退職証明書の記載項目について
いつもお世話になっております。
退職社員が面接を受けている会社から退職証明書の発行依頼がありました。
「個人情報保護法に抵触しますので、お答えしかねます。本人から弊社へご依頼するようお伝えください。」とお断りをしたのですが、
労働基準法22条1項を見ますと『労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。』とあるのですが、当該社員は不正を働き、会社に多額の金銭的損害を与えたため、懲戒解雇となっているのですが、
もし、依頼があった場合、『退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)』について記載しても問題ないという認識でよろしいのでしょうか。
投稿日:2025/06/20 17:46 ID:QA-0154255
- newyuiさん
- 神奈川県/その他業種(企業規模 31~50人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
結論から申し上げますと、ご認識の通り、「本人からの請求があった場合には、懲戒解雇の理由を含めて退職証明書に記載することは可能(むしろ法的に認められている)」です。
以下、法律上の根拠と実務上の留意点をわかりやすく整理します。
1. 労働基準法第22条(退職時等の証明)
第1項
労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならない。
2.ポイント:
「退職の事由が解雇の場合」は、「その理由を含む」と明記されています。
つまり、本人が請求した場合には懲戒解雇の理由を記載することが法的に認められているどころか、本人が「退職理由」や「解雇理由」を求めた場合は、原則として記載義務があるというのが法律の立て付けです。
ただし重要な点:記載内容は本人の請求内容に限定
労働者が請求できるのは以下の項目に限られます:
使用期間
業務の種類
その事業における地位
賃金
退職の事由(※解雇理由含む)
労働者が「退職の事由のみ記載してほしい」と言った場合には、他の項目を記載してはなりません(第2項)。
3.ご質問の実務対応について
【1】本人以外からの退職証明書の依頼
法的には退職証明書の請求権があるのは元労働者本人のみです。
したがって、貴社の対応(=本人から請求するよう伝える)は正しい対応です。
【2】本人からの請求があった場合、懲戒解雇理由の記載は?
「退職の事由(理由含む)」を求められた場合は、懲戒解雇およびその具体的理由の記載は可能であり、法的にも正当です。
4.記載例(退職証明書)
退職の事由:懲戒解雇
理由:就業規則第○条第×号に該当する不正行為(会社資産の不正流用)により、令和7年○月○日付で懲戒解雇とした。
※できるだけ客観的・簡潔に。名誉毀損などのリスクを避けるため、侮辱的表現や推測的な文言は避けましょう。
5. 留意点(名誉毀損等との関係)
本人からの請求に基づいて発行する場合であっても、記載内容が社会通念上不相当であったり、虚偽や誇張があると、民事上の名誉毀損等のリスクが残ります。
したがって、
事実に基づいた客観的な記載
就業規則との対応関係の明示(第○条)
裁判等で係争中でないことの確認
は、慎重に行う必要があります。
6.まとめ
項目→結論
退職証明書の請求者→原則として本人のみ
他社からの請求→個人情報保護の観点から拒否すべき(適切)
本人から「退職理由」付きで請求された場合→懲戒解雇およびその理由を記載してOK(法22条1項)
記載の注意点→客観的・簡潔・事実に基づく記載が必要
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/20 18:18 ID:QA-0154257
相談者より
いつもお世話になっております。
大変詳しくご説明いただき、ありがとうございました。
再確認となり大変申し訳ございませんが、一点お伺いさせてください。
もし、本人から、面接を受けた企業から不採用となることを避けるために
・使用期間
・業務の種類
・その事業における地位
・賃金
のみの記載にして欲しい(退職の事由[※解雇理由含む]については記載しないで欲しい。)という依頼があった場合、
仮に再就職先において、不正を働き、金銭的損害を与えるリスクがあるとしても弊社としては、退職の事由[※解雇理由含む]については記載してはいけないという認識でよろしいでしょうか。
お手数おかけしますが、ご回答よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/23 08:44 ID:QA-0154284大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
記入事項
以下、回答させていただきます。
(1)労働基準法第22条第1項に基づき請求に応じる必要があります。但し、同法
同条第3項では、「労働者の請求しない事項を記入してはならない」と定めら
れています。
(2)そして、記入事項に関しては、「令和3年版 労働基準法(上)厚生労働省
労働基準局編」では、以下のように述べられています。
※ 労働者の請求した事項のみを記入すべきであって、労働者の請求しな
い事項は、たとえ法定事項であっても記入することは禁じられる。
※ 労働者が記入事項を明示せずに証明書を請求した場合は、法定事項を
記入することを請求されたものと解されるが、使用者としては、記入事
項について労働者に問い合わせるべきであろう。
※ 法定記載事項以外の事項については、労働者から請求があっても使用
者にはこれに応ずべき義務はないが、労働者の請求により法定事項以外
の事項を記入してももちろん差し支えない。
