選考時の前職収入虚偽申告について
	直近で入社された方について、今回の年末調整における前職の源泉徴収票にて、選考時に当社が本人より申告を受けていた年収よりも、大幅に低い収入額であることが判明しました(月額換算およびその他課税支給額の内容まで確認済みです)。
 
 当社では選考において、本人の申告に基づき月例給与額を決定しておりますが、結果として当社の想定額に対し、一定の上乗せを得る形で入社に至っており、仮に正直に申告されていれば、当該上乗せは9割9分ございませんでした。
 
  事実が判明した以上、本人と話し合いをした上で給与額の調整(当初想定額への減額)を図りたいと考えますが、それにあたっての根拠をどのように持たせるか思案しており、懲戒規定を適用したり、あるいは採用選考時の虚偽申告として、試用期間満了をもっての雇い止めも視野に入れております。
 
 一般的に、このような事例における対処法について、ご教示いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。    
投稿日:2025/10/17 17:57 ID:QA-0159641
- 春風亭さん
 - 東京都/情報サービス・インターネット関連(企業規模 101~300人)
 
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
変更解約告知
                 以下、回答いたします。
 
 (1)「本人と話し合いをした上で給与額の調整(当初想定額への減額)を図りたいと考えます」とのことです。そうであるならば、本件は、変更解約告知「使用者が労働者に労働条件の変更を申し込み、これが拒否された場合には労働者を解雇する」に関連するものと認識されます。
 
 (2)裁判例(スカンジナビア航空事件 東京地決 平成7年4月13日)では、この変更解約告知の要件として、次の全てを充たす場合には、「会社は新契約締結の申込みに応じない労働者を解雇することができるものと解するのが相当である」旨としています。
 1)労働者の職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の労働条件の変更が会社業務の運営にとって必要不可欠であること。
 2)その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていること。
 3)労働条件の変更をともなう新契約締結の申込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足りるやむを得ないものと認められること。
 4)解雇を回避するための努力が十分に尽くされていること。
 
 (3)本件であれば、当該労働者から虚偽申告の経緯・理由を聴取したうえで、上記(2)1)~3)については、会社秩序(賃金体系)の維持という観点から必要である旨を丁寧に説明し主張なされることが考えられます。また、4)に関しては、上記の聴取に基づき、労働者にとって真に必要であり、かつ会社において対応が可能なものがないか検討を尽くすことが考えられます。                
投稿日:2025/10/17 19:04 ID:QA-0159642
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
                次の通り、ご回答申し上げます。
 1. 問題の構造整理
 観点→内容
 発端→年末調整の源泉徴収票により、選考時申告の前職年収が虚偽であったと判明
 虚偽の影響→会社がその申告をもとに給与額を決定(虚偽申告により上乗せ獲得)
 想定される対応→(1)給与減額調整(2)懲戒処分(3)試用期間中の本採用拒否(雇止め)
 主要リスク→一方的減額は労働契約法第9条違反/懲戒解雇は相当性欠如による無効リスク
 
 2.法的整理:虚偽申告=「経歴詐称」に該当するか
 (1)経歴詐称とは
 経歴詐称とは、採用時に重要な経歴・資格・職歴等を偽って申告し、会社が誤認により採用した場合を指します。
 過去の裁判例(例:日本電建事件・東京地裁昭和55年10月29日判決)では、
 採用の判断に重大な影響を与える事項を偽っていた場合には、懲戒解雇も有効とされた。
 一方で、
 単に「前職の給与額を多めに申告した」というだけでは、
 職務遂行能力や適性に直接関係する事項ではないため、
 懲戒・解雇まで正当化できるとは限りません。
 
 3.対応方針の選択肢
 (1)給与の減額(調整)を検討する場合
 給与の一方的減額は労働契約法第9条(不利益変更禁止)に抵触します。
 したがって、本人の同意なくしては減額できません。
 だし、以下の条件を整えれば、合理的な給与改定(合意変更)として成立する可能性があります。
 
