人事評価基準の変更について
いつもお世話になっております。
期初変更にあたり、評価期間が短縮され、同期の評価基準が急に変更することになりました。
旧評価基準期間であるにも関わらず、急に評価基準の変更をしたことにより、等級の昇格対象だった者が対象から外れてしまうことは労働基準法等に反しておりますでしょうか。
何か然るべき対応により、違法とはならいのでしょうか。
ご回答の程、どうぞよろしくお願い致します。
投稿日:2025/10/06 11:02 ID:QA-0159177
- fukkaさん
- 神奈川県/機械(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.法的観点:労働基準法上の違法性
(1)労働基準法の直接違反には当たらない
評価基準の変更自体は、労働基準法に直接規定がある行為ではありません。
したがって、「評価基準を途中で変えた=労基法違反」とまでは直ちに言えません。
ただし、以下の点で間接的に法的リスクが発生することがあります。
(2)労働契約法第3条(信義誠実原則)・第8条(合意変更の原則)
評価制度が賃金や昇格に影響を及ぼす場合、労働条件の一部とみなされる可能性があります。
そのため、労働契約法第8条に基づき、合理性と合意の原則が求められます。
特に、評価基準の変更により
既に期待されていた昇格・昇給の機会が奪われた
事前に説明や同意を得ずに不利益な基準変更がなされた
場合には、
「不利益変更」として、合理性を欠けば無効と判断されるおそれがあります(労契法第10条参照)。
(3)裁判例の傾向
過去の裁判例でも、
「中途で評価基準を変更し、昇格や賞与算定を不利に扱った」
「事前説明がなく、遡及的に適用した」
場合には、不当・不合理な取扱いとされた例があります。
(例:三菱UFJ信託銀行事件・東京地裁平成26年、など)
2.実務上のリスクと対応策
(1)リスク:不利益変更・説明義務違反
特に昇格・昇給・賞与算定に直結する場合は、社員に説明・同意なく変更した場合、信義則違反とみなされるリスクがあります。
評価期間中に「旧基準で努力してきた社員」に対して突然新基準を適用すると、「納得性・公平性」を欠くとされかねません。
(2)対応策:法的に問題がない形に整える
以下のような対応を取ることで、違法性・不当性の指摘を避けられます。
1.周知・説明の徹底
変更理由(経営環境・人材要件見直しなど)を明確にし、
社員全体へ説明会・文書通知を行う。
特に「評価期間途中ではあるが、今期から新基準を試行する」といった経過措置を設けることが重要です。
2.経過措置の設定
例:
「2025年度上期の評価については、旧基準での評価結果も参考とし、昇格判定にあたっては個別に考慮する」
「新基準は次期(2025年度下期)より本格適用とするが、今期は両基準を併用する」
このような経過措置を取ることで、「不利益な遡及的適用」との指摘を回避できます。
3.評価結果の補正または個別救済
特定の社員が「旧基準なら昇格対象だった」と明確に判断できる場合、
「例外的に昇格審査に付す」
「次期評価で優先的に考慮する」
といった措置も、信義誠実な対応として有効です。
3.まとめ(実務的判断)
項目→評価基準の変更の可否→留意点
労基法上の直接違反→×(違反ではない)→ただし信義則・合理性の問題あり
労契法上の不利益変更→△(合理性・周知期間次第)→説明・経過措置が不可欠
実務上の望ましい対応→○(予告・周知・経過措置)→特に昇格・昇給に影響する場合は慎重に
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/06 11:37 ID:QA-0159183
相談者より
大変分かりやすいご回答をありがとうございました。
違法ではないが、実質はかなりブラックな対応になってしまう為、対応については検討の必要性を認識しました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/06 11:49 ID:QA-0159186大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
急に評価基準の変更をしたことにより、等級の昇格対象だった者が対象から外れてしまうことは、具体的内容もよりますが、
賃金全額払いに違反する可能性があります。
また、上記の内容は不利益変更となりますので、
事前によく説明し、個別合意が必要となります。
投稿日:2025/10/06 12:11 ID:QA-0159191
相談者より
ご回答ありがとうございます。
重ねてのご質問で恐縮ですが、もし予定の昇格よりも等級据え置きだが給与を増額する場合でも不利益改定となるでしょうか?
投稿日:2025/10/06 15:24 ID:QA-0159211大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
労基法でそこまで具体的な基準変更について規定は無いと思いますが、賞与規定がどうなっているでしょうか。
本来契約された給与が減額になる場合は不利益変更となり得ます。
人事的には給与に直結する制度変更で拙速は避けなければなりません。大きなモラールダウンというリスクになります。
投稿日:2025/10/06 14:09 ID:QA-0159200
相談者より
ご回答ありがとうございました。
賞与については昇格に関連した記載はなく、業績による為、現時点では影響が判りかねる状況です。
ただ、リスクについては仰る通りではございますので改めて確認致します。
投稿日:2025/10/06 15:33 ID:QA-0159214大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
法令に直接的に抵触する問題ではないかと存じます。
一方、一部の社員のモチベーションが大きく下がることは危惧する点です。
本変更をきっかけに離職を決める社員がいてもおかしくはありません。
不利益変更者は、個別面談をされた上で、柔軟に対応した方が良いでしょう。
トラブル予防の観点でも、重要なのは、本人が納得したかどうかとなります。
投稿日:2025/10/06 15:54 ID:QA-0159220
相談者より
ご連絡ありがとうございました。熟考
やはりモチベーション等、法的には問題なくても別途リスクがある為、内容については改めて熟考したいと存じます。
投稿日:2025/10/06 17:49 ID:QA-0159232大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
人事権の濫用
以下、回答いたします。
(1)人事評価は人事権に基づき行われるものであり、人事評価基準の変更については「人事権の濫用」の問題として取り扱うことも考えられます。(労働契約法第3条第5項、民法第1条第3項、民法709条)
(2)手掛かりとして、ヤマト運輸事件(静岡地裁 判決 平成9年6月20日)「会社の人事運用規程に基づく職務等級四級から五級への昇格が行われないのは、組合所属を理由とする不当な差別である等として損害賠償を請求」では、次のことが判示されています。
※ 賃金上の処遇については、被告がその処遇制度上個々の労働者に対して一定の条件が整えば従前より良い条件のもとに待遇すること、あるいは一定の条件を失わない限り従前より悪い条件のもとに待遇されることがないことを具体的に期待させる取扱を続けていたような場合には、他に特段の理由もなく、特定の労働者をその期待に反して遇することがあれば、不法行為となる余地があるものとみるべきである。
(3)本件では、1)「人事権の濫用」の有無、2)仮に濫用が認められた場合のその効果、が論点になろうかと思われます。
1)については、本人に対して昇格をどの程度期待させることになっていたのか、勤務年数等により昇格の有無を判別できうる状況であったのか等について、点検する必要があるように思われます。
2)については、給与の増額に止まらず昇格まで認める必要があるのか、会社側の発令行為がないなかで昇格請求権は認められないのではないか、そうであったとしても期待を持たせることになっていたのであれば経過措置、代替措置等が必要ではないのか等について検討していく必要があるように思われます。
投稿日:2025/10/07 09:26 ID:QA-0159238
相談者より
ご回答ありがとうございます。
昇格については力量を昇格後の等級と認める回答をされていたようですので、仰る通り不法行為となりかねない状況ですので改めて検討致します。
投稿日:2025/10/07 14:51 ID:QA-0159251大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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