き方が選択・実現できる社会。
内閣府・男女共同参画会議:「仕事と生活の調和に関する専門調査会」(2007年7月) 老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、さまざまな活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態。
内閣府:「子どもと家族を応援する日本」重点戦略会議(2007年6月) 個人が仕事上の責任を果たしつつ、結婚や育児をはじめとする家族形成のほか、介護やキャリア形成、地域活動への参加など、個人や多様なライフスタイルの家族がライフステージに応じた希望を実現できるようにすること。
厚生労働省:「仕事と生活の調和に関する検討会議」(2004年6月) 個々の働く者が、職業生涯の各段階において自らの選択により「仕事活動」と家庭・地域・学習などの「仕事以外の活動」をさまざまに組み合わせ、バランスの取れた働き方を安心・納得して選択していけるようにすること。

ワークとライフのハーモニーが大切

「ワーク・ライフ・バランス」が謳われた当初、ワーク(職業生活)とライフ(個人生活)は相反するもので、「ライフ(仕事以外の時間)を大切にする人は、ワーク(仕事の時間)を大切にしない人である」と考える向きもありました。そのため、「仕事とプライベートをきちんと分け、その割合を管理すること」が「ワーク・ライフ・バランス」の取り組みであると解釈されることも少なくありませんでした。確かに人生において時間の使い方は重要な問題ですが、「ワーク・ライフ・バランス」が求めるものは、時間の配分に限りません。

人が仕事において高い付加価値を提供し成果を出していくには、より広い視野や知見、さらにはネットワークが必要ですが、これらは担当している仕事以外の場(経験)で得ることが少なくありません。つまり、ワークとライフをうまく調和させ、相乗効果を及ぼし合う好循環を生み出すことが、「ワーク・ライフ・バランス」の本来の目的なのです。「バランス」からさらに進み、ワークとライフの「ハーモニー」(調和)が大切だと言ってもいいでしょう。より良い調和を実現するためにどのように時間を管理するのか、という個々の問題へとブレークダウンしていくことが、昨今の課題となっています。

「類似概念」「類義語」との違い

「ワーク・ライフ・バランス」には、類似した概念や類義語がいくつか存在します。ここでは、それらの用語との相違点を整理します。

(1)ワーク・ライフ・インテグレーション

「ワーク・ライフ・インテグレーション」とは、自分自身の人生観や価値観をベースに置き、ワーク(職業生活)とライフ(個人生活)を柔軟かつ高いレベルで統合(インテグレーション)することにより、双方を充実させることを目的とするものです。「ワーク・ライフ・インテグレーション」を推し進めることで、仕事では生産性の向上や成長を実現するとともに、プライベートでは生活の質を高め、個人としての充実感や幸福感を得るなど、両者の相乗効果を目指す働き方が期待されています。仕事と生活を対立的に捉え、その量的バランスの調整を目指すこれまでの「ワーク・ライフ・バランス」の発想を、さらに進めた考え方と言えます

(2)ワーク・ライフ・マネジメント

「ワーク・ライフ・マネジメント」とは、ワーク(職業生活)とライフ(個人生活)の「時間配分」だけを意識するのではなく、ライフステージやその時々の状況に応じて、ワークとライフの充実を自ら積極的に「マネジメント」することで、相乗効果を発揮することを言います。「仕事と生活の調和」を意味する点では「ワーク・ライフ・バランス」と同じですが、「バランス」と表現すると時間の割り振りに矮小化されてしまい、「両立のために仕事のウエートを下げて、生活にシフトする」など、誤解を招くこともあります。そのため、「ワーク・ライフ・バランス」を今一度、経営や事業の視点から捉え直し、「ワーク・ライフ・マネジメント」を掲げる企業も少なくありません。

