評価者研修の導入メリット・種類・選び方
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評価者研修とは、自社で人事評価を行う社員を対象に実施する研修です。評価制度の仕組みについて基本的な知識を身に着けるほか、自社の評価基準や運用ルールへの理解を深め、評価者としてのスキルを向上させます。
評価制度を効果的に運用するために、評価者はヒアリングやフィードバックといったスキルが求められます。評価者が陥りがちなバイアスやエラーを知るなどして、より公平で納得感のある評価運用につなげるのが、評価者研修の狙いです。日頃のマネジメントにも活用できるというメリットがあります。
評価者研修には、講師派遣型のほか社内リソースを活用するパッケージ型、場所を問わずに受講できるオンライン型があります。現場の状況や、新任評価者のスキルアップ・社内での評価基準の浸透など研修の目的に合わせて、適切なプログラムを検討します。
評価者研修とは~求められる背景と必要な能力
評価者研修とは、人事評価を行う「評価者」である社員を対象にした研修です。
近年、会社の方針に沿って正しく評価するだけではなく、被評価者の納得感を重視する企業が増えています。被評価者のモチベーション向上につながる評価を行うには、単なる良し悪しだけではなく評価の理由を伝えたり、目標達成を支援できるように期中や期末などそれぞれのタイミングに合わせてフィードバックしたりしなくてはいけません。被評価者が自らの課題に気づき、目標達成に向けて努力できるように伝えることが、望ましい評価の在り方といえます。
評価者研修で評価者をスキルアップさせることで、自社の評価制度のより良い運用を目指すことができます。
評価制度の運用と状況
評価者制度は、企業でどのように運用されているのでしょうか。
『人事白書2021』によると、「評価者研修を実施している」という設問に「当てはまる」と回答した企業は、19.6%でした。「やや当てはまる」と回答した割合と合わせて約5割というのが現状です。
評価者が評価の理由まで被評価者に伝えている企業は約3割、評価対象・項目・基準を社内で公開している企業は4割強と、公平な評価制度を目指す姿勢がうかがえます。しかし、評価のフィードバックが適切に行われているかを人事部門がチェックしている割合は16.1%で、実際の現場の運用状況を把握している企業が多いとはいえません。
さらに、低い評価を受けた社員に対して育成やフォローする施策があると回答した割合は4.8%でした。
また、評価そのものを「賃金の決定」や「昇給・昇格」に反映していると回答した企業の割合はいずれも3割以上ですが、「評価情報を参照しながら人材育成や配置転換が行われている」「人事評価が職場の活性化につながっている」という選択肢に対しては、約4割~6割の企業が「どちらかといえば当てはまらない」「当てはまらない」と回答しています。
評価制度の活用について、模索している企業が多いと言えるでしょう。
適切に評価をするためのポイント
評価制度の第一の目的は、賃金や昇進といった従業員の処遇を決めることです。しかし、そのためだけに評価を行うと、効果的な運用につながりません。
従業員の能力・知識・経験などを評価したデータからは、従業員の長所や特性、伸ばすべきポイントなどを読み取ることができ、人材育成の基盤となります。従業員の処遇の決定だけではなく、能力開発・人材育成への活用という目的もあることを、評価者が理解していることが重要です。
適切な評価を行うためには、評価シートや人事システムなどを活用し、評価方法を標準化することが求められます。その上で、評価者自身がヒアリングやフィードバックなどのスキルを向上させることが重要です。
- 【参考】
- 評価者訓練
評価者に求められる具体的なスキル
では、評価者には具体的にどんなスキルが求められるのでしょうか。
ヒアリングスキル
ヒアリングスキルは、目標を設定するときに納得感を高め、従業員のモチベーション向上につなげるうえで重要です。