 ・実務的手順
 
 事実確認(本人からの事情聴取を実施)
  → 「申告金額に誤りがあった理由」「意図的か否か」を確認
 会社側の不利益影響を説明
  → 「申告内容を信頼して給与を設定した」「実態が異なれば給与設定の前提が崩れる」
 合意による調整を提案
  → 「入社時の想定水準に戻す」旨の説明文書を提示し、本人署名による同意書を取得
 
 (2)懲戒処分・試用期間中の雇止めを検討する場合
  試用期間中であれば「本採用拒否」も選択肢
 試用期間中であれば、労働契約上は「解約権留保付労働契約」にあたり、
 通常より広い解約権が認められます(最判昭和48年12月12日 三菱樹脂事件)。
 ただし、それでも「客観的に合理的理由」が必要であり、
 「虚偽申告が会社の採用判断に重大な影響を与えた」ことを証明する必要があります。
 ・判断のポイント
 判断要素→検討内容
 虚偽の程度→故意・重大な乖離があるか(誤差数%ではなく明確な虚偽)
 採用判断への影響→虚偽申告がなければ採用しなかった/待遇を大きく変えたと説明できるか
 弁明の機会→本人に説明・反論の機会を与えたか
 試用期間内か否か→試用中なら本採用拒否、満了後なら懲戒または配置転換等
 → 試用期間中であれば「適格性を欠く」として**本採用拒否(雇止め)**も十分に現実的。
 → 試用期間後なら「戒告・減給等の軽処分+給与協議」が妥当。
 
 (3)懲戒処分の可否
 懲戒処分(譴責・減給・懲戒解雇)を行う場合は、
 「就業規則に明記されているか」が大前提です。
 【例】
 「採用選考時に虚偽の申告をし、会社を欺いたとき」→ 懲戒解雇事由
 「虚偽の報告または不正な申告により不当な利益を得たとき」→ 懲戒処分事由
 これに該当すれば、戒告・減給処分までは十分正当化できますが、
 懲戒解雇は最終手段であり、
 「虚偽の程度」「故意」「採用判断への影響」を慎重に確認する必要があります。
 
 (4) 実務対応ステップの推奨順序
 段階→対応内容
 1.年末調整の源泉徴収票をもとに事実確認(人事部内で)
 2.本人にヒアリング(申告経緯・意図確認・記録化)
 3.「会社の信頼関係を損なう行為」である旨を説明
 4.合意による給与調整を提案(書面同意取得)
 5.改善・説明拒否や悪質性が高い場合、懲戒委員会等で処分検討
 6.試用期間中であれば「本採用拒否」も選択肢に入れる
 7. 参考:裁判例の傾向
 川崎製鉄事件(大阪地裁昭和53年4月27日)
  → 虚偽経歴申告が職務遂行に重大な影響を及ぼす場合、懲戒解雇有効
 積水化学工業事件(大阪地裁昭和50年12月19日)
  → 虚偽申告が軽微で、実際の職務能力に影響しない場合、懲戒処分は無効
 つまり、前職年収の虚偽申告のみでは、
 「解雇・懲戒解雇」は厳しいが、
 「試用期間中の本採用拒否」または「減給を含む懲戒処分+給与調整」は十分現実的です。
 
 6.まとめ
 項目→実務的評価
 虚偽申告の法的位置づけ→経歴詐称に準ずるが、業務適性に直結しないため限定的
 一方的減額→不利益変更として違法。本人同意により調整可
 試用期間中→合理的理由あれば本採用拒否可能
 懲戒処分→戒告・減給は可、懲戒解雇は慎重
 推奨方針→(1)事実確認+本人説明→(2)給与調整の同意→(3)必要に応じ懲戒処分または本採用拒否
 以上です。よろしくお願いいたします。                
投稿日:2025/10/17 19:20 ID:QA-0159643
プロフェッショナルからの回答
対応
                こちらは人事相談ですので法律的な判断については必ず弁護士など、専門家の確認を受けて下さい。
 人事的に見るなら、まず中途採用で前職収入は参考にはしますが、自動的に連動するという仕組みはあまり聞いたことがありません。キャリアアップ、年収増を目指して転職するのが普通なので、前職に縛られるようでは、有能な人材にとっての転職のメリットが減ってしまいます。
 選考過程で能力を見定め、その評価で年収提示するというのが、あるべき採用と考えます。(前収も参考程度にはします)
 
