配置転換
人事異動により、従業員の担当職務や勤務地などを変更することを「配置転換」、略して「配転(はいてん)」といいます。配置転換は大きく、企業内の配置転換と企業間の配置転換に分かれます。前者には昇進・昇格、職種変更、勤務地変更などが含まれ、後者には子会社や関連会社への転籍、出向などが該当します。狭義では、同じ企業内において職場や勤務場所が変わることのみを指し、このうち事業所間にまたがる配置転換を転勤といいます。
(2012/3/26掲載)
異動や転勤には就業規則の規定が必要
会社分割時の転籍は承継法に従って
日本企業の伝統的な雇用管理の特徴として、従業員の配置転換を頻繁かつ広範囲に行うことが挙げられます。それは、長期雇用慣行のもとで労働ニーズの変動に対応するためであり、また従業員の能力開発のためにもさまざまな職場や業務を経験させる必要があると考えられてきたからです。
とはいえ、雇用者の随意に人を動かせるわけではありません。異動や出向の命令に従業員が同意しないとトラブルになります。雇用者が配置転換を行う権利(配転権)は、就業規則などの規定の手続きに拠ってはじめて担保されるものであり、あらかじめ異動や出向を求めることがある旨を明文化しておく必要があるのです。
さらに就業規則に配置転換について定める記載があっても、次のような場合は「配転権の濫用」と見なされ、異動・出向には従業員本人の同意が必要となります。
・ 雇用された時点で職種や職場が限定されている場合、もしくは限定されていると従業員本人が
理解して当然の場合
・ 配置転換の必要性が認められない場合。ただし厳密な理由を要求してはならない
・ 配置転換の命令に不当な動機がある場合。たとえば組合活動を妨害する意図で命令した転勤は
無効となる
・ 配置転換によって従業員が不当に不利益をこうむる場合。特に病気や要介護の家族を抱えている
といった事情は配慮されなければならない
2001年4月の商法改正によって、会社から一つの事業を切り離して子会社化する、あるいは他の企業に譲渡する(M&A)といった会社分割の手続きが迅速化されました。併せて「労働契約承継法」が制定、施行され、会社分割に伴う社員の配置転換――転籍や出向のルールも新しく定められたのです。
事業が動けば、人も動きます。この承継法は、会社分割をスムーズに進めながら同時に労働者保護を目指す法律で、たとえば従来は、分社による転籍は常に本人の同意が必要とされましたが、承継法では「分割される部門・業務に主として従事している労働者」は個別の同意なしに移籍が可能になると改められました。その一方で、「分割される部門・業務に主として従事しているのに移籍せず、残留とされた労働者」と「分割部門・業務に従として就いているのに移籍とされた労働者」については、異議申立てが認められるようになりました。異議申立てが出された場合、残留・移籍とも命令は無効となります。
事業の子会社化やM&Aが計画されるとき、「カネ」「モノ」の動きばかりが先行して検討され、「ヒト」の異動については後手に回りがち。労働契約を引き継ぐための諸条件など、法制度にも十分留意して進める必要があります。

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