定年後再雇用について
プロフェショナル各位
いつもお世話になっております。
現職では60歳定年、再雇用65歳迄、65歳以降は再々雇用可となり定年後は有期雇用契約となります。
再雇用者は基本給80%~70%掛けとしております。
実質業務は変わらず、フルタイム勤務となります。
再々雇用の際は、公的年金年額を年収から控除した金額から基本給を引き直ししております。実質業務は変わらず、原則フルタイム勤務です。
いずれも雇用延長の際は対象者に面談を実施しております。
ご質問ですが、同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指すものかと思いますが弊社の運用に法的な問題ありませんでしょうか。
お手数をおかけいたしますがご教示賜りたく存じます。
投稿日:2025/11/21 07:50 ID:QA-0160991
- ふゆちゃんさん
- 東京都/精密機器(企業規模 31~50人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご説明申し上げます。
1.前提:定年後再雇用は「労契法20条(同一労働同一賃金)」の対象
労働契約法20条(現:パート・有期労働法8条)は、
有期労働者と無期労働者との待遇差が「不合理」かを判断する規定です。
定年後再雇用者は
有期雇用契約
雇用継続の必要性に基づき賃金水準を引き下げるケースが典型
であり、まさに労契法20条の代表的な対象です。
2.裁判例の流れ(重要ポイント)
定年後再雇用の賃金をめぐる主要判例は次の通りです。
(1)長澤運輸事件(最判H30.6.1)
定年後再雇用者の賃金引下げは一定の合理性があれば許容
ただし、「職務内容・責任・配置変更範囲」が原則変わらない場合は
“機械的に乗ずるだけの大幅減額”は不合理になり得る
公的年金の受給状況を賃金決定の要素に用いることは
合理性要素として一定程度認められる
(2)日本ヒューマンメディス事件(大阪地裁R3)
定年後再雇用者の賃金30~40%減額は「説明不足」で違法側に傾いた
(3)その他(電機・製造・自治体関係など)
再雇用者への賃金引下げは一般的に相当程度認められている
ただし、「説明責任を果たせているか」が最重要
3.御社の運用の整理
ご相談の内容をポイント化すると:
(1)60歳定年 → 65歳まで再雇用(有期)
(2)基本給の 70~80%水準
→ 減額幅としては一般水準内(問題なし)
(3)実質業務は変わらずフルタイム
→ 業務変更がない場合は、
減額根拠がより強固である必要があります
(4)再々雇用(65歳以降)は
「年金年額を年収から控除した金額」で基本給を再算定
→ 長澤運輸事件において
完全に否定はされておらず、一定の合理性は認められる方向
(5)面談(説明機会)を実施
→ 非常に重要でプラス要素
4.法的に問題となる可能性のあるポイント
結論を先に述べると、御社運用は大筋で適法範囲に収まるものの、
次の2点が弱点となり得ます。
【ポイント1】
・業務内容・責任・配置範囲が「在職時と完全に同一」の場合
減額率70~80%が、
“なぜその割合なのか”の合理的説明が必要となる。
長澤運輸事件では、
「業務が同一だからといって賃金を全く同一にする義務まではない」
としたものの、
「企業側が減額理由を明確に説明することが必要」
と強調しています。
御社では
定年後の能力低下
配置転換や役職手当の不支給
責任の軽減(指導業務の縮小等)
安全配慮コストの増大
継続雇用義務とバランス(雇用の場の確保)
などを「合理的理由」として整理しておくと安全です。
【ポイント2】
・65歳以降「年金額を基準に賃金再算定」は、合理性はあるがリスクもある
長澤運輸事件では
「企業年金・公的年金の受給見込みを勘案することは不合理とはいえない」
としました。
ただし、
“年金額=賃金の控除基準”を機械的に使いすぎると危険です。
→ ポイントは
「年金があるから賃金を減らす」のではなく
「高齢期の生活保障の実情を踏まえつつ、総合的に処遇を設計した」
と説明できるかどうかです。
この説明ができれば、御社の方式は十分整合します。
5.御社運用の法的評価(
・御社の運用は
「適法の範囲に十分入り得る」
ただし、“説明の仕組み”を強化しないと不合理性を指摘される余地がある。
6.実務上の改善ポイント(すぐにできる対応)
(1)「賃金引下げの合理的理由」を明文化する
説明書・面談記録・就業規則等で次を整理する:
60歳以降の能力変化の一般性
若年層と異なる期待役割
責任範囲の縮小
指導業務・管理業務の負担軽減
安全教育・健康管理コストの増加
継続雇用制度の目的(契約自由の制限との調整)
年金受給による全体的生活保障の変化(65歳以降)