 とはいえ人事制度はあくまで貴社の経営方針であり、前職に連動する給与体系であることが、募集段階から明確に示され、雇用契約においても前職の正確な年収を申告することが前提となっているなど、証拠を固める責任は貴社にあるでしょう。
 そこまで厳格な連動であれば、源泉徴収票など、前職収入を証明する書類の提出を義務付けるといった証拠を取るべきだと思います。
 
 今回の採用において、どこまで契約書や入社時の宣誓書など証拠として固められているかで、会社の対応も変わると思われます。口頭のみなどではなく、前収入申告の証拠が必要なことを伝え、それを確認して宣誓して提出をしていたというような証拠があれば、詐欺などに問える可能性もあるかも知れません。
 
 相手が非を詫びるなど宥和的であれば、話し合って給与変更も選択肢でしょう。                
投稿日:2025/10/17 20:32 ID:QA-0159645
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
                ご利用頂き有難うございます。
 
 ご相談の件ですが、いわゆる虚偽申告で一種の不正行為にも当たりますので、正しい内容に基づき給与を決め直されるのは勿論、通常であれば就業規則の規定に基づき制裁対象となるものといえます。
 
 恐らく該当する制裁事由が定められているはずですし、文面内容を拝見する限り悪質性が高いものといえますので、一応弁明等の手続は採られる必要がございますが、特に配慮すべき事情もなければ試用期間満了で解雇または解雇予告され30日後の解雇が妥当といえるでしょう。                
投稿日:2025/10/18 19:13 ID:QA-0159651
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
                ご質問について、回答いたします。
 
 労働契約は、一度成立すると、会社側から一方的に労働者に不利益な変更を
 加えること(給与の減額など)は厳しく制限されます。また、解雇(試用期間
 満了時の雇い止めを含む)も客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が
 必要な為、慎重な対応が必要です。
 
 まずは話し合いが必要でしょう。
 本人に事実を伝え、虚偽申告をした理由や事実の認識を確認することです。
 源泉徴収票の金額と申告された年収を具体的に示し、乖離の原因を確認します。
 その上で、本人からの説明や態度から、悪質性や会社への信頼を裏切った程度を
 判断します。
 
 事実を基に、虚偽の申告がなければ現在の給与額は決定されなかったことを説明
 し、当初の想定額への減額について本人の同意を求めます。合意が得られた場合
 は、合意書を作成し、本人の自由な意思に基づくものであることを明確にしま
 す。重要な点として、合意か退職か二択を前提とした話し方はしないことです。
 後程、紛争に発展した際、退職の強要とされるリスクが生じます。
 
 同意が得られない場合は、貴社の懲戒規定にあてはめますが、就業規則に、
 採用選考時の虚偽申告が懲戒事由として規定なければ、解雇・雇い止めは
 重すぎるものとして、不当な懲戒処分とされるリスクも高いでしょう。
 
 紛争に発展した際は、本人との話し合い時の悪質性や反省度合なども非常に
 重要な判断要素となりますので、話し合い時の記録はメモ・録音等をしっかり
 されることが不可欠となります。                
投稿日:2025/10/20 07:47 ID:QA-0159664
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
                経歴詐称などは、裁判例でも解雇有効となるケースが多いといえますが、
 
 前職収入虚偽申告は、会社にも問題がありますので、微妙です。
 
 まず、前職の収入で給与を決定するということにもリスクが伴いますし、
 あまり合理性があるともいえません。
 
 仮に前職収入で給与を決定すると明確にしているのであれば、
 事前に源泉徴収票や給与明細などの提示を求めるべきでしょう。
 
 よく本人と話し合い、減額について同意するのであれば、
 減額ということになります。
 
 勤怠等も芳しくないのであれば、退職勧奨という選択肢もあります。                
投稿日:2025/10/20 14:47 ID:QA-0159697
    回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
    回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
    ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
    
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