選考・面接
選考・面接とは?
選考とは、面接から採用試験・適性検査などにいたるまで、候補者と企業との適切なマッチングを目指して行われます。厚生労働省が提示している「公正な選考」を踏まえつつ、企業が求める人材を獲得するために、どのような選考実施するのかを決めることが大切です。
1.選考とは
企業の採用活動における「選考」は、求人に応募した人の中から適切な人材を選び、採用するプロセスを指します。さまざまな手法を通じて、応募者の能力や適性、志望度などを総合的に評価し、企業に貢献できる人材を見極めます。適切な選考ができれば、自社の人材採用の質を向上させることが可能です。選考を通じて入社後活躍のイメージを醸成させることができれば、早期離職につながるミスマッチの解消も期待できます。
2.採用における選考の種類と特徴
新卒採用、中途採用にかかわらず、独自の選考試験を実施する企業が増えています。しかし、自社に合った選考を実施しないと、選考を行う従業員の工数が増えたり、入社後のミスマッチが発生したりすることも考えられます。それぞれの選考の特徴を知り、適切な選考を行うことは、採用活動成功の近道です。
書類選考
選考初期のタイミングで行われるのが書類選考です。書類選考では、採用企業が応募者の提出した書類を審査し、募集要件を満たしているかどうかを見極めます。
一般的な書類(履歴書、職務経歴書、ポートフォリオ)
一般的な書類は、履歴書、職務経歴書、ポートフォリオなどです。企業はこれらの書類を基に、応募者の経歴や能力、適性を評価し、合否を決定します。
履歴書
応募者の個人情報や学歴、職務経歴、取得している資格などを把握するための書類です。応募者の基本情報を確認し、募集要件や役割に適合しているかどうかを判断します。職歴や勤務期間を確認し、どのようなキャリアをたどってきたのかを読み取ることが大切です。
職務経歴書
職務経歴書は、応募者の職務経験や、担当業務・プロジェクト、成果などを詳細に記載する書類です。履歴書よりも細かな情報が記されており、中途採用でよく使われます。応募者がどのような業務を行い、どのような成果を出してきたのかを確認し、業務遂行力・問題解決力・プロジェクト推進力・周囲とのコミュニケーション力などを判断します。
ポートフォリオ
ポートフォリオとは、過去に応募者が制作したものが提示された作品集で、デザイン関連の求人をする場合に提出を求めます。作品に表れているデザインスキルや表現力を評価し、スキル・能力の判断材料にします。
エントリーシート(ES)
エントリーシートは、職務経歴書を作成させることが難しい新卒採用でよく用いられる書類です。履歴書には表れない応募者の個性や特徴を把握することを目的としています。質問項目の自由度は高く、自己PRや志望動機の他、「学生時代に力を入れたこと(=ガクチカ)」「他人からどのような印象を持たれているか」など多種多様です。
動画
近年では、動画を選考に活用する動きも広まっています。動画を活用した選考では、応募者に、特定のテーマでビデオ撮影をしてもらいます。内容は、自己紹介やプレゼンテーション、指定されたテーマ・課題への回答が一般的です。応募者の発想力や論理的思考、プレゼンテーションスキルを評価することができます。
筆記試験
筆記試験は、書類選考や面接ではわからない、応募者の知識や能力を評価するために実施されます。業務知識やスキルだけではなく、一般常識やビジネススキルなど、企業の求める要素に基づいて、試験内容が選定されます。
適性検査
適性検査は、応募者の特定の能力や性格特性、職業適性などを客観的に評価するための手法です。潜在的能力の測定や、従業員の性格の把握、自社との適合度の検討などの目的で用いられます。具体的には、以下のような項目を測定します。
- 言語能力
- 非言語能力(数的能力、論理的思考、図形認知など)
- 性格検査
- 一般常識
適性検査は、選考の判断材料だけではなく、配属先決定にも活用されます。適性検査の信頼性と妥当性の観点から、全てを鵜呑みにせずに一つの要素として用いることが重要です。
語学力テスト
採用における語学力テストは、応募者の言語スキルやコミュニケーション能力を判断するために行います。主に、リーディング(読解)、リスニング(聴解)、スピーキング(口頭表現)、ライティング(文章表現)などを総合的に判断します。
小論文