(3)ライフ・ワーク・バランス

「ライフ・ワーク・バランス」の基本的な考え方は、「ワーク・ライフ・バランス」と同様です。従業員が生活と仕事を両立しながら、いきいきと働き続けられる職場の実現を目指しています。東京都が「ワーク・ライフ・バランス」に関する優れた取り組みを行っている中小企業を応援するため、独自に「ライフ・ワーク・バランス認定企業」を選出するようになり、「ライフ・ワーク・バランス」という言葉が浸透しました。毎年「ライフ・ワーク・バランス」に関する取り組みが優れた企業を「大賞」「知事特別賞」として発表、表彰する取り組みを、東京都では10年以上にわたって行っています。

2. 「ワーク・ライフ・バランス」が注目される背景

近年、「ワーク・ライフ・バランス」がこれほどまでに注目されるようになった背景には、いくつかの理由があります。以下、その経緯を紹介します。

政府の少子化に対する強い危機感

まず、急速に進展する少子化問題に対する政府の危機感と、それに伴う各種の対策が挙げられます。1990年代に少子化問題が顕在化したことを受け、将来の労働力人口の減少、年金・医療などの社会制度に対する政府の対策が大きく推進されることになりました。2004年に閣議決定された「少子化社会対策大綱」では、重点課題の一つとして「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し」が掲げられ、翌年に施行された「次世代法育成支援対策推進法(次世代法)」では、301人以上の企業に対して、両立を支援するための行動計画の策定が義務づけられることになりました。

こうした流れの中で、「ワーク・ライフ・バランス」がクローズアップされるようになりました。2007年には「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」が設置され、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定。さらに2009年には、男女ともに子育てや介護などをしながら働き続けられる雇用環境を確保するため、「改正育児介護休業法」が公布されました。少子化に対する政府の危機感が、法律などを通して企業への大きなインセンティブとなり、「ワーク・ライフ・バランス」を推進する大きな流れを生み出してきたのです。

企業の人材確保に対する対応策

少子化は、当然のことながら労働力不足を引き起こします。今後、生産年齢人口(15~64歳)の大幅な減少(2020年7406万人→2060年4793万人)が予測される中、2018年度は「人手不足」関連倒産が過去最多となりました。また、「入社後3年で3割が辞める」若年層の低い定着率も、依然として問題となっています。

こうした企業の人材確保に対する危機感から、「ワーク・ライフ・バランス」への関心が急速に高まっています。「ワーク・ライフ・バランス」を重視した施策の充実は、従業員の退職を防ぐとともに、中途・新卒を問わず採用面で優位に働き、さらには在籍する人材の能力を引き出すことにも有効です。そのことに気が付いた企業が、人事施策としての「ワーク・ライフ・バランス」の推進へと、大きく舵を切っているのです。

働く人の意識の変化

かつての日本企業は、終身雇用慣行の下、男性の正社員(妻は専業主婦)による長時間労働を前提として運営されてきました。しかし現在は、労働力人口の減少が進む中、これまで以上に女性や高齢者の労働力と多様な価値観を企業経営の中で生かしていくことが求められています。特に近年は、女性の就業継続希望者が増えてきたこともあり、勤労者世帯の実に過半数が共働き世帯となっています。また、男女ともに仕事と家庭責任の両立が増えるなど、若い人たちを中心にライフスタイルや就労観が多様化しています。核家族化、兄弟姉妹の数の減少、親元から遠く離れて働く人の増加などを背景に、家族の介護・看護の理由で転職・離職する人が増えていることも見逃せません。

このように生活の中で取り組むべき重要課題を持つ人が増えていることにより、「ワーク・ライフ・バランス」を重視する人が増えてきたのはある意味、当然のことと言えます。これからの企業経営では、年齢・性別などに関係なく、優秀な人材が活躍できる組織への転換を急ぐ必要があります。そこでは「ワーク・ライフ・バランス」の下、全従業員の視点に立ち、働く人を大切にする仕組みづくりが欠かせない要件となっています。

「ワーク・ライフ・バランス」がもたらすメリット

ワーク・ライフ・バランスがもたらすメリットとして、以下が考えられます。

  • 従業員の心身の健康状態の改善
  • 取り組みの過程で行われる業務の見直し
  • 働き方に対する意識の改善
  • 企業のイメージアップ

長時間労働による疲労の蓄積は、働く人を疲弊させ、健康障害やメンタルヘルス不全が増大し、モラル低下やコミュニケーション不足、仕事上のミスの増加など、さまざまな弊害をもたらします。このようなマイナス要因を取り除くために、「ワーク・ライフ・バランス」を意識した取り組みは大変有効です。(※)

