有給休暇
「有給休暇」とは、多くの場合労働基準法上の「年次有給休暇」を指し、継続勤務期間に応じて労働者に付与される、減給の発生しない休暇制度のことを意味します。有給休暇には略称が用いられることが多く、年休・有給・有休なども同義語です。法令で定められた休暇のため、ルールを正確に把握した上で運用する必要があります。
1. 有給休暇の付与日数・付与タイミング

有給休暇は、労働基準法によって付与する日数やタイミングが定められています。これらは自社で有給休暇を運用する際の基礎となるため、正確に理解しておくことが重要です。
労働基準法で定められた内容は、有給休暇に関する最低ラインです。法定以上の有給休暇の日数を付与するなど、従業員が有利になるようなルールを独自に定めることは問題ありません。
入社年次によって付与日数が変わる
有給休暇の付与日数は、労働基準法によって定められています。勤続年数(入社年次)によって付与日数が変わるため、従業員一人ひとりに合わせた管理が必要です。「通常の労働者」における勤続年数ごとの付与日数は、以下のとおりです。なお、パート・アルバイトにも付与されますが、具体的な日数は後述します。
勤続年数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
有給の付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
上記の表からわかるように、勤続年数の経過に比例して有給休暇の付与日数も増加します。
以下は、付与日数の具体例です。
【例1】
→入社日から6ヵ月経過した2019年10月1日に10日の有給休暇を付与
→入社日から1年6ヵ月経過した2020年10月1日に11日の有給休暇を付与
【例2】
→入社日から6ヵ月経過した2020年5月15日に10日の有給休暇を付与
→入社日から1年6ヵ月経過した2021年5月15日に11日の有給休暇を付与
【例3】
→10日(入社から6ヵ月後の付与日数)-5日(取得日数)+11日(入社から1年6ヵ月後の付与日数)=16日
有給休暇の付与タイミング
有給休暇は、初めて付与された日が「基準日」となります。法律どおりに有給休暇を運用する場合、入社から6ヵ月経過して10日の有給休暇が付与された日が基準日です。
有給休暇を付与するタイミングも、労働基準法で定められています。具体的には、基準日までに以下の条件を満たしている場合に有給休暇が付与されます。
【有給休暇が付与される条件】
・6ヵ月間の全労働日のうち8割以上出勤している
有給休暇の付与条件を判断する際は、以下のポイントに注意が必要です。
【有給休暇を付与する際の注意点】
・「8割以上出勤」を判断する際は、業務上のけがや病気による休業期間や法律に基づく産前産後の休業期間、育児休業・介護休業の期間は出勤したものとして取り扱う
・企業側の都合で休業した場合は、原則として算定期間の対象外(全労働日から除く)とする
中途入社も、付与タイミングの取り扱いは同様です。中途入社の従業員は、他の従業員と付与するタイミングがずれて管理が煩雑になりやすいので、注意しなければなりません。
上記のタイミングよりも前に有給休暇を付与することも可能です。企業によっては、「入社日に付与」「入社から3ヵ月経過後に付与」など、法律よりも従業員が有利になるように設定している場合があります。ただし、有給休暇の初回付与日が基準日となるため注意が必要です。例えば、入社日に有給休暇を付与した場合、入社日が基準日となります。
また、条件を満たす従業員に対し、入社から6ヵ月後以降に遅らせて有給休暇を付与することは認められません。上記のタイミングは、あくまで最低ラインです。
参考
年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省
パート・アルバイトにも付与される(比例付与)
有給休暇は、パート・アルバイトにも付与されます。パートやアルバイトなどの所定労働日数が少ない従業員のうち、以下の二つの条件に該当する者には、有給休暇が比例付与されます(労働基準法第39条)。
【比例付与の対象となる条件】
・週所定労働時間が30時間未満
有給休暇の比例付与は、通常の従業員と比べて考え方が複雑です。週所定労働日数や1年間の所定労働日数が多くなるのに比例して、付与される有給休暇日も増える仕組みとなっています。
具体的な付与日数は、以下のとおりです。

出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 3)|厚生労働省
※表中の太枠で囲まれている部分は、有給休暇の年5日取得義務の対象です。
