雇用契約の回収代替方法について
現在弊社では5000人の従業員を雇用していますが、勤務地や給与の変更が多く、年間5,000件程の雇用契約書を発行しています。従業員は現場への直行直帰のため、紙の雇用契約書を郵送で送付しています。電子契約としたいのですが、従業員のリテラシーの問題もあり、進んでおりません。
郵送されている雇用契約書については、郵送しても返送しない(後回しにして忘れる、郵送物を確認していない)従業員が一定数おり、問題となっています。再送したり電話をしても中々回収の目途がつきません。
この問題を解決するために、営業担当が労働条件が変わった際にLINEやメールで「勤務地」「勤務時間」「契約期間」「賃金」を記載して承諾した旨の返信をもらうことでエビデンスとして残し、法的根拠としたいと思っています。※雇用契約書は別途郵送したうえで返送もらうようにします。
この場合、何か問題等ありますでしょうか?
投稿日:2025/08/05 14:46 ID:QA-0156382
- rrikさん
- 東京都/その他業種(企業規模 301~500人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
LINEやメールで勤務地・勤務時間・賃金等の変更内容を明示し、
承諾の返信をもらう方法は、証拠としては有効ではあります。
そして、郵送記録の残る手段での契約書の郵送+LINEでの承諾取得という
運用方法であれば、法的義務は満たしていると考えられます。
他案としては、貴社のような従業員数、支店数が多い場合、各支店に
人事担当がいない限り、回収も一筋縄ではいきませんので、現実的な
回収督促については、現場所属の上長が行うといった会社も多く見られます。
当方の経験上も、本社担当が催促するよりも、現場上長経由で催促した方が、
圧倒的に回収がスムーズです。
または、雇用契約書をお送りする際、返送が無ければ内定取り消しの可能性が
ある旨等、より返送しなければいけないといった意識をもってもらう工夫をする
ことで、回収率も上がるようにも思えます。
投稿日:2025/08/05 17:32 ID:QA-0156410
相談者より
ご回答ありがとうございます。大変参考となりました。
投稿日:2025/08/06 09:15 ID:QA-0156431大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
ご相談の件について、結論から申し上げますと、LINEやメールによる合意の証拠化は「一定の法的効力を持つ」と評価される可能性はあるものの、正式な雇用契約としては限定的なものにとどまるリスクがあり、慎重な対応が必要です。
以下、ポイント別に詳しくご説明いたします。
2. 雇用契約の成立と形式の原則
日本の労働契約法上、雇用契約は書面でなくても「口頭」や「LINEやメール」などでの合意でも成立します。
しかし、労働基準法第15条により、以下の事項については書面による明示が義務付けられています(電子交付も可)。
【書面による明示義務のある労働条件】
労働契約の期間
就業の場所および従事すべき業務
始業・終業の時刻、残業の有無、休憩・休日等
賃金の決定・支払・計算方法、締切・支払時期
退職に関する事項(解雇を含む)
→ LINEやメールのみでこれらの条件を提示・同意を得た場合は、労基法第15条違反に該当する可能性があります。
したがって、正式な雇用契約書の交付は必須です。
3.. LINEやメールによる承諾の効力
法的エビデンスとしての価値
労働条件通知書(雇用契約書)を郵送し、そのうえでLINEやメールで「見た」「同意した」と返信をもらう行為は、
契約締結意思があったことの証明として
後々トラブルとなったときの補完的証拠として
労使双方の合意を示す資料として
→ 一定の証拠価値は認められる可能性があります。
注意点
労働基準監督署への対応や訴訟・紛争になった際には、「書面交付がされていたか」が重視されるため、LINE・メールのみでのやりとりは正式な手続きとは見なされません。
さらに、本人確認がLINEやメールだけでは難しい点もリスクです(なりすまし等)。
4. 雇用契約書の未返送対策としての妥当性
【対応策としては「補完的手段」として有効】
本来の雇用契約書とは別に、労働条件変更時にLINEやメールで内容を伝え、
- 「確認した」
- 「この条件で了承します」
といった返信を得ることで、少なくとも本人が条件を把握し同意したことを記録できる点で有効です。
ただし、この方法を主とせず、雇用契約書の回収をいかに電子化・効率化していくかが中長期的な課題です。
5. 解決策・改善案
短期的対応(現状への対処)
雇用条件変更時、LINE・メールで「重要な労働条件(4点)」を箇条書きで通知し、「確認・承諾返信」をもらう
返信はスクリーンショットで保存・管理(できれば人事システムと連携)
雇用契約書は引き続き紙で郵送し、署名返送を促す(再送・電話の運用は継続)
