勤務制限診断書(本人希望記載型)への対応に関して
いつも大変参考にさせていただいております。
このたび以下の事案が発生しどのように対応すべきかアドバイスいただければと思い相談させていただきます。
1.事案の概要
常勤職員より勤務制限の診断書が提出されたが、内容が本人希望をそのまま反映したものとなっており、時間外・休日勤務の一律拒否や希望業務限定など、従来にない包括的制限を含んでいる。他職員から公平性に関する不満も生じており、職場運営への影響が懸念される。
2.これまでの慣例との違い
過去には、腰痛等により医学的根拠に基づいて一部業務制限を行う診断書が提出され、法人としても合理的配慮を行ってきた。しかし今回は本人希望を反映した内容であり、医学的根拠が不明確で従来の対応とは性質が異なる。
3.法人としての基本姿勢
・業務命令権は法人にあること(労働契約法第7条、就業規則)
・医学的根拠のある制限には合理的配慮義務があること(労働契約法第5条、安全配慮義務)
・本人希望のみの診断書は自動的に配慮義務が発生するものではないと考えている
4.社労士に相談したいポイント
・医学的根拠が不明確な診断書への対応方針(法的リスクを含む)
・医師照会や面談記録など、実務的に有効な対応手順
・配置転換や勤務区分変更を行う場合の留意点
・不当労働行為・差別的取扱いとされないための説明・記録のあり方
・職場秩序と公平性を維持する観点からの実務対応例
・産業医に相談する際のポイント
以上、お忙しいところおそれいりますがご教示いただければと存じます。
投稿日:2025/10/01 11:54 ID:QA-0158955
- Soumuさん
- 東京都/医療・福祉関連(企業規模 501~1000人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1. 法的整理の前提
業務命令権(労契法7条)
業務内容・配置は会社の裁量で決定でき、社員が一方的に「業務を拒否する権利」はありません。
安全配慮義務(労契法5条)
医学的根拠が明らかな健康上の制限については、会社は合理的配慮を行う義務があります。
本人希望のみの診断書
希望をそのまま医師が書いただけの診断書は、法的に「医学的所見」としての効力は限定的です。直ちに配慮義務が発生するわけではありません。
→ したがって「本人希望型診断書」については、医学的根拠を精査し、配慮の必要性と範囲を会社が主体的に判断することが基本スタンスになります。
2. 実務対応手順(推奨フロー)
(1) 医学的根拠の確認
診断書の内容が本人希望に基づくと見られる場合、産業医または主治医への照会を行う。
照会事項例:
制限内容の医学的根拠は何か
その制限は治療上必須か、推奨レベルか
期間はどの程度か(恒常的か一時的か)
制限の範囲を合理的に縮小できないか
(2) 面談の実施
本人・人事・上司で面談を行い、記録を残す。
「診断書の内容が本人希望に基づいている可能性があるため、医師と連携して確認する」旨を説明する。
本人希望は聴き取るが、最終判断は法人が行うことを明確にする。
(3) 産業医・専門医の意見聴取
産業医に「業務適性」「配慮の必要性」「代替業務の可能性」を意見書として残してもらう。
特に「時間外勤務禁止」「休日勤務禁止」といった包括的制限は、医学的根拠がない限り受け入れる必要はない。
(4) 法人判断と文書化
医師意見を踏まえ、法人としての判断(勤務継続・制限範囲・配置転換等)を決定。
本人に対して「医学的所見に基づく範囲で合理的配慮を行うが、本人希望のみの事項は受け入れられない」旨を説明。
面談記録・医師意見・決定理由を文書化し、後日の紛争リスクに備える。
3. 配置転換・勤務区分変更の留意点
配置転換:医学的に制限が必要と判断された場合は、可能な範囲で配慮(軽作業・内勤など)。ただし「本人希望のみ」なら応じる義務はない。
勤務区分変更(短時間勤務化等):本人と合意があれば可能。ただし労働条件変更になるため、書面合意を必ず取得。
公平性への配慮:他の社員に過大な負担がかからないよう、説明を「医師の所見に基づく必要最小限の配慮」であることを明示。
4. 不当労働行為・差別的取扱いを避けるために
「本人希望のみの診断書=即拒否」とせず、一度は医学的根拠を確認するプロセスを踏むことが重要。
記録化が最大の防御。
面談記録(日時・出席者・本人意見・会社判断)
医師照会文書・回答
産業医意見書
「合理的配慮はしたが、本人希望すべてを受け入れる義務はない」という判断のプロセスを残すことがリスク低減になります。
5. 職場秩序と公平性を維持する観点
他職員の不満を和らげるには、「本人希望ではなく医学的必要性に基づく制限であること」を職場全体に周知できるように説明を工夫。
個別事情に基づく制限は「医師意見に基づき会社が判断したもの」であると明示。
