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【ヨミ】ギョウムカイゼン

業務改善

業務改善とは?

業務の現状を見直して問題点を解決し、業務効率化と生産性向上を図ることをいいます。長時間労働の是正や人手不足解消といった経営課題に取り組む企業にとって、不可欠な取り組みです。業務改善に関するフレームワークとしては、「QCD」や「5S」などがあり、業務の可視化・課題の抽出、計画の実行に役立ちます。

掲載日:2024/08/27
イメージ画像

業務改善とは

これまでのプロセスの課題を抽出し、ヒト・モノ・カネの使い方についての無駄を省き、効率的でスムーズな流れを作り出すのが「業務改善」です。業務改善を行うことで、生産性を高め、より良い仕事環境をつくり出せます。

業務改善のポイントは、事業における重要な課題の発見です。無計画に改善を進めると、単なる「変更」にとどまり、効果を得られない可能性があります。現状の課題を見つけ、解決に向けて業務を効率的に行える環境をつくることが重要です。業務改善の目的には、売上向上、生産性向上、従業員のモチベーション向上などがあります。

業務効率化との違い

「業務効率化」は、無駄な時間やコストを省き、少ない作業量で生産性を上げる取り組みのことをいいます。コスト削減・時間短縮が業務効率化の主な目的です。業務改善の中に、取り組みの一つとして業務効率化が含まれると考えられます。

業務効率化は、スムーズな業務プロセスを作り出すのに不可欠な取り組みです。ただし、業務改善を主導する人が、コスト削減や省力化など効率化に偏りすぎると、予算不足で製品の質が落ちたり、人員不足で業務が逆に回らなくなったりと、悪影響を及ぼすこともあります。

製造業の現場で使われる「カイゼン」とは

日本企業の業務改善を世界に知らしめた取り組みに、「カイゼン」があります。カイゼンは、トヨタをはじめ日本の製造業の発展に大きな役割を果たしてきました。国際協力の場でも、「KAIZEN」活動として紹介されるなど、品質向上や生産性向上に貢献するものとして、国を超えて取り入れられています。

カイゼンの特徴は、作業効率の向上や安全性の確保など、業務改善に必要な取り組みを経営陣から指示されるのではなく、現場の作業者が中心となって問題解決を図っていくことです。現場を知る人々が知恵を出し合い、ボトムアップで課題に取り組むことで、役立つノウハウを生み出せます。

業務改善が必要な理由

既存の業務プロセスを変更するには、ときに大きな負担が伴います。現場からの反発を受けることもあります。しかし、業務改善は企業を成長させるために不可欠な取り組みです。以下に、業務改善が必要とされる理由を解説します。

長時間労働の是正

2019年4月から施行された働き方改革関連法の一つに、長時間労働の是正が掲げられました。残業時間の上限規制が明確に設けられたほか、月60時間超の残業の割増賃金引き上げ、年5日の年次有給休暇の確実な取得など、従業員がワークライフバランスを保ちながら働けるように法改正が進みました。その結果、さまざまな企業が働き方改革に取り組み、残業時間を削減する流れが生まれました。

企業が長時間労働の是正を行うためには、無駄な作業を省き、業務を効率化することが不可欠です。残業を禁止するだけでは、現場の従業員は家に仕事を持ち帰るなど、実際の長時間労働の是正にはつながりません。法改正を後押しに、業務の在り方を見直す業務改善が求められています。

人手不足への対応

経済産業省では、2050年に日本の人口が1億人を下回ると試算しています。少子高齢化が進み、若い世代の労働力が減少。小売業や飲食店などでは、「アルバイトが集まらない」という声も聞かれるようになりました。

人員が不足するなか、企業活動を続けるには、省力化・省人化の取り組みが不可欠です。システムやロボットなど、テクノロジーの力を活用して業務改善を行う事例が見られます。

働き方の多様性の確保

業務改善は、働き方の多様性を確保するためにも有効です。属人的だった業務を見直し、業務フローや進捗(しんちょく)を共有することで、チームのメンバーが働きやすくなります。短時間勤務の従業員が担当を引き継ぐことが容易になり、メンバーが有給休暇や急な休みを取得した際も、業務を円滑にフォローできます。

企業の競争優位性の確保

近年は技術発展により、さまざまなサービスが登場。消費者のニーズも、昔より速いスピードで変化しています。変化する市場で生き残るためには、企業は今までと同じ方法で同じものを生み出すのではなく、新しい価値の提供やサービスの刷新をしていかなければなりません。そのためには業務改善が必要です。

業務改善の進め方

業務改善の基本的な進め方について解説します。

業務改善の流れ
図版:業務改善の流れ

可視化

まず取り組むべきなのは、現状の業務の可視化です。担当者のみが現状を把握しており、他の従業員は詳しい部分を知らないというケースは少なくありません。全体像が見えないうちに業務改善を検討すると、部分的な改善しか得られず、結果として成果が出せない可能性があります。また、他の業務に影響を及ぼし、全体の生産性が低下してしまうおそれもあります。

