転籍後の出向
お世話になります。
少し気になる事があり相談させて頂きたく存じます。
弊社の障がい者雇用の人数が1名不足となり、法定雇用率を達成するため、グループ会社から障がい者手帳をお持ちの従業員を弊社に転籍させ、法定雇用人数を達成させたいと上司より相談がありました。
ただ、上司のお考えは転籍させたあと、元の会社(グループ会社)に出向させてこれまで同様の業務は続けてもらうとのことでした。
転籍させた後、すぐに元居た会社へ出向させることは、問題ないことなのでしょうか?
投稿日:2025/10/10 11:18 ID:QA-0159373
- 人事部採用課さん
- 沖縄県/その他業種(企業規模 11~30人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
ご質問の件、問題があるものと言えます。
今回のケースで問題となるのは、出向目的が障がい者雇用率の算定目的
のみであると判断される可能性です。
調査が入った場合は、以下が適用とされ、問題が生じるリスクがあります。
・厚生労働省のQ&A(障害者雇用率制度関係)より
出向等により、実際に労働の提供を受けている事業主が異なる場合は、
実際に雇用していると認められる事業主が算定の対象となります。
形式的に雇用契約のみが存在する事業主は含めません。
また、出向についても出向する目的は制限されており、以下の4要件以外を
目的とする出向は、労働者供給に該当するとされ、違法な出向となります。
1.労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する
2.経営指導、技術指導の実施
3.職業能力開発の一環として行う
4.企業グループ内の人事交流の一環として行う
投稿日:2025/10/10 12:05 ID:QA-0159374
相談者より
ご回答頂きありがとうございます。
知らないかったでは済まされない問題に発展しそうですので、上長とも共有したいと思います。
投稿日:2025/10/10 16:54 ID:QA-0159387大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
結論から申し上げると、「転籍後にすぐ元の会社へ出向させる」こと自体は形式上は可能ですが、実質的に『名ばかり転籍』となり法的に無効・不当と判断されるリスクが高いため、慎重な対応が必要です。以下で詳しくご説明申し上げます。
1.「転籍」と「出向」の法的な違い
項目→転籍→出向
雇用契約→元の会社との雇用契約を終了し、新しい会社と新たに締結→元の会社との雇用関係を残したまま、出向先で労務提供
雇用主→転籍先の会社→原則、元の会社(ただし労務指揮は出向先)
雇用保険・社会保険→転籍先が主たる保険加入先となる→出向元が加入継続(出向契約による)
障害者雇用率算定上の扱い→転籍先でカウント→出向の場合、原則として出向元でカウント(障害者雇用促進法施行規則第7条)
2.障害者雇用率カウントの観点
厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」では、以下のように明示されています。
「出向労働者は、出向元事業主の雇用する労働者として算定する。ただし、出向契約において出向先が賃金を負担しているなど、雇用関係が出向先に移っていると認められる場合には出向先で算入できる。」
つまり、
転籍後も実態として元会社の指揮命令・業務に従事している場合、出向先(=転籍先)でカウントすることは不適切
実質的には元会社に雇用されているのと同様とみなされる可能性が高い
3.「転籍→即出向」は“偽装転籍”とみなされるリスク
「形式的に転籍させて雇用率の数字だけを満たし、実態は元会社勤務」という場合、
行政から偽装転籍(見せかけの転籍)と判断されるリスクがあります。
・リスクの具体例
障害者雇用率報告(ハローワーク提出)で虚偽記載と判断される可能性
行政指導(是正指導・報告義務)や助成金の返還
実態調査で認定されない → 雇用率未達成の扱い
場合によっては「障害者雇用納付金制度」上の不利益(追加納付)発生
4.対応策・代替案
転籍ではなく出向のままグループ全体での雇用率算定
→ グループ会社全体での「特例子会社」認定制度や「グループ算定特例(障害者雇用促進法第44条の2)」を検討。
グループ全体で雇用率を満たす方法です。
転籍を行う場合
実際に労務提供・管理・人事権を転籍先(御社)が持つこと
賃金支払・人事考課・勤務指示も御社側で実施すること
形だけ出向にしない(例えば、元会社の業務に従事させない)
行政への事前確認
→ ハローワーク(障害者雇用担当)に事前相談すると確実です。
「転籍後、業務はグループ内の他社で行う予定」と正直に伝え、算入可否を確認するのが安全です。
5.まとめ(実務対応方針)
判断軸→対応
転籍後すぐ元の会社で勤務(形式的転籍)→不適切(偽装転籍リスク)
実際に転籍先で労務管理・業務を行う→問題なし
出向状態での雇用率算定→ 原則カウントできない
グループ算定特例の申請→有効な選択肢
もし御社がグループ内で雇用調整したい意図が強い場合は、
「グループ算定特例」を検討することを強くお勧めします。
この制度を利用すれば、出向や実態勤務のままでも雇用率を合算して算入でき、
形式的転籍のリスクを避けることができます。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/10 12:07 ID:QA-0159375
相談者より
ご回答頂きありがとうございます。
まさしく「偽装転籍」となるケースだと思いますので、上長へも情報を共有致します。
投稿日:2025/10/10 16:56 ID:QA-0159388大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、厚生労働省の資料によりますと「雇用する障害者を在籍型出向により他社に出向させる場合には、将来自社内で従事すべき業務に必要な能力の開発等の目的及び当該目的に沿った出向期間等を明確にして行うことが必要」とされています。
さらに、「障害者を雇い入れてすぐにこうした事業者へ出向させる」場合には、職業安定法違反となる「労働者供給に該当することとなる可能性も懸念」されると示されていますので、雇用率達成の目的のみでの形だけの出向については避けるべきといえます。
投稿日:2025/10/10 13:03 ID:QA-0159382
相談者より
ご回答頂きありがとうございます。
「職業安定法違反」となる可能性についてご指摘頂きありがとうございます。
上長とも情報を共有し違反行為とならないよう努めたいと思います。
投稿日:2025/10/10 16:58 ID:QA-0159389大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
雇用率のための出向という意図ととらえられる可能性がきわめて高いのではないでしょうか。さらには職安法の人材供給とみなされるリスクもありそうです。
投稿日:2025/10/10 15:20 ID:QA-0159385
相談者より
ご回答頂きありがとうございます。
雇用率にとらわれて周りが見れていない状況だったかと思います。
慎重に考えて参りたいと思います。
投稿日:2025/10/10 19:48 ID:QA-0159391大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
問題あります。
法の趣旨の反しているからです。
以下、厚生労働省から文章も出ています。
在籍型出向により他の企業が雇用する障害者を受け入れて事業を行う事業者や、
障害者を雇い入れてすぐにこうした事業者へ出向させる企業の例も見られますが、
単に障害者雇用率の達成のみのための形式的な雇用ではないかという指摘を受けるこ
とや、場合によっては労働者供給に該当することとなる可能性も懸念されます。
投稿日:2025/10/10 15:28 ID:QA-0159386
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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