育児中社員の異動について
共働きで育児中(子供は2人、小1と年中)の社員を社内の違う部署へ異動させることとなったが、その部門は早朝7時30分出社16時20分就業であり、残業もある部署であるため、保育園への送迎対応が難しいと相談してきた。また配偶者は遠方に勤めているため代替手段もないとのこと。
また、第一子が生まれたときから柔軟に対応できる机上職を希望していたが、要望通りにはなっていない現状である。育児介護休業法26条は転勤が伴う移動には配慮する必要があるが、こちらの社員は勤務地が変わることがないため配慮の必要性はないという認識で良いのかご教示ください。
投稿日:2025/08/12 16:19 ID:QA-0156627
- マンチカンさん
- 愛知県/電機(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1. ご認識の前提(育児・介護休業法26条)
育児・介護休業法26条は、事業主が「育児や介護を行う労働者に対し、その状況に配慮して、転勤については必要な配慮をしなければならない」と定めています。
ここでいう「転勤」とは、通常は勤務地が変わる人事異動(例:東京から大阪へ)を指し、ご認識のとおり「勤務地が変わらない異動(部署異動や勤務時間変更)」は条文上の対象ではありません。
2. ただし注意すべき関連規定
(1) 育児・介護休業法 第25条(労働者の子の養育に配慮した措置)
事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者に対しては「所定労働時間の短縮」や「フレックスタイム」「始業終業時刻の繰上げ・繰下げ」などの措置を講じなければならないとされています。
今回の社員は「小1と年中の子」なので法定の義務対象(3歳未満)ではない。
(2) 労働契約法・均等法の観点
労働契約法3条は「労働契約は、労使が対等な立場で、労働者の事情に配慮して行われるべき」と規定。
また、育児・介護休業法や男女雇用機会均等法の趣旨から、育児を理由に著しく不利益な配置を行うことは望ましくないとされます。
実務上、勤務地が変わらなくても「始業が早く残業が多い部署へ異動させる」ことは、育児との両立を困難にし、事実上の退職強要と評価されるリスクがあります。
3. 実務的な判断
法26条の「転勤配慮義務」には直接は該当しない → ご認識は正しい。
ただし、法の趣旨(育児両立への配慮義務)や均等法・育児介護休業法の不利益取扱い禁止との関係で、配慮を欠いた異動は労務リスクが高い。
特に本人が「出産時から柔軟に働ける職務を希望していた」という経緯があるため、異動命令が権利濫用と評価されるリスクを慎重に見ておく必要があります。
4. 対応の方向性(推奨)
本人との面談を行い、育児状況を踏まえて勤務継続できる条件をヒアリングする。
代替措置を検討する(例:時差出勤、時短勤務、在宅勤務日を設ける、残業免除など)。
業務上やむを得ず異動が必要な場合でも、育児配慮策を組み合わせることが肝要。
それでも調整ができない場合は、配属理由を客観的に説明できる証拠(業務上の必要性、本人適性)を残しておくこと。
5. まとめ
ご認識のとおり、育児介護休業法26条の「転勤配慮義務」は勤務地異動のみが対象であり、今回のケースには直接適用されません。
ただし、育児両立の観点からは「勤務地は同じでも労働条件が育児と両立困難となる異動」は、権利濫用や不利益取扱いと評価され得るため、実務上は十分な配慮・調整が必要です。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/18 10:24 ID:QA-0156674
相談者より
望んでいない製造(ライン作業)となり、他の作業員とは異なる就業時間(始業時刻の変更)が最大の配慮と説明したが、夏休みなどの学童保育の預け入れ時間の兼ね合いで年間でみるとどうしても遅刻などで対応してもらう他なく減給の影響を受けることを説明しました。腑に落ちないとのことで労働組合含め翌週再度話し合いますが異動先の変更は考えていません。
投稿日:2025/08/21 22:33 ID:QA-0156993参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
|こちらの社員は勤務地が変わることがないため配慮の必要性はないという
|認識で良いのかご教示ください。
↓ ↓ ↓
育児介護休業法第26条の転勤にはあたらないため、
同条項に基づく配慮の義務はありません。というのが回答となります。
しかし、この社員の方の状況(早朝出社、残業、配偶者の勤務地)を考慮すると、
育児と仕事の両立が困難になる可能性が非常に高いと考えられます。
育児介護休業法には、転居を伴わない異動に対する明確な規定はありませんが、
企業には育児中の社員が働き続けられるよう、個別の状況に配慮し、
支援する努力義務があります。
何ら配慮せずに異動を強行すると、社員のモチベーション低下や離職につながる
だけでなく、法的リスクを招く可能性もあります。
育児中の社員に対する不当な配置転換や、その結果としての離職が、
男女雇用機会均等法や育児介護休業法違反とみなされた判例もありますので、
ご留意ください。
投稿日:2025/08/18 12:59 ID:QA-0156716
相談者より
始業時間の変更が配慮と伝えたが、夏休みなどの学童保育の対応が現部署ではフレックスで対応できるが、異動先ではフレックスが使用できないため、遅刻にて対応してもらうしかないと伝えました。給与や賞与は減給となります。翌週労働組合含め、再度話し合いますが、異動先の変更は考えていません。
投稿日:2025/08/21 22:36 ID:QA-0156994大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
2か月後の10月から、
仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主の義務になります。
ですから、配慮してあげてください。
投稿日:2025/08/18 16:53 ID:QA-0156759
相談者より
個別に面談は行い、配慮は作業時間の変更と伝えたが平行線となりました。翌週労働組合含め話し合いを行いますが、異動先の変更は考えていません。フレックスが使えないことで学童保育へ預ける際に遅刻で対応してもらう必要があり、給与および賞与は減給となります。
投稿日:2025/08/21 22:39 ID:QA-0156995大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
育休法の理念からすれば、育児の妨げにならないような配慮を会社がすべきです。移動が経営上絶対に欠かすことのできない理由があるなど、説得説明責任は会社側にあると考えるべきでしょう。
逆に異動はさせるが、時短や時間変更など、柔軟な受け入れを設定するなら、正に法の趣旨に沿った人事政策を展開していることになります。
単なる法律判断ではなく、本人事は経営判断として、経営者の責任で行う必要があるでしょう。
投稿日:2025/08/18 22:46 ID:QA-0156808
相談者より
始業時間の変更により育児の妨げにはならないと認識ですが、フレックスが使用できない部署への異動のため学童保育への預け時間の関係で遅刻にて対応していただく必要があり、給与、賞与は減給になります。
投稿日:2025/08/21 22:41 ID:QA-0156996大変参考になった
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