6. 産業医に相談する際のポイント
「診断書が本人希望をそのまま反映した内容である可能性が高い」ことを前提に意見を求める。
「具体的にどの業務ができないのか」「どの業務なら可能か」「制限の医学的合理性」について回答を依頼。
曖昧な意見書(『配慮してください』だけ)ではなく、医学的根拠に基づいた具体的な所見を求めること。
7.結論
「命じることがある」と同様に、本人希望型診断書は会社が自動的に従う義務はない。
法人としては
医師照会で医学的根拠を確認
本人と面談して意見を聴取
産業医の意見を踏まえ法人として判断
文書で理由を残し、職場の公平性に配慮
というプロセスを経ることで、安全配慮義務と職場秩序の両立を図るのが適切です。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/01 14:22 ID:QA-0158980
相談者より
お忙しいところご回答ありがとうございました。
参考にさせていただきます。
直近で「医師に頼んでこういった診断書を書いてもらうと残業や休日出勤や職場異動等をしなくて済むよ」等、職員間で情報共有され、特定の職場から何名かそういった診断書が出されて、業務運営にも支障をきたす事態となっています。その職場で働く職員から情報提供があり対応をどうすべきか検討していました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/06 10:17 ID:QA-0159168大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
・医学的根拠が不明確な診断書への対応方針(法的リスクを含む)
まず、なぜ医学的根拠が不明確であると判断したのでしょうか。
医師が書いた診断書であれば、医学的根拠があるはずです。
・医師照会や面談記録など、実務的に有効な対応手順
本人同意のもと、病院に同行するなどの選択肢があります。
・配置転換や勤務区分変更を行う場合の留意点
会社として可能なのかどうかで、ムリに変更を行うことまでは求められていません。
・不当労働行為・差別的取扱いとされないための説明・記録のあり方
内容が本人希望をそのまま反映しているとしている根拠を示すことです。
・職場秩序と公平性を維持する観点からの実務対応例
就業規則を根拠として対応してください。
・産業医に相談する際のポイント
主治医の診断書をベースに、産業医として職場環境については主治医より詳しい
と思われますので、勤務制限が必要かどうかを判断してもらい、最終的には、
会社が判断してください。
投稿日:2025/10/01 16:28 ID:QA-0158983
相談者より
お忙しいところご回答ありがとうございました。
参考にさせていただきます。
直近で「医師に頼んでこういった診断書を書いてもらうと残業や休日出勤や職場異動等をしなくて済むよ」等、職員間で情報共有され、特定の職場から何名かそういった診断書が出されて、業務運営にも支障をきたす事態となっています。その職場で働く職員から情報提供があり対応をどうすべきか検討していました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/06 10:17 ID:QA-0159169大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、当方では限られた情報しか知りえませんので、各々端的かつ一般的なポイントの回答に留まる旨ご了承下さい。
その上で各々回答させて頂きますと、
・他の専門医や産業医の意見を確認された上での判断が妥当
・都度確認された事項等については記録を残しておく事が必須
・配置転換等についてはあくまで健康配慮の観点から実施するものであり、当人に対してもその旨丁寧な説明が必要
・上記も含め、採られた措置については全て明確な理由付が必要
・産業医には診断書の客観的な妥当性の有無の確認が必要
といった事になるでしょう。
また、職場秩序と公平性の維持に関しましては、従業員への対応を図る際には当事案に限らず常に問題となる事ですし、上記でも触れましたように、何よりも対応に関わる明確な理由が存在している事が必要といえます。たとえ当人の要求が広範囲に渡るものであっても、それに相当する客観的根拠が有れば、問題になるものではないはずです。個別の実務例を参考にされるというよりも、そうした当たり前の事をきちんとされておかれるのが最重要といえます。
投稿日:2025/10/01 21:32 ID:QA-0158996
相談者より
お忙しいところご回答ありがとうございました。
参考にさせていただきます。
