退職者の口座情報に関して
いつもお世話になっております。
お伺いしたくご連絡いたしました。
退職者の個人情報に関しては、以前も出たかと記憶しておりますが
下記の法律の下、保管の義務をしておりますが
労働基準法第109条(記録の保存)において
「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他の労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。」と規定されております。
退職者の口座情報に関しては、いずれの部類に入るものなのでしょうか?
退職の従業員より109条以外にあたる口座情報などはすぐに削除してほしい旨を相談されておりますが、いずれかに抵触するものならば
退職者からの要望を断る必要がございますので、ご教示お願いできればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/09 16:49 ID:QA-0159359
- miya5219さん
- 東京都/旅行・ホテル(企業規模 11~30人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
記録の保存に関して、該当するとすれば、賃金その他となり、振込口座情報に
ついては、明確には定められてはおりません。
個人情報保護法上の観点でも、利用目的が終了した個人情報は、速やかに
消去するよう努めなければならないとされておりますので、今後の利用予定が
無い限り、退職者の要望を受け入れて問題ないと言えるでしょう。
投稿日:2025/10/09 17:47 ID:QA-0159360
相談者より
米倉 徹雄 様
ご回答いただきありがとうございます。
参考にさせていただきます。
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/10 07:42 ID:QA-0159368大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.労働基準法第109条の保存義務の範囲
労基法第109条では、
「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他の労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」
と定めています。
このうち「労働関係に関する重要な書類」とは、
厚生労働省通達(昭和63年1月1日基発1号)などにより、次のようなものが含まれます:
雇用契約書、労働条件通知書
出勤簿、賃金台帳、年次有給休暇管理簿
解雇通知書、退職届、退職証明書の写し
賃金支払い関係書類(振込依頼書、支払明細書 等)
・ポイント:
「賃金その他の労働関係に関する重要な書類」に含まれるのは、
賃金支払の根拠・証拠となる書類 です。
よって「口座情報そのもの」は、法律上独立した保存義務の対象ではありません。
2.口座情報の性質と保存要否
口座情報(金融機関名・支店名・口座番号等)は、
賃金支払いの手続に付随する“支払先情報”であり、
本質的には「支払実績(賃金台帳)」の裏付け情報としてのみ価値を持ちます。
したがって:
区分→保存義務の有無→備考
賃金台帳(支払内容)→あり(3年間)→口座情報自体を含む必要はない
口座情報(通帳番号等)→なし→保存義務なし(個人情報としては要管理)
振込依頼書(賃金支払根拠書類)→あり→記録書類として保存対象。ただし口座番号はマスキング保存可
3.結論
「口座情報そのもの」には法定保存義務はありません。
ただし、「賃金支払関係書類」の一部として含まれている場合には、
その書類全体を3年間保存する義務があります。
4.個人情報保護法の観点(削除義務との関係)
一方、個人情報保護法(令和5年改正後)は以下を定めています。
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を保有してはならない。
(法第19条)
つまり、賃金支払いが完了し、労基法上の保存期間(3年)を過ぎた後は、
合理的な理由なく保管を継続することは違法リスクとなります。
また、本人(退職者)から削除請求があった場合、
事業者は「法令に基づく保存義務がある場合を除き」
合理的範囲で対応する義務があります(法第30条第1項)。
5.両法の整合的運用(実務指針)
実務上は、以下のように整理するのが最も安全です。
区分→取扱方針
(1) 在職中→給与支払・年末調整のため口座情報を保管
(2) 退職直後→最終賃金・賞与・退職金・源泉徴収票送付のため必要期間のみ保管
(3) 退職処理完了後(1~2か月後)→支払実績の記録(賃金台帳)を保存し、口座情報自体は削除
(4) 労基法109条保存期間(3年間)→賃金台帳・支払記録は保存。ただし口座番号等はマスキングまたは削除済で差し支えなし
(5) 保存期間経過後→全削除(個人情報保護法上の「不要情報」)
6.実務の要点
「口座情報そのもの」は、法定保存義務がなく、利用目的終了後は削除が望ましい。
ただし「賃金支払書類(振込依頼書・支払明細)」の保存義務は3年あるため、その間は証跡書類としてマスキング保存が安全。
削除請求が来た場合には、
「賃金支払に関する法定保存期間内であるため、証跡の一部として必要な範囲は保管する」
「口座番号等、本人特定に不要な部分は削除・マスキングする」
という対応方針が合理的です。
7.対応例(社内説明文・本人回答例)
○○様
ご指摘の銀行口座情報については、賃金支払いおよび税務処理がすべて完了しておりますため、
法令上の保存義務のある「賃金台帳」などを除き、口座情報そのものは削除対象となります。
つきましては、最終支払い後○か月経過時点で、当該データを削除いたします。
なお、支払記録(賃金台帳)は労働基準法第109条により3年間保存が義務付けられているため、
その範囲内では氏名等の記録を保有する必要がありますことをご了承ください。
8.まとめ(結論)
観点→法的整理→実務対応
労基法第109条→賃金支払書類を3年保存→口座情報自体は対象外
個人情報保護法→利用目的終了後は削除義務→支払完了後に削除可
退職者からの削除請求→「法令上保存義務のない部分」は削除可能→賃金台帳など保存義務書類は3年間保管
推奨運用→支払処理完了後に口座情報を削除、証跡はマスキング保存→監査・調査対応用に最低限の記録を残す
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/09 18:34 ID:QA-0159361
相談者より
井上 久 様
ご回答ありがとうございました。
詳細理由や回答文例などもいただき
助かりました。
参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/10 07:43 ID:QA-0159369大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
判断
口座情報自体はそこまで必須なものとは思えません。法的規定はないと思いますので、本人の希望に沿うのが無難でしょう。
投稿日:2025/10/09 22:45 ID:QA-0159364
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
退職者の口座情報は、労働関係に関する重要な書類といえるものではありませんし、また、それを3年間も保存しておく必要性も感じられません。
退職者が削除してほしいと望むのであれば、断るための合理的な理由も見当たりません。
要望どおり、柔軟に対応してあげればよろしいでしょう。
投稿日:2025/10/10 06:20 ID:QA-0159366
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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