業務の可視化に向けて、担当者や部署全体、関連部署へのヒアリングを実施します。業務の内容や種類、担当者の割り振り、所要時間、詳細な業務フローなどを聞き取り、業務の全体像を把握します。業務フロー図を作成し、作業を分類することで全体像を他者と共有できるようになります。

課題整理

可視化により把握できた全体像をもとに、業務の課題を整理します。担当している部署や担当者、原因、考えられる解決方法、影響範囲などについて分析。すでに課題が明確な箇所に限らず、全体を見渡して課題を探ることが重要です。一見、担当者の力量不足に思えるような課題も、全体の構造が影響を及ぼしていることもあります。

見つかった課題は、難易度、規模、部署、担当者など複数の視点で分類しておくと、この後の計画策定の際に役立ちます。

計画策定

業務改善の計画を策定します。見つかった課題からやみくもに手を付けると、思わぬところで弊害が発生し、逆に失敗するリスクもあります。計画を立て、順番に業務改善に着手する必要があります。

業務改善を行う際の具体的な工程やスケジュールは、担当部署・担当者とすり合わせながら作成します。また、業務改善を実行する際は、新しい業務フローなどを記したマニュアルを作ることも事前に決めておきます。そうすることで、業務改善の成果を目に見える形で残せます。

計画実行

計画に沿って改善の取り組みを実行します。業務改善にはさまざまなやり方がありますが、下記はその一例です。

  • 廃止:業務自体をやめる
  • 集約:タイミングや場所を集約する
  • 代替:作業手順や人を入れ替える
  • 移管:業務を切り出しアウトソーシングする
  • 標準化:業務のマニュアルを作成する
  • 簡略化:工数を減らす
  • 自動化:機械、システムを導入する

すぐに実行できるのは「廃止」ですが、業務自体がなくなることで、業務時間の削減はできても、生産性やサービスの品質に悪影響があるかもしれません。「その業務は必要かどうか」と、「業務がなくなったことの影響範囲」を常に考えて実行します。また、「自動化」は、「廃止」や「標準化」などを検討したあとに実施します。無駄な作業を含んだまま、システム移行に踏み切るのを防ぐためです。

振り返り

業務改善を行ったあとは、結果をモニタリングして分析します。一度業務改善を行って終わりにするのではなく、新しい業務フローが機能しているかどうか、新しいシステムが活用されているかどうかなど、その後の状況を踏まえ、PDCAサイクルを回していくことが大切です。

業務改善のフレームワーク

業務改善を行うにあたり、フレームワークを活用すると、物事の本質の見極めや、課題の洗い出しに役立ちます。

QCD

QCDとは、モノやサービスを提供し、企業が利益を上げるうえで重視するべき三つの要素を表したものです。

  • Quality:品質
  • Cost:コスト
  • Delivery:納期

この三つは、相互に関係しており、一つが変化すると別の要素に影響を与えます。たとえば品質を求めすぎると、コストがかさんだり、納期にも影響が出たりします。トレードオフの関係を理解し、バランスを保つことで最適な業務プロセスが構築されます。

図版:QCD

5S

5Sとは、日本の製造業から生まれた概念です。「整理:Sorting」「整頓:Setting-in-Order」「清掃:Shining」「清潔:Standardizing」「躾(しつけ):Sustaining the Discipline」の五つの頭文字をとっています。

  • 整理…必要なモノと不要モノとを分けて、不要なモノを処分すること
  • 整頓…必要なモノを誰でもすぐに取り出せるようにすること
  • 清掃…ゴミ・チリ・ホコリや汚れのないピカピカな状態を維持する活動
  • 清潔…整理・整頓・清掃の3Sの活動を標準化し、維持できている状態
  • 躾…整理・整頓・清掃の3Sの活動が習慣化し、全員がしっかりルールを当たり前に守っている状態

業務改善をする際、「整理→整頓→清掃→清潔→躾(しつけ)」の順に取り組むことで、改善した状態を定着させられます。たとえば、現場を「整理」「整頓」しただけで、その後状態を維持するような活動やマニュアル化してチームで共有するような活動がなければ、すぐに元の状態に戻ってしまいます。5Sのフレームワークを使い、業務改善計画を立てることで、「後戻り」のない改善を行えます。

図版:5S

ECRS(イクルス)

ECRS(イクルス)も製造業の業務改善や業務効率化で取り入れられるフレームワークです。

  • E:Eliminate(排除)
  • C:Combine(結合)
  • R:Rearrange(交換)
  • S:Simplify(簡素化)

上記の四つの視点から業務改善を行います。「排除」は、最も先に検討するべき事項です。業務フローから外しても問題ない作業や、削除するべき業務について検討します。とくに、目的が形骸化して慣習的に行っているような業務を洗い出すのに役立つ視点です。

「結合」では、類似する業務をまとめ、効率化を図ります。分割されすぎている業務を一つにまとめることで、業務効率化につながるケースもあります。「交換」では、作業の順番や担当者の入れ替えで効率化が図れるかを検討します。「簡素化」では、業務プロセスをできる限り簡単にできないかを検討します。自動化やパターン化が実現できれば、大幅なコストカットや作業効率化につながります。

