業務委託契約に時間要素を含めるのは違法か?
現在、ヘアサロンの新規集客手法として「街頭PR活動(体験予約獲得)」を一部、業務委託契約として運用できないか検討しています。
契約形態上、労務管理の対象外であることは理解しておりますが、以下のような設計とした場合、業務委託として違法性(偽装請負リスク等)はないかご意見を伺いたいです。
【想定している契約内容】
・業務内容: 最寄り駅周辺などで日中(10時〜18時頃)に街ゆく方へ声掛けを行い、当サロンの体験予約につなげる活動。
・契約定義: 「1日あたり◯時間活動する」といった時間目安を業務範囲に記載。
・成果基準: 来店予約件数・体験獲得数をもとにインセンティブを支給。
・評価・契約更新: 成果(体験獲得数)に応じて、報酬や契約継続を判断。
【質問】
上記のように、
・「〇時間活動する」と時間要素を契約内容に含める
・成果(体験獲得数・来店数)に応じて報酬や契約継続を決める
といった設計は、業務委託契約として違法(または偽装請負)と判断されるリスクがあるでしょうか。
活動は健全な街頭PRを前提としており、警察署への確認も行った上で実施予定です。
契約書上で注意すべき点や、時間要素を含めた設計の是非について、専門家の皆様のご意見を伺えますと幸いです。
投稿日:2025/10/06 13:17 ID:QA-0159198
- オフィスさん
- 東京都/その他業種(企業規模 51~100人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
「〇時間活動する」と時間要素を契約内容に含める場合には、
直接指示してますので、偽装請負とされる可能性があります。
成果報酬については問題ありません。
投稿日:2025/10/06 14:13 ID:QA-0159201
相談者より
ご回答ありがとうございます。
時間要素を含めると偽装請負とみなされる可能性があるとのご指摘、参考になりました。
成果報酬型の仕組みを基本とし、時間拘束のない形で設計を見直します。
投稿日:2025/10/08 09:55 ID:QA-0159303大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
時間要素(「1日◯時間活動する」等)を業務委託契約に入れることは「絶対に違法」とは言えないが、偽装請負(=実態が雇用・指揮命令関係に近いと判断される)と認定されるリスクが高まります。 特に「時間」「勤務場所」「業務方法」を厳格に指定すると労働者性が強く評価されやすく、労働局・監督署で問題視される可能性があります。
2.なぜ時間要素はリスクになるのか(根拠)
日本の行政・判例は「契約の形式」ではなく実態で判断します(契約書に『業務委託』と書いてあっても実態が使用者の指揮命令下にあれば労働者と判断)。その判断基準は厚労省ガイド等で示されています。
「何時から何時まで従事する」等の時間拘束は、発注者が受託者の業務遂行に実質的に指揮監督していると見なされる重要な要素の一つです。業務の進め方や時間管理を細かく指定すると偽装請負に該当する例が多いと実務上指摘されています。
3.想定される具体的リスク(監督署で指摘されやすい点)
労働者性認定 → 社会保険・雇用保険や未払い残業・割増賃金の追徴、行政指導。
厚生労働省
偽装請負と認定された場合の責任(発注側に健康・労働時間管理義務、労基署指導、行政罰・付帯費用負担)。
「会社支給物(制服・営業車・指示書)」があるとコントロールの証拠になりやすい(業務の自主性が低いと評価されやすい)。
4.実務的に取りうる回避策(設計・契約条項)→ 重要かつ実行可能なもの
A. 「時間」ではなく成果や作業単位で要件化する(第一選択)
B. 業務遂行の裁量・自由を明記する(受託者の自律性を担保)
C. 会社支給物や指示を最小化する(付随的支給は慎重に)
D. 「時間目安」を使うなら、義務ではなく参考表示(努力目標)に留める
E. 成果確認の方法は客観的・事後的に(監視的な手段は避ける)
F. 報酬支払の設計
5.「それでも時間要素を入れたい」場合の最小限の安全策
「時間」は努力目標(参考)として明示し、かつそれが守られないことを理由に直ちに契約違反としない旨を明記。
例:「当社は受託者に対し便宜上『目安として1日3〜5時間程度の活動を想定する』ことを示すが、これは本契約の履行義務を意味するものではない。」
さらに、活動時間の管理・罰則を一切行わない運用を厳守(実務で打刻や時間指示をしない)。ただしこの線引きは非常に微妙で、実際の運用が重要。
6.その他の留意点(現場的)
警察・自治体の街頭許可は別途確認済みとのことですが、許可条件(場所・時間)に基づく制約が強い場合はそれ自体が時間・場所指定となり得る点に注意。
安全管理・損害賠償:受託者が事故を起こした場合の保険・賠償責任分担を契約で整理しておく。