小論文とは、与えられたテーマや課題に対して、一定の文章量で自分の意見や考えを述べるもので、一部の企業が採用しています。テーマや問題は、企業の業界や職種、職務に関連するもの、また、個人の考え方や思考を判断するものが一般的です。小論文は、応募者の表現力だけではなく、論理的思考、問題解決力などを評価することができます。企業によっては業界知識や世論などをテーマにする場合もあり、専門性や志望度、意欲を評価することも可能です。
実技試験
実技試験は、応募者が実際の業務や職務に即した課題・タスクを与えられ、一定の時間内で実施する試験を指します。試験内容は応募先企業や職種によって異なります。例えば、プログラミング職におけるコーディングテスト、デザインやコピーライティング職における制作課題、営業職におけるプレゼンテーションなどが挙げられます。また、実際のサービスや商品、ホームページを見て改善提案を行うといった課題もあります。実技試験を通じて、即戦力として活躍できるかどうかを判断します。
グループディスカッション・グループワーク
グループディスカッション・グループワークは、応募者を数名のチームに分けて、課題やテーマを与え、時間内に結論を出させる選考方法です。グループディスカッションは、トピックやテーマについて、グループ内で意見を交換し合い、議論すること。グループワークは、実際の業務に近しい課題やプロジェクトに取り組み、協力して完成させたり解決策を見つけたりすることです。ディベートのように二手に分かれて議論を行う場合もあります。
どちらも主な目的は、参加者のコミュニケーション能力や協調性、リーダーシップおよびフォロワーシップ能力、問題解決能力などを見極めることです。実際の仕事において、応募者がどのような役回りをするのか、自分の役割を全うできるかといった視点が重要です。
面接試験
面接試験とは、企業が応募者と直接コミュニケーションをとることで、書類だけでは判断できない人間性や能力、性格、思考などを判断する手法です。企業が応募者に直接アピールできる場としても活用されており、相互に評価・情報交換を行うことが可能です。これまでは、応募者が企業に訪問し、対面で実施することが一般的でしたが、現在はコロナ禍の影響もあり、オンライン面接も広く実施されています。
面接には、「構造化面接」と「非構造化面接」の2種類があります。構造化面接とは、事前に質問項目や評価基準を決めておき、項目に沿って質問を行う形式です。すべての応募者に同じ質問をするため、比較が容易で評価しやすい点が特徴です。一方、非構造化面接とは、その場の雰囲気や会話に応じて、自由に質問する形式です。自由度が高く、実施しやすい形式ですが、面接官の力量によって評価が左右されることがあります。どちらの手法でも、応募者を正しく評価するために、ある程度の面接官トレーニングが必要です。
集団面接や一次面接、最終面接などの選考フェーズに応じて、どの程度構造化するか、逆にどのぐらい面接官の自由度を与えるのかを判断し、面接を行うことが重要です。
集団面接
集団面接は、複数の応募者を同時に面接する手法です。全員に同じ質問をすることで、応募者のスキルや特性を比較しやすくなります。また、短い時間で一度に複数人と面接できるため、効率よく選考を行うことができます。また、他の応募者への対応や集団の中でのふるまいなど、個人面接では観察できないことを評価できます。
個人面接
個人面接とは、面接官と応募者の一対一、もしくは複数の面接官と応募者一人の間で行われる面接のことです。集団面接よりも時間はかかりますが、一人との対話に集中できるため、じっくりと人柄を見極めることができます。応募者のことを深く知り、ミスマッチを防ぐという点から、中途採用や新卒採用の二次選考以降で用いられることが多いです。
リファレンスチェック
企業が応募者の書類や面接で得た情報を裏付けるために、前職の上司や同僚、友人などにヒアリングやアンケートをして確認することで、主に中途採用で行われます。応募者情報の信頼性の確認だけではなく、人柄や働くスタンスなどに関して、客観的な意見を収集することができます。また、入社後のミスマッチ防止にも効果があります。
実際にリファレンスチェックを実施する場合は、応募者自身に同意を得なければなりません。同意なく勝手に実施してしまうと、個人情報保護法に抵触するため注意が必要です。同意を得るだけでなく、応募者が望まない人に情報が伝わることがないよう、実施する際は配慮が必要です。
3. 公正な選考を行うためのポイント
厚生労働省は、就職の機会均等を確保するため「公正な採用選考の基本」を提唱しています。これは、企業の採用活動において、応募者の基本的人権を尊重し、適性や能力のみを基準として選考を行うことを求めたものです。