直近で「医師に頼んでこういった診断書を書いてもらうと残業や休日出勤や職場異動等をしなくて済むよ」等、職員間で情報共有され、特定の職場から何名かそういった診断書が出されて、業務運営にも支障をきたす事態となっています。その職場で働く職員から情報提供があり対応をどうすべきか検討していました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/06 10:18 ID:QA-0159170大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
参考判例
以下、回答いたします。
(1)労働者も労働契約を履行する義務があります。私傷病により従来の業務を履行することが出来なくなった場合、直ちに債務不履行となるのでしょうか。次のような判例があります。(片山組事件 最高裁判決 1998年4月9日)
※労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当。
(2)本件の場合、以上を踏まえれば、まずは、上記の「当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務」の有無、「労務の提供」の可否について、産業医の意見を踏まえつつ、検討することが重要であると考えられます。その上で、本人の(労務提供の) 意思を確認することになるものと認識されます。
そして、こうした中で、例えば、本人の同意のもと、産業医から主治医に対して照会等がなされるものと考えられます。
(3)仮に、こうした条件に合致しないようであれば、休職(解雇の猶予)について検討せざるを得ないものと思われます。
投稿日:2025/10/01 23:37 ID:QA-0158999
相談者より
お忙しいところご回答ありがとうございました。
参考にさせていただきます。
直近で「医師に頼んでこういった診断書を書いてもらうと残業や休日出勤や職場異動等をしなくて済むよ」等、職員間で情報共有され、特定の職場から何名かそういった診断書が出されて、業務運営にも支障をきたす事態となっています。その職場で働く職員から情報提供があり対応をどうすべきか検討していました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/06 10:18 ID:QA-0159172大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
そもそもですが、提出された勤務制限の診断書の内容が本人の希望をそのまま反映したものとみなす根拠はどこにあるのでしょうか。
医師が診断書を書く場合、本人の希望どおりに記載するというのは基本的には考えられず、医師自身が診断した結果をそのまま文書化するのが普通ですから、医師が書いた診断書がそのまま医学的根拠となり得ます。
・医学的根拠が不明確な診断書への対応方針(法的リスクを含む)
医学的根拠が不明確とのことですが、医師が書いた診断書だからこそ、 医学的根拠があります。
・医師照会や面談記録など、実務的に有効な対応手順
御社が一番納得できる手段ということでいえば、本人同行で医療機関で改めて診察してもらうといったことも物理的には可能といえますが、ただし、本人の同意が大前提です。
言い方次第で、トラブルに発展する可能性は大ですので、慎重な対応が望まれます。
・配置転換や勤務区分変更を行う場合の留意点
本人と面談し、丁寧に説明したうえで、本人が自由な意思で同意するのであれば、変更は可能です。
・不当労働行為・差別的取扱いとされないための説明・記録のあり方
本人の希望に沿った取扱いであることを丁寧に説明し、同意を得ることです。
・職場秩序と公平性を維持する観点からの実務対応例
就業規則の規定に従い対応するのが常道です。
・産業医に相談する際のポイント
提出された診断書をベースに勤務制限の必要性があるか否かを判断してもらうことになるでしょうが、ただし、産業医の意見はあくまで参考意見、最終的には御社が判断することになります。
投稿日:2025/10/02 09:42 ID:QA-0159021
相談者より
お忙しいところご回答ありがとうございました。
参考にさせていただきます。
直近で「医師に頼んでこういった診断書を書いてもらうと残業や休日出勤や職場異動等をしなくて済むよ」等、職員間で情報共有され、特定の職場から何名かそういった診断書が出されて、業務運営にも支障をきたす事態となっています。その職場で働く職員から情報提供があり対応をどうすべきか検討していました。参考にさせていただきます。
投稿日:2025/10/06 10:19 ID:QA-0159173大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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