図版:ECRS(イクルス)

ロジックツリー(決定木分析)

ロジックツリーは真因を追求するためのフレームワークです。特定の問題に対し、原因を論理的に分解し分析を行います。一つの問題点から派生するキーワードをツリー状に広げることで、物事を多角的に確認できます。すべての要因や選択肢を明確に整理し、効果的な解決策を導き出すためのツールとして活用されます。視覚的で論理的な思考を促進する点が、ロジックツリーの大きな特徴です。

図版:ロジックツリー(決定木分析)

業務改善のためのツール

ITツールを用いることで、業務の可視化や課題の整理、実行と振り返りの記録などを効率的に行えるようになります。また、業務時間の削減、労働時間の管理などにも効果的です。

業務改善で用いられる主なツールを、機能別・場面別に紹介します。

業務の自動化

入力作業など単純業務の自動化では、RPAを活用します。RPAとは「Robotic Process Automation」の略称で、簡単に言えば「ロボットがパソコン上の操作を自動で行い、人間に代わって業務を遂行してくれるソフトウエア」のことをいいます。

データ入力などの単純作業のほか、給与計算など毎月の提携業務の自動化などに活用されています。パソコン作業の自動化だけではなく、ソフトウエアを横断できる点も特徴です。

社内コミュニケーションの円滑化

社内コミュニケーションの円滑化には、チャットツールやビデオ会議システムが効果的です。メールのやりとりだけでは、重要な用件を見過ごしてしまうなど抜け漏れが発生するかもしれません。メールの文章を書く時間も、積み重なれば業務の弊害となります。

チャットツールは、プロジェクト別やチーム別といった目的に応じたチャンネルを作成でき、話題の整理に役立ちます。スタンプを押すことで意思疎通が図れるなど、作業時間の短縮化にも有効です。また、チャットツールで連絡先の管理やタスクの管理も可能です。コミュニケーション活性化だけではなく、迅速化や生産性向上につながります。

タスクの管理

タスクを管理するためのツールが数多く存在します。従来はバラバラに管理していたプロジェクトやタスクを一括で管理できます。また、タスクの期限や進捗状況などが可視化されるため、個人のタスク管理が楽になるだけでなく、適正な業務の割り振りなどにも役立ちます。

会議や打ち合わせ

会議や打ち合わせを効率的に行うには、オンライン会議ツールを活用します。遠方の参加者とも、移動時間をかけずに会議を行えます。在宅勤務やオフィス勤務など、働く場所を問わず、柔軟な働き方を維持するのにも効果的です。オンライン会議ツールでは、出席者の参加確認も可能です。また、スケジュールを共有することで、会議や打ち合わせの出欠確認、時間調整が簡単に行えるようになります。

ペーパーレス化

マニュアルの電子化ツールを活用することで、ペーパーレス化を進められます。情報が電子化されていれば、他者との共有や更新も簡単に行えます。ペーパーレス化を進めることで、チームで働く生産性の向上が可能です。

営業やマーケティング活動など特定の業務を効率化

営業やマーケティング活動など、特定の業務を効率化するためには、顧客情報を管理するCRM(Customer Relationship Management)ツールや、営業活動に必要な機能を備えたSFA(Sales Force Automation)ツールを活用できます。顧客情報の管理や営業活動履歴の共有が可能で、条件に応じて自動的にメールを送信するなど、活動に合ったアクションを設定できます。特定の業務を自動化したり、システム的に行ったりすることで、業務フローの短縮につながります。

業務改善の事例

最後に、業務改善に取り組んだ事例を紹介します。

テレビショッピング事業で大きく成長したジャパネットホールディングスでは、2015年から本格的な働き方改革に取り組んできました。同社の働き方改革では、働きやすい環境を整えることと、生産性を上げることを重視。まずは22時までにオフィスを出ることを目指し、さらに週2回はノー残業デーとするなど、働き方のルール改善に取り組みました(現在は退勤時間が20時30分にまで繰り上がり、ノー残業デーは週3日)

当初は、現場の社員から多くの反発を受けました。しかし、社長がオフィスを回って、残っている社員に帰宅を促すなど、徹底して課題解決に取り組みました。しばらくすると、現場の業務フローにも変化が現れました。カタログ製作チームでは校正回数を短縮、製作工程を見直し一括で作業するなど、業務効率化に向けた取り組みが行われるようになったのです。さらに、「仕事の選択と集中」を進め、売上が芳しくない商品からインターネット掲載を削除。RPAを活用するなどしたところ、全社で10万時間ほど作業を自動化できました。

一方、業務効率化だけでは社員の雰囲気もギスギスしてしまうことを懸念し、業務中の休息時間の充実とプライベートの充実の支援に注力。社員食堂でヘルシーなメニューを提供したり、自由に使えるマッサージチェアを導入したりと工夫をこらしています。さらに、保養所などの福利厚生も充実しています。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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