代表的な取り組み例としては、「業務の進め方の見直しを図る」「時間制約の中でメリハリのある働き方に努める」「育児・介護を必要とする人々が継続して働き続くことのできるために制度・風土を整える」などが挙げられます。このような「ワーク・ライフ・バランス」への支援は従業員の生活を充実させ、仕事の生産性を高めるなど、個人と企業双方に大きなメリットをもたらします。

企業が「ワーク・ライフ・バランス」に取り組むことで、「優秀な人材の獲得(新規採用者の量・質の向上)」「優秀な人材の定着(退職率の低下)」「モチベーションの向上(従業員満足度の向上)」「業務改善による効率アップ(時間外労働時間の減少)」「メンタルヘルスの向上(心身の健康度のアップ、長期休職率の低下)」など、働く人に関する多くのことを実現できます。また、「企業のイメージアップ(働く人に配慮した経営を実践している企業として社会的認知度の向上)」にもつながるため、生産性向上、業績アップ、競争力のさらなる強化などの効果・効用も期待できます。

人事戦略として不可欠な「ワーク・ライフ・バランス」

企業が今後とも競争力を維持し、成長していくには、付加価値の高い商品やサービスを創り出していかなくてはなりません。そのためには多様な価値観を醸成し、新しいモノを創り出す組織風土への変革、そして組織のイノベーションに取り組む必要があります。このような背景から、一人ひとりの働き方を見直し、「ワーク・ライフ・バランス」の考え方を人材活用(マネジメント)に組み入れ、従業員の能力や意欲を高めて、生産性を向上させていく取り組みが欠かせません。

特に世の中全体が大きな転換期を迎えている昨今、マネジメントのあり方そのものが、組織に軸を置いた仕組みからの脱却を求められています。いま重要視されるのは、個と組織の調和に軸足を置いた視点。個を認め、個に配慮した方向へのマネジメントシフトが求められているのです。これから組織全体の創造力を高めていくためにも、働く人々の意欲と能力を高め、一人ひとりがいきいきとコミットできる組織を目指していく必要があります。そこでは、人事戦略の視点からの「ワーク・ライフ・バランス」への取り組みが不可欠となっています。

3. 「ワーク・ライフ・バランス」導入のフレームワーク

「ワーク・ライフ・バランス」導入の手順・ポイント

ビジネスにおけるプロジェクトでは、計画を立てて実行し、その結果を評価・検証。必要な場合には計画・行動を改善・修正した後、目標に向かう、というパターンが一般的です。いわゆる「PDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクル」と呼ばれるものですが、これは、「ワーク・ライフ・バランス」においても同様です。実際、成功している企業の多くは「PDCAサイクル」を導入しています。以下、各々のサイクルにおけるポイントを記します。

(1)計画(Plan):達成基準を明確化する

1.情報の収集 ・計画を立てる前に、綿密に準備する必要があります。まずは、質の高い情報を入手することからスタート。収集する情報は、「ワーク・ライフ・バランスの総論」「関連する法令」「国や自治体の取り組み」「他社事例」などです。
2.自社の現状把握 ・取り組み前と取り組み後(ビフォー・アフター)を比較して課題を抽出するためには、取り組み前の現状把握が不可欠。把握する内容は、「制度・体制といった企業の視点によるハード面」「認知・利用といった従業員の視点によるソフト面」「その両方の視点によるパフォーマンス面」となります。
3.目的・目標の明確化 ・「ワーク・ライフ・バランス」を推進する目的と、全社目標を明確にします。そして、経営トップにコミットしてもらいます。
4.推進体制の整備 ・「ワーク・ライフ・バランス」を推進するための体制を整備します。「推進委員会」の下、事務局を置き、全体管理、社内調整、調査実施と分析、制度・施策の立案・実施、労働組合との連携、情報収集などを行います。
5.計画の策定 ・目標を達成するための具体的な手順(設定期間、設定・達成する主体、達成する内容)を決めます。計画の内容については、達成基準を明確にすることが重要です。その際、最終的な結果だけではなく、プロセスに関する目標も重要です。「ワーク・ライフ・バランス」の成果は、従業員のさまざまな活動(プロセス)によって生み出されるものだからです。