反社会的行為・迷惑行為等の監督:業務委託でも広告表現や対応基準など最低限のルールは定める(ただし細かな指揮には注意)。
7.最後に:現実的な選択肢(優先順位)
成果報酬型の業務委託(時間拘束は入れない):最も安全。
ハイブリッド(短期の試用を雇用契約で行い、その後委託化を検討):実態と書面の齟齬を避ける。
どうしても時間を指定するなら「雇用」で契約する:時間管理をしたいのであれば雇用にして労務管理・社会保険等を適切に整備する(安全側の選択)。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/06 14:52 ID:QA-0159203
相談者より
大変丁寧なご回答をありがとうございます。
時間指定が労働者性を強めるとの具体的な解説が非常に参考になりました。
今後は成果基準と裁量性を重視した契約設計へと修正いたします。
投稿日:2025/10/08 09:55 ID:QA-0159304大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
判断
時間要素を契約内容に含めるのは違法かどうかではなく、偽装派遣と取られかねないリスクです。リスクですので絶対に許されないという意味ではなく、労基などの判断において不利だろうと想像します。
成果報酬は単なる商取引契約なので、そのような条件であっても、それでもぜひやりたいという業者さん(個人含む)がいれば、双方合意の自由な契約なので問題ありません。
投稿日:2025/10/06 15:27 ID:QA-0159213
相談者より
ご回答ありがとうございます。
「違法ではないがリスクがある」という整理で理解いたしました。
双方の自由な合意を前提とした、成果報酬中心の形に検討を進めます。
投稿日:2025/10/08 09:55 ID:QA-0159305大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
1日あたり〇時間活動するといった具体的な活動時間を目安として契約に含め、
その時間に対して報酬が支払われる構造になっている場合、労務の提供、
つまり雇用契約と見なされやすくなります。
よって、違法性を指摘される可能性は十分あると言えるでしょう。
違法性を指摘されるリスクを回避するのであれば、1日あたり〇時間活動する
ではなく、本業務の遂行には通常〇時間程度の活動が見込まれるといった表現に
留めるか、具体的な時間に関する記載自体を避けることを推奨いたします。
投稿日:2025/10/06 16:08 ID:QA-0159224
相談者より
ご丁寧なご回答をありがとうございます。
「通常〇時間程度が見込まれる」といった表現に留めるという助言を参考にいたします。
違法性リスクを回避する方向で契約文面を再検討します。
投稿日:2025/10/08 09:56 ID:QA-0159306大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 渡井 保仁
- 渡井マネジメントオフィス 代表
ご質問の件、以下のとおり回答いたします。
時間要素を契約内容に含んだ業務委託契約が、直ちに違法と判断されるわけではありませんが、ご質問のケースでは、業務を行う時間や場所及び業務遂行方法について一定の指示をすることになるため、事業主の指揮命令下で労働しているとみなされる可能性があること、また、一定時間労務を提供した対価として報酬が支払われる契約内容であることを勘案すると、業務委託契約ではなく雇用と判断されるリスクがあります。
投稿日:2025/10/06 17:48 ID:QA-0159231
相談者より
ご回答をありがとうございます。
時間や場所の指定が雇用関係とみなされるリスクがある点、理解いたしました。
委託側の自由裁量を確保する形で設計を見直します。
投稿日:2025/10/08 09:56 ID:QA-0159307大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
労働者性
以下、回答いたします。
(1)労働基準法(第9条)では、「労働者」を「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義しています。この「労働者」に当たるか否か(「労働者性」)については、以下の2つの基準で判断されることとされています。
1)労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか。
2)報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか。
(引用)厚生労働省HP 『労働基準法における「労働者」とは』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index02.html
