母性健康管理の措置について
表記の件につき当社規則上、社員に対しては
「通院時間、勤務時間の短縮の措置の賃金の取扱いは、これに要した時間のうち1時間は有給とし、1時間を超える時間については無給とする。なお、休暇については無給とする。」
とありますが、パートについては全て無給となっています。
お恥ずかしい話、社内で規則作成した際のその経緯が不明なのですが、処遇差異を設けることに今後同一労働同一賃金に反するリスクはございますでしょうか?
投稿日:2025/10/22 12:58 ID:QA-0159773
- 総務の課長さん
- 東京都/その他メーカー(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
判断
同一労働同一賃金の原則は、その合理性にあります。正社員とパートの待遇の違いを合理的に説明できるかどうかで判断されます。ご提示内容だけでは差をつける理由が思いつきませんが、貴社の経営方針としてあらためてご確認いただくべきでしょう。
過去の経緯ではなく、現在の状況として裁判でも勝てるだけの理由がなければ、廃止すべきと思います。
投稿日:2025/10/22 14:06 ID:QA-0159782
相談者より
参考になりました。
今後検討していきます。
投稿日:2025/10/22 14:50 ID:QA-0159788大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
母性健康管理措置における「正社員とパート社員との賃金取扱いの差異」については、現行法上も今後の同一労働同一賃金の運用強化の観点からも、注意を要する論点です。以下の通り、ご説明申し上げます。
1.母性健康管理措置の法的根拠
母性健康管理措置は、労働基準法第65条第3項および男女雇用機会均等法第13条に基づき、妊娠・出産に関連する女性労働者の健康確保のために事業主が講ずべき義務的措置です。
男女雇用機会均等法第13条
「事業主は、妊娠中又は出産後の女性労働者から、医師等の指導に基づく措置の申出があった場合には、必要な措置を講じなければならない。」
この「必要な措置」には、
通勤緩和
通院時間の確保
勤務時間短縮
休暇の付与(つわり休暇など)
などが含まれます。
2.法令上「有給・無給」の規定はない
母性健康管理措置について、法律上は賃金支払い義務が明記されていません。
つまり、「有給とするか無給とするか」は、会社の裁量に委ねられています。
厚生労働省も以下のように明示しています:
「母性健康管理措置により労働時間を短縮又は休業させた場合の賃金の取扱いについては、法令に特段の定めはない。」
(厚生労働省「母性健康管理措置のあらまし」より)
したがって、無給扱いとすること自体が直ちに違法ではありません。
3.ただし、同一労働同一賃金との関係に注意
問題は、正社員とパートタイマーで取扱いに差を設ける合理性が問われる点です。
これは「パートタイム・有期雇用労働法(旧・短時間労働者法)」第8条・第9条に基づく待遇差の不合理禁止原則に関わります。
第8条(不合理な待遇の禁止)
「事業主は、職務内容・人材活用の実態等を考慮して、短時間・有期雇用労働者の待遇を正社員と比較して不合理に相違させてはならない。」
4.このケースにおける法的評価のポイント
観点→評価→解説
法令上の賃金支払い義務→× 義務なし→無給取扱いも可能
同一労働同一賃金の観点→△ 要注意→差の合理性説明が求められる
説明の要点→「業務内容・責任の程度・人材活用の実態が異なるため」など→正社員とパートの業務・責任の差が明確であれば一定の合理性あり
留意点→母性健康管理措置は「福利厚生・健康配慮」に近い性質→近年はパートにも一定の有給取扱いを広げる企業が増加傾向
5.実務上のリスクと推奨対応
・リスク
労働局(雇用環境・均等部)による「待遇差に関する行政指導」対象となる可能性。
パート社員からの「不合理な待遇差」申立て・紛争調整委員会あっせん申立てのリスク。
・ 推奨対応
以下のような検討が望まれます:
規定理由の明確化
例:「正社員は職務内容・勤務時間の柔軟性が低く、代替要員確保が難しいため、健康配慮を有給で行う運用としている」等
運用上の公平性担保
可能であれば、パートにも一定時間(例:1時間分)を有給とする等の見直しを検討。
説明責任の確保
パート社員に対して、待遇差の理由を文書または面談で説明できる体制を整える(法第14条の「説明義務」)。
6.実務上の「安全運用」モデル例
「通院時間、勤務時間の短縮の措置については、労働時間中に行われる場合、これに要した時間のうち1時間までは有給、それを超える部分は無給とする。
正社員・パートタイム労働者の別なく同様に適用する。」
このようにしておけば、不合理な待遇差リスクを最小化できます。
7.まとめ
論点→現行規定の評価→改善方向
法的違法性→なし(母健措置は無給可)→問題なし
同一労働同一賃金上のリスク→あり(差の合理性説明が弱い)→パートも同様の基準適用が望ましい
行政対応上の推奨→差の合理性説明・社内規程の整理→労働局調査対応に備え文書整備
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/10/22 14:36 ID:QA-0159785
相談者より
論点整理いただき参考になりました。
いただいた内容を元に、社内で検討していきたいと思います。
投稿日:2025/10/22 14:49 ID:QA-0159787大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
職務内容や変更の範囲が正社員と同じか近いパート社員に対して、この措置に
おける賃金取扱いのみを無給とすることは、その他の事情を含めても合理的な
説明が難しく、不合理な待遇差として、パートタイム・有期雇用労働法に違反
すると判断される可能性はあります。
最高裁判例でも、病気休暇や夏季・冬季休暇など、正社員に支給されていた手当
や休暇が、職務内容等の違いから合理的な説明ができないとして、非正規社員へ
の不支給が違法とされたケースもあります。母性健康管理措置の賃金取扱いの差異
も同様に問題視される可能性があります。
合理的な格差が明確でない場合は、リスクを払拭するには、差を設けない方が、
良い問題と言えるでしょう。
投稿日:2025/10/22 20:07 ID:QA-0159800
相談者より
頂いた見解を参考に改定を視野に検討いたします。
投稿日:2025/10/23 09:29 ID:QA-0159810大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、母性健康管理の措置に関しましては、性質上雇用形態の相違によって異なる措置を採られる合理性は乏しいものと考えられます。
従いまして、直ちに違法行為になるとまでは言い切れませんが、やはり今後については正社員と同様の処遇にされるのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2025/10/22 22:13 ID:QA-0159805
相談者より
ありがとうございました。
投稿日:2025/10/23 09:29 ID:QA-0159811大変参考になった
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回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
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