不安全行動
不安全行動とは?
「不安全行動」とは、労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動のことで、労働災害が発生する原因となります。意図的な近道・省略行動や、無意識のヒューマンエラーなどが含まれます。労働災害の原因の多くは、機械や設備の欠陥といった「不安全な状態」よりも、「不安全行動」に起因すると言われています。安全な職場環境を構築するためには、不安全行動がなぜ発生するのか、その原因を深く理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
災害や事故の原因となる不安全行動
発生原因はどこにある?
労働災害の発生要因を分析する上で、「ハインリッヒの法則」は非常に有名です。これは、1件の重大な事故の背後には29件の軽微な事故と300件のヒヤリ・ハット(事故には至らなかった危険な事象)が存在するという経験則。災害や事故の原因の多くは「不安全行動」だと言われています。不安全行動は、大きく以下の二つに分類できます。
一つ目は、意図的な行動(リスクテイキング) 。決められたルールや手順を守らず、危険だと認識していながら行う行動です。「これくらいなら大丈夫だろう」という慣れや過信、作業効率を優先するための近道・省略行動、あるいは作業着の着用を省略するといった行動が該当します。職場のルール軽視の風潮や、生産性を優先するあまり安全が二の次にされるような環境が、こうした行動を助長するケースも少なくありません。
二つ目は、意図しない行動(ヒューマンエラー) 。作業者本人に違反の意図がなくても、結果として危険な状況を招いてしまう行動です。知識や経験の不足による誤った操作、疲労や体調不良による集中力の低下、あるいは「うっかり」「ぼんやり」といった判断ミスや操作ミスが含まれます。
不安全行動を誘発する背景には、「人的要因」と「管理的要因」が存在します。「人的要因」としては、個人の知識・技能不足、疲労・睡眠不足、焦りやプレッシャーといった心理状態が挙げられます。一方、「管理的要因」としては、不十分な安全教育、危険性が考慮されていない作業マニュアル、コミュニケーション不足、人員不足による過度な業務負荷、安全を軽視する職場風土など、組織側の問題が大きく影響します。労働災害を防止するためには、原因を踏まえた多角的な対策が求められます。
(1)安全教育と訓練の徹底
KY(危険予知)活動やヒヤリ・ハット事例の共有を通じて、作業に潜むリスクを自ら発見し、回避する能力を養います。また、新人教育だけでなく、ベテラン層に対しても定期的な安全教育を行い、慣れによる気の緩みを防ぐことが重要です。
(2)管理体制の整備と見直し
リスクアセスメントを実施し、作業手順の危険性を評価・改善します。また、作業マニュアルを分かりやすく実用的なものに見直し、形骸化させない工夫が必要です。適正な労働時間管理や人員配置も、疲労や焦りを原因とするエラーの防止につながります。
(3)安全な職場風土の醸成
経営層が安全を最優先する方針を明確に示し、現場の安全活動を積極的に支援することが不可欠です。「見て見ぬふり」をせず、不安全行動を見かけたら誰もが注意し合えるような、オープンなコミュニケーションが取れる職場環境を目指します。
不安全行動は個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき安全管理上の重要な課題です。原因を多角的に分析し、継続的な改善活動を行っていくことが、安全で安心な職場を実現するための鍵となります。
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