(2)上記の2つの基準を総称して「使用従属性」とされていますが、これが認められるかどうかは、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から、個別の事案ごとに総合的に判断されることとされています。そして、この具体的な判断基準は、労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)において、以下のように整理されています。
1)「使用従属性」に関する判断基準
あ)「指揮監督下の労働」であること
ア 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無(発注者等からの仕事の依頼や、業務従事の指示があった場合に、受けるかどうかを自分で決められるか)
イ 業務遂行上の指揮監督の有無(業務の内容や遂行方法について、発注者等から具体的な指揮命令を受けているか)
ウ 拘束性の有無(発注者等から勤務場所と勤務時間が指定され、管理されているか)
エ 代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)(受注者本人に代わって他の人が労務を提供したり、受注者が自分の判断で補助者を使うことができるか)
い)「報酬の労務対償性」があること(支払われる報酬の性格が、発注者等の指揮監督の下で一定時間労務を提供していることに対する対価と認められるか)
2)「労働者性」の判断を補強する要素
あ)事業者性の有無
い)専属性の程度
う)その他
(3)上記(2)を踏まえれば、「想定している契約内容」については、
1)『来店予約件数・体験獲得数をもとにインセンティブを支給する』、『成果(体験獲得数)に応じて、報酬や契約継続を判断する』ことは、労働性を弱める方向で作用すると考えられます。(上記(2)1)い))
2)『「1日あたり◯時間活動する」といった時間目安を業務範囲に記載する』ことは、労働者性を強めることで作用すると考えられます。(上記(2)1)あ)ウ)
3)『業務内容として、最寄り駅周辺などで日中(10時〜18時頃)に街ゆく方へ声掛けを行い、当サロンの体験予約につなげる活動を行う』ことについては、警察署との関係もあろうかと思いますが、声掛けの方法を相手方に委ねることは、労働性を弱める方向で作用すると考えられます。また、「最寄り駅周辺などで日中(10時〜18時頃)」についても、参考という位置づけにすることは労働性を弱める方向で作用すると考えられます。(上記(2)1)あ)イ、ウ)
(4)契約内容について、上記(2)に基づき、再度点検していただくことが有益であると考えられます。
投稿日:2025/10/06 20:37 ID:QA-0159236
相談者より
詳細な法的整理を含むご回答、誠にありがとうございました。
「使用従属性」の判断基準を踏まえ、契約内容を再点検いたします。
成果報酬や自主性を重視し、労働者性を弱める方向で構築を進めます。
投稿日:2025/10/08 09:56 ID:QA-0159308大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
一口に「業務委託契約」といっても、正確には「請負契約」と「委任契約」の二種類に分類され、請負契約は業務の完成によって生まれる成果物の納品を目的とするもの、委任契約は業務の遂行を目的とするものです。
さらに、委任契約については、法律に関する業務を委任する場合は「委任契約」、それ以外の業務については全て「準委任契約」と呼ばれます。
請負契約の特徴としましては、成果物を完成させる義務(完成責任)があり、作業結果を納品し検収を受けた後に報酬が支払われるということ、つまり「明確な目標・目的があり、それを満たすことによって報酬が支払われる」という形式であり、いくら時間をかけて仕事しても、目標を満たせなければ報酬を受け取ることはできないということになります。
「1日あたり〇時間活動する」は、「1日の労働時間は〇時間とする」と同じ解釈になり、であれば、〇時間分の賃金を支払わなければならないということになります。
来店予約件数・体験獲得数をもとにインセンティブとして支払うのであれば、具体的な活動時間まで記載する必要はなく、何時間活動するかは受託者の判断に任せれば良いのであって、時間要素は考慮する必要はありません。
投稿日:2025/10/07 09:27 ID:QA-0159239
相談者より
ご回答ありがとうございます。
請負・準委任の区別や「時間要素を設けない方が自然」とのご指摘、大変参考になりました。
今後は時間記載を避け、成果ベースでの委託契約設計を検討いたします。
投稿日:2025/10/08 09:56 ID:QA-0159309大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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