(2)実行(Do):モチベーション管理の下、「お互い様」風土を醸成する

1.社内への告知 ・実行するに当たっては、社内への告知が不可欠です。社内報、ポスター、小冊子、イントラネットなどをはじめ、従業員研修・セミナー・勉強会、外部者を招いた講習会など、さまざまな広報手段を組み合わせ、周知・徹底します。
・制度の告知をした後、社内における制度の利用を向上させます。啓発活動を行うと同時に、情報収集についても継続して行います。
2.モチベーションのコントロール ・「ワーク・ライフ・バランス」の取り組みは、時間のかかるプロジェクトです。成果を出していくには、メンバーのモチベーション管理(維持)が不可欠。そのため、振り返り・フィードバックが大変重要です。例えば「定性アンケート」を使って、変化の状況をチェック・把握し、社内に向けて発信していくことが有効です。あるいは、意見交換の場を設けることなども効果的です。
3.制度を活用できるマネジメントの検討 ・「ワーク・ライフ・バランス」に関する制度の利用を促進するには、周囲への遠慮が制度利用の妨げとならないようにすること。「特定の人のものではなく、全員が対象である」という理解の促進、「お互い様」風土の醸成、全員を対象とする具体的な施策が必要です。
4.男性従業員の意識改革 ・「ワーク・ライフ・バランス」は育児や女性といった特定の理由や個人のみを対象とするものではありません。女性従業員に対する支援策と合わせ、男性従業員の意識と行動を変容させ、男性の「ワーク・ライフ・バランス」を推進することがポイントです。

(3)評価・検証(Check):離職率、残業時間など、定量的な変化を確認する

1.客観的な評価・検証 ・計画を実行したら、しかるべきタイミングでその結果を評価・検証する必要があります。一般的には、1年ごとに短期目標の達成度を、客観的な基準の下で評価します。
・まずは、定量的な変化の確認です。例えば離職率、残業時間の変化、休業からの復職率、女性管理職比率、新卒採用・中途採用の充足率など。目標数値を掲げている場合は、その達成度を確認します。必要に応じて、現場の巡回や従業員インタビューを行い、振り返り作業を行います。さらには、モチベーションの向上、仕事に対する満足度、職場の人間関係、ストレスといった項目の確認も重要です。
2.報告書の作成 ・取り組みと変化の結果を報告書にまとめ、従業員と共有します。その際、定期的に行っているアンケート調査の結果も盛り込むようにします。実際に行ってみると、当初のアンケートでは上位に入らなくても効果の高かった制度・施策など、改善すべきいろいろなことが見えてきます。

(4)改善(Action):結果を踏まえ、ワンランク高い目標とする

1.次の活動計画を考える ・振り返り作業が終わったら、次の行動計画の考案に入ります。結果を踏まえ、ワンランク高い目標を定め、行動計画に入れていきます。その際、「これまでの取り組みを継続する必要性」「新たに見つかった課題に対する必要性」という双方の視点を織り交ぜ、検討するといいでしょう。また、先進的な他社事例を研究し、今後、考えられる課題と対処法などに向けた参考とします。
2.組織体制の見直し・変更 ・当初、設けられたプロジェクトチームは、PDCAサイクルが自然と回り出すまでのモーター役を担う存在と言えます。一度回り始めたら常設部門にするか、人事部の中に吸収して担当者を置くなど、組織変更についても考える必要があります。

導入する際の留意点

「ワーク・ライフ・バランス」を推進していくに当たり、以下の点に注意する必要があります。

  • 良い計画を立てるには、多くの情報が必要である
  • 情報に基づいて、目的と目標を具体化する
  • サイクルが一巡するごとに、新しいステージへと進化させていく