特に期初面談においては、目標達成への認識を確認するために必要です。評価者は被評価者が目指していることや時にはキャリア志向などを聞き出し、事業目標から被評価者に達成してほしいことなどを伝えながら、目標をすり合わせます。評価者のヒアリングスキルが不足している場合、被評価者は目標を「押し付けられた」などと感じて、意欲が低下する恐れがあります。
フィードバックスキル
フィードバックスキルは、評価の形骸化を防ぎ、被評価者のモチベーションを次のアクションにつなげるために必要なスキルです。
たとえば期中面談においては、目標達成にむけて現状認識と不足点を確認しつつ、被評価者のモチベーションを高めるようなフィードバックが求められます。期末面談では、目標達成した従業員はもちろん、目標が未達成だった被評価者へのフォローが重要です。
面談では、評価に納得していなくても、部下と上司という関係性からその場では「わかりました」と答えてしまう被評価者が少なくありません。形骸化を避けるためには、評価者が自身の課題に気づき、今後の目標・方向性を見出せるよう、評価者が日頃から信頼関係を築くことに努力し、部下の良いところや悪いところに目を向けてフィードバックをすることが必要です。
エラーやバイアスを取り除く
評価では、さまざまな理由から評価者自身に心理的なバイアスがかかることは珍しくありません。
たとえば、有能な評価者が、社内の評価基準ではなく自分自身の「できる・できない」を基準に評価を下してしまう「対比評価」や、「有名大学の出身だから、学力だけではなく人格も優れている」「時短社員の女性は責任が重い仕事は任せられない」など、被評価者の特定の部分にとらわれて評価を下してしまうハロー効果が挙げられます。これらは評価エラーと呼ばれます。
評価者自身が知識としてバイアスの種類を理解し、評価エラーを起こさないよう努めることで納得感のある評価につながります。
評価者研修を実施するメリット
評価者研修では、評価制度の基本知識の習得のほか、参加者が評価基準などへの理解を深め、適切な評価の実施にむけて必要なことを学びます。
人事評価の基礎知識を理解できる
評価者研修で、人事評価の基礎知識について学ぶことは、特に新任評価者にとって重要です。人事評価を行う目的に加え、評価者として求められるスキル、避けるべき評価エラーなどについて知識を身に着けます。また、経験のある評価者であっても、これまで独学や独自の手法で評価を行ってきた場合、研修を受けることで改めて自身の評価の目的や在り方を見直すことができます。
自社の評価制度の目的・評価基準・運用ルールへの理解が深まる
評価者研修は、自社の評価基準を理解するための場でもあります。会社が設定している評価制度の目的を正しく伝え、評価基準について浸透を図ります。社内で評価シートや人事システムなど、標準化のためのツールを用いている場合には、研修で詳しい運用方法・ルールについて身に着けることが可能です。
日頃のマネジメントの重要性を認識できる
研修では、適切な評価を行うためにヒアリングスキルやフィードバックスキルを向上させるロールプレイングに取り組み、スキルアップを目指します。研修を通じて、部下の納得感を向上させ、育成にも効果がある評価をするためには、いかに日頃の接し方が影響するかを考えることができます。
評価者たちのスキルレベルの標準化につながる
社内の評価者全員のスキルが、十分な基準に達しているとは限りません。新任評価者とシニア評価者とでは、経験によってスキルに差が生じることもあります。評価スキルが不足している人が評価者となった場合、評価に主観が混ざるなどして、評価エラーが生じる確率が上がります。
たとえば、部下とよくコミュニケーションをとっていても的確な評価ができるとは限りません。ヒアリングスキルが不足している場合、フィードバック面談でキャリアの志向が聞き取れないと目標のすり合わせが十分に行えないケースもあります。
社内の評価者が同じ研修を修了することで、評価スキルの標準化が期待できます。外部講師を招き、専門的知見をもとに体系化されたノウハウを学ぶことは、全体のレベルアップにつながります。
評価者研修サービスのプログラムの種類
