業務委託
「業務委託」とは、企業に雇用されるのではなく、企業と対等な立場で、仕事単位で契約を結ぶ働き方のこと。契約形態には、委任契約と請負契約の2種類があります。委任契約は、成果や結果にかかわらず、一定期間に実際に遂行した業務に対して報酬が支払われます。請負契約は、役割を完了させることが任務となっており、納品物や成果物に対して報酬が支払われます。昨今では、企業の人件費削減の流れや働き方の多様化を背景に、業務委託が増加しています。
(2018/2/21掲載)
増加する雇用されない働き方
「業務委託」のメリットとデメリット
働き方に対する価値観が変化しつつあります。キャリアは“会社”で築くものという考え方から、より“仕事”に主軸を置いた、組織にとらわれないフリーランスや複業といった働き方が増えています。クラウドソーシングサービスのランサーズによると、日本におけるフリーランス数は、2016年の1,064万人から約105%増加し、2017年には1,122万人となっています。
多様な働き方が増えるにつれ、業務委託という契約形態もよく耳にするようになってきました。業務委託のメリット、デメリットはどんなものでしょうか。
まず、事業者側のメリットは、発注先の人材と雇用契約を結ぶ必要がないことです。従業員を抱えることで発生する毎月の給与のほか、健康保険や厚生年金、雇用保険といった社会保険料を負担する必要がありません。また、労働基準法の適用外となるため、最低賃金などを考慮する義務がなく、案件ごとの契約となるので、折り合いがつかなければ継続をせずに打ち切ることができます。
一方の受注者側には、時間や場所の拘束がなく自由に働くことができるメリットがあります。自分の得意分野を専門に仕事をすることができるため、会社内の異動のように、希望していない仕事を引き受ける必要もありません。子育てやリモートワークといった、各人のライフスタイルに合わせた働き方に加えて、業務委託は成果主義。努力や実力が認められれば、高収入に結びつくこともあります。
ただし、業務委託で仕事を受ける場合、人事労務面の保障を受けられない、継続的に仕事を受注できる保証がなく不安定である、といったデメリットもあります。また、最低賃金の概念も業務委託には適用されないため、場合によっては低賃金で働くことを余儀なくされるケースもあります。長時間労働が常態化した職場や、危険が伴う仕事が多い職場では、あえて業務委託契約として、労働者を使い捨てるような悪質な企業も存在しているようです。
広がりを見せる多様な働き方に対応するため、政府は検討会などを開いていますが、不当な契約で働く労働者を保護する法整備は、追いついていないのが実状です。会社員としての働き方と、雇用されない業務委託者としての働き方。契約内容をしっかりと吟味し、メリットとデメリットを自分の価値観と照らし合わせて考えることが大切です。

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