企業は職業安定法(36条)において、採用方法や選考基準、合否の決定など「採用の自由」があるとされています。つまり、企業は設定した採用選考を行い、選考基準に満たない応募者を不合格にすることが認められています。一方で、日本国憲法(第22条)では、「職業選択の自由」を基本的人権の一つとして保障しており、応募者の基本的人権を侵してはいけません。
公正な採用選考の基本
公正な採用選考を行う基本として、厚生労働省は以下の二点を提示しています。
- 応募者に広く門戸を開くこと
- 本人のもつ適性・能力に基づいた採用基準とすること
就職の機会均等を実現するためには、応募条件に合致するすべての人が応募できなければなりません。企業は、応募者が求人職種の職務を遂行できる適性・能力をもっているかどうかを、基準をもって公正に判断する必要があります。本籍地や人種、性別、信条などを理由に不採用にすることはできず、選考において差別をすることは許されません。
採用選考時に配慮すべき事項
厚生労働省によれば、以下のような応募者の適性・能力に関係ない事柄については、応募書類への記載や面接での質問を避けるべきとしています。
本人に関係ない事項 | 本籍・出生地に関すること、家族に関すること、住宅状況に関すること、生活環境・家庭環境などに関すること |
本来自由であるべき事項 | 宗教に関すること、支持政党に関することの把握、人生観・生活信条などに関すること、尊敬する人物に関すること、思想に関すること、労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること、購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること |
この他にも、生活環境を把握するための身元調査や合理的・客観的に必要性が認められない健康診断の実施なども就職差別につながるため適さないとされています。企業が意図していなくても、応募者によっては精神的苦痛と感じ、選考試験に影響を及ぼす可能性があるからです。
4.自社に適した人材を見極めるための選考ポイント
公正な採用選考を行うことは、採用活動の前提です。上述のルールを守ったうえで、自社に適した人材を見極めるために、下記の三点を意識する必要があります。
- 採用コンセプトや採用基準の決定
- 社内体制の確立
- 進捗確認と見直し
採用コンセプトや採用基準を決定する
まずは「自社が求める人物像はどのようなものなのか」「採用にあたってどのような部分を訴求したいのか」など、採用の方向性や採用基準を明確にする必要があります。特に「選考において何を重要視するのか」を言語化しておくことが大切です。
例えば、特定のスキルを有するエンジニアを採用する際は技術試験を行い、活躍している営業人材を採用する際は適性検査を行うなど、必要となる要素が定まっていれば、それを見極めるための選考手法を選ぶことが可能です。必要な要素が可視化されていれば、面接で確認する内容も明確になり、的確に採用選考を実施できるでしょう。
ある程度人材要件を定めたら、採用基準を決めます。具体的には、満たしていなければ不採用とするスクリーニング要件、必須となるMUST要件、あれば優先的に歓迎するWANT要件を設定する考え方があります。これがあれば採用するという合格要件を設定しておけば、面接官の主観や好き嫌いにとらわれることなく、正しく評価することができます。
社内体制を確立し、共有する
採用選考には、社内のさまざまな従業員が関わります。そのため、採用コンセプトや選考基準を共有し、「なぜこのような選考を行うのか、選考を通じて何を評価したいのか」といった背景を説明して、採用について理解を深めてもらう必要があります。そのために、選考担当者に向けた説明会や研修を行うことも効果的です。
随時進捗を確認し、見直しを行う
採用活動は、必ずうまくいくとは限りません。選考フェーズごとに歩留まり(通過率、辞退率など)を確認し、原因は何なのか、どこに不備があるのか、選考は適切なのかを見直すことが大切です。面接で一度に見極めようとしていたところをあえて適性検査を組み合わせてみる。一次面接ではスキルチェック、二次面接では企業マッチング確認など、見定める内容を変更する。このように、選考手法や内容を見直すことも視野に入れて活動することが重要です。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。