評価者研修を提供するサービスには、社内での内製化を前提とした「パッケージプログラム」、自社の課題別に対応できる「カスタマイズプログラム」、そして「オンラインプログラム」があります。
評価者研修の内製化が可能なパッケージプログラム
パッケージプログラムのサービスでは、社内のリソースで評価者研修を実施できるよう、受講者用のテキストから講師が講義に使用する資料まで、すべてがそろっているのが一般的です。講師を務める従業員は、マニュアルに沿って研修を行います。社内リソースで研修が完結するため、研修費用を比較的安価に抑えられる点が特徴です。
自社の課題に特化したカスタマイズプログラム
自社の課題に合わせて、研修カリキュラムを変更できるのがカスタマイズプログラムです。評価制度の課題を研修会社が把握し、研修内容を組み立てます。会社の規模や組織構造に適したケーススタディを選択できたり、オリジナルのケース開発を依頼したりすることも可能です。より自社の実態に即したプログラムで、評価者のレベルアップを図ることができます。
また評価基準の言語化や運用方法の改善など、経営コンサルティングの観点からサービスを提供する研修会社もあります。
オンライン完結・併用型のプログラム
近年では、オンラインで完結する研修やオンラインとリアルを併用するプログラムも人気を集めています。
オンラインプログラムの特徴は、場所や時間といった参加への制約を減らせる点です。通常業務への負担を減らして評価者に学習の機会を提供したい場合や、基本知識を効率的に学んで欲しい場合などに適しています。
ただし、受講型のオンラインプログラムのみでは、グループワークなどの実践的なプログラムを通じて参加者が考え、気付きを得ることに限界があります。参加者のスキルや自社の課題に合わせて、別の形式の研修も検討すると良いでしょう。
評価研修の目的・レベルに合わせたプログラム
評価者のレベルにあわせて研修プログラムを提供しているサービスもあります。たとえば、ミドルクラスの評価者に対して、より人材育成を意識したフィードバックスキルを身に着けさせたいという課題がある場合、適した事例を用いたワークショップを増やし、座学・講義と合わせて学びの場を提供することができます。
評価者研修の選び方
評価者研修を検討する際には、以下のポイントを押さえてプログラムの選定を行います。
自社の評価者に対する評価を把握する
被評価者へのヒアリングは、評価者の向上させるべきスキルや、自社の評価制度の改善点へのヒントを得るために有効です。
たとえば、評価が低かった際に気持ちが落ち込んだといった反応があれば、評価者から厳しく叱られたなどフィードバックのやり方に問題があるかもしれません。一方、良い評価を得ているにもかかわらず、評価がモチベーションにつながっていないケースでは、目標設定に課題を抱えている可能性が考えられます。
評価者に不足しているスキルを把握し、研修のコンテンツ選びに生かすと良いでしょう。
評価者研修の実施目的を明確にする
自社の評価者の課題をふまえて、評価者研修の目的を定めます。ここでいう研修の目的とは、研修前と研修後で参加者に望む「変化」を指します。
評価者の間で評価基準への理解度に差がある場合は、企業のビジョンや経営戦略をあらためて共有する場を設けた上で、評価基準を浸透させるプログラムが適しています。特に、拡大期で変化が激しい組織では、マネジメント層の成長ステージに合わせて企業のビジョンなどに基づいて評価への理解を促せるため有効です。
さらに、合宿型プログラムでは集中的に多様なワークを盛り込むことができ、評価にまつわる知識の獲得のほか評価スキルの向上も期待できます。
一方、基本的知識の習得が評価者のスキルアップにつながるのは、主に新任評価者が参加対象である場合です。そのようなケースでは、体系的に学べるプログラムを選び、さらに移動時間などを気にせず受講できるオンラインプログラムを検討すると良いでしょう。
研修の目的が明確になることで、望む「変化」に適した研修プログラムを組み立てることができます。さらに、事前に参加者に自社の課題と研修の目的を共有することで、当事者意識が高まります。
現場に適したプログラム内容を検討する