これらを総合的に説明できれば、賃金水準の正当性が確保されます。
(2)面談記録の整備
どのように説明したか
本人がどう理解したか
質問内容
合意形成の過程
が重要。裁判では“記録の存在”が決定的になります。
(3)就業規則や賃金規程に「定年後処遇の考え方」を明記
厚労省の「公正な待遇を確保するための指針」でも推奨事項です。
(4)65歳以降の「年金控除方式」は“健康・能力・社会情勢も考慮する”旨を追記
年金のみを基準にしている印象を避けるためです。
7.最終まとめ
定年後再雇用の賃金引下げは、判例上も一定の範囲で認められています。
ただし、職務内容が同じ場合には、減額の合理的理由を説明できることが求められます。
御社の運用(70~80%水準・年金控除方式)は、面談での説明と規程整備を行えば、
現行法上は適法に運用できると考えられます。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/21 09:30 ID:QA-0161000
相談者より
とても詳細にわかりやすく判例を提示いただきありがとうございました。
参考にさせていただきます。
投稿日:2025/11/25 09:33 ID:QA-0161076大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、当事案に関しましては定年再雇用以後の当人自身の新たな労働条件に関わる事柄といえます。
すなわち、一般的な正規・非正規労働者間の格差の問題とはいえませんので、直ちに法令上の同一労働同一賃金の点で違法な措置とはならないものといえます。
但し、現行の運用以上に減給となれば、再雇用を抑制する措置と判断される可能性もないとは限りませんし、いずれにしましても業務実態等を鑑みて適正な給与額とされる事が重要といえるでしょう。
投稿日:2025/11/21 09:31 ID:QA-0161001
相談者より
ご返信いただきありがとうございます。
ご意見参考にいたします。
投稿日:2025/11/25 09:34 ID:QA-0161077大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
再雇用者は、パートタイム・有期雇用労働法でいう期間の定めがある働き方に
該当し、正社員と同じ仕事をしているのに、給与などに説明ができない差を
つけることが法律で禁止されて点は、ご認識の通りかと存じます。
本件においては、仕事の内容や働く時間が全く変わらないのに、基本給だけを
大きく下げるといった待遇差は、不合理と判断される可能性もございます。
一方で、定年後の再雇用の場合、本人が年金(老齢年金)を受給しているなど、
その他の事情も、その待遇差が妥当かどうかを判断する際に考慮されます。
実際、過去の判例でも、基本給がそもそもどういう目的で払われているかという
点が特に重要視されています。
上記に照らし合せると、就業条件は変わらず基本給を下げるのであれば、
1.年金受給額との間に筋の通った関係性を説明できる根拠を用意すること。
2.再雇用者本人にしっかり説明を行い、同意を得ること。
の対応が出来ていれば、不合理な待遇差として、大きな問題になることまでは
避けられるかと思案いたします。
投稿日:2025/11/21 09:41 ID:QA-0161002
相談者より
ご返信いただきありがとうございます。
ご意見参考にいたします。
投稿日:2025/11/25 09:35 ID:QA-0161079大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
1人の労働者の条件なので、同一労働同一賃金としてではなく、純粋に業務と賃金の合理性tが問われるでしょう。
年齢だけを根拠として、同一業務にもかかわらず賃金を引き下げるのは合理性がありません。賃金の相応の80%~70%掛け業務縮小であれば合理性はあります。
業務縮小化給与待遇改善のいずれかが必要です。
投稿日:2025/11/21 13:13 ID:QA-0161012
相談者より
ご返信いただきありがとうございます。
ご意見参考にさせていただきます。
投稿日:2025/11/25 09:36 ID:QA-0161080大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
実質業務や勤務時間も変わらないという事ですと
同一労働同一賃金の観点から
不合理とされる可能性が高いといえます。
投稿日:2025/11/21 13:39 ID:QA-0161015
相談者より
ご返信ありがとうございます。
ご意見参考にさせていただきます。