具体例とともに、パート・アルバイトにおける有給休暇の付与日数を確認していきます。
【例1】
→入社日から6ヵ月経過した2019年10月1日に5日の有給休暇を付与
→入社日から1年6ヵ月が経過した2020年10月1日に6日の有給休暇を付与
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 3~4)|厚生労働省
【例2】
→入社日から6ヵ月経過した令和3年4月1日に3日の有給休暇を付与
→入社日から1年6ヵ月が経過した令和4年4月1日に4日の有給休暇を付与
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 3~4)|厚生労働省
契約上の週所定労働日数以上の勤務が常態化しているケースもあるでしょう。実質的な所定労働日数が算出しづらいケースも考えられるので、基準日前の実績を考慮し、実際に勤務している労働日数に合わせて付与日数を算定するのがよいでしょう。
【例3】
→「週所定労働日数4日」を基準として有給休暇を付与する
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 3~4)|厚生労働省
原則は契約上の所定労働日を基準として付与日数を算定しますが、勤務実績とかけはなれていると従業員にとって不利益となってしまいます。従業員に有給休暇を比例付与する場合、まずは対象従業員の勤務実態を把握することが重要です。
斉一的取扱いとは
ここまで解説してきたとおり、従業員一人ひとりの勤続年数によって、有給休暇の付与日数は異なります。有給休暇の管理に当たっては、どの従業員に、いつまでに何日付与するか把握するのが難しくなりがちです。
そこで有給休暇を効率的に管理する方法として、有給休暇の「斉一的取扱い」があります。斉一的取扱いとは、基準日を前倒しにすることで付与日を統一する方法で、対象従業員に同時に有給休暇を付与することです。特に、従業員が多い企業や中途採用が活発な企業には効果が大きいでしょう。
例えば、「採用した日が月の途中であったとしても、同一月に採用した従業員の基準日を月の初めに統一する」「有給休暇を付与するタイミングを全従業員で統一する」などの方法があります。
【例】
・全従業員の有給休暇付与日を年度初めの4月1日に統一する
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 11)|厚生労働省
斉一的取扱いを行う際は、法定の有給休暇の条件を下回らないようにする必要があります。例えば、以下のケースは法律違反となります。
【斉一的取扱いが法律違反となる例】
・8月1日に入社した従業員に対し、全従業員と合わせて翌年4月1日に有給休暇を付与する
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 11)|厚生労働省
斉一的取扱いは、有給休暇を管理しやすくなる一方で、管理を間違えるとトラブルに発展する可能性があります。斉一的取扱いを行う際は、労働基準法で定められた基準よりも従業員が不利になっていないかどうかを念入りに確認しましょう。
時季変更権とは
時季変更権とは、従業員からの有給休暇取得申請に対して、企業側が取得時季を変更して与えることです(労働基準法第39条第5項)。ただし、時季変更権が認められるケースは、従業員の有給休暇取得が「事業の正常な運営を妨げる場合」のみです。
例えば、飲食店で従業員が一斉に有給休暇を取得しようとしている場合は、店の業務が滞る恐れがあるため、時季変更権が認められるでしょう。また、長期的に計画してきた大規模イベントの開催日に、プロジェクトのメンバーが有給休暇の取得申請をした場合なども、時季変更権が認められる可能性があります。
有給休暇は、基本的に従業員が自由に取得できることが前提の制度であるため、時季変更権を行使する際は慎重に検討しなければなりません。
2. 有給休暇取得義務化についてのポイント

政府による働き方改革の一環として労働基準法が改正され、2019年4月1日からは、年5日の有給休暇を従業員に取得させることが企業の義務になりました。
従来の制度では、従業員からの申請を受けたときのみ有給休暇が取得できたため、職場の雰囲気や従業員の性格、業務の性質などによって有給休暇の取得が困難な場合がありました。
有給休暇取得義務化によって、従業員はこれまでと比べて有給休暇を取得しやすくなっています。
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省
対象者と義務化日数