自社の課題を探るには、現場に目を向けることが大切です。
たとえば、社内の講師要員は確保できているが講義の質を高めたい場合は、外部の知見を取り入れられるパッケージプログラムが適しています。一方、社内に講師を任せられるリソースがない場合は、講師派遣型のプログラムを検討すると良いでしょう。
ほかにも、評価者が日々の業務で研修日程の調整が困難なケースでは、ビデオ学習型のオンライン研修で評価の基礎知識を提供しつつ、ワークが必要な場合には、別途集合型研修の場を設定するといいでしょう。
短期間で集中的に評価スキルを身につけられる点では、短期の合宿プログラムが適しているといえますが、参加時間が長くなるほど、業務との兼ね合いを考慮する必要が出てきます。
評価者研修を実施するときのポイント
評価者研修を実際の制度改善・効果的な運用につなげるために、実施段階で注意するべきポイントを説明します。
評価者研修の日程を周知する
評価者研修の日程を参加者に案内します。このときに、日時や参加方法などの概要だけではなく、研修の目的を参加者と共有すると良いでしょう。
研修後、評価者研修のフィードバックや振り返りを行う
研修終了後には、評価者研修の内容が実際の評価に生きているかどうか、定期的な振り返りを行います。振り返りの方法としては、評価面談後の被評価者のアンケートなどがあります。また、評価者が自身の評価のあり方の振り返るためには、研修後のレポート提出などが有効です。
研修で学んだことは、面談のときだけではなく、日々のマネジメントで生かすことで、スキルが向上します。そのために、評価者研修の参加者に対して、どのようなシーンでスキルを活用し、どんな状態になって欲しいかを具体的に伝えることも大切です。
評価者研修を提供する全国のソリューション企業一覧
- アクタスHRコンサルティング株式会社
- アチーブメントHRソリューションズ株式会社
- アルー株式会社
- 株式会社インソース
- HKC人材開発パートナーズ株式会社
- SMBCコンサルティング株式会社
- 株式会社NMR流通総研
- クレイア・コンサルティング株式会社
- 株式会社グローセンパートナー
- 株式会社経営コンサルタント協会
- コーン・フェリー・ジャパン株式会社
- コンピテンシーコンサルティング株式会社
- 学校法人産業能率大学総合研究所
- 株式会社新経営サービス 人事戦略研究所
- セレクションアンドバリエーション株式会社
- 株式会社タナベコンサルティング
- 株式会社トライアンフ
- トレノケート株式会社
- ナビゲート有限会社
- 株式会社日本コンサルタントグループ
- 公益財団法人日本生産性本部
- 一般社団法人日本能率協会
- 株式会社日本能率協会マネジメントセンター
- 株式会社ノビテク
- 株式会社バリューイノベーション
- 株式会社PHP研究所
- 株式会社ピース
- ビジネスコーチ株式会社
- 株式会社ビジネスコンサルタント
- 株式会社ビジネスパスポート
- 株式会社ヒューマンバリュー
- 株式会社フィールドマネージメント・ヒューマン・リソース
- 株式会社ベクトル
- マーサージャパン株式会社
- 株式会社マイナビ
- マンパワーグループ株式会社
- ALL DIFFERENT株式会社
- 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
- 株式会社リスキル
- 株式会社労務行政
評価者研修のサービスを比較して資料請求
以下の表で、おすすめの評価者研修の「特徴」「テーマ」「サービス形態」「費用」などを一括で比較できます。
まとめ
評価制度の運用は、多くの場合評価者の手腕にゆだねられています。評価者・被評価者へのヒアリングを通じ、現状の問題点や課題を把握することが、効果的な研修実施の第一歩になります。評価者の経歴やスキル、人数や組織規模によって、パッケージ型・講師派遣型・オンライン型など適した研修プログラムを選択すると良いでしょう。
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