例えば、経営トップから「ワーク・ライフ・バランス」を推進してほしいと指示された場合、いきなり計画を立てるのではなく、目的は何か、具体的にどうなったら成功なのかなどを、明確にすることが重要です。さらに、毎回同じレベルで取り組むのではなく、より高い目標を目指して、継続的に進化させていくことが必要です。

どのような改革でも共通することですが、「ワーク・ライフ・バランス」の施策も、一度導入すれば完了するわけではありません。何度もこのサイクルを回しながら、徐々に浸透、定着させていくことが大切です。

4. 「ワーク・ライフ・バランス」推進の課題と今後の展開

今後、「ワーク・ライフ・バランス」を推進していくための課題とは何でしょうか。また、実効性の高い成果を得るためには、どのような対応を心掛けていけばいいのでしょうか。

個別対応によるマネジメントの複雑化

「ワーク・ライフ・バランス」を推進することで、従業員のモチベーションや組織への帰属意識を高め、業績・生産性向上へと結び付けていくことが、これからも重要な課題であることに変わりはありません。そのためにも、「ワーク・ライフ・バランス」を経営全体の課題として位置付け、組織体制の整備・見直しを積極的に行う必要があります。

ところが、現場を担う管理職の場合、時間や勤務場所に柔軟な制度が取り入れられることによって、マネジメントが複雑になることは否めません。また、「ワーク・ライフ・バランス」を導入することが職場全体の成果や生産性向上には必ずしも結び付かないのではないか、という意識を持つ人も多く、なかなか現場の管理職に受け入れられないのが実状です。このような状況下では、現場における「ワーク・ライフ・バランス」への理解と実践は進みません。

最近の企業の取り組み事例を見ると、長時間労働から生じるメンタルヘルスの問題や集中力の低下によるミスの発生度合いに対する対策として、「ワーク・ライフ・バランス」に取り組むケースが増えています。これらの企業では、単に時間管理の側面だけを意識するのではなく、現在抱えている職場での問題点を洗い出し、その課題解決に向けた対応策として、「ワーク・ライフ・バランス」の発想を取り入れているのが大きな特徴。さらに、「ワーク・ライフ・バランス」の取り組みを進めていく中で、職場全体の業務内容や仕事の進め方を見直すきっかけにもなっているようです。「ワーク・ライフ・バランスを導入すること」を至上命題としてしまうのではなく、あくまで自社の課題解決のために、「ワーク・ライフ・バランスは将来への投資である」という発想の転換を行うことが、現場の管理職にとって必要なことではないでしょうか。

企業と働く人の「Win-Winの関係」をどう築いていくか

言うまでもなく、会社経営では効率性が重視されます。そこでは全体最適の発想、あるいは最大公約数による運用やシステムに行き着くのが、これまでの常識でした。なぜなら、多様な選択肢を用意し、個別管理を行うことは非常に手間暇がかかる作業であり、業務負荷が増大することになるからです。しかしダイバーシティが強く求められる昨今、求められる人事管理のあり方はその方向と明らかに異なります。全社一律ではなく、事業部別、部門別、職場別、さらに言えば、個人別の働き方を認めていく方向に進むのは間違いありません

このような個別対応の流れの下、「ワーク・ライフ・バランス」を進めていくには、いかに企業と働く人の「Win-Winの関係」を構築していくかが重要です。できるだけ個人側の働く制約を少なくし、従業員が自分で働き方を選んで自律的に成果を高めていくことで、企業の成長も実現できるようにする。その結果、顧客価値や事業価値も高まり、イノベーションを生むことが可能になります。単に働き方を変え残業時間を減らすことではなく、このような姿こそ、これからの「ワーク・ライフ・バランス」の目指すゴールといえるでしょう。企業にとって「ワーク・ライフ・バランス」への取り組みは「コスト」ではなく将来への「投資」であり、長期的な「成長・発展」へとつながっていくことを忘れてはなりません。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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