有給休暇の取得義務は、管理監督者や有期雇用労働者、パート・アルバイトを含めた、有給休暇が10日以上付与される全従業員が対象となります。特に、管理監督者は時間外労働の対象外であることから、有給休暇も対象外になると勘違いしているケースがあるため、注意が必要です。
また、有給休暇取得義務の対象となる日数は5日です。企業は、付与日から1年以内に、従業員に5日の有給休暇を取得させなければなりません。
【例1】
→入社から6ヵ月が経過した2019年10月1日に10日の有給休暇を付与
→そのうち5日は、2020年9月30日までに取得させなければならない
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 5)|厚生労働省
【例2】
→入社から6ヵ月が経過した2020年5月15日に10日の有給休暇を付与
→そのうち5日は、2021年5月14日までに取得させなければならない
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 5)|厚生労働省
義務化による変更点(時季指定や管理簿について)
有給休暇の取得義務化により、改正前の運用方法からの変更点があります。具体的には、「時季指定の義務」と「管理簿作成と保存3年間」の2点です。
時季指定の義務
時季指定の義務とは、従業員が確実に有給休暇を取得できるよう、企業が取得時季を指定することです(労働基準法第39条第7項)。
以下は、時季指定義務のポイントが掲載された図です。

企業は、従業員が有給休暇の取得を希望する日などを聴取し、なるべく意見を尊重した上で取得時季を指定する必要があります。
なお、有給休暇取得は、改正前と同様、従業員からの申請が原則です。そのため、従業員が自ら5日以上の年休を申請する場合は、企業が時季指定をする必要はありません。
時季指定義務は、労働基準法に新たに定められた企業の義務であり、就業規則の絶対的必要記載事項に該当します。企業が有給休暇を時季指定する場合には、時季指定の対象従業員の範囲や方法などを就業規則に記載しなければなりません。
管理簿作成と保存3年間
企業は、「年次有給休暇管理簿」を従業員ごとに作成し、3年間保存する必要があります (労働基準法施行規則第24条の7)。管理簿には、必ず以下3点を記載しなければなりません。
【管理簿への記載が必要な項目】
・日数(有給休暇を何日間取得したか)
・基準日(有給休暇付与の基準日はいつか)
「年次有給休暇管理簿」は書類でなく、データで管理しても問題ありません。管理しやすさやセキュリティーなどを考慮しながら、自社に合った管理方法を導入するとよいでしょう。
有給休暇を効果的に管理するには、わかりやすい様式を使用することが重要です。以下から、「年次有給休暇管理簿」のテンプレートがダウンロードできます。必要な情報がすべて盛り込まれており、自社に合わせたカスタマイズも可能です。

年次有給休暇管理簿のテンプレート|日本の人事部
義務化を守らなかった場合の罰則は
有給休暇取得義務化を守らなかった場合、従業員一人当たり30万円以下の罰金が科せられます。ただし、義務化を守らなかったからといって、ただちに罰則が科されるわけではありません。労働基準監督署の指導を受けた場合は、確実な改善策を講じましょう。
また、有給休暇取得義務を就業規則に定める際は、労働条件の不利益変更に注意が必要です。一度就業規則に定めた内容から条件を引き下げる場合、労働条件の不利益変更に該当し、原則的に個々の労働者から合意を得る必要があります。
「法定以上の日数を取得義務化するのか」など、就業規則に盛り込む方法は慎重に検討しなければなりません。
計画的付与を有効的に活用する
従業員に有給休暇を取得してもらうために有効な制度の一つが「計画的付与」です。
有給休暇のうち5日を超える日数については、労使協定を結ぶことで、労使合意の下、計画的に取得日を割り振ることができます。
計画的付与の有効な活用方法としては、以下の3パターンがあります。自社の状況を整理しながら、最適な方法を検討するとよいでしょう。
【計画的付与の3パターン】
一斉付与 | 企業や事業所自体を休業させ、全員が一斉に有給休暇を取得する方法です。例えば工場など、稼働自体をストップさせて全従業員を休ませることが可能な業種は、一斉付与が有効です。 |
交替制付与 | 班やグループごとに交替で有給休暇を付与する方法です。サービス業など、全員が一斉に休むことで事業に支障が出る業種は、交替制付与が有効です。 |
個人別付与 | 有給休暇付与計画表を作成し、一人ひとりが有給休暇を取得したい日をあらかじめ計画する方法です。夏休みや年末年始、ゴールデンウイークだけではなく、誕生日休暇や記念日休暇などさまざまなケースで活用できます。 |