投稿日:2025/06/20 21:35 ID:QA-0154267
相談者より
お世話になっております。
大変参考になりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/06/23 09:17 ID:QA-0154290大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、本人から退職証明書発行の希望が有れば応じる義務がございます。ご認識の通り、直接本人の許可なく転職先の会社からの依頼に応じる事は認められません。
その上で、退職証明書については当然ながら事実を記載される必要がございますので、たとえ退職の理由が退職者に不利な内容であってもその通り記載されなければなりません。
本人側で記載事項の項目を指定されますとそうした項目のみ記載される必要がございますが、何も言われなければ記載される事で差し支えございません。勿論、本人が希望されても虚偽の退職理由等を記載されてはなりません。
投稿日:2025/06/20 22:21 ID:QA-0154271
相談者より
いつもお世話になっております。
大変参考になりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/06/23 09:19 ID:QA-0154291大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
退職証明者の発行を請求できるのは退職者本人のみであって、退職社員が面接を受けている会社から請求があったからといって、応じる義務はありません。
本人から発行依頼があった場合は、退職事由としまして、解雇による退職と記載することで差し支えはございません。
なお、解雇理由としましては、不正行為を働き会社に多額の金銭的損害を与えた旨を具体的に記載し、就業規則第〇〇条の解雇事由に該当したことによる解雇としておけばいいでしょう。
ただし、解雇された退職者が、解雇の理由を請求しない場合は、記載はすべきではありません。
投稿日:2025/06/21 09:11 ID:QA-0154275
相談者より
いつもお世話になっております。
大変参考になりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/06/23 09:21 ID:QA-0154292大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
まず、退職社員の退職証明書について、本人以外から請求があった場合、
お断りするのは正しい対応であり、あくまで請求できるのは本人のみです。
その上で、本人から請求があった場合は、証明項目について、事前に確認を
していただくのが最も適切です。
退職の事由についての記載を求められなければ、記載しませんし、
記載を求められれば記載すれば良いでしょう。
なお、記載を求められた場合は、事実の記載のみ可能ですので、
本人から交渉があっても事実を変える記載はお断りください。
投稿日:2025/06/23 07:27 ID:QA-0154282
相談者より
いつもお世話になっております。
大変参考になりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/06/23 09:25 ID:QA-0154293大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
2回目のご質問
「再確認となり大変申し訳ございませんが、一点お伺いさせてください。
もし、本人から、面接を受けた企業から不採用となることを避けるために
・使用期間
・業務の種類
・その事業における地位
・賃金
のみの記載にして欲しい(退職の事由[※解雇理由含む]については記載しないで欲しい。)という依頼があった場合、
仮に再就職先において、不正を働き、金銭的損害を与えるリスクがあるとしても弊社としては、退職の事由[※解雇理由含む]については記載してはいけないという認識でよろしいでしょうか。
お手数おかけしますが、ご回答よろしくお願いいたします。」
にご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
考え方等につきましては、ご説明させていただきました通りです。
「もし、本人から、面接を受けた企業から不採用となることを避けるために
・使用期間
・業務の種類
・その事業における地位
・賃金
のみの記載にして欲しい(退職の事由[※解雇理由含む]については記載しないで欲しい。)という依頼があった場合、
仮に再就職先において、不正を働き、金銭的損害を与えるリスクがあるとしても弊社としては、退職の事由[※解雇理由含む]については記載してはいけないという認識でよろしいでしょうか。」
につきましては、最終的には所轄の労働基準監督署の判断となります。
よって、本質問につきましては、所轄の労働基準監督署の監督官にご質問されることをお勧め申し上げます。
よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/23 09:27 ID:QA-0154294
相談者より
いつもお世話になります。
大変参考になりました。
所轄の労基署に最終確認するようにいたします。
お忙しい中、迅速にご回答いただき、ありがとうございました。
投稿日:2025/06/23 10:16 ID:QA-0154299大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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