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【ヨミ】ハイチテンカン

配置転換

配置転換とは?

同一企業内で従業員の所属部署、職種・職務の内容を変更することです。配置転換の主な目的は、組織の活性化と人材育成です。適材適所の人材配置をすることで、企業としての生産性が向上。対象となる従業員はさまざまな業務を経験することでキャリアの幅を広げることができます。配置転換は企業の人事権に基づいて行われるため、原則として本人の同意は不要です。ただし、就業規則に定めがない場合や、業務上必要のない配置転換などは無効とされる可能性があるため、注意しなければなりません。

掲載日:2024/07/31
配置転換イメージ

配置転換とは

配置転換とは、同一企業内で従業員の所属部署や職種・職務の内容を変更することを指します。異動や転勤なども含まれます。配置転換に類似した用語としては、以下のようなものがあります。

【配置転換に類似した他の用語】
用語 意味
異動 人事にかかわるポジション変更の総称。配置転換も異動の一種
職種変更 職種が変わる異動のこと
転勤 従業員の勤務地を変更すること
出向 会社に籍を置いたまま他社で業務を行うこと
転籍 元の会社との労働契約を解消し、別の会社と新たに労働契約を結ぶこと
昇格・降格 従業員の地位や役職、職務等級を変更すること
昇進 役職が高くなる人事異動のこと
免職 公務員の職を免じ解雇させられること
解雇 企業が一方的に労働契約を終了させること

配置転換の目的

配置転換の目的は、人材育成と組織の活性化です。従業員に異なる職務や職種の経験を積ませることで、キャリア開発が実現できます。組織に新たな従業員が加わることで新しい社内ネットワークを構築できるなど、組織の活性化にもつながります。

たとえば、新入社員に対しては、仮の配属先で適性を見極め、数ヵ月の研修を経たのちに本配属を行うことがあります。これは、新入社員の適性・能力に応じた配置を目的とした、適材適所を図るための配置転換です。幹部候補生に対する配置転換では、さまざまな部署を経験させることで横断的な社内ネットワークを構築し、中長期的な組織の発展に寄与することを期待しています。中堅社員の配置転換では、いわゆる「セカンドキャリア」など、新たなキャリアの構築を目的とするものもあります。

このように、配置転換の目的は一つではありません。従業員が同じ部署で同じ職務に長く就くことは、組織としては不正が発見しにくくなる可能性があるため、定期的に配置転換を行う企業もあります。配置転換の目的は、組織が実施するタイミングや、対象となる社員によって異なるのです。

配置転換のメリット・デメリット

配置転換には、組織の活性化や人材育成が実現できるというメリットがあります。一方、目的や必要性のない配置転換や従業員の希望を尊重しない、組織都合の一方的な配置転換は、従業員のモチベーションが低下させるというデメリットがあります。

配置転換のメリット

配置転換には以下のメリットがあります。

組織の活性化

配置転換を行うことで、業務のマンネリ化を防ぐことができます。従業員は、同じ業務、同じ人間関係が長年続くと、経験値は蓄積する一方、気のゆるみが生じることもあるでしょう。配置転換で新しい業務にチャレンジすることにより、従業員は気持ちを新たにして仕事に取り組むことができます。配置転換で担当者が変わることで、組織としては新たな視点から改善点が見つかることもあります。業務の属人化を防止し、横領や汚職などを防ぐ効果も期待できるでしょう。

人材育成

配置転換により異なる分野の部署、業務を経験することは、人材育成につながります。新しい職種や職務の経験を積めるため、キャリアに広がりが出ます。これまでの部署で成果を発揮できなかった人材が、配置転換により適性のある業務に就くことで、高いパフォーマンスを発揮するかもしれません。配置転換を検討する際は、対象となる従業員の経歴や適性などを考慮したうえで、キャリア形成を考えることが重要です。

イノベーションの創出

配置転換によって新たな人材がチームや部署に配属されることで、これまでとは異なるアイデアや企画が生まれる可能性が高くなります。業務のやり方を刷新し、生産性が向上するなど、組織に新たな風を送り込む効果も期待できるでしょう。

デメリット

配置転換には以下のデメリットがあります。

一時的な生産性の低下

新しい職場や業務に携わることで、一時的に従業員の生産性が低下する可能性があります。新たに配属された従業員が、短期間で成果を出せるようにするには、オンボーディング研修の実施やマニュアルの整備が重要です。配置転換を実施する際は、対象となる従業員への教育体制を整えるなどの配慮も必要なのです。

従業員のモチベーション低下

意に沿わない配置転換の場合、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。従業員が期待していた職種や条件、業務内容と実際に差異があった場合、配置転換そのものに不満を感じるかもしれません。配置転換で辞令を出す際には、目的や従業員に期待することを会社から伝えることが重要です。