参照:年次有給休暇の計画的付与制度|厚生労働省
3. 有給休暇に関するよくある疑問―買い取り、繰り越し、時間単位など―

有給休暇のルールは複雑で、労務管理に関する業務の中でも特に従業員からの質問・要望が多い傾向にあります。
参考
年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省
買い取りはできるのか
有給休暇の買い取りは、原則として認められていません。
そもそも有給休暇は、心身のリフレッシュなどを目的として、従業員が全日数を取得することが前提の制度です。有給休暇の買い取りを許すことは、有給休暇の取得促進を阻害する要因にもなり、望ましくありません。
ただし例外として、以下三つのケースが考えられます。
【企業が有給休暇を買い取る三つのケース】
・有給休暇が時効になる場合
・退職に伴い有給休暇の未消化分が発生する場合
従業員が退職するに当たり、退職日までにまとめて有給休暇を消化するケースは多いでしょう。しかし、引き継ぎが間に合わない場合など、業務上どうしても有給休暇が消化できないケースがあります。その場合、従業員が不利益にならないよう、トラブル防止の観点から、買い取りを検討せざるを得ないケースも発生します。
ただし、あくまで上記のケースは例外であり、企業側の義務ではありません。そのときの実情に合わせて、柔軟に対応することが重要です。
繰り越しはできるのか
時効が2年の有給休暇は、当該年に付与した有給休暇で取得しなかった残日数を、翌年度に限り繰り越すことになります。従業員の有給休暇残日数を確認し、次年度に時効で消滅する日数がある場合は、積極的な取得を促すとよいでしょう。
使用期限・時効はあるのか
有給休暇の取得期限・時効は、2年間です。
上述したように労働基準法上の付与日数の上限は20日であるため、例外はありますが、一度に保有できる有給休暇の日数は最大で40日間となります。
「もったいない」などの理由で従業員が取得をためらう場合がありますが、有給休暇を無駄にしないためには、取得できるうちに取得することが重要です。
前倒しはできるのか
法律で定められている内容は最低ラインであるため、従業員にとって有利となる有給休暇の前倒しは可能です。
ただし、前倒しで有給休暇を付与した日が基準日となるため、その日から1年以内に5日の有給休暇を取得させる義務があります。
【例】
→2019年6月1日が基準日となり、2020年5月31日までに5日の有給休暇を取得させる義務が発生する
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 8)|厚生労働省
有給休暇の一部を前倒しで付与した場合は、付与日数の合計が10日に達した日が基準日となります。ただし、前倒しで取得した有給休暇を従業員が自ら請求・取得していた場合には、その取得した日数を5日から控除します。
【例】
→10月1日を基準日として取得義務が発生する。ただし、取得義務の対象となるのは、すでに取得した日数を除く2日分となる
参照:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(p. 10)|厚生労働省
有給休暇の前倒し付与は、入社間もない従業員の満足度向上につながります。ただし、企業側の管理は煩雑になるので、慎重な対応が求められます。
半日・時間単位の付与は可能か
有給休暇の半日・時間単位での付与は、どちらも可能です。ただし、半日単位と時間単位のそれぞれで注意点があります。
企業に半日単位で付与する義務はありませんが、労使協定を締結していなくても付与は可能です。ただし、就業規則には半日単位での付与が可能だと記載する必要があります。一度半日単位での取得を可能とした場合、その後取り消すことは労働条件の不利益変更となるため、注意が必要です。
時間単位については、労使協定を結び、就業規則に規定することにより、年5日を上限として時間単位での付与が可能です(労働基準法第39条第4項)。
1日の時間数は1日の所定労働時間数を下回らない時間数となりますが、1日の所定労働時間に1時間未満の端数がある場合には、従業員に不利が生じないよう1時間に切り上げる必要があります(労働基準法施行規則第24条の4第2号)。
【例】
→1日分の有給休暇の時間数は8時間が上限
→年5日の場合は8時間×5日=40時間分の時間単位年休となる
半日・時間単位での付与は、従業員の満足度向上や企業のブランディング効果が期待できる一方で、管理の煩雑化を招くデメリットがあります。導入は慎重に検討しなければなりません。
賃金計算方法は?
