製造業派遣の2009年問題
製造業派遣の2009年問題とは?
現在、労働者派遣法で定められている製造業への労働者派遣の契約期間は最長で3年。2006年に契約を結んだ大量の派遣労働者が2009年にいっせいに期限切れを迎えることで、深刻な“雇用不足”をもたらす問題として懸念されていたのです。
契約期限切れで人手不足どころか雇用縮小
クーリング後の“飛び石”派遣も違法
実態は「派遣」なのに、雇用期限や安全管理責任のない「請負」を装って契約する――いわゆる「偽装請負」が発覚し、社会問題化した2006年半ば以降、日本の製造現場では多くの企業が請負から派遣へ、雇用形態の切り替えを進めました。製造業への労働者派遣は04年3月に1年間の期限付きで解禁されましたが、その後の法改正で07年3月から契約期限が最長3年まで延長されることが決定。この期間延長も見越して、請負から派遣へのシフトが加速したといわれています。
06年に契約を結んだ大量の派遣労働者が09年中に3年の契約期間を満了するとどうなるのか。企業が同じ労働者を同じ業務で雇い続けたい場合は、(1)3ヵ月以上の契約解除期間(クーリング期間)を置いた後、再び派遣契約を結ぶ(2)派遣から請負に雇用形態を変える(3)正社員や期間社員として直接雇用する――の3つの選択肢があります。08年前半までは大手メーカーを中心に(3)、つまり直接雇用に切り替えようという動きがさかんでした。(2)は偽装請負を疑われかねず、(1)ではクーリング期間中に人手不足が生じ、製造現場が機能不全に陥ってしまう――つまり「製造業派遣の2009年問題」は、当初は深刻な“雇用不足”をもたらす問題として懸念されていたのです。
現に、キヤノンは09年問題への対応として、07年末にグループ全体で約1万2000人いた工場の派遣社員を直接雇用に切り替えて、人員を確保する方針を表明、08年10月末時点では派遣としての契約を約650人にまで縮小していました。マツダやコマツなども同様に、直接雇用への切り替えを進めていました。ところが08年後半の景気の急落で、事態は一変。多くのメーカーが減産、人員削減に転じたため、09年中に期限切れになる派遣労働者の契約も、直接雇用どころか、そのまま“雇い止め”になる見通しが強まっています。つい最近まで人手不足への懸念でメーカーを悩ませていた「2009年問題」が、実質的な雇用の調整弁に変わってしまったのですから、皮肉というほかありません
また、正社員は難しいものの、クーリング期間経過後に再び派遣として受け入れたいという選択肢(1)の対応も現実にはとりづらい状況にあります。厚生労働省が08年9月に出した通達で、労働者派遣法で認められているはずのクーリング後の再派遣に対し、「派遣法の趣旨に反する」との見解を示したためです。とくにクーリング期間中だけ直接雇い入れて3ヵ月が過ぎたら再び派遣契約に戻す、いわゆる“飛び石”派遣は行政指導の対象となる可能性が高いので注意が必要です。
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