投稿日:2025/11/25 09:37 ID:QA-0161083大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
基本給の目的・性質
以下、回答いたします。
(1)業務内容に相違がなかったにもかかわらず、再雇用者の基本給の額が正社員のそれを大きく下回ったとして損害賠償請求がなされた事案として、「名古屋自動車学校事件」(令和5年7月20日 最高裁判決)があります。
(2)この最高裁判決では、概ね、次のようなことが述べられています。
※ 本件、正職員の基本給については、勤続給、職務給、職能給という様々な性質を有する可能性があり、これまでの事実関係だけではその目的を確定することもできない。
※ 本件、定年退職後再雇用された「嘱託職員」の基本給は、正職員の基本給とは異なる性質や支給の目的を有するものとみるべきである。
※ 本件、各基本給の性質やこれを支給することとされた目的を十分に踏まえることなく、その一部が労働契約法20条(現パートタイム・有期雇用労働法第8条)にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法がある。
(3)「弊社の運用に法的な問題ありませんでしょうか」との御相談です。上記を踏まえれば、「正社員」、「再雇用者」、「再々雇用者」それぞれの基本給の目的や性質に照らし合わせて考える必要があると認識されます。
例えば、従業員の安定した生活を重視し、無期雇用である「正社員」については「勤続給」、有期雇用である「再雇用者」については年金受給までの「保障給」、「再々雇用者」については年金受給額を勘案した「保障給」という性質がそれぞれ中心になるということであれば、60歳定年、再雇用65歳それぞれの時点で基本給は減額されることになろうかと思われます。そして、例えば、「再雇用者」の基本給については、「保障給」としての妥当性を中心に、また、正社員全体の賃金体系である「勤続給」「基本給」とのバランスなども勘案して決定されることになろうかと認識されます。
勿論、別の目的を重視するのであれば、例えば、適材適所を重視し職務給を中心に据えるのであれば、定年制のもとでの配置の問題であり、結果として、これに応じた基本給がそれぞれ支給されるものと認識されます。
(参考)五島育英会事件 平成30年4月11日 東京地裁判決
※ 我が国においては,終身雇用制度を背景に,雇用の安定化や賃金コストの合理化を図るという観点から,伝統的に年功性の強い賃金体系が採られており,このような賃金体系の下では定年直前の賃金が当該労働者のその当時の貢献に比して高い水準となることは公知の事実。
※ このように,年功的要素を含む賃金体系においては就労開始から定年退職までの全期間を通じて賃金の均衡が図られていることとの関係上,定年退職を迎えて一旦このような無期労働契約が解消された後に新たに締結された労働契約における賃金が定年退職直前の賃金と比較して低額となることは当該労働者の貢献と賃金との均衡という観点からは見やすい道理であり,それ自体が不合理であるということはできない。
投稿日:2025/11/22 01:16 ID:QA-0161048
相談者より
とても詳細にわかりやすく判例を提示いただきありがとうございました。
参考にさせていただきます。
投稿日:2025/11/25 09:37 ID:QA-0161082大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
人によって個人差はありますが、年齢とともに、体力の低下、パフォーマンスの低下は避けられないものとなります。
そういう観点からいえば、再雇用、再々雇用と基本給が下がっていくというのは、ただちに否定できるものではありませんが、ではなぜ実質業務は変わらず、フルタイム勤務(定年前と同じ業務内容)であるにも係わらず、基本給だけが減額されるのかのは、矛盾でしかありません。
働き方は定年前と変わらず、基本給だけが80~70%に減額されるとなれば、そこに合理的な理由がなければならず、明確な説明も求められます。
合理的な理由とは、誰が考えてもそのとおりだと納得できる理由です。
投稿日:2025/11/22 08:25 ID:QA-0161049
相談者より
ご返信ありがとうございます。
ご意見参考にさせていただきます。
投稿日:2025/11/25 09:38 ID:QA-0161084参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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