有給休暇に関連して、担当者が悩みやすいものの一つが、賃金計算方法です。
有給休暇を付与した際の賃金計算には、以下のいずれかの方法を用います。
(1)通常の賃金を支給する(休まなかったものとして賃金を支給する)
給与計算が簡単であり、従業員も金額の根拠を理解しやすい点がメリットです。また、普段支給されている賃金がベースとなっているため、不公平感も生じにくくなります。
(2)過去3ヵ月分の賃金を根拠にして支給額を算出する(平均賃金で賃金を支給する)
過去3ヵ月分の賃金を根拠にして算出する場合、以下の計算方法の中から金額が高いほうを採用します(労働基準法第12条)。
・直近3ヵ月分の賃金総額÷対象期間の暦日(原則)
・直近3ヵ月間の賃金総額÷対象期間の実労働日数×60%(最低保障)
【例】
・直近3ヵ月分の賃金総額÷対象期間の暦日=90万円÷91日=9,890円(1円未満の端数は四捨五入)
・直近3ヵ月間の賃金総額÷対象期間の実労働日数×60%=90万円÷60日×60%=9,000円
→暦日を用いて算出した9,890円を支給する
最低保障額を計算するに当たって、日給・時給・出来高給など賃金の種類によって計算方法が異なるため、計算方法には注意が必要です。
(3)標準報酬月額から標準報酬日額を算出する
毎月の健康保険料を算出する際の基となる「標準報酬月額」を根拠にする算出方法です。
標準報酬月額を30で割って標準報酬日額を算出します。ただし、(1)や(2)の計算方法と比べると賃金が低くなりやすいため、注意しなければなりません。
【例】
→標準報酬日額=210,000÷30日=7,000円
いずれの計算方法を用いる場合でも、就業規則に明記する必要があり、標準報酬日額を用いる場合は労使協定の締結が必要です。
また、時間外労働に関する割増賃金は、実労働時間を基準にして賃金を計算します。
【例】
→土曜日の賃金は発生するが、金曜日に出勤していないため1週間の実労働時間は40時間となる。そのため、割増部分は発生しない
従業員の有給休暇取得理由を聞いていいのか
従業員の有給休暇取得理由を聞くこと自体は違法ではありません。職場におけるコミュニケーションの話題として、取得理由を聞きたいと思う人もいるでしょう。
しかし、有給休暇の利用は個人の自由であり、従業員側に答える義務もないため、回答を迫ってはなりません。何度も理由を聞いたり、取得理由の明示を義務化したりすることはパワーハラスメントに該当する可能性もあるので、注意が必要です。
従業員の立場からしても、有給休暇取得理由を聞かれないほうが休みやすいでしょう。取得理由を聞くとしても、「取得理由を話さなければならない雰囲気」をつくらないように注意が必要です。
特別休暇を義務化の5日間にカウントできるのか
基本的に、特別休暇と有給休暇は異なるものです。特別休暇を有給休暇と同じ趣旨・ルールで運用する場合は、「年次有給休暇」の名称でなくとも、5日間にカウントできると就業規則に定める必要があります。
ただし、特別休暇を義務化の5日間にカウントするものとして運用する中で、「有給休暇のみを対象としたほうがよかった」と感じることがあるかもしれません。その場合、就業規則の変更が労働条件の不利益変更に該当する可能性があります。特別休暇を5日間のカウントに含める際は、慎重な検討が重要です。
当日申請、後日申請を受け入れていいのか
従業員が指定する日に有給休暇を付与する必要があることや、企業側に時季変更権が認められていることから、事前申請が労働基準法上、原則となっています。
ただし、急な事故や通院など、突発的な出来事によって事前申請が難しい場合もあるでしょう。実態としては、当日にやむを得ない事情で休んだ場合に、有給休暇扱いとして事後承諾するケースが多くあります。
有給休暇の申請方法については、従業員の不利益とならないように過度に厳密にならないほうがよいでしょう。事前申請を前提としつつも、就業規則で事後申請を認めるケースを定め、そのときの状況に応じて柔軟に対応できるようにすることをおすすめします。
4. 有給休暇の取得率の計算方法
~職場環境の改善に役立てよう~
有給休暇の取得率とは、付与された有給休暇のうち何パーセントを取得できたかを示す数値です。
有給休暇の取得率は、「働きやすさ」などを判断する上での重要な指標となります。また、求人などに有給休暇の取得率を記載することで、ワーク・ライフ・バランスをアピールできる場合もあります。
有給休暇の取得率の計算方法は、以下のとおりです。
自社における有給休暇の取得率を算出し、職場環境の改善に役立ててください。なお、有給休暇の取得率の計算に当たっては、いくつかの注意点があります。詳しく知りたい方は、以下のページを参考にしてください。

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