配置転換の進め方

基本的な配置転換の進め方とポイントについて解説します。

配置転換の進め方

就業規則などの整理

配置転換を命じる場合は、就業規則に「業務上必要がある場合、就業する場所および従事する業務の変更を命ずることがある」旨の規定があり、それが周知されていなければなりません。労働条件通知書や労働契約書などに配置転換の範囲について記載しておく必要もあります。就業規則に配置転換を命じる根拠があっても、労働契約書などに記載がない場合、配置転換の法的な正当性が疑われるケースもあります。

2024年4月1日から、労働基準法施行規則の改正により、企業が明示するべき労働条件のルールが変更になりました。2024年4月1日以降は、労働契約締結の際(有期契約の場合は更新時も含む)、雇用するすべての労働者に対して、就業場所と業務の内容に「変更の範囲」を明示する必要があります。労働条件に明示されていない配置転換はトラブルの原因となる可能性があるため、注意が必要です。

企業が明示するべき労働条件のルールが変更

厚生労働省資料より

候補者のリストアップ

人員計画に沿って配置転換の候補者をリストアップします。人員の配置計画では、従業員の経験や適性のほか、本人のキャリアの要望を踏まえながら、経営戦略を達成するための配置を実現させることが重要です。従業員の経歴や業績のほか、過去の面談内容などを基に検討します。

内示

対象となる従業員に内示を行います。明確な期限はありませんが、転居を伴わない場合、異動の2週間前、家族を含め転居が必要な場合は3ヵ月から1ヵ月前の内示が目安です。内示の際、配置転換の理由を従業員に伝え納得性を持たせることが、本人の動機形成・理解促進につながります。

辞令

正式な辞令を交付します。メールや社内報、社内ポータルサイトなどを利用し、全社に公表します。現所属部署の解任日と異動先部署への異動日を同日にするのが一般的です。

従業員が配置転換を拒否したらどうするか

配置転換は、会社の人事権に基づく業務命令として実施されます。配置転換について明記した就業規則の内容に合理性があれば、それが労働契約の一部となるため、会社は本人の同意なく配置転換を行うことができます。従業員も、配置転換の命令に従わなければなりません。

就業規則に配置転換の定めがない場合は、配置転換命令権を企業が行使できないため、無効となる可能性があります。本人の同意が不要といっても、育児や介護の問題で本人が拒否するケースも考えられます。その場合、お互いにとって不本意な結果にならないよう慎重に対応する必要があります。

従業員が配置転換を拒否した場合、納得が得られるよう以下の対応を行います。

【配置転換を拒否された場合の対応】

  • 拒否の理由を確認:
    個別面談の場を設け、なぜ拒否するのかについて本人と対話を行います。その際、詰問するような聞き方は恫喝(どうかつ)や脅迫、ハラスメントと捉えられる可能性があるので避けます。
  • 配置転換の理由を説明:
    企業として、配置転換を行う意図を伝えます。本人に期待する役割を言語化して説明します。
  • 待遇改善などを検討:
    本人の意思を踏まえ、配置転換に関わる待遇を改善できるかを検討します。検討内容を伝え、再度配置転換を打診します。

一方的な企業の命令として配置転換を行うのではなく、本人に納得感を持たせ、環境を整備し、柔軟に対応することが重要です。

配置転換が違法になる場合

就業規則に配置転換の規定があっても、以下に該当する場合、会社が権利を乱用したとして配置転換が違法になる可能性があります。

業務上の必要性・合理性に欠ける

家族の妊娠・出産・介護で配慮が必要な従業員に対して理由もなく配置転換を行うなど、業務上必要性・合理性のない配置転換は無効とされます。従業員の能力開発や組織の業務効率化、企業の業況悪化時の雇用維持など、会社の合理的な運営を目的として行われる配置転換は有効とされる傾向にあります。

私怨(しえん)などの不当な動機や目的がある

一見業務上必要があるように見える配置転換でも、従業員に嫌がらせをする意図で行われるものは無効となります。内部通告をした従業員にペナルティーとして行う配置転換や、退職に追い込むために経歴にふさわしくない業務を担当させる配置転換などが該当します。

従業員が著しい不利益を被る

配置転換の結果、従業員が著しい不利益を被る場合も、配置転換が無効になる可能性があります。たとえば、転勤によって家族の介護が不可能となるようなケースでは、従業員が被る不利益が大きいため、配置転換が無効と判断される可能性が高まります。一方、転勤による子の転校、引っ越しなどが伴ったとしても、企業で常態的に行われている配置転換であれば、有効と判断される傾向にあります。

特定の職種に限って働く従業員に一方的に命じる(最高裁の判例)

2024年4月に、特定の職種に限って働く従業員に対して、企業が別の職種への配置転換を命じた件で、最高裁判所は従業員の同意のない配置転換は違法とする判断を下しました。ジョブ型雇用のように、業務内容・職種を限定する労働契約において、配置転換を行う場合は、本人の同意を重要視するという判例です。今後、専門職を雇用する企業は、配置転換を行う際に、労働契約や就業規則を見直し、慎重に対応することが求められます。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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この記事ジャンル 異動・配置関連制度

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