中長期的対応(体制整備)
電子契約サービスの導入(GMOサイン、クラウドサイン等)
- メールでも対応可能なサービス多数
- 本人認証・ログ管理機能があり、法的にも安定性あり
従業員リテラシーへの対策
- LINEを使った操作マニュアル作成
- 初回契約時や研修時に「電子契約の使い方」説明
6. その他の注意点
雇用契約書の未返送を放置しない:
→ 労働条件のトラブル(未払い賃金請求・労働時間相違など)時に、会社側に不利になるリスクが非常に高いです。
就業規則・雇用契約書には、労働条件変更時の「書面通知の義務」や「承諾方法」に関する規定を盛り込むとベターです。
7.まとめ
観点→LINE・メール通知と同意返信
雇用契約の成立→成立は可能だが、労基法15条上は不十分
法的証拠性→一定の補完的証拠力あり
推奨される活用法→雇用契約書の返送を得られるまでの補完的手段として利用
リスク→なりすまし、内容誤認、本人確認困難、監督署対応に不備
改善策→電子契約導入+本人確認強化+リテラシー教育
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/05 17:40 ID:QA-0156411
相談者より
ご回答ありがとうございます。大変参考となりました。
投稿日:2025/08/06 09:15 ID:QA-0156432大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
契約の方式
以下、回答いたします。
(1)民法は「契約の成立と方式」に関して次のように定めています。これに基づけば、今回の御提示の方法は法的根拠になりうるものと認識されます。
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
(2)因みに、労働基準法が定める「労働条件通知書」については、原則、書面の交付が必要とされています。ただし、労働者が希望した場合は、以下のような方法で明示することができます。こうした点からも、今回の御提示の方法は社会的相当性が認められうるものと考えられます。
1)FAX
2)Eメールや、Yahoo!メール、Gmail等のWebメールサービス
3)LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージ機能等
投稿日:2025/08/05 17:46 ID:QA-0156412
相談者より
ご回答ありがとうございます。大変参考となりました。
投稿日:2025/08/06 09:15 ID:QA-0156433大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、法的に義務付けられている労働条件の明示に関しましては、メール配信でも可能とされています。
但し、労働者本人の同意を得る事、及び配信内容が文書で出力可能な形式になっている事が求められます。
そして、有効なメール配信をされていれば、雇用契約書の交付については不要になります。
投稿日:2025/08/05 19:01 ID:QA-0156416
相談者より
ご回答ありがとうございます。大変参考となりました。
投稿日:2025/08/06 09:16 ID:QA-0156434参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
雇用契約書につきましては、有期契約の更新でない限りは、
雇入れ時だけの発行で問題ありません。
勤務地や給与の変更だけであれば、
給与辞令を発行すればよろしいでしょう。
給与辞令であれば、不利益変更等を除き、通知だけでも問題はありません。
投稿日:2025/08/05 19:13 ID:QA-0156418
相談者より
ご回答ありがとうございます。大変参考となりました。
投稿日:2025/08/06 09:16 ID:QA-0156435参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
何も問題はありません。
雇用契約は、基本的には、「労務の提供」と「報酬の支払い」等労働条件に関して、労使双方の意思の合致があれば口頭でも成立するものであり、法律上も雇用契約書の作成は義務づけられてはおりません。
LINEやメールで「勤務地」「勤務時間」「契約期間」「賃金」を記載して承諾した旨の返信をもらうことで、契約は成立します。
雇用契約書は別途郵送し、返送してもらうことで差し支えはございません。
投稿日:2025/08/06 08:56 ID:QA-0156429
相談者より
ご回答ありがとうございます。大変参考となりました。
投稿日:2025/08/06 09:16 ID:QA-0156436参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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